ちなみにこの作品のブリオンさんは天空○城ラピュタの□ボット兵のようなものです。
ブリオンさんの設定? 100%捏造ですよ。合っているのは人間より強いことぐらいです。
1992年6月29日
今日もブリオンさんに負けた。相変わらず意味わからんぐらい強い。まあ、もう慣れてきたのか今は何とも思わなくなってきたのが非常に悲しい。
それよりも朗報は蛇の卵が、無事に孵った事である。ハクアによると雌。沼地を縄張りにしているらしいので、"
具現化した掃除機にデメちゃんと名前を付けているだけでなく、家電製品に名前付けたがる独創的な感性を持つシズクもヌマちゃんという名前はお気に召していた。
蛇の赤ちゃんは身体が細くて頭が小さいのに目がクリクリしていて非常に可愛らしい。ハクアに聞いたところヘルベルという種類の蛇で、尻尾が二股に別れていることが特長だろうか。まあ、フタクビオオカミとかがいるわけで尻尾が2本あるぐらいで驚くような事でもないか。
途中まで撫でさせてくれていた沼御前が、突然指に咬み付いて来たが、生憎産まれたての君の硬で強化された牙が指に届くまでの時間は俺に言わせれば欠伸が出るほど遅い。日常生活でミトさんやゴンを何かの拍子に殺してしまわぬように10分の1以下に抑えている纒を咬まれるより先に元に戻せば何ら問題はないのだ。沼御前が俺のオーラを見てぷるぷる震えていたような気もするが、気のせいだろう。
ハクアが言うには水を切らさず、日に2回ぐらいオーラ喰わしときゃ育つらしい。またオーラか、吸われるなぁ…。
沼御前を可愛がる俺を見たマコが拗ねた。マコの中ではまだ俺のペットという立ち位置だったらしい。つーんと顔を背けて部屋の隅に蹲ったままである、かわいい。
◆◇◆◇◆◇
密室遊魚の発覚からはや約1ヶ月、俺は日課になっているブリオンさんとの模擬戦をする為に山頂を目指している。まあ、今のところ全て黒星だけどな。
ちなみにブリオンさんと戦うと、軽く死にかけるようなダメージを受けて意識を刈り取られるのだが、気が付くと無傷のまま山の麓で目を覚ますので安心である。
ハクアによるとブリオンさんは、人間の歴史と比較すると太古の昔に既に滅んだ国の兵器であるそうだ。自らの都市と、そこに住まう全ての命を預かる立場にある都市防衛型。主に報復に用いられ、幾らでも使い捨てが効く都市攻撃型。都市攻撃型はかなり分化するそうだが、大きく分けるとその二種類が存在する植物兵器らしい。
防衛型と攻撃型の大きな違いはコストパフォーマンスだそうだ。用途的に二種類のブリオンさんを比べるまでもないとは思うが、防衛型は攻撃型1体の数千、数万倍のコストを掛けて造り出されていたとの事である。その為に都市防衛型のブリオンさんは都市深層の最重要施設にのみに配置されており、ちょっとブリオンさん達のいる廃都市を探索したぐらいならばまず御目に掛かる事はない個体なのだとか。
そして、ハクアが持ってきたブリオンさんは、それはそれは廃都市の大切な場所に配置されていた防衛型ブリオンさんで、◯ピュタで例えると、天空の城を飛ばしている巨大飛行◯のある部屋ぐらい重要な場所に配置されていたブリオンさんだそうだ。説明だけで欠片も勝てる気が一切沸いて来ねーのがスゲーな、オイ。
そんな事を考えていると山頂に辿り着く。そこにいたのは山頂の平たい巨岩の先に、片膝を立てて腰掛けながら水平線をじっと眺めているブリオンさん。
今日はレクターさんから貰った秘密兵器を家から持ってきたので只ではやられんぞ。それは神字が隙間無く刻まれた布で包まれ、人の下肢より少し長い程度の棒状の物体だ。
布を解くと俺の手には金属製の杖が握られ、それから快楽と向上心、そして無限に殺したいという未だに衰える事の無い強い死者の念が伝わってくる。
