「それでドクター。どうするのですか」
通路を歩きながらドクターは答える
「どう、とは?」
「彼の事です」
ドクターは歩くのを止めて私の目を真っ直ぐに見つめてくる
「もちろん利用するにきまってるじゃないか。利用するし利用される。彼が望む関係は恐らくこうだろうね」
「・・・・・・了解しました」
何も聞かない、詮索するつもりはない。私はただドクターの利益となる行動をすればいい。仮にアイツが邪魔になるような存在ならば私がこの手で・・・・・・
「ウーノ」
声を掛けられハッとする。いつの間にかドクターは私よりも先を歩いていた。慌てて追いつく
「君が不安を抱く理由も私はわかっているつもりだ。だけどね、私はいい加減断ち切りたいんだ。あんな糞共に言い様に扱われる運命をね。彼はそのための鍵だ」
「鍵・・・・・・ですか?」
私が聞き返すとドクターは少しだけ笑って、私の質問には答えずに歩き続けた。少しすると彼に宛がう予定である部屋にたどり着く
「さぁ、君の目的を聞かせてもらおうではないか!」
ドクターはまるで彼がおきている事を知っていたかのように声を掛け扉を開く
「僕の目的は管理局の膿を吐き出すこと、もちろんあのふざけた脳みそ共もね」
原作知識、彼の話をすべて信じるのならば彼が最高評議会のことを知っているのも当然。ならば奴らを膿と呼ぶのも頷ける
「だからジェイル・スカリエッティ、協力しよう。僕に利用されろ、僕を利用しろ」
彼の目的を聞き、彼の提案を聞き、博士はただ只管面白そうに、嬉しそうに笑っていた
ジェイルとの協力関係が始まってから二年と少し。ナンバーズも俺が最初に来たときから四人も増え、この隠れ家も賑やかになってきた。そして俺も変わった。背も伸びれば声変わりもした、一人称も僕から俺になった。他に特筆することは無い
トーレが起動してからは訓練と称して二人で部屋をだめにすることが多くなった。その度に直すのは俺なのでなんとかお小言だけで済んでいる。ただチンクの起動に伴い俺とトーレが訓練相手になった結果、チンクのISの特性上爆発音が響くのだが、ウーノの堪忍袋の緒が切れた時は死を覚悟した・・・・・・。こんな風にジェイルに仕事を頼まれるとき以外は主にトーレとチンクの戦力増強を手伝っている。管理局に仕掛けに行こうとも思ったが今派手に動くのは得策ではないとジェイルに言われ目立たないようにしていた、が
「これは・・・・・・」
「まずいだろ・・・・・・」
「まずいですね・・・・・・」
遠方から監視させているガジェットから送られてくる映像には一つの違法研究所が火の手に包まれている。記憶を探りこれが恐らく『戦闘機人事件』だと判断する。映像を注視すると『ゼスト・グランガイツ』『メガーヌ・アルピーノ』『クイント・ナカジマ』と思われる人物が横たわっている。ここまでは原作通りであろう、問題は次だ
「ジェイル、こいつは誰だ」
今チンクが相対しているのは、銀髪に片方だけ色の違う瞳をした恐らく男性局員であろう人物。トーレと戦っているのは腰にまで届くであろう長い髪を無造作に後ろで一纏めしただけの髪型、特徴がそれだけなので性別は判断しにくいが
「トーレとチンクと互角か」
「銀髪の方は陸の吉良義光という管理外世界の人間だったかな」
「黒髪の方も同じ管理外世界の人間です、名は八神琴」
吉良とかいう方は見た目的に確実に転生者と断言できる。八神の方も恐らく転生者だろうが引っかかる部分が名前しかない。しかし問題はどちらも魔力ランクが高いということだ
「チンクはゼストとの戦闘で負傷してウーノは遠距離相手で動ける状態じゃない・・・・・・か」
「いくのかい?」
「その吉良とかいう奴の発言を聞いて行かないって選択肢を選べるほどゲスじゃねーよ」
先程から吉良はチンクに対して性的欲求を吐き出し続け、チンクを見る目が物凄く欲望にまみれている。このまま放っておけば確実にあの吉良とかいう変態の餌食になるだろう
「しかし間に合うのか?転移も万能ではない、時間がかかるぞ?」
転移自体は一瞬と言ってもいいがその転移の準備には時間がかかる。一分くらいだがそれでも長い。だから
「マザーを使う」
「マザーかい?確かまだどんなモノか聞いてはなかったが」
「まぁおとなしく画面見ておけ。・・・・・・そうだジェイル、助けてきてもいいか」
「君の好きなようにすればいい」
「サンキュ」
