居酒屋で愚痴を聞くだけの簡単なお仕事です   作:黒ウサギ

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アナスタシア:想

「何処に、行くつもりなんですか?」

 

助手席に座った彼女が聞いてくるが、行き先を秘密にしたまま車を走らせる。

少し怯えた様な表情をする彼女。間に置いてある飲み物を取ろうとするたびに震えるものだから心が折れそう。

 

「不安になるのもわかるけどさ、出来るなら安心して欲しいな。アナスタシアさんに何かしようとか、不埒な考えは無いから」

 

そこだけは信じて欲しい。

流石に捕まりたく無いので…手を出すなんてとてもとても……

 

「あー、すみません。気を使わせてしまって」

 

「いや、俺が逆の立場なら怖いしね。アナスタシアさんの気持ちもわからんでも無い……」

 

そこから、無言が続く。

そもそも10歳近く年齢が離れている彼女と、会話の種が見つからない。

息抜きに連れてく予定なのに寧ろ心労貯めさせたらどうしようか……

 

 

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正規の道から外れた小道で車は止まり、そこから山道を歩くこと少し。私はそこに辿り着いた

 

「ここって……」

 

私の目の前に広がるのは満天の星空。

光り輝く星達が私たちを歓迎している様に見えた。

 

「お気に入りの場所なんだ。泰葉ちゃんに教えてもらったんだけどね、人もそんなに来ないし何かを忘れたい時に来るらしいよ」

 

岡崎先輩が何故こんな場所を知っていたのか疑問だけど、今はそれよりも、この景色を楽しみたい。

冬に見える物として有名なのは『冬の大三角』。オリオン座、こいぬ座。おおいぬ座の三つの星座からなるそれは、私が故郷でも良く見る物だった。

 

「さすがにさ、ホームシックを解消させるために北海道までは連れてけないからさ。確かアナスタシアさんって、天体観測が趣味なんでしょ?空はさ、何処までも続いてるんだよね。それこそ北海道にもロシアにも、世界中に繋がってる。そう考えると、少しは気持ちが晴れると思うんだ」

 

星は何処で見ても同じだと、誰かが言った。

確かに、空に浮かぶ星々は変わらずに輝いている。もしかしたら、家族もこの星を見ているかも知れない。同じ物を共有しているかも知れない。そう考えると、少しだけ気持ちが軽くなった気がする

 

「Спасибо(ありがとう)連れて来てくださって」

 

「力になれた様で何よりだよ」

 

よう言って微笑む彼は、何処か恥ずかしそうだった。

 

 

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「山の天気は変わりやすいとは言うけどさ、何もいきなり吹雪く必要ないのにね」

 

「ですね。あんなに綺麗だった星空も、今は全く見えないです」

 

のんびりと天体観測に勤しんでいたら、急に吹雪いて来たために急遽帰ることにしたのだが

 

「本格的にヤバイなぁ…、下手したら前見えなくなるぞ」

 

「ホワイトアウトですね」

 

「んー、無理して帰らない方が安全か……?」

 

一度車を止めて、携帯で近くの宿を調べてみる事に。

幸いなことに近くに旅館があるらしい。

 

「アナスタシアさん、このまま帰るとちょっと危ないから。君さえよければ旅館が近くにあるみたいだし、そちらで夜を明かしたいんだけどいいかな?」

 

「нет проблем(問題ありません)」

 

すんなりと承諾してくれるのは信頼してくれてるみたいで嬉しいけどさ、ちょっと危機感が足りないと言うか……

まぁ俺が悩んでも仕方が無いので、そこに関してはPにお任せと言うなの、丸投げしたいと思う。

 

ゆっくりと運転をして少しばかり時間が経ったころ。旅館が見えた。これで事故に会う心配は無くなるので一安心である。

ただここで問題が発覚した。

 

「部屋が一部屋しか空いてないとは思わなんだ……」

 

「?」

 

布団は二組あるから良いのだが、問題はアナスタシアさんだ。こんなおっさんと同じ部屋とか、若い子的には「お父さんの服と一緒に洗濯しないで!」レベルで嫌な物になるかもしれない。最悪俺の心にトラウマが刻まれてしまう。

 

「まぁ、限界まで布団は離すから安心してくれ」

 

「?何故布団を離すんですか?」

 

おう、まじか。まじか!

落ち着け、何もやましい気持ちはない。そう例えるのならば親戚の娘さんと同じ部屋で寝るだけだ。やばいね、そこはかとなく犯罪臭がする……。

 

「アナスタシアさんが良いって言うならそのままにするけど、本当に良いのね?」

 

「Да 神楽さんは信用出来そうですし。私みたいな貧相な体に欲情するとも思えません」

 

信頼が高すぎて下手なこと出来ないです。

貧相な体とか言うけど、出るとこ出てるし、何処か大人びてる仕草のせいで色気が凄いし…

 

(もしかして、結構やばいかもしれない)

 

立派に女性だ、シャレにならん。千川と一晩過ごしても何も感じないが、アナスタシアさんはちょっとどころかかなりやばい。

 

「そう言えば神楽さん。聞きたかったのですが、何故愛称で呼ばないんですか?」

 

突然の質問に驚きながらも答える。

 

「いきなり愛称で呼ぶのも失礼かなって思ってたんだけど、愛称の方が良いかな?」

 

「Да 親しい人、皆アーニャって呼びます。神楽さんはアナスタシアと呼ぶので、少し寂しかったです」

 

照れながらはにかむ彼女に、少しばかり見惚れてしまった

あーもう、何で最近の娘っ子は色気満載なんでしょね…

 

「じゃあこれからはさ、アーニャって呼ばせて貰うよ。」

 

「Да 嬉しいです」

 

そう告ると、嬉しそうに笑ってくれた。

 

 

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今日は色んなことがありました。

泣いて笑って、弱さを見せて恥ずかしくて。

月明かりに照らされた室内は何処か幻想的で、降り続ける雪に光が反射してとても美しい。

すぅすぅと安らかに寝息を立てる彼を見る。私のために色々して疲れたのだろうか。お風呂から上がり次第直ぐに布団に入って寝てしまった。

彼に近づき、優しく頬を撫でる。

何故彼は私に優しくしてくれたのだろうか。

上京してきて、寂しそうにしてたから?ホームシックになっていて放っておけなかったから?

 

「アー…、何考えてるんでしょうか、私。」

 

頭を振って冷静になる。

 

「Спасибо(ありがとう)神楽さん」

 

そう告げて私も寝ようと布団に入ろうと思ったら

 

「アーニャちゃん?」

 

どうやら起こしてしまったらしい。

寝惚け眼をこすりながら、彼は何処かぼーっとした目で此方を見ている。何かおかしな所でもあったかなと、自身を見てみるけど浴衣が着崩れしてるわけでもない。何故見て来るのだろうか?

 

「凄く、綺麗だ」

 

ーーバタン

 

と、彼は倒れる様に眠りに入る。

何故そんな事を言ったのか。

顔が熱い、体が熱い、心が熱い。

慌てて布団に入り眠ろうと目をつぶるが睡魔はやって来ない。先ほどの言葉で何処かへ消えていってしまった。

 

(ズルイです、大人って……)

 

心臓が高鳴る、心が弾む。

今夜は寝れそうにない……

 

 




最後の神楽の心境として
月明かりに照らされてるアーニャ。
浴衣を着ているアーニャ。
白人の美女アーニャ。
綺麗と言わないなんて寧ろ失礼だと思う(迫真)
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