今回はお散歩イチャつき回。
13:00 ロストシティフォレスト 『ルインズ・ベースキャンプ』
「……時間だな」
スマホのアプリがモバイルオーダーの受け取りが可能になったことを告げたので、楓と共に専用カウンターへと赴く。どうやらレストランは通常カウンターとモバイルオーダー専用カウンターに分けられているようなのだが、専用カウンターの方が多いようだ。
「混雑緩和のために、運営側もモバイルオーダーを推奨したいんでしょうね」
「とはいえ、結局混んでるなぁ……」
まだまだお昼時真っ只中なので混雑している通常の列を尻目に、少々の申し訳なさを感じつつカウンターで注文した料理を受け取る。
俺はスモークポークをメインとしたプレート料理、楓はスモークチキンをメインとしたプレート料理、そして……。
「「かんぱーい!」」
本日二杯目となるビールである。
「「……っぷはぁ~!」」
店内はそれなりに混雑していたものの、二人用の小さなテーブルが空いたのでそこに対面で座り、早速乾杯してビールを呷る。
「はぁ~……お昼から堂々とビールを飲めるって、本当にマジックリゾートって夢のような場所ね……」
「マジックリゾート側もそんなことで夢のような場所認定されるの少し不服だろうけど……まぁ概ね同意する」
楓と共に数年生活してお酒を好きにならないやつなんていないだろうという確信がある。
そんな風に飲酒と共にメキシコ風の料理を楽しみつつ、次の予定をどうするか話し合う。
「えっと、一応予定として決まってるのは20:30~20:40の『トイ・オブ・ザ・ワンダーランド』の『マジックエンジョイパス』だけよね」
「あとは七時のショーを見るっていうのと、その後に『フォール・オブ・ザ・カース』に行こうかっていうふわっとした予定だけだな」
こちらはあくまでも「出来たらいいな」程度の予定になるため、もしもの場合は変更しても構わない。
「あとは、そうだな……15時からホテルのチェックインが出来るようになるから、一度ホテルに行ってみるのもありだな」
「そうね、折角良いお部屋に泊まらせてもらえるんだから、一晩泊まるだけなんて勿体ないものね。……チラッ」
「あの列に並びたいのであれば|買って(こうて)おいで」
早々に飲み切ってしまったビールのカップを手にした楓がとても可愛らしく小首を傾げながら目を輝かせるので、こちらも優しい笑顔で通常カウンターを指差す。相変わらず列が短くなる様子はないが……まぁ二十分もあれば戻って来れるだろう、きっと。
「ぶーっ」
流石に食事の途中に離席して二十分並んでまでビールのお代わりはしたくないらしく、楓は不満そうに唇を尖らせつつも諦めた。
「それまでは……のんびり歩きながら見て回るか」
「それなら、みんなへのお土産も買いたいな。そうすればホテルにチェックインするときにお部屋に荷物を置いて来れるし」
「なるほど。そうするか」
「何処かに記念ボトルとか置いてないかしら」
「マジックリゾートに限らず、テーマパークのお土産にアルコールは置いてないんじゃないか……?」
そんなことを話しつつ、残りの料理とお酒を楽しむのであった。
13:40 ロストシティフォレスト
『ルインズ・ベースキャンプ』での食事を終えて店を出る。
「また船に乗って戻るか?」
実は先ほど乗ってきた『マジックフロンティア・クルーズ』は、『ロストシティフォレスト』から『ポルト デ メディテレニア』までのルートもあるため、もう一度乗車すれば元の場所に帰ることが出来る。
「ううん、折角時間もあるんだから歩きましょ。さっき船から見えたところを実際に歩いてみたいな」
「そうだな」
というわけで、先ほど『ポルト デ メディテレニア』から時計回りにここまでやって来た俺たちは、今度は反時計回りに歩いて園内を散策することになった。
お昼も過ぎてドンドンと人が増えていく園内を楓と腕を組みながら並んで歩くが、普段はここまで堂々と街中を歩いてデートをすることは滅多にない。
「周りに興味を引くものが沢山あるから、俺たちなんて気にする余裕ないんだろうな」
「そもそも遊ぶことを目的に来た人たちばかりなんだから、そんなことしてる暇ないんでしょうね」
例えば前から歩いてきたカップルとガッツリ目があったが、それでもなんのリアクションも無くすれ違ってしまった。何人か同じようなことがあったもののやはり誰も気付く様子はない。
