私はIS 作:35(ミコ)
工場でISを使った誘拐犯と戦った。
その一件以降、彼女は出来る限り家から出ずに過ごそうとした。
だが、そんなことは露知らず。工場での一件から数か月後、とある来客が来た。
ピーンポーン。
インターホンの音に気付き、横になってタブレットでIS用の武器の設計をしていたソラはむくり、と体を起こす。
「ん?密林で何か注文した訳でもないし、町内会の予定はまだ先なんだけど……誰だろう?」
インターホンのカメラを使い、モニターで誰が来てるのか確認するが……、
「誰もいない?ピンポンダッシュってやつか」
そうと決まれば、彼女は再び横になる。
しばらく、部屋にタブレットをタップする音だけが静かに聞こえる。
ピーンポーン。
「またか」
モニターを見るが、いない。
「最近の子供はたち悪いねー……私も子供か」
ルックスはねー、呟き乾いた笑いを零す。
横になるのが面倒らしく、ソファーに腰を下ろす。
ピピピピピピーンポーン。
「…………」
スッと彼女は無言でタブレットを置き、立ち上がる。
そして、ドアを開ける。
「(ガチャ)うご―――」
ドアを開けると拳銃を向けた小柄な奴がいたので、取り敢えずソラは片手でそいつの頭を掴み、部屋の中に投げ飛ばす。
犯人はノーバウンドで壁にぶち当たる。
「―――グハッ!?」
ドアを閉め、鍵をかけ、チェーンロックまでする。
「ぐっ……うご―――」
犯人は何が起きたか理解が及んではないが再び拳銃を構えようとする。だが、それよりも早く、風を切る音をたてた蹴りで吹き飛ばされ壁が貫通する。
八畳二間が一六畳一間になった瞬間である。
既に犯人は鼻血を出し、頭から出血しているが、ソラは気にせずマウントを取り拳銃を奪う。
「どちらさまで?」
引き攣った笑みで尋ねる。
「ぐっ……うぅ……」
「あり?気絶しちゃったか?」
首を傾げる。拳銃を持っていた地点で察せるが、ソッチ系の人なのだろう、と彼女は結論付けてベッドに寝かせた。
「しかし……まぁ……あの織斑千冬とかいうのに似ているような……?」
部屋の修理と片付けを済まし、看病を始める。
ピンポンダッシュ?の犯人は織斑千冬をショートカットにし、背を縮めただけのような少女だった。今は身ぐるみを剥いで、ジャージを着せている。拳銃の他にナイフやグレネード、通信機などがあったが全て没収。何か仕込まれている可能性も考慮し、自身の気休め程度のジャミング装置も起動させている。
「うっ……」
「おっ」
唐突に顔を顰め始めたので、起きたのか確認する。
「ちっ―――」
「怪我人なんで寝ててねー」
「―――ぐふっ!?」
ソラの顔を確認するなり飛び起きようとするが、容赦なく腹パンで沈める。
「け、怪我人にすることじゃないだろ……コフッ」
「どちにしろ、敵さんだからねー、容赦はしないよ?」
寝かせた少女に微笑みかける。
「で、改めてどちらさまで?」
「答えるとでも?」
「その場合は吐くまで帰れま10」
笑顔のソラ。
だが少女は鼻でそれを笑う。
「コードネームでいいなら『M』だ」
「そのMちゃんはうちに何しに?」
没収したナイフを弄りながら尋ねる。
「お前の始末だよ」
「始末?」
全く心当たりがない、という感じにソラは答える。
「この間の工場での一件だよ」
「んん?知らないよー?」
「目を逸らすな」
変装はしていた。バレるはずがないと踏んでいた。
「こっちだって必死だったんだぞ。全く手がかりがないせいで一度、思いっきり地雷を踏み抜いたから組織も危ういし……」
「へー」
彼女は小指で鼻をほじりながら適当に流す。
「一から追跡し直してやっとたどり着いたのがここなんだよ」
「それはご苦労様です」
ペコリとソラは頭を下げる。
「でもね、伝達手段はあらゆる手で封鎖してあるから、物理的な脱出以外残された手段はないと思うよ?」
頭を上げた彼女の顔には笑みがある。
だが、ベッドで寝かされている少女の顔にもまた笑みがある。
「それはどうだか」
「?」
「私の身体にはナノマシンがある。それで―――」
何やら体内にあるトンデモマシンについて説明を始めようとする少女だが、
「ナノマシン?それなら多分今機能死んでると思う」
「―――私が……へ?」
「出血してたからそんときに採血して解析して、邪魔だと思ったから一定の電流を体内に流して全滅したと思う。万一、生きてたとしてもジャミングしてるから意味無いと思うよ?」
「……は?」
まるで意味がわからんぞ、という感じに少女、Mは呆然とする。
