私はIS 作:35(ミコ)
そして、月曜日。
アリーナのピットに繋がる通路をソラは一人歩く。
格好はISスーツではなく、ジャージ。
そして、自動ドアの前に立ち、プシュッと空気の抜けるような音と共にドアはスライドする。
「あら、あなたは……」
「ソラ=オンブグレンスト。久しぶりだね、オルコットさん。今日はよろしく」
「ええ」
ソラはセシリアのピットに来ていた。
そのセシリアはもう既に専用機『ブルー・ティアーズ』を展開し身に纏っている。
「ことの顛末は聞いているよ。オルコットさんがそういう人なんだってよく理解したよ」
ソラは淡々と言う。
セシリアも冷めたように答える。
「実際そうではなくて?」
「さぁね?そうかそうでないかは自分で確かめないと分からないよ。まぁ、一応あれでも
「私が勝つに決まっています」
「そうだろうね」
私もあなたにベットしたし、と呟くが、ISのハイパーセンサーはそれすらも拾う。
「ベット?」
「あ」
ソラは気まずそうに視線を逸らし、セシリアはジト目で見る。
「ま、まぁ、セシリアが勝つと幸せになれる人もいるということだよ」
「はぁ……いいでしょう。相手は素人。負けるはずがありません」
ブルー・ティアーズはカタパルトに足を嵌める。
そこでソラは、一つ言い忘れたことがある、と。
「いいんだよ、自由にやって。全てを捻じ曲げる気で行きな」
「?」
セシリアはソラの言葉に疑問を覚えつつもカタパルトで発進する。
「さて、お次は……」
今度は逆側のピットに向かう。
世界でただ一人の男性操縦者。
その人には専用機が渡される。
その程度のことは知っていた。
だが、
「…………うへぇ……うせやろお前……」
ピットの自動ドア。
その10メートル程手前で感じる、
彼女が最も苦手とする相手を。
ゆっくり、ゆっくりと一歩ずつ距離を詰める。
そして、ドアが開く。
「…………」
「ん?オンブグレンストか……ってどうした?その顔は」
ソラは苦虫を噛み潰したかの様な顔をしていた。
この場にはソラと千冬以外に三人の人物がいた。
「あっ、オンブグレンストさん、お久しぶりです」
「……えーと、試験官の―――」
「山田です」
「―――その節はありがとうございました」
山田先生に一礼する。
千冬は残りの二人に紹介をする。
「この生徒がソラ=オンブグレンストだ。お前らにアリーナの使用許可を譲ってくれた張本人だ。感謝しろ」
後ろにいたのは織斑一夏と篠ノ之箒だった。
「あ……どうも、織斑一夏です……」
「じゃあ、アレのパイロットが君……?」
恐る恐るソラは、
白いソレを指さす。
「そうみたいなんだよね……」
「あ、ああ、そ、そう……」
「何で距離取っているの!?」
ソラは言葉を投げつつも出口にじりじりと近づく。
「で、そっちが篠ノ之箒……さんだよね?」
「あ、ああ」
「きょ、今日はよろしくね。じゃあ、私はこれで……」
引き攣った笑みを浮かべ、ソラは退場した。
「挨拶……だけだったな」
「あ、ああ」
箒と一夏の二人は呆然とし、千冬が出席簿で目を覚まさせた。
一方、通路に出たソラは溜め息をつく。
「はぁ~、やだやだやだやだ、
彼女はトボトボと更衣室へ向かう。更衣室にはアリーナの様子を確認するためにモニターが設置されており、そこから観戦することも可能である。
そこにソラは一人、ISコアを膝に置いて座っていた。モニターに映るのは向かい合う青の機体と白の機体。
「ほれほれ、見るなら見といてね。アレがそうなんだから。私?私は苦手なのよ。正直、これからストレス溜まっていくかも……いいよねぇ、アンタは気楽で。私も私でこの生活を望んで手に入れた訳だけど……ここに来るのは正直、予想外だよ。しかも、アレと一緒とか反吐が出るわ」
露骨に嫌だと言えるような表情を浮かべる彼女は誰かと話し合っているかのように語っている。
