居酒屋で愚痴を聞くだけの簡単なお仕事です   作:黒ウサギ

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何故か眠れないので
独自設定ありありです


第23話

私は荒れていた。

慣れ親しんだ彼の店ではなく、馴染みのない店で。

何名かの同僚を連れて、いや私が頼んだのだ。やけ酒になるだろうから、誰かに付き合って欲しくて。

 

「今日もお酒が美味しいですねぇ…」

 

「そ、そうですね…。(なんで私までよばれたんでしょうか…)」

 

珍しく参加してくれた…否、連れてきた文香ちゃんもお酒の美味しさをわかってくれたようで何より。

後で知ったのだが文香ちゃんはまだ未成年で、あの時に飲んでいたのはただの烏龍茶だったらしい。猛省。

 

「瑞樹さんも、お酒空ですよ」

 

「だ、大丈夫よ。私は自分のペースで飲むから。」

 

さすが川島さん、大人の対応をしてくれる。

早苗さんやあいちゃんも今日はゆっくりと飲むらしい。志乃さんは何時ものように飲み進めてるが。

 

「すいません、お代わりください」

 

本日は飲み放題なので、遠慮無しに飲むことにしよう。

あ、バカルディ美味しそう…、いやでもこの沖縄産マンゴーレモンっていうのも中々…。

 

「それで、楓はなんでそんなに荒れてるの?」

 

悩んでいたら早苗さんが話しかけてくれた。悩んでいたのはお酒を選ぶ事だけではなく、彼についてだ。あぁ思い出しても少しムカムカしてくる。何故私だけがあんなに顔を赤らめなくてはいけないのか。

 

「か、楓さん。落ち着いて下さい…」

 

あら、知らず内に周りを不安にさせていたようだ。

あらあらうふふ。

 

「それで、ちゃんとはなしてくれるんでしょ?そのイライラの原因を」

 

「そりゃもう話しますよ、そのために皆さんを集めたんですから」

 

誰かに心の内を聞いてもらわないといつか壊れてしまう。

 

「皆さんに聞いてもらいたいのは、神楽さんのことなんですけどね」

 

やめて皆さん。その『あーやっぱりかー』な顔するのやめて。

 

「そもそも、私聞きたかったんだけどさー。楓さんは神楽さんの何処がいいわけ?」

 

そんなことを聞いてきたのは見た目未成年の友紀ちゃん。ビールを美味しそうに飲むその姿はやはり未成年である。

しかしと、友紀ちゃんの質問の答えを考える。

 

「こう言ったら楓さんに失礼かもしれないけどさー。パッとしないよね、神楽さん」

 

私に失礼と言うか、神楽さんに失礼である。まぁ確かにパッとしない、何処が良いのかと聞かれた質問に中々返答出来ないのも理由の一つだ。

 

「難しい質問したわけではないんだけど…」

 

「まぁ楓にも色々と思うところがあるのよ、…きっと、多分。」

 

自身の発言には自信をもって……ふふ

なんて考えてる場合ではなく。何かあるかなーと考えること少々、ふと皆の視線が私に集まっていることに気がついた。これはあれか、取り敢えず何かを話さないといけないパターンか。

何か良い話題は…

 

「あっ」

 

「ん」

 

「私と神楽さんの出会いでも話しましょうか?」

 

ガタガタと音を立て、皆さんが食いついて来ました。

ちょうどお酒も届いたようですし、滑らせるように語りましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれは…確か私が大学に通っていた頃ですね…。その頃の私はモデルの仕事をしていたんですね。

あら、文香ちゃんは知らないのね。何と言うか私も過去の存在なんですねぇ…。

さて、戻しましょうか。モデルと言ってもそこまで人気があったわけでは無くてですね、髪型も今とは違いますし、カラーコンタクトつけてましたからね。大学内でもサークルには参加してませんでしたし、地味な学生でしたね。

あ、神楽さんとプロデューサーさんちひろさんは同学年だったんですよ?羨ましいですか?あぁ、茶化しはいらないんですね。

それでですね、ある日モデルの仕事帰りにナンパされて、何人かに囲まれて困っている時があったんです。あぁ、皆さんが考えてる通りです。そこに通りがかった神楽さんに助けられて、そこがファーストコンタクトです。まぁその時は助けてくれた人としか考えてないですね。

二回目は授業が終わり帰ろうと支度をしていた時ですね。周りの空気に馴染めず浮いていた感じがあってですね、友達もそこまでいなかったんですね。それで特に用事も無くのんびりと準備してたらぶつかられてしまい、鞄の中身をばら撒いちゃいまして…。はい、ご想像の通りです。神楽さんが手伝ってくれまして

 

『あーナンパされてた子か、同じ大学だったんだ!』

 

覚えてくれてたこと、モデルでは無い私に気がついてくれたこと。それだけで少し胸が高鳴りました。それにその時にコンタクトも外れてしまって、一緒に、探してくれた優しさ。

 

『綺麗な瞳してるね、普段も外してたらいいのに』

 

その言葉が、とても嬉しくて。モデルの高垣楓ではなく、普通の高垣楓を見てくれた。まぁ私の勘違いなのかもしれませんけど、当時の私はその言葉で何かが吹っ切れた気がしました。翌日からは言われた通りにコンタクトを外して、髪型も変えて見たら周りの反応が面白くて面白くて…。

なんと言うか当時の私はちょろいですね。その後は大学卒業して、仕事を探しながらふらふらと自由に過ごしていた所をスカウトされて、神楽さんに再開しました。問題は神楽さんが当時の私をほとんど覚えていない事ですかね…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自分の恋愛話をするのは中々恥ずかしいものですね」

 

お酒の力があったから話せたのかもしれない。じゃないとこんなに滑らかに口は動かないはずだから。

 

「その……、楓さんは今でも神楽さんの事が?」

 

「どうなのかしら…?好きかと聞かれれば好意はあると思うけど、それがlikeなのかLoveなのかはまだハッキリしてないかしら」

 

でも、看病しに行った時に生まれたのは嫉妬。やっぱり私は……

 

「楓さんは…大人ですね。自身の気持ちにちゃんと向き合おうとして」

 

文香ちゃんはそんなことを言ってくるけど、向き合えていないので思わず苦笑いしてしまう。

 

「文香ちゃんは、プロデューサーの事好き?」

 

「え?その…私はアイドルですし…、そんな事を考えたらダメなんだと思って…」

 

そう言いながら顔を赤らめる彼女はとても美しく、恋する乙女だった。

 

「でもね、文香ちゃん。私達はアイドルである以前に一人の女性なの」

 

女性というより、女の子かしら?

 

「だから、誰かに恋することは当たり前なのよ?」

 

そう告げると、また彼女は先程よりも顔を赤らめていた。

なんというか…こう…虐めたくなる。

 

「さて、じゃあ話も纏まったみたいだし。今日はこれでお開きね!」

 

早苗さんは何を言っているのだろうか

 

「私の恥ずかしい話を聞いておいて、皆さんが言わないわけはないですよね?」

 

その言葉には早苗さんだけでなく、他の参加者も固まった。まだまだ夜はこれからですよ…?




やまなしおちなし
メインヒロインは楓さんで進めて行きたいですけど、作者バカですので、他にも候補が出てくると思います。風呂敷だばーな感じにならないように頑張ります
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