「ん?まさかあのナノマシンって肉体維持とか生命維持目的の医療用だった?え?ちょっと待って、だとするなら……ヤバいな……」
勝手に死なれては困るという感じに呟く。
「……い、いや!そんなことはない!むしろ壊したなら有り難いくらいだ!」
「……え?どゆこと?」
一回話を整理しようとお互いに何をしたか、何をされたか話しあった。
「ほー、なるほど。要するに今のMちゃんはとある目的のために今の組織に入ったら
「ああ」
「で、これからどうするの?」
「どう……って?」
Mは首を傾げる。
「枷を壊した以上、これ以上従う必要は無いんじゃないの?」
「まぁ、そうだな」
「もしかして、何も考えていない……?」
「…………」
静寂が場を包む。
気まずそうにソラが口を開く。
「……も、目的も組織から離れても達成できそうなの?」
「……貯金はあるが、引き出す度に追跡されるから実質ゼロだな」
「資金も無いのかぁ……」
最早、当初の目的など無く、どこぞの組織の少女を助ける方法についての探り合いになってしまった。
「仕方ない。こういう時のための2chで安価―――」
「やめろ」
「冗談冗談、大人しく一度戻ったら?それが今のところの最善策かもね」
Mは一度考え込む。
「……それもそうだな。上には『逃がした』とでも報告するか」
「取り敢えず、これ私のメルアドと電話番号、SNSのIDね」
「わかった」
連絡先を交換し始める程、馴染んでしまった。
「一応、仕事上IS関連のことやってるから困ったら相談してちょ」
「ああ」
そして、少女『M』は帰った。同時にこれでいいのかという疑問も持ったが、些細なことだろう。
ソラは改めて部屋に残った微妙な壁の取り壊し作業に入り、見事完璧な16畳一間の部屋に改築することが出来た。
大家に大目玉を喰らったのは言うまでもない。
Mとちょくちょく連絡を取りながら二年の月日が流れた。
IS企業『リベレーター』としての彼女はちょくちょく市場に商品を流したり、HPを開設したりして、知る人ぞ知る企業となっていた。
数少ない仕事はオーダーメイド品の製作が中心だった。
「~~~♪」
鼻歌混じりにPCで3Dモデルを作る。バックではもう一人?にパーツ製作を任せている。
だが、カコン、と軽い音と共にアパート特有の小さなポストに何かが入る。
取りに行くと宛名も差出人もない茶封筒が一つ。
「ん?」
中には便箋一枚と一つのUSB。
便箋を見ると、
『 Dear My daughters
Toriaezu IS gakuen ni ittekite ne.
FROM your mother 』
何故ローマ字。
真っ先に思い浮かんだのはそれだった。
だが、
「ユアマザーって……マジか……」
彼女は露骨に顔を顰める。
そして、カレンダーを見ると一月は中旬、受験日の一か月前。
しかも、
「……えぇ……」
受験届の締め切りが明日までだった。
そして、USBをPCで開くと、
「受験届……きっちり私の年齢15ってあるし……国籍は日本なのね……」
ワープロで既に打ち込まれていたのは新しい戸籍。
そもそも、彼女はまだ10年生きてるかどうか怪しい。
「要するに、これを送れと……相手が母さんとなるとなー……逆らわないほうがいいか」
大人しく、ワープロのファイルをIS学園に送る。
そして、受験番号は―――
「―――15983ってめっちゃ多いな……」
彼女は不安になる。
流石、倍率100倍を超える専門高校、IS学園。
例え本人がISだったとしても、ISの理論をパーフェクトにこなせる訳ではない。
特にソフトウェア面では。
「ん~!採点もこれで最後です!頑張っちゃいましょー!」
IS学園の職員室では教師にしては小柄な女性、山田真耶が試験の採点を行っていた。
「えーと?ソラ=オンブグレンストさんね……すごーい、基礎教科は国語以外パーフェクト、IS工学のハード面もパーフェクト!?じゃあ、ソフトウェ……ア……で……も……???」
「ん?どうした?山田くん?」
山田真耶はテストの解答を見て固まり、その様子を見て教員職を始めた織斑千冬がやってきた。
「お、織斑せんせぇ……」
「どうした……涙目になって……ん?ソラ=オンブグレンストの解答……か……?」
二人共、ソラのIS工学ソフトウェア面での回答を見て固まる。
何故なら、
所々の解答欄には目一杯の0と1の羅列が書かれていた。
「……あんな回答で受かるんだ……」
彼女の手元には二次試験:実技に関する案内が届いていた。