言いながら両手で空中を引き裂くように広げる。何も無いはずのソコがバキバキと音を立てながら開かれていく
「おぉ・・・・・・」
「これは・・・・・・っ」
二人の驚く顔を見ながら俺はその開いた空間に入り込み、中の空間でも同じように両手で引き裂く。すると目の前に火の海が現われる。地面に降り立ち周囲を見渡しゼスト、メガーヌ、クイントの三名を見つける。すぐさま駆け寄りポケットからライターと取り出し火にかける
「活力の炎」
白い炎が三人を包む、包まれると同時に三人の傷口の治癒が始まる。治癒が始まったのを確認してから先にチンクの手助けに向かう
「大人しく捕まって俺のモンになれやぁあああああああああああ!!」
「ふざけるなっ!誰が貴様なんかに・・・・・・っ!」
吉良は大剣を力任せに振るいそれをチンクが避ける。避けるのだが大剣が地面に当たった時に散らばる飛礫がチンクの体を傷つけ、吹き飛ばされる
吹き飛ばされたチンクにすぐさま駆け寄り同じように魔法をかける
「無事かチンク」
「神楽・・・・・・?神楽ぁ!」
ドン、とチンクが抱きついてくる。よっぽど怖かったんだろうなと慰めるように頭を撫でようとして止まる。見れば彼女の右目が抉れそこから夥しい量の血が流れ出している。
落ち着け、彼女はまだ生きている。そう自分に言い聞かせながらチンクにも活力の炎をかける
「お疲れさん、後は俺が引き受けるから隠れてろ」
「神楽・・・・・・、すまん任せた」
一瞬だけ、任せてもいいのか悩んだ様子だったが直ぐに頷いてその場から消えた。恐らくクアットロだろう。
「あー?お前誰よ、人の女に色目使いやがって」
吉良が殺気を収めずに此方に近寄る
「大体なんでここに八神もいるんだよ・・・・・・。原作ぶっ壊れすぎだろ糞がっ」
一方的に向こうは話し続けるが此方からは話しかけない。話す必要がない
「まぁいいさ、さっさとお前を殺してからチンクを探す。んでメガーヌさんとクイントさんを俺が助けて親密な関係になるってわけだ!」
さっきからコイツはベラベラと喋りすぎじゃないだろうか・・・・・・
「つーわけでさっさと死ねや糞ったれ!」
ブォン!と大剣を振り下ろし目の前の男を真っ二つに両断する
「ん?あ?何だコイツ何もしねーで死にやがった・・・・・・」
魔力を込めずにただ単に殺すための一撃
ブンッ!と付着した血を払うために大剣を振り気づく
「・・・・・・血が着いてない?」
人を両断したのに血が着いていない。いや待て、人を切ったはずなのに手ごたえが無かった・・・・・・?慌てて正面を向くと光が浮かんでいた
「マテリアル・パズル」
光から声が聞こえる、再び切りつけるがやはり手ごたえがない
「ムーン・アデルバ」
そう聞こえた瞬間吉良は吹き飛ばされた
「!?ガッ!!」
何かに吹き飛ばされ地面を転がる。転がりながらも魔力弾を周囲に形成し放つ。
魔力弾は直撃するがソイツの外見は何も変化が見られない
「さてと・・・・・・」
ソイツが一歩踏み出したと同時に冷たい汗が背を流れる
「家族が世話になったなゲス野郎」
そう呟かれると同時に光が目の前に移動してくる。驚くまもなく腹を蹴り上げられ宙に浮かぶ
「・・・・・・がぁあああああ!」
痛みを堪えながら大剣に大量に魔力を纏わせる
「吼えろぉおおおおおおおおお!」
ガオンッ!と剣が鳴く。その形状は先程までのシンプルな大剣とは違った。刀身の先が抉る事に特化したかのように鋭く尖る。まるで牙のようになったそれはサイズも変わり今は刀のようだ
「死にさらせッ!」
変化した刀で空中から突きを繰り出す。当たるとは思っていない、避けてくれたら返す手で食い千切れば良い方だと思う
「マテリアル・パズル」
ザクリ、と確かな手ごたえと共に刃が刺さる音が聞こえた、が。
「土人形」
目の前のソイツは先程と違い眩い姿ではなく、茶色をした何かに変わっていた。ボロリと崩れたソレを見て理解する、これは土だ
「マテリアル・パズル」
「どこだぁあああああああああ」
全身から周囲に撒き散らすように魔力を放出する。逃げ場のないこれならと僅かな希望と共に放たれたソレは
「オーライーター」
無残にも打ち砕かれる。振り向くとそこには傷一つない男が立っていた
「エンゼルフェザー」
とん、と肩を突かれる。様々な感情が頭を巡る。何をした、何故無傷なんだ、何故これだけで終わる、これから何が起こる
「俺はお前に触れた」
ゾワリと悪感が奔る
「羽根は既にお前についている」
羽根?何を言っている?