モニターでは一夏の乗る白い機体『白式』がセシリアの青の機体『ブルー・ティアーズ』に肉薄するが、弾道型のビットにより迎撃され黒煙に包まれている様子が映っていた。
「……ふーん、ようやくスタートラインってとこかな?」
そこには先程の白とは違う、滑らかな曲線とシャープなラインが特徴の機体になった。
そして一夏はすぐにセシリアに肉薄し手に持つカタナが展開し、光の刃が伸びるが、
「あー」
やっちゃったかー、という感じでソラは言う。
一夏のSEがゼロになり、セシリアが勝利した。
その試合を見て、ソラは笑みを浮かべる。
「けど、二人共面白そうな武器を使ってるじゃん。
彼女は立ち上がり、ピットへ向かう。
試合が終わると、大型モニターにはSE残量ゼロの一夏と、まだSEの残ったセシリアの名前が表示されていた。
だが、唐突に表示が切り替わり、ソラ=オンブグレンストVSセシリア・オルコットと表示される。
そのことに生徒はざわつく。そんなことは気にせず、ソラはピットを歩く。
「あの、オンブグレンストさん、カタパルトは……?」
「ああ、山田先生、カタパルト使うのはあんまり趣味ではないので」
過去のトラウマから急加速するのは苦手になっている。
彼女はジャージ姿のままピットから出て行き、日なたに出る。
その姿を見て、会場が一段とざわつく。
ソラはピットの縁に立ち、
「よっと」
躊躇い無く飛び降り、生徒から短い悲鳴が上がる。
ピットの高さは大凡10メートル程。そんな高さから単なる地面に飛び降りるのは自殺行為に等しい。
だが、彼女は空中でその専用機を纏う。通常のISより一回り小さな脚部で着地する。左腕には12.7mmガトリング、右腕には30mmチェーンガンが取り付けられており、手にはトリガーがある。前回の両手30mmから反省し制御可能尚且つ高火力を発揮できるよう武装は変更された。そして両腕の武器は黒く染められている。しかし腕部が白いためにあまりマッチしていない感が否めない。
その様子を見て、生徒はどこの企業のだとか、見たこと無いタイプの機体だと話し合い始める。
『オンブグレンスト、オルコットの準備があるためしばらくは自由にしてくれて構わない』
オープンチャンネルで千冬が伝えてくる。
「なら、練習用の的出してくれません?ちょっと調整したいんで」
『分かった』
そして、アリーナのあちこちに的が投影される。
ソラもアリーナの中央に移動する。
掌底を器用に使い、バイザーであるサングラスを直す。
まずは正面。ガトリングで斉射する。そのまま左に動かして無数の弾丸で薙いでいく。一度トリガーを引くのをやめ、すぐに右を向いて斉射。
今度はチェーンガン。ガトリングよりもかなり遅い連射で的を撃っていく。腹の底に響く銃声。これもまた一度、トリガーを離して後ろに振り向き再びトリガーを引く。弾幕による制圧射撃。中距離における彼女の戦法である。一通り撃つと銃口からは水が流れる。
「問題無しと。先生、まだ準備できてませんか?」
『いや、準備できている』
地上に足を付けているソラは上を見上げる。
ピットから青い機体が出てきて、空中で停止する。
それを見てソラはあることに気付いた。
「顔、変わったね」
『……そ、そうかしら?』
「何で顔を赤らめるの?」
ハイパーセンサーではセシリアの顔をしっかりと捉えているが、その反応はソラには分からない。
「ともかく」
首を左右にゴキゴキと動かしてソラは『ブルー・ティアーズ』を見据える。
「不完全燃焼っぽいじゃん。ちゃんと動かしてあげなよ」
『それはどういう意味で……?』
「まんまだよ」
はぁ、と呆れて溜め息をつくソラ。
『二人共準備はいいか?』
『え、ええ』
「いいですよ。せめて完全燃焼とは言わないけど、もっと動きなよ」
カウントが始まる。
3・2・1……GO!