ちなみに杖の持ち手には"1"を意味する号が刻まれている。
なんでもこれは200年か300年程前の"ベンニー=ドロン"という殺人鬼のナイフ作品らしい。殺す度に記念にナイフを1本づつ製作し、ナイフの番号から288人の人間を殺したそうだ。彼の残したナイフは後世にベンズナイフと呼ばれているらしい。また、この杖は最初期型の第一号作品であり、厳密には殺した記念に製作したモノではなく、殺しを始める為に製作したモノなのでベンズナイフではないが、ベンニー=ドロンは288人の殺人を全てこの杖で行い、289人目の人間に返り討ちに合って死んだ時も最期まで離さなかったとの事だ。
要は1700年代に自身の武器を隠すのに最も適した形状のナイフ……いや、小剣と言うことだ。武器種は隠すに良し、護身に良し、武器に良しの仕込み杖。杖の中に小剣が収納されている。
だが、俺にとっては流星街を出る時、体術や武器の扱いの師でもあったレクターさんが、弁当と一緒に小さな友人の門出にと、渡してくれた大切なモノである。
岩肌に杖の石突きを突き立てると火花が散り、金属音が山を反響した。
「こんにちわブリオンさん」
ブリオンさんは喋らない上に、コミュニケーションを取る事もしない為、声を掛けたからか、俺が来たからか、杖の音に反応したからかは不明だが、立ち上がって俺の方に振り向いた。
そこに居たのは奇妙な巨人だった。
身長3.3m、体重550kgという人間より遥かに大柄で強靭ながらも、理想的な人間像のような細めにしなやかに引き締まった身体。そして、種の頃から変わらない球体状の頭部が何よりも特長的だろう。もし、ビックフッドやギガントピテクスに実際に会ったのならこれ程の体格差があるだろうか。
見上げているだけで感じる圧倒的な威圧感。そして、ブリオンさんが身に纏う悪意も善意も感じられない無機質かつ絶望的なオーラが、俺とはひとつ別次の上の相手とさえ感じられる。
「イイねぇ……」
自然に俺の口から悦びに近い声色の声が漏れる。
ハクアは余りにも次元が離れ過ぎていて俺では実力を測ることは出来ない。カエデは大切な人であるから敵意を向ける事自体が違う。目の前の存在は俺にとって明確に"俺が測れるレベルの実力の相手"なのだ。
俺は普段から絞っているオーラを止め、平常時のオーラを纏う。ブリオンさんに比べれば足元にも及ばないオーラだが、手を焼かせるには十分過ぎるだろう。
目の前の相手が自分より遥かに強い事など今の俺には些細な事。相手が俺より速い事も考える必要はない。俺の方が全てに劣っている事など思う事すら無駄。
俺は仕込み杖の持ち手と杖軸を握り、ゆっくりと持ち手を引き上げる。すると殺人を効率的に済ませる為に、抜きやすさを重視した日本刀に似て極僅かに弧を描く形状をした剣身が全貌を現す。
剣身と鞘に周でオーラを纏わせると、俺のとは毛色の違う黒く自分本意なオーラが歓喜にも似た様子で滲み出る。
ベンニー=ドロンが念能力者だったのかどうかは謎であるが、少なくとも仕込み杖に今も変わらず、死者の念が込められている程度には、強靭で果てしなく独善的な遺志を残している。故に一般人では、仕込み杖を握った瞬間にオーラに当てられて取り憑かれてしまうが、ある程度の念能力者か性質の似た人間が持つと、殺すという行為そのものを強く強化し、所有者の攻撃性能を大幅に引き上げる。
俺は鞘を逆手に持ち、もう片方で仕込み杖を正眼に構えながら全身から溢れ出るオーラを無数の念弾に変え、自身の周囲に留める。
「殺らせていただきます」
数百発の念弾の豪雨を皮切りに、強大な懐へ飛び掛かった。
◆◇◆◇◆◇
最初に衝突した山頂から数十m下にある平地に近い場所まで、一時間程ブリオンさんと戦闘を続けているうちに移動していた。
