ということで皆さんお久しぶりです。今回から新シリーズです。
ガチで作者の趣味と妄想のみで構成されたお話になります。付いて来れる人だけ付いてきてください。
テーマパークへ行きましょう
「『マジックリゾート』?」
「はい」
それは、俺と楓のオフが二日間重なる日に合わせて「折角だから何処かに旅行でも行こうか」という話になったときのことであった。
楓から提案された旅行先は、国内最大規模を誇るテーマパークの名前だった。
「旭君は行ったことある?」
「学生の頃に何回かあるけど……旅行に行こうって話じゃなかったか?」
都内ではないがほとんど都内と呼んで差し支えの無い位置にあるので、十分日帰りが出来る距離だった。
「だからそこを敢えてホテルに泊まって旅行気分を味わうの」
なんでも346プロのアイドル部門に熱烈な『マジックリゾート』オタクとして有名なプロデューサーがいるらしく、その人から熱心な布教活動を受けたらしい。
「名前にリゾートって付くぐらいだから、一日二日じゃ遊びきれないぐらい色々なものがあるんだって」
「ふむ……」
そこまで言われると俺もちょっと興味が湧いてきた。
「ちょっと調べてみるか」
「それなんだけど……」
「ん?」
さっそくスマホを使って『マジックリゾート』のことを調べようとするが、隣に座る楓から手を添えられてやんわりと遮られた。
「そのプロデューサーさんが『もしマジックリゾートのことを知りたかったら是非私に全力のプレゼンをさせてください』と言われていて……」
「どれだけ布教活動に熱心なんだよ……」
「『リモート会議で資料をお見せしながら詳しく説明します』とも……」
「その熱意を自分の担当アイドルに向けるべきでは……?」
寧ろプロデューサーであるからこそ、人に何かを布教するのが得意……なのか?
こうして俺と楓は『マジックリゾート』オタクのプロデューサーから熱心な布教活動と分かりやすい解説を受けたことで『マジックリゾート一泊二日』の小旅行に赴くことになったわけである。
なんというか、今更ながらなかなか愉快なきっかけだったと思う。
7:00 海舞駅
「「おぉ……」」
最寄り駅である海舞駅の改札を出ると、そこはまるで既に『マジックリゾート』の敷地内のようであった。俺たちと同じようにデートと思われる男女の組み合わせや、キャリーケースを引いておそらく遠出してきたと思われる家族連れなど、多くの人たちで混みあっていた。
そんな状況に思わず楓と共に感嘆の声を漏らしつつ、自分たちの変装がしっかりとされているかをお互いに確認しあう。
「……うん、可愛らしい顔立ちの美人さんの雰囲気は滲み出ているけど、しっかりと変装出来ているな」
「……はい、優しくてカッコいい素敵な方だということは隠しきれてないけど、ちゃんと変装出来てます」
今日も変わらずお互いがお互いのことを大好きである。
「さてと……今日はまず『フロンティア』の方だったな?」
とりあえず駅前の邪魔にならないところで自撮りのツーショットを撮影してから本日の予定を確認。
『マジックリゾート』には『マジックランド』と『マジックフロンティア』の二つのテーマパークが存在する。それぞれ『夢と魔法』『冒険とイマジネーション』というテーマに基づいたパークになっている。
「はい。さらにそのまま『フロンティア』の敷地内の『ホテル・シャングリラ』に宿泊ね。凄いわよね、遊園地の中にホテルがあるんだから」
しかもそのホテルっていうのがなかなか本格的な造りの高級ホテルで、今日宿泊するのはその中でもパーク内に面したテラスルーム。普通ならば予約をするだけでも一苦労するような人気の部屋なのだが……。
「お仕事での繋がりっていうのは、こういうときに有効活用するべきよね」
「お仕事様様だな」
『高垣楓』と『神谷旭』というそれなりにビッグネームなカップルの名前を駆使したところ、以前新婚旅行のPRの仕事で二人揃ってお世話になった旅行代理店のお偉いさんの力を借りることで、今回の人気の部屋への宿泊が可能となった。
「閑散期の平日だからとはいえ、かなり無茶なお願いを聞いてもらっちゃったな」
「無償でというわけにはいかなかったけどね」
当然宿泊費は全額支払うが、それに加えて『神谷夫妻も宿泊』という名目でコラムの作成を依頼されてしまった。事務所を通しての正式な仕事にはなってしまったが、楓と共に全力で努めさせていただこう。
さて話が少し逸れてしまったが、本日の目的地は『マジックフロンティア』。開演時間は九時なのでまだ大分余裕がある……というのは素人の考え方らしい。
「まさか『本当だったら二時間前から並びたい』なんて言われるとは思わなかったな」
「本物のマニアっていうのは凄いのねぇ」
どうやら『フロンティア』も『ランド』もかなりの人気を誇るため、二時間前から入場ゲートの前から並ぶのは
ただ、最近ではそこまで極端に早く並び始めなくてもちゃんと遊べるように様々なサービスが増えているらしい。