『行きなさい!ブルー・ティアーズ!』
「ヒャッハー!」
ブルー・ティアーズからビットが飛び立ち、ソラはガトリングとチェーンガンを最初から出し惜しみなく撃つ。それはもちろんビットからレーザーが発射されるよりも先。
そのため、
『くっ!』
セシリアは回避を強制される。無数の12.7mm弾とそれに混じる30mm弾が襲ってくる。ソラの足元には大量の空薬莢が転がる。しかし、チェーンガンとガトリングの特性上一度に長く射撃は出来ず、
「―――あらら」
10秒もすれば両腕の銃身は赤く染まり、冷却水が蒸発していく。
『隙ありですわ!』
「いやー、短期決戦のつもりだったんだけどね?」
ソラを囲む四つのビットから射撃が開始される。
だが、彼女は背部のX字型のスラスターを使い滑らかに回避する。
『しぶといですわね!』
「はっは!逃げてるのはお得意なんでね」
回避するソラは脱力した状態で、地上を滑る。
相手からすれば苛立つのも理解できる。
「さてさて、銃身の冷却もできたし反撃するよー」
地面から浮いていた足を地に着けて無理矢理止まる。そして、右手のチェーンガンをセシリアに向ける。
『食らいなさい!』
同時にチェーンガンにセシリアのライフルが直撃。例え射撃できたとしても弾速の関係上免れなかったが。冷却できていたはずの黒い銃身は赤く溶け、使い物にならなくなった。幸い、チェーンガンもガトリングも大きいサイズの弾倉を用意するのではなく、逐次拡張領域から弾薬を取り出すシステムなので暴発の問題は無い。
「うそーん!?結構これ
『それでも私の装備よりは安価でしょう!?』
セシリアの武装は弾道型のビット二基を除き全て光学兵装。更にビットは技術の関係でお値段が更にかさむ。つまりは現時点でビットを何基か破壊した一夏による被害総額は……知ったら多分本人が卒倒する。文句は言いつつも、ビットの追撃を回避して右腕のチェーンガンを拡張領域に戻す。
「あとは……」
バイザーに表示される
「うーん、中途半端だなぁ……取り敢えず、こいつだけで頑張るか」
ヴォォォ、ヴォォォと細切れに撃つ。
『そんなのでは当たりませんのよ!』
セシリアも慣れたものでさっきよりも薄い弾幕を軽々躱す。
『いただきましたわ!』
そして、ビットによる射撃でガトリングが破損。
「あちゃー」
大人しくガトリングを戻す。そしてソラは諦めたように溜め息をつき、人間のように丸い左腕部を虚空にかざす。
『?』
セシリアは警戒しつつ、様子を見る。虚空から黒い斧が姿を現してきた。柄まで出現すると、ドン!と音を立てて地面に刺さる。斧の刃は綺麗な弧を描き、弧の中心部分をジョイントにして機械的な柄が伸びている。柄尻には一応なのか角ばったハンドガードが付いていた。パッと見、ハルバードのように思われるかもしれないが、サイズ比がおかしかった。全体的なサイズはソラのISと同等だが、刃と柄のバランス比はほぼ同じくらいか、やや柄が長めか。ハルバードと呼ぶにはバランス比が崩れているように思える。バトルアックスとでも言うべきか。
彼女は柄尻を握る。
『ず、随分と重そうなモノですわね……』
「あ、なに?ぶんぶん振り回してほしい?」
セシリアはそれをできたしても末恐ろしいので、ハッタリだと自分に言い聞かせる。
「まー、どちにしろコイツの趣味じゃないし、負担も大きいからねぇ……あまり時間かけると疲れるってうるさいから」
彼女は両手で持ちあげ柄尻を握る左半身を前に出し、半身になる。
「少し本気で行くよ」
本来ならば誰もしないであろうISでの地面に対する踏み込み。彼女はそれを行う。ドンッ!と地面を蹴り放ち、スラスターをオンにする。一度の跳躍でセシリアの眼前まで迫る。
『インターセプター!』
セシリアはショートブレードを音声入力で呼び出す。斧を防ぐために構えるが呆気なく折れ、自身も吹き飛ばされる。
『くっ!って……あら?』
跳躍したソラは滞空せず地上に落ちていった。地上スレスレでスラスターを使い、衝突を免れる。再び彼女は地に足を付け、地面を蹴るが向かう先はアリーナの壁。そこから今度は三角跳びの要領で再び空へ舞う。セシリアが立て直す間に既に彼女は接近していた。
『速い!?』
斧を上段に構え、重力と斧の質量任せに下ろす。セシリアは慌ててビットで攻撃を防ぐ。それに怯んでいる隙にまた地上に降りては壁から空へ舞う。
「背中にご注意下さい」
『なっ!』
何とか後方に回避するが、ソラはそれを許さずに空中で一回転することで再度斧を振り下ろす。セシリアは咄嗟に頭上で腕を交差させる。金属音が響き、交差したセシリアの腕部に黒い刃が食い込む。
だが、問題はここからだった。
ソラはスラスターを全開にして、ブルー・ティアーズを地面に叩きつける。
『ぐっ!』