ブリオンさんは平地の中央で直立不動のまま佇み、その周囲を俺が耐えず移動している。
ブリオンさんの周囲を回る脚を一切緩めず、仕込み杖の切っ先と、鞘の石突きを向け、マシンガンのような連射で念弾をグミ撃ちする。念弾は回転と合わさり、360度全てからブリオンさんに殺到した。
しかし、ブリオンさんは健在オーラを数倍に跳ね上げ、堅の防御力を激しく上げる事で全ての念弾を難なく受け止めている。傷すらつかねーな、前にカエデに俺の念弾の連射を見せたところ"フランクリンより威力と連射力あるな"という評価を頂いたのでそこそこ自信はあったのだが……フランクリンって誰か知らないけど。
鞘の先から放つ連射は止めず、仕込み杖の切っ先にボウリング球程の念弾を作り、ブリオンさんに放つ。しかし、それがブリオンさんに着弾する寸前にブリオンさんが拳を振るい、意図も容易く念弾を爆散させた。
その隙に乗じてブリオンさんへ仕込み杖を納刀させた状態で踏み込み、居合い抜きで斬り上げる。しかし、ブリオンさんは喉元に切っ先が届く直前に片手の母指を除いた4本で挟み込む事で止めていた。所謂、白刃取りだろう。
間髪入れずにブリオンさんの下腹部に片掌を叩きつける。最もそれだけではピクリとすら動く事はない。しかし、そんな事は百も承知。俺は閉じた掌の精孔を一気に開放してオーラを放出する。
爆音と共にブリオンさんの巨体が、斜め上に1m程浮き上がる。浮き手と呼ばれるオーラを用いた攻撃方法のひとつだ。流星街で試した時は、十数階建ての廃ビルを根元から数十mブッ飛ばせるぐらいの衝撃力はあったハズなのだが、有り得ないほど人間より遥かに高密度の筋組織に近い構造から来る強靭な身体と、俺と比べれば城壁のように堅牢で広大なオーラによってここまで威力が減衰しているのだろう。まあ、ハクアならピクリとすら動かないので体勢を崩せるだけマシだな。
ブリオンさんが地上に戻ってくるまでのコンマ数秒。俺は仕込み杖を納刀し、居合いの姿勢で構えると、体内の残り半分のオーラを全て仕込み杖に送り込む。
何かが来ると悟り、迎撃は既に間に合わないと踏んだのか。着地した瞬間にブリオンさんは俺の仕込み杖の間合いから1歩で数十m飛び退く。残念だが、その程度で避けられるのならばブリオンさんを飛ばす程のオーラを消費してまで攻撃の隙を作ろうとはしない。
俺はその場で仕込み杖を抜刀し、一閃した。
"抜刀ツバメ返し"
数十m離れた位置にいる筈のブリオンさんの右腕が肩先から飛んだ。それだけではなく、その強靭な胴体に斬撃が深く刻まれている。
次に切っ先を反転、 刀を返しながら更に一閃を放つ。
それにより、続けてブリオンさんの左腕が肩先から飛び、胴体にさっきとは真逆の場所に斬撃が刻み込まれ、バツ字の斬れ込みが刻まれる。
この事態は予測不能だったようで、ブリオンさんにコンマ数秒程の遅れが生じる。その隙を放って置く程甘くはない。
俺は仕込み杖を納刀すると、残り全てのオーラを再び仕込み杖に集め始める。
ブリオンさんは両腕がまだ宙を舞う最中にも、俺の行動に反応し、残った両脚にオーラを集中させ、爆発的な速度で俺に迫ると、俺を掬い上げるように蹴る体勢に入る。真っ直ぐに伸ばされた脚は大木のようであり、それが馬鹿げたオーラを纏う事で凄まじい切れ味と重量を誇る大剣へと昇華する。
無論、そんなものを喰らえば既にオーラ総量が40%を切っている俺ではひとたまりもない。だが、しかし俺は条件下ではブリオンさんよりも高速で立ち回れる。
