ランスロットが行くオーバーロード 作:ヘーラクレース
モモンガは誰も居なくなった玉座の間で頭を悩ませていた。
サービス終了時間になっても強制的にログアウトせず、コンソールは開けずGMコールも繋がらない。極めつけは、意思を持ち出したNPCと解放された十八禁行為だ。考え難いことだが、どうやらユグドラシルが現実になった、もしくはナザリック地下大墳墓ごと異世界に転移してしまったようだ。そのどちらかは、ナザリック周辺の探索を命じたセバス達が戻ってくれば分かるだろう。……上位者として命令してみたが、取りあえず守護者統括であるアルベドと執事であるセバス、戦闘メイドであるプレアデス達は忠誠を誓ってくれているようだ。しかし、他のNPC達も同じように忠誠を誓ってくれているかは不明だ。それにもし忠誠を誓ってくれていたとしても、NPCが意思を持ち出してしまった為、その忠誠が変わらないとも限らない。これからはNPC達に失望されないように上位者として振る舞って行く必要があるだろう。
「他に気になることは、他のプレイヤーたちもこの現象に巻き込まれているのかどうか、だな。……特に、もしギルドメンバーが来ているのならば早急に合流したいしな。特に最後までログインしていたランスロットさんは巻き込まれている可能性が高い。ランスロットさんのことだから大丈夫だとは思うが、何が起こるか分からないからな」
もし、ユグドラシルが現実になっていた場合はランスロットは大丈夫だろう。仮にもユグドラシル最強のプレイヤーだ、もし多数に囲まれて勝てない戦いであっても逃げることぐらいは出来るだろう。問題は、ナザリック地下大墳墓ごと異世界に転移していた場合だ。その場合、世界のレベルが分からない。もしかしたら、その辺に居る村人が百レベルを超えている可能性があるのだ。……まあ、その場合はナザリックに居たとしても対処はほぼ不可能なのだが……。さらに言えば――すぐに確認するが――ここが異世界であった場合、ユグドラシル由来のスキルや魔法が使えない可能性もある。その場合も大変危険だ。まあここが異世界の場合は、逆に言えばモモンガ達が強者である可能性もあるのだから悲観する必要は無いのだが。
「まあ、情報が無い状態では何もわからない。これから検証していくしかないか。……取りあえずはNPC達の忠誠の確認とユグドラシル由来のスキルや魔法が使えるかの確認だな」
そう言ってモモンガは傍で浮かんでいたギルド武器を手にすると、ナザリック地下大墳墓内を一部を除いて自由に転移することが出来るアイテム――リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン――に意識を向けると、自然とその使い方が分かった。その事に内心喜ぶと、守護者たちを集めたナザリック地下大墳墓の第六階層に転移するのだった。
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その後第六階層で、スキルと魔法が無事使えることを確認し、NPC達がアインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーに忠誠を誓っていることを確認した。その上、セバスが持ち帰った情報により、ナザリック地下大墳墓ごと異世界に転移した可能性が高いことも確認することが出来た。その際NPC達にランスロットの事を聞かれたため、ナザリック外でアイテム収集に言っていたことと、この世界のどこかに転移している可能性を伝えた。……まあ、その時に『ナザリック全軍を持って捜索隊を結成する』と言いだしたNPC達を宥めるのは苦労したが……。
そして第六階層から離れたモモンガは、今第九階層の円卓に向かっている。ランスロットの作ったNPCである『メディア』に話をしに行くためだ。
メディアは、神話に出てくるコルキスという国の王女メディアをモチーフにしていてレベルは百だ。万能系の魔力系魔法詠唱者で、召喚や支援、攻撃など様々なことが出来る。ランスロットが頑張りすぎたせいで、装備は全て神器級であり、世界級アイテム『五行相克』を使ってまで本来NPCが使えない超位魔法を使えるようにしたり、本来NPCが取れないワールドディザスターの職業を取ったりした完全なガチビルドだ。勿論課金アイテムなども所持している。その為、ギルメンが揃っていた時は『プレイヤースキルを無視すれば、同じガチビルドでもロール部分があるウルベルトさんよりも、万能系とはいえ完全なガチビルドのメディアの方が強い』とよく言われていて、ウルベルトも認めていた。その上、アインズ・ウール・ゴウンの参謀という設定であり、守護者統括であるアルベドと同等の地位に就き、その設定上アルベドやデミウルゴスをも上回るナザリック最高の知恵者として生み出されたNPCだ。
そのメディアに会いに行く理由は、忠誠の確認もあるが、一番の理由はランスロットを探すための独断行動をしないように命令するためだ。NPC達との会合で、NPC達がアインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーを至高の四十二人と呼んで忠誠を誓っていることは分かったが、その中でも特に創造主に強い忠誠を抱いていることが分かった。その為、ランスロットがこの世界に一緒に転移している可能性を告げれば、独断行動をする可能性もある。しかし、今現在情報がない時に勝手に行動されてはナザリック全体の危険につながる。その為、直接モモンガが現状を伝えに来たのだ。
そして、モモンガは円卓の間の扉の前に着くと深呼吸をしてから――呼吸はできないが、気分的に深呼吸をした――扉を開けた。