「キャッチボールだ」
「何を言っていると聞いているんだ貴様ぁあああああああ!」
馬鹿の一つ覚えのように刀を上段に振り限り力の限り振り下ろす
「死ぬなよ?」
ドゴォ!と吹き飛ばされるがコレぐらいなら死にはしない。諦めずに斬りかかるが何故か奴が目の前にいた
「士熊」
再び吹き飛ばされる、またもや気がつくと奴がいた
「士熊士熊士熊士熊士熊」
何度も何度も何度も何度も何度も
「士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士熊士ぁ!!!」
何打目かわからぬうちに意識が刈り取られた
危ない危ない、雑魚とでも思ってくれてたのか油断してくれてて助かった。
エンゼルフェザーで吉良の体に羽根を生やした後『三獅村祭』で飛ばす。吹き飛んだ吉良をエンゼルフェザーで引き寄せて士熊で殴り飛ばす。以降繰り返し
最初から魔力を纏った大剣で切りかかられていたらそれで終わった可能性があったが過ぎた事は考えるだけ無駄だなと打ち切る。一応死なれては困るので活力の炎をかけておく
「チンク、クアットロ。無事か?」
虚空に声を掛けると直ぐ横の空間が一瞬ノイズが奔ったかのようにブレ二人が姿を現したが
「「・・・・・・・・・」」
二人とも一向に喋らない。それどころか何かに怯えるように震えている
「どうしたんだ・・・・・・?無事なら無事で返事くらいしてくれてもいいじゃないか」
「「ハイ!無事です!無事であります!」」
直立不動でまるで軍隊がするように手を後ろで組み声を合わせて返事をされる
「お、おう。無事ならいいんだ。ちょっとウーノも助けてくるからもう少しだけ待っててくれな?」
そう告げると今度は返事すらもらえずに姿を隠された。珍しくチンクがクアットロに甘えるように抱きついていたのがとても印象的だった
今更ですが登場魔法の紹介
前話
焦天回廊・・・属性「炎」。酒気を変換し炎を作り出す魔法。そのため融合者は融合前に大量の酒を飲む必要がある。
炎陣剣(えんじんけん) 巨大な炎の剣を作り出す
夜叉水晶・・・属性「氷」。炎を変換し氷を作る
スパイシードロップ・・・属性「壊」。飴玉の魔力を破壊のエネルギーに変換
マザー・・・属性「仔」。空間湾曲魔法
活力の炎・・・属性「活」。炎を変換し生物を回復/強化するエネルギーを作る
ムーンアデルバ・・・属性「光」。吸収型。光を変換し自らの力とする月の光を吸収することで真の力を発揮する
土人形・・・属性「土」。土を操作し人形を作り出す
オーライーター・・・属性「情」。吸収型。負の感情を変換し自らの力とする。今回の話では吉良の負の感情を吸い取り主人公の力に変換
エンゼルフェザー・・・属性「羽」。風を変換し羽を作り出す。触れたものに羽を生み出すことも可
三獅村祭・・・属性「拳」。魔力を込めた拳から三種の魔法拳を放つ
「士熊」・・・大岩をも砕く破壊力の高い拳
禁断五大魔法や特殊な魔法の使用について悩みます。ヘルキルデスベルとか真紅虎龍牙とか超覇導天武刻輪連懺吼とか・・・・・・
特に最後、お前属性「凄」ってなんだよ。魔法説明もとにかく凄いってなんだよ!