彼女は再び日本の地に降り立つ。
(久々だなー、この空気も。生身で空を飛ばなかったのは少し勿体ないかもしれないけど)
彼女はIS学園に向かう。
(取り敢えず、マークするのはイギリス代表候補生、セシリア・オルコットと日本代表候補生、更識簪かな?私に関する情報を持ってそうだし、特に更識の方は)
ソラはIS学園のアリーナに併設された更衣室のベンチで横になって周囲を見渡す。
彼女は自分が最後の受験者と知り、まだ着替えずにジャージのままである。
とは言っても彼女の場合着替える必要はないのだが。
仕事の続きでもするか、と彼女は思いベンチ下のバッグからタブレットを取り出そうとすると、こっちに向かってくる青いISスーツを着た金髪ドリルの子、セシリア・オルコットがいた。
「ちょっとよろしくて?」
「ん?何ですか?」
「ベンチに座りたいのですが」
「ああ、すみません。どうぞ」
「ありがとうございます」
彼女はすぐさま身体を起こし、空いたスペースにセシリアが座る。
「確か、イギリス代表候補生、セシリア・オルコットさんであってるよね?」
「ええ」
セシリアの顔には自分の事を知られていると知り、少し笑みが浮かんでいた。
「よくご存じで」
「まぁ……事前情報で粗方のことは調べて目を付けているからね」
「勤勉なことですわね」
「いんや、のんびりと過ごそうとしてたけど親が入ってね、と言ったからね……逆らうに逆らえないよ……ハハッ……」
苦笑を浮かべて答えるソラ、対して親という単語を聞き表情に陰りが見えるセシリア。
ソラはそのことに気付いたが敢えてスルーする。
「ところで……その端末で何をしていらっしゃるのですか?」
タブレットの液晶をセシリアが覗きこもうとするが、
「ちょっとタンマ」
「え?」
セシリアの額に人差し指を当て止める。
ソラは液晶を確認する。
「うーん、これならいいかな?」
ソラは液晶をセシリアにも見えるように寝かせる。
映っているのは3Dモデルだった。
コの字型のレールを上下に向かい合うように並べたものだった。
「これは?」
「装薬磁気複合式加速砲。まぁ、レールカノンってやつの設計図だね」
「確か……ドイツのISに積まれている……」
「そう、それ。それの次のモデル」
「え、ええ!?」
セシリアは口を押えて驚愕する。
「今のやつだと回転式弾倉、リボルバー式だね。それだから弾倉式のやつの設計を頼まれてるんだよ」
「も、もしかして……企業の幹部とか……?」
「さぁね?」
ニヤニヤしながらソラは答える。
実際は社長だが。
「まぁ、これも一応、輸出用のモデル出るから、
「そ、そうなのですか……しかし、若くしてISのアーキテクトとは……」
「どうだか……それよりもいいの?そろそろ時間じゃない?」
「ふぇ?……あら、時間ですわね。知らせてくれてありがとうございます」
「いやいや、まぁ、
「え?ああ、はい」
セシリアは立ち上がって去って行く。
(ん?わたくし、時間を教えましたっけ?)
疑問は尽きない。
一方、ソラは再び横になる。
「んー、室内で張り詰めたままとは……ご苦労なこともあるんだねー」
彼女はタブレットを弄り、今度は実技試験の概要を見る。
「フィールド内での教員との
彼女はこの間仕入れた武装を確認する。
「なら、フルに使って、銃身の交換は一回か」
一人ニヤつく彼女であった。
「ふぅ~」
「ん?オルコットさん、お疲れ様です」
再び身体を起こし、場所を空ける。
「どうでした?」
「何とか教員を墜とすことはできましたわ」
「おおー」
ソラは拍手をする。
「元々、代表候補生だし合格確実じゃない?」
「そうですわね」
当たり前ですわ、と言わんばかりに顔にかかる髪を払うドヤ顔のセシリア。
「そういうあなたはどうなのです?」
「うーん、ISは……二年前の試験運用が最後かな?」
「ええ……」
「まぁ、何とかなるでしょー」
その気になれば専用機を使わなくてもいい、だからか。
「わたしはこれで帰国しますので、頑張ってください」
「英国貴族直々の応援とは、これは結果を残さないと……」
「ふふっ」
軽い談笑を交わし、セシリアはロッカーの方に向かって行った。
「さて、私も頑張りますか」
その宣言とは別に彼女の身体は横になった。
呼び出されたのは一時間後だった。
彼女はアリーナの通路をジャージ姿で歩く。
「~~~♪」
鼻歌を歌いながらフィールドに出る。
向かう先には第二世代型IS『ラファール・リヴァイヴ』を身に着けた山田先生がいた。