パイロットであるセシリアにも衝撃は伝わる。そして、ソラはブルー・ティアーズを地面に押し付けたままそのまま回転を始める。地面とシールドが擦れて、凄まじい勢いでSEが減る。数回周ってから極め付けに引きずったまま一気に加速し、セシリアは壁に叩きつけられた。容赦無い一撃。ブルー・ティアーズの腕部は粉砕され絶対防御が働く。
あっという間にSEはゼロになっていた。
管制室で見ていた千冬は一連の荒々しいプレーを見て呆然とする。
「何か……荒っぽい、ですね……」
「あ、ああ」
モンドグロッソどころか、素人でもやらないプレーである。
むしろ彼女、ソラにとってはこれはスポーツでも何でもなく、
ただの喧嘩であるのだから。
(んー、ビットは流石に壊すと金額的に怖いし、機体に無理な負荷かけてお説教貰うの私だから、こうやったけど……)
壁にめり込むセシリアは目を回して気絶していた。ISはSEがゼロになったことで格納され、セシリアだけが残る。ソラもISを戻し、セシリアを肩に担いでピットに向かう。
一方、その荒々しいプレーの次の被害者になるであろう少年は、
「い、一夏!大丈夫か!?」
「ああ、箒。今までありがとうな。ちょっと逝ってくるよ。何、心配ない。必ず戻ってくる。帰ったら約束の店に、絶対行こうな」
「い、一夏!それは帰ってこないフラグだぞ!」
「大丈夫。俺はフラグクラッシャーだぞ?」
「な、何故だ。いつもは腹立つ肩書きがどこまでも空しく感じるぞ……」
既に大丈夫ではなかった。
観客も観客であのようなプレーを見ては唖然としていた。それも束の間、大多数はブーイング、それ以外も大きく上げはしないが批判する。
ピットに戻ると、千冬が立っていた。
「オンブグレンスト」
「何です?」
ベンチにセシリアを寝かせる。
「さっきのプレーは何だ。生徒からもフェアじゃななどとクレームが来ているが?」
「さっきのって……?」
本人には心当たりがない模様。
「最後のだ。オルコットを地面に擦りつけた上で壁に叩きつける。あの乱暴な、ラフプレーのことだ」
世間一般的には、ISはスポーツで広まっている。
スポーツとなると先程のようなプレーは普通ない。
「あれって……ラフプレーなんですか?」
「当たり前だ。武器一つ持たずに殴り合うならまだしも、あのような真似は誰もせん」
「ぶっちゃけ、ラフプレーも何も、私にはあまりしっくり来ないのですがね……」
彼女は整えられていない黒い短髪をガシガシと掻く。
「ぶっちゃけ、あの方法はSE削るのに最も理想的な方法なんですがね。ほら、砂って摩擦大きいじゃないですか。その上でそこに相手を擦りつけるだけで、SEも削れ、装甲も削れる。かなりお得ですよ?」
「それ以前の問題だと言っている!」
えぇー、と彼女は困惑する。
そもそも理解の根本が違うし、ISに対する捉え方すら違う。
「スポーツマンシップという言葉を知っているか?」
「知ってますけど、
しかめっ面でソラは言う。
一方、千冬はこめかみを押さえ、どう説得できるか悩む。
いや、無理だろう。彼女からすれば身内による殴り合いなだけなのだから。
「分かりましたよ」
ソラはその様子を見て妥協する。
その言葉に多少の不安は拭われる千冬。
「結局のところ、投げ技や極め技の類は避ければいいんですよね?」
今度はピット内でISを纏う。
「……まぁ、そういうことだな」
やはり解釈が合わない。
「分かりました」
そう言い残し、ピットを後にする。
アリーナでは一夏が深呼吸をして待っていた。
『お待たせしました』
白式のオープンチャンネルにソラの声が通る。
「いや、そんな待ってないぜ……って何で距離をそんな空けるんだ?」
ソラは手ぶら、一夏は物理ブレード『雪片弐型』にも関わらず射撃戦を行うかのように30メートル程か、間合いを取っている。
『いえ、ちょっと個人的な問題であまり近寄りたくないので……』
「…………ごめんな」
初対面の女子に近寄りたくないと言われる思春期男子の図。
一夏は深く傷つく。
そして、カウントが始まる。
うーん、相変わらず戦闘シーンの中身がすっからかんのような気がします。
下手ですね……一応、丁寧に描写するよう心がけてはいますが、
そもそものテンポが早いんですかね?
今のところ今後の予定はクラス代表対抗戦や、タッグマッチが原作と大幅に乖離する予定でいます。
中々他のssでそんな不遇という訳でもないですが、恵まれてる訳でも無い子が魔改造される予定です。
ちなみに、作中出てきた斧。
アレはソラちゃん生身verだと容赦なく枝とか棒とかの感覚で振り回せます。
ISに乗ってると感覚としては他人の腕で物掴んでるとかの感覚なんで。
もっと分かり易く例えるなら、感覚がシンクロした状態の二人羽織とか?
そういう状態なんで、機体負荷が馬鹿に出来ないので自重しているという。
武器とかそういう感性は相棒とソラちゃんは真逆の方向(むしろソラちゃんがロマンに走り過ぎてる)なんでそこらへんは分かり合えなかったり。
これから少しずつ小説に割ける時間が減るので更新頻度が下がったりするかも。