ブリオンさんが脚にオーラを纏わせたタイミングで、口を開けて舌先から無数の念弾を放つ。無論、その程度でブリオンさんにダメージが入るわけは無いし、進行を止める事も出来ない。しかし、無数の念弾の中に紛れ込んでいた1発の若干色の違う念弾……移動弾が、既に俺の目と鼻の先にいるブリオンさんの斜め後ろの地面で弾ける。その瞬間、俺はその場所へと瞬間移動した。
それにより、ブリオンさんは一時的に対象を見失い、既に振り上げられた脚は俺のいた場所を通り抜ける。
そして、両脚にオーラを割いている為に、殆どオーラを纏っていないブリオンさんの上肢と下肢の中間に、俺の残り全てのオーラの集中した硬で強化された鞘に納められたままの仕込み杖が、棍棒のように叩き付けられる。
"ノッキング"
それは容易くブリオンさんのオーラを貫通し、強靭な筋繊維の千切れる音と、骨の砕ける音、そして軽くなる手応えが通り抜ける。
ブリオンさんは空中に浮いていた。いや、正確にはブリオンさんの上肢だけが空中に浮き、下肢はノッキングの衝撃で斜め下方向に吹き飛ばされている。
当然重量に従い、両腕と下肢の全てを失ったブリオンさんは地面に落ち、遅れて両腕が地面に落ちる音がどこかから聞こえる。断面はオーラで覆われているので、体液が流れ出る様子はない為にブリオンさんはまだ生きているが、戦闘復帰出来る様子ではない。
しかし、そこは植物兵器。飛んでいった腕は五指で這いずるようにブリオンさんの上肢の元へ向かい、下肢は自力で立ち上がり、上肢との接合部に向かっている。この様子を見るに接合に1分。完全再生と自己治癒に1分といったところか。ペンペン草以上の生命力である。
「………………勝っちまったな」
そう呟きながら、人間卒業試験に合格したかも知れないと妙な思考が頭を過る。
それは冗談として、攻略期間1ヶ月。Take31回での撃破である。勝率にするとおおよそ3.2%といったところか。圧倒的にブリオンさんが強いのがよく分かる。
兎に角、このブリオンさんは大きく分けて3つの能力を持つことが1ヶ月でわかった。
ひとつ目は"戦闘対象の念能力をコピーする能力"
まず、これを突破するのに数日掛かった。最初は俺の念能力の
ふたつ目は"攻撃パターンを完全に把握して学習する能力"
これによってブリオンさんに2度、3度同じ攻撃は効き難くなり、最期には完全に見切られる。見切られれば最早その攻撃は当たることはないと思って良いだろう。しかし、要は初見技だけで倒せばいいのである。
みっつ目に"攻略パターンを確立する能力"
そして、見切ったところから敵の致命的な隙や、最も苦手とする行動の僅かな隙を発見し、確実に避けられない攻撃を放ってくるのだ。
防衛型ブリオンさんの製作者は単純な最強とは何なのかと考えたのだろうな。その答えこそがコレだ。人よりも遥かに優れた身体を持ち、自分と全く同じ行動を取りつつ、先に自分の弱点を見付ける存在には、決して勝つことは出来ないという事だったのだろう。
これらの能力は防衛型ブリオンが持っているのか、全てのブリオンがそうなのかは不明であるが、恐らくは前者だろう。こんなものが何体もいて堪るか。攻撃用のブリオンさんは量産型らしいので、もう少しマイルドな奴だろう。
ただ、ブリオンさんの弱点……と言うよりも特性は余りにも行動原理が保守的なところだ。ブリオンさんからの攻撃は向こうを追い込まない限りは、ほぼ放って来ないと思っていい。恐らくは都市防衛ラインを全て突破され、孤立無援の最後の最期の1体での戦闘を想定して作製された個体の為、一対多用の行動が組み込まれているのだろう。多数の方は、数が勝るという優越感から攻撃に隙が生じやすい上、そこにいる念能力者達のほぼ全ての念能力がコピー出来る為、大群には無敵の性能を持つ。そのせいで、自身の力の真価を発揮し辛い、タイマンは余り得意ではない様子だ。まあ、そうだから修行の相手には最適とも言える。
