女王蟻と放出系と女王蜂   作:ちゅーに菌

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どうもちゅーに菌or病魔です。遅れてすみません。次はなるべく早めに投稿出来ると思います。

話を本編に戻しますと現在のモーくんのオーラ総量はブリオンさんとのパワーレベリングでちょっと成長して80万程です。参考までにモントゥトゥユピーが、ハコワレの能力で飛ぶまでが計算だと70万~90万程です。

後、旧作キャラが出ますが、これ以降2度と本人は出ないので許してください。




そうだメイドをふやそう その3

 

 

 

 武人の誉れとはなんだろうか?

 

 ここ天空闘技場で己に恥じぬ勝利を求めた者ならば誰もが考えることであろう。

 

 フロアマスターとなり、自身の武術を確立して富と名声を手を手にするため。直向きに己の限界を追い求めるため。他の流派を見極め、己の糧とするため。

 

 様々な思惑はあるが、最後に行き着くのはやはり――"己より強き者に挑めること"に集約するであろう。

 

 武人とは上が見えてしまうと、"頂点"に立ってしまうその日まで、どこまでもそれを追い求めてしまう。いや、頂きに立って尚、未だ上を見てしまう。そんな愚直な存在なのである。

 

 

 そして、現在の天空闘技場には、ある種の"頂点"があった。

 

 

 それは"モーガス・ラウラン"という名のまだ年若い青年である。

 

 彼は対戦相手の度重なる対戦後や対戦中の事故のような不審死から死神の通称で呼ばれ、最速で200階クラスまで登り詰めた闘士だということで一般には知られている。

 

 しかし、念を覚えた武人ならばその評価はまた違ったものになっていた。

 

 まず、同じ人間か疑う程のまるで底の知れない莫大な量のオーラ。氷河のように冷たく、また同時にマグマのように熱い感覚を覚えるおぞましいそのオーラは並の人間ならばマトモに浴びせただけで絶命させ、心の弱い念能力者ならば触れただけで心を壊してしまうと思わせる程だ。

 

 更に人として持ってはいけないと思わせる程に卓越した人体破壊技術。いったい、その歳でどんな生き方をしてきたら人体を鮮やかなまでに簡単に捌けてしまうというのか。彼に指1本でも肌に触れられようモノならば呆気なく命を散らされてしまうだろう。

 

 そして、伝承に残る仙人のような肉体操作技術。才能という言葉がこれほど恐ろしくも思えることはないであろう。伝承で数百年を生きる仙人すらあそこまで細かく、肉体を操ることは出来まい。

 

 最後に、闘うことに微塵も恐怖を感じていないその強靭ながら破綻した精神である。

 

 彼はまさに奇跡の産物であり、武人にとってあまりにも磨かれ過ぎた呪われたダイヤモンドのような妖しい輝きを放つ存在であったのだ。

 

 そんな彼の部屋の扉にはいつでもこう書かれた貼り紙が貼られている。

 

 

 

"誰でも受けて立つゾミ☆"

 

 

 

 それは負けるとわかっていても、殺されると本能で感じていても、それを振り払ってしまえるだけの抗いがたい魔力を放っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天空闘技場の200階クラスの闘技場。

 

 そこで現在、二人の男性が対峙していた。

 

 片方はドラドという名の槍使いだ。両耳にリングピアスをしたスキンヘッドの体格のいい男であり、全身に刺青が入っている。

 

 柄の両端に矛の付いた槍を構えており、容姿からは離れた武人らしい落ち着きを見せ、対戦相手の挙動を静観していた。

 

 そして、もう片方は杖を持っただけの様子のモーガス・ラウランである。

 

「お誘いどうも、ドラドさん」

 

 モーガスは既に試合が始まっているというにも関わらず、飄々とした様子でドラドに対して心底嬉しそうに笑みを浮かべながらそう呟いた。

 

 しかし、彼を覆うオーラは恐ろしく重厚でありながら風のない水面のように静まり返り、動きを見せないため、ひと欠片も気を抜いていないことは明白である。

 