「まさか専用のアプリをダウンロードすることになるとは思わなかったわね」
「これでアトラクションの待ち時間も調べられるんだから、随分と便利になったもんだよなぁ」
俺が学生の頃は、園内にある掲示板のようなもので現在のアトラクションの待ち時間を確認していた記憶がある。
また話が逸れてしまったが、そろそろ海舞駅から『フロンティア』へと向かうとしよう。パーク内を一周するモノレール『マジックリゾートライン』へ乗るために、海舞駅から歩いて三分の『リゾートエントランス・ステーション』へと向かう。
7:10 リゾートエントランス・ステーション
「……あ、旭君、見て見て」
「ん?」
駅の改札をスマホに登録してある交通系ICで通ろうとすると、楓に袖を引っ張られた。
「期間限定デザインのフリー切符だって」
どうやら『マジックリゾート』の30周年を記念した特別なでデザインのフリー切符が販売しているらしい。
「そういえばプロデューサーも『モノレールのフリー切符は記念品にもコレクションアイテムにもなる』って言ってたっけ」
「日付も入るみたいだし、これも今日の旅行の記念になるんじゃないかしら」
「……折角だし買うか」
というわけで大人二枚二日間のフリー切符を購入する。冷静に計算してみると一回乗車するごとに支払った方が安くすむのだが、楓の言ったようにこれもきっと記念品になるのだろう。
購入したフリー切符を使って改札を通りホームに上がると、丁度車両がホームに入って来たところだったので早速乗車。目的地の『マジックフロンティア・ステーション』は三駅先である。
「反対回りのモノレールがあったら一駅先だったんだけどね」
一周約十五分ということなので、あっという間に次の駅である『マジックランド・ステーション』に到着。ここは『ランド』の最寄り駅であると同時に、その正面に建つ『マジックランドホテル』の最寄り駅でもある。
「こっちのホテルも大きいなぁ」
「ここから先も沢山ホテルが建っているエリアらしいから、本当にリゾート地みたいね」
更にモノレールは進み、続いてマジックリゾート敷地内のホテルへのアクセスに便利な『リゾートベッドサイド・ステーション』に到着。この駅の近くには多くのホテルが建っているのだが……その中でもひと際気を引くのが、絶賛建築中のホテルであった。
「さっきの『マジックランドホテル』よりデカいな……」
プロデューサー曰く、現在『フロンティア』内に新しいエリアを作成中であり、この建築中のホテルも『ホテル・シャングリラ』と同様に園内に作られているらしい。
「『マジックリゾートは永遠に完成することはない』んだっけ?」
「プロデューサーさんだけじゃなくて、色々な人が夢中になるのが少しだけ分かってきわね」
現状に甘んじることなく日々人々を楽しませる努力を重ねているという点では、俺たち俳優や楓たちアイドルと通じるところがあるかもしれない。
「だからリゾート内のスタッフさんは『キャスト』、私たち入場客を『ゲスト』って呼ぶんだってね」
「
こうした豆知識というか小話を聞くのが楽しかったため、プロデューサーの熱心な布教活動は聞いていてなかなか悪くなかった。小ネタというと少々安っぽくなってしまうので、詳細まで作り込まれているというべきか。
さて次が目的の『マジックフロンティア・ステーション』になる。二つのパークをグルっと囲むように走る『マジックリゾートライン』での本日の移動はコレで終わり。下車の準備を……。
『ご乗車の皆様、進行方向左手をご覧ください』
「ん?」
『皆様にお楽しみいただけるよう、キャストたちによるカラーコーンアートをご覧になることが出来ます』
「へぇ?」
突然の車内アナウンスに従ってそちらから車外を見てみる。そこは『マジックフロンティア』に隣接する駐車場であり、その一角にカラーコーンが並べられて『マジックリゾート』のマスコットキャラクターである『マジックドッグ』の横顔が描かれていた。
「面白いな、こういうこともするのか」
「些細なことでも、思わず笑顔になっちゃいますね」
スマホで撮影。果たして今日は何枚写真を撮ることになるのだろうか。
「……なんだか凄くワクワクしてきた」
「俺も。まさかこの歳になって遊園地へ行く前にこんな気持ちになるとは思わなかった」
「遊園地ではあるけれど、今日は『二人っきりの旅行』でもあるんだから……ね?」
「……そうだな」
普段はあまり人前ですることがない恋人繋ぎをする。
『まもなく『マジックフロンティア・ステーション』へと到着します。お出口は左側です』
今日から二日間、楓との旅行が始まる。
「……あっ」
「お姉ちゃん、今度は何を見つけたの?」
「お父さんとお母さんが結婚した直後に30周年の『マジックリゾート』に一泊二日で旅行したときのスクラップブックみたい」
「ちょっと待ってコーラとポテチとお箸持ってくるね」
「ガッツリ楽しむ気満々だけど油で汚さないように気を遣ってる……」