prelude of before is great war.
/1.テオルバス・レムドール
高い塔。街の外観を一望できるそこは、
「あぁ、めんどくせぇなぁ。もっと長い時間をかけて準備すべきなんだよ」
青年は嘆いている。“ついにこの日が来てしまったのだ”と。後輩の代行者を現地に出向かせてはいるが、その後輩から連絡が来てしまったのだ。“時は近いです。至急、彼の地まで急がれたし”と。
「シエルのやつ、ちゃんと調査してるのか。あぁ、仕事したくねぇなぁ」
青年が退屈混じりに欠伸していた頃、青年のさぼり場に1人の老司祭が訪れた。
「やはりココでしたか。探しましたよ、“剣”の」
現れた老人は青年の同僚。年配であり、仕事柄仕方なく先輩と呼ぶが、少年と彼は同僚だ。生きた年月など、彼らのそれはさほどの大差がないのだから。
「どうかした?“王冠”の」
「局長から命令が下りましてね。現地に出向いている“弓”に引き続き、我々も現地へと向かえ、との事です」
「聞いた。つーか、そのシエルから連絡が来た」
ほう、と顎下に手を配らせる老人。青年はこの老人の
「ナルバレックのやつ、今回来るの?アイツ来るならほとんど殲滅戦みたいなものじゃないか」
「そうですねえ。因みに局長には仕事をたっぷり任せてあります故、当分は出向いて来られないかと」
手際の早さだけはお墨付きだな、このクソガキ。
「そんで、こっからが俺の本題なんだけど。アンタ、一体
青年の一言に、老司祭は眉をぴくりと動かす。
「―――はて、どちらも何も私は
「基本勢力の3つじゃねえよ。俺が聞きたいのは第4、第5の勢力。―――詰まるところ、お前さんの信奉する“姫君”が現れた場合、お前すぐ裏切るだろ?」
青年の言葉に、唖然として黙り込む老人。歯切れが悪くなり、老人は顔を上げない。青年は彼を試した。それを察し、老人の唇はいやらしく釣り上がる。老人―――いや、少年は愛しの姫君について語り出した。
「なんだ、知ってたんだ。―――そうだよ。彼女が来るなら、僕はアチラに付く。てか、僕のこと誰から聞いたの?シエル?―――アイツ、口軽いなぁ。食べてしまおうか」
クスクスと笑い、だが確かに半分殺気を孕ませて、少年はそれを口にした。
「残念。俺にこのネタを喋ったのはナルバレックだよ」
青年の口にした人名に、少年はゲッと呟き苦い表情を浮かべた。
「で、実際の所どうなのよ」
「んー、そうだねえ。まぁ彼女が現れ、教会が敵に回るなら僕は彼女の方に行くよ。でもさ、君も同じクチだろうテオルバス。君のアイドル、彼の“麗しの鬼子”だってあの地に訪れるだろうし。そうなったら、君だってアチラ側に付くだろう?」
―――青年は悩んでいる。少年の問に、すぐさま応えられないのはそのためだ。事実、青年の中ではまだ答えを出し切っていなかった。青年の記憶の内に存在する、一人の少女。彼女に恋し、彼女を好いていた。
だから、これだけはハッキリと言える。
「いや、まだわからないよ。彼女が来たとして、すぐにココを裏切るわけじゃない。彼女が俺を求めるなら、彼女の味方になるだけさね」
青年の晴れ晴れとした表情に、少年の笑みをこぼす。
「ふーん、そうか。なら、僕達は反目し合う必要は無いって事だね。お互いの頭は目的を合致してる。だとすると、争う要因がないからね」
「さぁ、どうだか。根本的に性根が合わないかもだ。もし敵対するなら、俺はアンタでも容赦なく殺すぜ」
「だろうね。君はシエルみたいに甘くないから」
クスクスと無邪気にほくそ笑む少年を他所に、世界の変革が刻一刻と迫る。
彼の大儀式は、もうその直前にまで迫っていた―――。
/2.フラウ=ジューデン&ストーカー
唖然の一言に尽きた。これまで幾度となく強力な人外を屠ってきた彼ではあったが、ここまで圧倒的な闘争は初めてだった。何せ、相手は現象そのもの。殺人貴と呼ばれるドラクルキラーは、その“現象”という巨大な概念の前に無力であった。無理もない。彼の行動のすべては、隔てなく現象の一端。ならば、それを司る彼女には手も足もでない。これが道理であった。
「
「いやいや、助かった。実力はウワサ以上だ、“サツジンキ”。間違いなく、僕一人だと死んでいたね」
いや、事実そうだった。殺人貴は、ストーカーと呼ばれる吸血鬼の首を切り落とす寸前にまで至っていた。―――だが、それは一つの“現象”の前に立ち塞がれた。彼は転びようのないタイミングで地面に転がり、
いや、正確には
―――だが、殺人貴は悟っていた。実力は自分の方が上。戦闘に入れば勝利は必然。しかし、
「貴方が敵意を抱く必要はありません殺人貴。我々は敵ではない。話し合いに来たのです」
話し合い―――?そんなもの信用出来ない。信用するにあたいする、確固たる証拠がない。―――だから、
「ですから、どうか
だからアイツには会わせられない。信用出来ない以上、アイツを危険な目に遭わせられない。
「我々は、ゼルレッチ卿の提案でここに来ました。彼の名前を出せば、会わせて頂けると―――」
/3.program No.Ⅵ―――・・・
昔昔。とある青年が、人類を救わんとしこれに挑んだ。結果は分かりきった事。だってまだ人類は救われてないのだもの。死という終わりを、人類は未だ克服できていない。挑んだ末に得たものが、あんな狂気概念だなんて、笑い話にもならない。そもそも、
―――世界の終わり。第六の奇跡は、世界の終わりを以て世界の始まりを告げる。
祖は真なる闇を孕み、同時に光を齎す究極の絶対法則。祖は、真なる世界の秩序なるや、その顕現なりて、五つの秩序の名の下に、第六の王権は鐘を鳴らす。
―――ここに、