これだけ対策を重ねた上での初勝利なのだから実際に勝てたといえるかどうかは怪しいところだろう。初見状態での勝率は限り無く0%と言っても過言ではない。
そんなブリオンさんから学んだ最大の事は念能力の秘匿だ。戦闘中にブリオンさんの目の前で念能力を発動すれば、その時のみは通用するが、数秒後にはブリオンさん自身が相手の念能力を使用してくる。そうなればオーラでも肉体でも負けている者にまず勝ち目はない。故に念能力は必殺技であり、無闇に使用する事はせず、使用した時には相手を殺すか、腕を落とすなど戦闘力を物理的にもぎ取るぐらいはしなければならない。手の内を明かすことは戦闘において何よりもの損失であるという事をブリオンさんは身体を張って証明してくれたのだ。
それとブリオンさんと戦う度に向上心からか、はたまた相手の明確なオーラ量が見えているからか、俺のオーラ総量もこれまでとは比べ物にならない速度で上昇している。まあ、この速度ではブリオンさんに並ぶ頃には、ブリオンさんと毎日戦ったとしても"軽く半世紀"は掛かりそうなので過度な期待はしていないがな。
ちなみに抜刀ツバメ返しもノッキングも念能力ではなく、ただのオーラ技術の剣技である。オーラ技術と放出系を極めてさえあれば誰でも使うことは可能だそうだ。無論、オーラ技術も技もハクアから学んだ。ただ、"アナタは閃きタイプが09番だからぁ、いっぱい私に素振りをしてればいつか何か閃くんじゃなぁい?"と謎な事を言っていたハクアの修行方法は、絶状態にも関わらず、1mmぐらいオーラで身体を覆っているだけにも関わらず、一切ダメージの通らないハクアを仕込み杖でペシペシするだけの怪しい方法であったが、身に付いたのなら修行方法は合っていたのだろう。
抜刀ツバメ返しは、居合の一閃から刀の切っ先を反転、 刀を返しながら更に一閃の2段攻撃を、敵に瞬間移動させて如何に距離が離れていようと直接斬り付ける技だ。硬で剣身を覆って、居合いをしなければならないので戦闘中に使うのは地味に大変である。距離は放出系の精度により伸び、俺がやると1100mぐらいの射程がある。
ノッキングは仕込み杖の小剣を抜かないままでも何か出来た方が良いと考え、ひたすら振るっていたら何故か出来るようになった技である。なんだが、わからないがとりあえず物凄く威力と、消費オーラの大きい打撃技であり、ハクアもちょっと痛いそうだ。ハクアのちょっと痛いは、打撃技にも関わらず、ノーガードのブリオンさんをブリ/ /オンさんにする威力だったらしい。
次第に思考がアホなところへ向かっているのを感じていると、身体の修復を終えたブリオンさんが、直立不動のまま俺を見下ろしていた。相変わらず、戦闘前と一切変わりの無い広大なオーラをしている。それに比べて俺のオーラは空。勝負には勝ったが、戦いには未だ遠く及ばないのは明白だ。
何を考えているかわからないブリオンさんに対して、俺は深呼吸をひとつしてから言葉を吐いた。
「ありがとうございました。また、明日もよろしくお願いします」
その言葉を聞いたブリオンさんは静かに全身の筋の硬直を緩め、堅を解除する。
そして、張り詰めていた空気が嘘のように穏やかなモノへと変わった。今のブリオンさんのオーラはそれまでが嘘のように、殺気も、感情の揺れのひとつも含まない草花のような流れをしている。
ブリオンさんは踵を返し、森の方へと歩いて消えていった。
それを見届けてから俺は地面に大の字に転がり、ただ空を眺める。今日の空は雲ひとつ無い快晴のようだ。
「イイねぇ……」
俺は暫く何も考える事もせずに空を眺め、マコが飯に呼びに来るまでの間、そうしていた。
◇◆◇◆◇◆