 そして、クルクルと杖を回し、片手にメイドの人形のような小さな念獣を出現させ、肩に乗せると片手で落ちないように押さえていた。

 

「さ……貴方はどんな念能力だ? まあ、戦闘に特化していればなんだっていいがな」

『あそぼー?』

 

 それが皮切りとなりドラドは明らかにリーチ外のモーガスへと槍を叩き付けるように振るった。

 

 変化系と具現化系からなるドラドの念能力は、槍に不可視の風の刃を形成し、それで振るった先を薙ぐ、或いは突く念能力である。

 

「ほー」

 

 するりと横に跳んで槍を避けたモーガスは、自分が元いた場所が地面ごと直線かつ明らかに槍よりも広範囲に抉れ、風が吹き荒れた様を見てそんな声を上げる。

 

「なにそれカッケェ……」

『ぽえー』

 

 そして、子供のように目を輝かせながら目を見開いていた。メイドの念獣の間の抜けた声も響く。

 

 ドラドはそんなモーガスに文字通り横槍を入れて突き、風の刃は暴風と共に未だ感心した様子のモーガスを穿つ。

 

「――!?」

 

 しかし、驚いたのはドラドの方であった。

 

 モーガスが片手で押さえているメイドの念獣を風の刃へと向けると、風の刃は大きく開いた小さなメイドの口に吸い込まれるように吸収されて消えてしまったのである。

 

 念を無効化というより、吸収するタイプの念能力に見え、ドラドの手は止まった。

 

『けぷっ』

「じゃあ、こちらも行こうか」

 

 モーガスがそういうとメイドの念獣を押さえていない方の手に莫大なオーラが収束するのが見え、瞬時にオーラは形を取り、モーガスの目の前に"ソレ"は居た。

 

 

『………………』

 

 

 それは"緑色のショートヘアをした瞳の赤いメイド"であった。肩にいるメイドの念獣との最大の違いは、やや背の高い女性の念獣であるということだろう。

 

 一瞬で形成されたにも関わらず、緑髪のメイドを形造る莫大なオーラと、とんでもなく細部まで拘られた美しい造形は一目でただの念獣ではないことが理解出来よう。

 

 更に緑髪のメイドの手にドラドの物と全く同じデザインの槍が突如として出現し、ドラドと全く同じ構えで槍を向けて待機する。

 

「さ……少し俺のメイドと楽しんでいってくれ」

 

 モーガスはピクリとも表情を変えない緑髪のメイドを前に出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………誰あれ?」

 

 観客席にいるコウモリのキメラアント――マコはそう呟きながら首を捻る。

 

 彼女の目線の先にはドラドの攻撃にほとんど反撃をせず、いなすか受け流している緑髪のメイドの姿があった。

 

 緑髪のメイドはドラドが攻撃を繰り出す度、戦闘中に急激に学習しているかの如く、槍捌きの技量が上がっているのが見て取れた。

 

 既に緑髪のメイドはドラドより遥かに完成したドラドの槍技で相手にしており、どう見てもこれからドラドが勝てるビジョンは浮かばない。

 

「モーガスの次にマコがよく接しているだろ? アイツだよ」

 

 そんな様子に隣にいるモーガスの恋人であるカエデが口を開いた。

 

「え……? あんな奴知らな――」

 

 そこまで言ったところでマコの言葉が止まり、目を見開く。そして、口を尖らせながらカエデの方を向く。

 

「まさか……あれ"ブリオン"なの……?」

 

「正解だよ、マコちゃん!」

 

 モーガスのもうひとりの恋人であるにゅうがカエデの代わりに笑顔でそう返した。

 

 その直後、笑顔から急激に仏頂面へと変わり、カエデは口を開く。

 

「なんでもモーガスが言うには、ただ対象の念能力ごとのコピーにそのままメイド服を着せた人間の念獣を作るだけならもっと軽い制約で済んだらしい。特に10分もリトルメイドに戦闘を見せる必要もないんだとか」

 

「は……? ならなんで飼主のリトルメイドの制約はあんなに重いのよ?」

 