『最後の受験者、ソラ=オンブグレンストさん……ですよね?』
「あー、はい」
『ISスーツは?』
「必要ないんで」
『そ、そうですか……ハハッ』
渇いた笑いがこぼれる山田先生。
「じゃあ、展開してもいいですか?」
『専用機持ちでしたよね。どうぞ』
「よっと」
彼女の白く丸い機体が展開されるが……、
『ガトリングですか……って30mm!!??』
彼女の両腕の側面にはGAU-8、彼の魔王が生み出した
更に脚部の
弾倉はサイズが大きすぎるため両肩のハードポイントに固定されている。
流麗なデザインが台無しである。
『ひ、ひぃ~~』
もう既に武装を見ただけで涙目になる山田先生。
ソラは山田先生からある程度離れた位置まで行くと、アンカーを打ち込む。
「よし、準備オーケーですよー」
『……あぁ……分かりました』
どこか悟った感じに言う。
そして、カウントが始まり電子音のブザーが鳴る。
すぐさま山田先生は空へ逃げ出す。
さっきまで立っていた位置をおびただしい数の30mm弾が貫いていく。
だが、それは右手だけのものだった。左手のモノが向けられる。
そこからはノンストップでの飛行だった。
2秒ごとにソラは交互に両腕のガトリングを動かす。
ヴォォォォォ!ヴォォォォォ!と両腕のアヴェンジャーは何度も唸る。
(うぉぉぉぉぉ!!??反動が重いのぉぉぉぉぉ!!!つーか、脚部も悲鳴あげてるしぃぃぃぃぃ!!!)
かなりとばしているいる割には必死で、背部のスラスターも火を噴いている。
また、空中でひたすら回避に徹する山田先生も必死だった。
(ひぃぃぃぃ!?一発でも当たったらバランス崩して全部持ってかれちゃうんですけどぉぉぉぉぉぉ!?)
不規則に飛ぶが運がいいのか先程から足元ばかりに30mm弾が過ぎ去ってゆく。
(だけどガトリングなら銃身の損傷は激しい。さっきから打ちっぱなしだけどそろそろ銃身交換の時間が来る!無かったら終わりだけどそれに賭けるしかない!)
心の中で決心し、地上で対空兵器と化したソラを観察する。
そして、持っていたライフルを仕舞い、呼び出すのは狙撃用にカスタムされた大口径105mmライフル砲。
(一撃で……決めるっ!)
(うぐぐぐぐ……ヤバいなー、そろそろ時間かな……)
徐々に両腕のガトリングの方針が赤みを帯びてゆく。
そして山田先生の手元を見る。
(勝負を仕掛けてくるね……なら―――)
まず、右腕の連射を止める。
量子変換し、一度拡張領域に戻す。
そして、左腕のも量子変換し、右腕には新しい銃身が出現する。
空中では山田先生が飛行を止め、ライフル砲を構える。
銃身が出現し、銃身が固定され回転を始める。
ライフル砲から榴弾が発射される。
GAU-8の砲身から30mm砲弾が次々と発射される。
空中で互いの弾が交差する。
(―――賭けだんっ!)
ヘッドショットを貰った。
(おうふ……)
弾はシールドに止められたが、衝撃までは止めてくれない。
彼女は仰向けに倒れた。
そして、山田先生が不時着する。
「あたたたた……
山田先生はISを解除し、駆け寄って来る。
「あ、はい、大丈夫ですので」
一人で立ち上がり、ISを解除する。
「そうですか。それでは、本日の実技試験は以上になります。結果は後日、追って通知しますので」
「分かりました」
「本日はありがとうございました」
ソラは握手を交わして、腕をプラプラさせ、更衣室に戻る。
更衣室は既にもぬけの殻で、スキャンすると既に他の受験者は外に出ていた。
それを確認すると、空いたスペースに自身のISを展開する。
「今日はお疲れさん……ん?ふざけんな?あのねぇ、あんただけが被害受けていると思ったら大間違いなのよ」
彼女の腕の関節は青くなっていた。実際に色が青くなっているだけだが、彼女にとってはそれは損傷の度合いを表すものになっている。
「取り敢えず」
彼女の周囲に工具が展開される。
「あんたの腕部を
一番ガトリングの反動の被害を受けた腕部を修理し、彼女は家に帰る。
彼女自身も傷ついていたため、しばらくはコアの状態で過ごした。
そして一週間後、合格通知が届いた。
セッシーはワンサマーにあんなこと言ってたけど、相手が相手だからとは思います。
根は親切でいい子。
ソラちゃんの武装は基本、使い勝手を度外視したものです。
火力とロマンが頼りです。
うーん、最後の実技試験は思ったよりも上手く描写できなかったような。
やっと次回から原作突入。
クラスは大所帯でIS学園に来ない限り、専用機持ちが中々来ないあのクラス。