モーガスが五大災厄の1体と戦いを繰り広げていた頃。くじら島の某所に建てられた民家の二階の一室で、蒼い姿に琥珀色のトンボのような羽根を生やした女王と、眼鏡を掛けた黒髪の少女がいた。
「そーれぇそーれぇ」
「そりゃーそりゃー」
何故か彼女らは部屋の中のあらゆるモノをひっくり返している。しかし、彼女らのいる部屋は、眼鏡の少女の部屋ではなく、女王の方に関してはこの家の住人ですらない。
「彼の"お宝本"はどこかしらぁ?」
「見つけたら姉さんに通報だー」
彼女らは酷過ぎる捜索隊であった。ここの部屋主はモーガス・ラウランその人である。
ちなみにメガネの少女の方であるシズクの姉のカエデは、旅団の仕事に行っているので今は島にすら居ない。
「あらぁ?」
するとベッドの下からハクアが何かずっしりとした重みを感じるモノを見付けた。それを見れば神字の刻まれた御中元程の大きさの箱である。
「何かしらぁ?」
ハクアは当たり前のように神字で確りと封のされた箱を開封し、中に入っているモノを取り出す、そこに他人のプライバシー等という言葉は一切無い。姉の影響で盗賊気質になり始めているシズクもあんまりない。
「ジョイステーション?」
「と、手紙ねぇ。あの人宛のぉ」
手紙の日付は1987年。丁度モーガスがくじら島へ来た年のモノのようである。
ハクアはジョイステーションと付属の小さな箱を机の上に置くと、手紙の封を開け、中の手紙を広げた。
『ようモーガス』
『どうせお前の事だ。念を覚えたらこれを開けるとか以前に、これを渡された事すら忘れて戸棚の奥にでも仕舞いっぱなしにした上で、何年か過ぎてから大掃除の時にでも発見したんだろうな。とっくに念の応用どころか俺をぶん殴れるぐらい念を覚えてんだろ。だからぜってぇお前の前には顔出してやんねぇ』
『ソイツは
『あー、そうだ。お前の事だから言わなくてもわかっていると思うからやらねぇが、この手紙は処分しとけよ。念能力者の矜持があるならな』
『最後に。"ゲームを楽しめ"よ』
「ゲームぅ?」
この世に棲息する生物の中でも一位二位を争う程長生きをしているハクアにも念能力者用のゲーム等という単語は聞いたことが無かった。目の前の未知に目を輝かせながらハクアは、人類の価値をやや上方修正する。無論、
「シズクちゃんのお姉ちゃんも暫く帰ってきそうにないしぃ、一緒にこれやってみましょうよぉ」
「おー」
「うふふ、"ゲームを楽しめ"ばいいのねぇ」
そして、とあるゲームの現在の全プレイヤーにとっての災厄が降臨するのであった。
ロマンシング・GIはっじまるよー。
Q:主人公のオーラ総量って今どれぐらい?
A:50万前後です。ちなみに中堅念能力が2万程。モントゥトゥユピーが、ハコワレの能力で飛ぶまでの計算だと凡そ70万~90万程だそうです。しかし、彼の周囲の戦闘特化型念能力者がアレ過ぎるので自身を下の上か、中の下ぐらいに思っています。 ついでにどんなにオーラ総量があろうとも首が飛ばされれば死ぬと考えているので総量に関しては特に気にしていません。
Q:この小説のくじら島にいるブリオンのオーラ総量はどれぐらい?
A:1200万です。植えた土が悪いとちょっと落ちる事もあります。サイバイマンは全く意識していません(ホモは嘘つき)。ナックル達が恐らくは3~4万そこらでユピーと戦っていたので主人公に丁度いいくらいの相手をハクアさんが持ってきました。ちなみにブリオンさんが大陸で全力の自爆をすると、人間の世界地図にブリオン海が新しく書き加えられます。ちなみに戦闘時の健在オーラは常に50万~100万ぐらいで戦っているので、流石のブリオンさんもノーガードで20万ぐらい一点にオーラをぶちこまれたら色々もげます。
Q:今のハクアの閃きレベルっていくつ?
A:41レベルです。