「それはだな……そのままだと男性や老人に使用した場合に野郎メイドやお婆さんメイドを作ってしまうことになるそうだ」

 

「それは……ちょっと嫌ね……」

 

 マコは対戦相手のドラドという男の服装をそのままメイド服にした姿を想像して少し引いた。

 

「だからモーガスはそれだけのためにリトルメイドに10分という時間を観察に使わせ、相手の肉体そのものを食べさせたりしているんだ。少しずつリトルメイドに分けてオーラを食べさせるのも形成を一気にしないためのものらしい」

 

 丁度、ブリオンのメイドの槍の矛先がほんの少しだけドラドの肩を掠め、極少量の皮膚組織が槍に付着する。

 

 ブリオンのメイドは一旦モーガスのところに戻り、矛先に付着したドラドの皮膚を小さなメイドの念獣に食べさせると再びドラドと対峙した。

 

「形成……?」

 

 マコはここまで来ると流石に嫌な予感がしたが、それでもモーガスは自分の飼主であるためにカエデの言葉を待った。

 

「要はアイツ……男女問わず――」

 

 カエデは言葉を区切り、大きな溜め息を吐いてから更に言葉を紡いだ。

 

「対象を0から美人メイド化したものをわざわざ戦闘中に手作業で組み上げているんだ……」

 

「だからオーダーメイドなのね……」

 

 マコは本当にバカじゃないのかという言葉を飲み込み、せめてそう答えた。表情に影が差しているカエデをこれ以上責めることもないだろうという気づかいである。

 

「で、でも……そのおかげで私がこうしているんですよ……?」

 

「にゅう……私はメイドに関しては一度もモーガスを責めてはいない。それにその結果、あの念能力は紛れもなく、世界最強クラスの念能力だ」

 

 闘技場では突如、ブリオンのメイドが消え、代わりに全身に刺青が入り、赤茶色の癖毛をし、石突きにも矛の付いた槍を持つメイドがモーガスの前に立っていた。

 

 また、その容姿はドラドの娘と言われても誰もが信じる程似ており、また目が覚める程の美女でもある。

 

「モーガスは100の念能力を扱える念獣を従えたようなものだ」

 

 カエデはさっきとは違い、どこか誇らしげな様子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……こっちのしたいことは終わった」

 

 モーガスは完成したドラドのメイドを隣に立たせながらそう呟く。

 

 現在、点数上は0対0のポイントから全く得点に変化は無いが、モーガスによる独壇場なのは誰の目でも明らかだろう。相手の点数すら操作出来るほど彼の実力はドラドに比べて遥か高みにいるのだ。

 

「でも、あなたはもう限界そうだ」

 

 そう言いながらモーガスはドラドを眺める。

 

 ドラドはブリオンのメイドとの交戦で既にオーラから精神力に至るまで消耗しており、そう長く戦える状態ではなかった。

 

「じゃあ――」

 

 その言葉の後、ドラドのメイドは煙のように消え、残りのオーラがモーガスに還る。

 

 そして、彼は杖を垂直に引き抜き、中に仕込まれた反りの少ない刀のような刃が露になった。

 

「次の一撃で決着にしようか」

 

 モーガスは仕込み杖の鞘を投げ捨て、刀身に薄くオーラを纏わせる。

 

 その様子にドラドは驚いたが、次には堪らないといった様子で笑った。そして、矛先をモーガスへと構え、纏のオーラすら削ると、残り全てのオーラを腕と槍の矛先に集めた。

 

 そして、数秒の後――先に動いた者はドラドだった。

 

 ドラドは己の念能力に全てを掛け、一歩で眼前に迫り、既に仕込み杖を上段に構えているモーガスの胸に目掛けて槍を放つ。

 

 これまでで最も激しい暴風が吹き荒れ、モーガスの背に風が流れて行く。

 

 そして、その光景を見たドラドは観念したように表情を緩め、そっと肩の力を抜いた。

 

「いいねぇ……」

 

 モーガスはドラドの槍と念能力を一切避けず、あろうことか防御もせずに胸部で受け止めていたのである。

 