「これだったら、もしかして変装を解いてもバレないんじゃないかしら」
「流石にそれはリスキーすぎるチャレンジだからやめような?」
おもむろに「ちょっとだけ……」なんて言いながら伊達眼鏡を外そうとする楓を宥める。いくら何でも無謀すぎるって。
「今は冗談にしても、何処かのタイミングで変装を解いた状態で写真は撮りたいな」
「……まぁ、そうだな」
楓が言いたいことは俺にも分かる。変装した状態ではなく神谷旭と神谷楓としての写真が撮りたい、ということだ。変装した楓も可愛いし美人ではあるが、やっぱりお互いにそのままの写真を思い出に残しておきたい。
「何処か人目の付かないところ、もしくは日が落ちてから、だな」
「あら、そんなところに連れ込まれて、私は何をされちゃうのかしら」
「……楓が望んでいること、だよ」
「……も、もう、そういう演技はしないでって言ってるのに」
「神谷旭と高垣楓も、こういうところでデートしたりすんのかなぁ」
「なに、藪から棒に」
「いやな、さっきすれ違ったカップル、その二人に似てる気がしたんだよ」
「うーん……神谷旭と高垣楓だったら、オシャレなバーでカクテルグラスを傾けてる方がそれっぽい気もするけど……」
「でも、こういうテーマパークではしゃいでる姿を想像してみると……」
「……アリよりのアリ!」
13:55 ウォーターフロントダウンタウン
ジャングルを抜けた先に広がる未来の港『フューチャーホライズン』。そこを更に通り過ぎると、今度は古きアメリカの小さな港町のようなエリアに辿り着いた。
ここは『ウォーターフロントダウンタウン』というエリアの中でも『ケープマカレル』と呼ばれる場所。田舎のようなのどかな雰囲気が漂うところではあるが、他のエリアに負けず劣らずで人が多い。ここにはアトラクションが一つも存在していない代わりに、とある人気グッズを取り扱うショップが存在するのだ。
その人気グッズというのが『マジックドッグ』が『マジックキャット』にプレゼントした兎のぬいぐるみ『バニティー・ラビット』である。
「今日だけでも何人もバニティーを抱えてる人とすれ違ったわね」
「本当に人気なんだろうな……ちょっと覗いてみるか」
混雑している店内に入るのは少しだけ抵抗があったものの、二人とも少し興味があった。
店内には様々な大きさのぬいぐるみを初めとした様々な『バニティー・ラビット』のグッズが所狭しと並べられている。
「着せ替え用の衣装も売られてるのね」
「……あれ、でもさっきすれ違った人が着せてたゴスロリの衣装が無いな」
とても可愛らしかったのでよく覚えているのだが、ざっと見た限りそれらしき商品は並べられていない。
「売り切れ? それとも季節限定?」
「……まさか、自作?」
可能性は大いにあった。346の事務所にも自作のドールを趣味としている知り合いは何人か知っているし、そういった類の人間は衣装や小物を自作するほどの熱量を持つ場合が多い。
「やる人はやるんだなぁ……」
「……ところで、ひぃくん」
「ん?」
「……あぁいう衣装が好みなら、もっと身近な着せ替え人形を着飾ってみてもいいんだけど?」
グッズを見るために離していた腕を再び絡めながら、楓は上目遣いになった。
「……いや、ふぅさんや、流石にぬいぐるみに嫉妬するのは私も予想外ですよ?」
「し、嫉妬じゃなくて、純粋にひぃくんの好みを聞いているんです」
否定しつつも少しはその自覚があったらしく顔を赤らめた楓に問い詰められる。
「もしかして蘭子ちゃんみたいな衣装が好きだったりするんですか?」
「うーん……嫌いではないが、そのアイドルの名前を出されると若干別のノイズが混ざってな……」
でも、そうだな……。
「……ふぅが見せてくれるって言うのであれば、喜んで見させてもらおうかな」
普段の私服も、デートのときに着て来てくれる気合の入った服も、ステージ上で見せるアイドルとしての姿も、全ての楓が愛おしいのだから。
「……そうだ、折角だからウチにも一つ買ってくか」
「そうね。いい思い出になるし……それに、将来
「……はっ!?」
「ん? いきなりどうしたんだい、蘭子」
「
「……?」
「なるほど……貴女の出自はここだったんだね」
「私たちが生まれる前からこの家にいたもんね、この子」
「そう考えると、私よりもお姉ちゃんね」
「まさかの三姉妹設定になっちゃった」
※2025/2/13追記
PC破損により2025/2/14は休載となります。