 槍は丁度、モーガスの心臓がある位置に突き刺さりながら数cm刺さる程度であり、肉体操作とオーラ操作によって止められていたのだ。

 

「じゃあ……こっちの番だ」

 

 モーガスの仕込み杖は鮮やかなまでの弧を描きながらドラドを斬った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、モーガス」

 

 試合を組んでくれたドラドさんとの試合後に鼻歌混じりで部屋へと戻ろうとすると、控え室を出たところでカエデに呼び止められた。隣にはマコもいる。

 

「やっぱり"今日も"殺さなかったんだな」

「どうしちゃったのよ急に」

 

 カエデはなんとなくわかった様子で、マコは不思議な様子でそう言ってきた。

 

 俺は200階クラスに行ってからというもの天空闘技場では誰も人を殺していない。今の対戦相手のドラドさんも血が出にくいように注意しながら、後で治りやすい繊維方向に斬ったのである。すぐに縫合すれば後遺症も何もなく完治するだろう。

 

「ほら、マコ。天空闘技場の200階クラスの試合ってTV中継されるじゃん?」

 

 天空闘技場の200階クラスのフロアマスター戦以外の試合はTVでやっていたりするらしいのである。まあ、プロレスの延長線でとても視聴率を稼げ、広告にもなるのでそれ自体はとてもいいことだろう。

 

 加えて言えば天空闘技場に俺がいることは家の者は皆知っている。

 

 だからほら――。

 

「俺が人を殺してる姿を、食事中にゴンとミトさんがTVで見てたら可哀想だろう? ミトさんなんかすぐに電話を飛ばして来そうだ」

「ふっ、そうだな」

 

 カエデは小さく笑って俺に同意してくれた。いいお嫁さんである。

 

「……………………それだけ?」

「――? それだけだけど?」

 

 何故かマコがスゴいモノを見るような目で俺とカエデを見ていた。

 

 はて、逆に他に何があるんだろうか? 別に殺すのを惜しいと感じるような相手でも無かったしなぁ。

 

「はぁ……あんたらのズレた価値観には驚かされる一方よ」

「私もちょっとどうかと思います……」

「マジで……?」

 

 マコだけでなく、にゅうにまでそう言われてしまった。俺とカエデは顔を見合わせる。

 

 どうやらまた、無意識のうちに流星街の価値観に染まっていたらしい。いかんな、くじら島ではあんまり無かったが、天空闘技場ではちょっと人を殺り過ぎて感覚が昔に戻っているかも知れない。

 

 それから四人で話をしつつ部屋へと帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天空闘技場でモーガスとドラドの試合があった観客席。

 

 試合が終わり、帰り始めた観客の中でひとり佇む青年がそこにいた。

 

「はぁ……ククッ♦」

 

 それは奇術師のような装いをした赤髪の青年だった。また、熱を持った溜め息を吐きながら、何かに魅了されたかのように恍惚の表情を浮かべている。

 

 そして、自身の身体の震えを抑えるように座ったまま踞まった後、ゆっくりと顔を上げて目を見開いた。

 

「素晴らしい……♥」

 

 そこから漏れた言葉は惜しみ無い称賛。しかし、その視線には熱の他に明確な殺意が宿っており、ネバついたような感覚を覚えるものである。

 

 青年は口の端を歪め、これ以上無いほどの笑みを浮かべながらポツリと呟く。

 

 

 

「彼に決めた♠」

 

 

 

 青年の視線はここではないどこか遠くを眺め、誰かに想いを馳せるようであった。

 

 

 

 

 

 

 

 









やめて! ギャグみたいな念能力(オーダーメイド)で、バンジーガムを打ち破られたら、ヒソカで作ったメイドが誕生しちゃう!

お願い、死なないでヒソカ! あんたが今ここで倒れたら、ゴンさんや団長との約束はどうなっちゃうの?(未来系) ドッキリテクスチャーはまだ残ってる。ここを耐えれば、モーガスに勝てるんだから!

次回、「ヒソカ死す」。デュエルスタンバイ!

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