学食にて自作の弁当に舌鼓を打ちながら友人の話を聞く。曰く三つ編みの似合う可愛い生徒が経済学部にいる。曰く渋谷で完全無欠なまでにその道な顔をしている人がスカウトしている。曰く学校に設置されている自販機にあるドリンクを飲むと最高にハイになるなどなど。
大学は思っていたよりも闇が深い所であると再認識しながら箸を進めて行くと視界に彼女が写った。
『鷺沢文香』
サンドイッチを片手に本を読み進める彼女。噂なんかでは幽霊扱いされていたりするがそんな事はなく、しっかりと食べるし動いたりもする。すれ違った時に漂ったあの懐かしい匂い。じいちゃんの部屋と同じ匂いがする女性。あの娘も本が好きなのだろうか…
(匂い匂いって変態見たいだな俺)
なんて事を思いつつも友人の話が終わるまで、彼女を眺めていた。
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大学の楽しみ方と言われればサークル活動であろうか。四月も終わりに差し掛かり、勧誘もすっかりと収まった頃に俺はサークル棟に歩みを進めていた。本当はサークルに入る必要などはないのだが、如何せんバイトがない日に城ヶ崎さんの家にいると耳が疲れる。あの姉妹は疲れ知らずなのかひたすら話しかけてくるのでゆっくりと休めない。なら、どうせ疲れるなら遊んで疲れたいと考えた結果がサークルだ。とは言ってみたものの運動系は当然の様に除外される。幾らかは運動も音痴ではなくなったがそこまで打ち込む必要もない。などと考えながら良い所は無いかと探していると…
(文学部ねぇ…)
サークル棟二階、1番奥の部屋。周りは他の部活の物置と化している部屋の一部にそんなプレートが掲げられていた。イメージとしてはただ本を読む場所であるか、それとも手芸をする場合であるか。しかしながら場所からしてそこまで活動的なサークルでは無いと判断し、俺は扉を開けた。
「失礼しまーす。サークル見学に来ました……誰もいないんか」
全ての講義が終わっている時間にも関わらず、部屋の中には誰もいない。それどころか乱雑に置かれている本の上には少し埃が積もっている。
これはもしかしなくて既に潰れた後だったかなと思い、部屋を出ようとした所、机の上に原稿用紙が置いてあるのに目が付いた。
居なくなった誰かが書いていた作品なのだろうか?興味に惹かれソレを手に取り目を通す。
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それは良くある少女の憧れのようなお話だった。
ダンスに憧れた1人の少女。家庭は決して裕福ではなく、自宅で独学で踊りを練習していた所を魔女に見られてしまう。しかしその魔女により魔法がかけられ、少女はお城で行われていた舞踏会に参加することになり…
話はここで途切れている。なんと言うか殆どシンデレラである。作者はシンデレラに憧れていたのでは?と、思えてしまうほどシンデレラ。きっとこの後少女は王子と踊り、魔法が消える前に姿をくらますのであろう。
他にも幾つか作品があった。ライ麦畑で少年と少女が結婚を誓っていたり、海辺で彼をひたすら待ち続けるお話であったり、可愛い僕のアイドル出世街道なんていう謎に満ちた作品もあった。それらに目を通していると
---バサッバサ
何かが落ちたような音が響き、そちらに目を向けると。入口で彼女が顔を真っ赤にさせて立ち尽くしていた。
まずい、とてもまずい。
顔を真っ赤にしているということはこの作品は彼女が書いた物であると考えて良いだろう。そして恐らくここで書いていたと言うことは誰にも見られたくない。だから誰にも見られない場所で色々と考えながら書き綴ったのだろう。
感想を言うべきなのか、又はいっそのこと批評するべきか。なんて考えていたら、机の上に置いていた携帯が鳴り響いた。
画面に表示されていたのは美嘉ちゃんの名前、しかもメールではなく着信である。これ幸いと携帯と荷物を取り慌てて部屋を出る。
「待って!」
が、それは叶わずに襟元を掴まれてしまう。普段で有ればそれぐらい何ともないはずなのだが、慌てていた為か体勢不安定であったこと。また、思いのほか彼女の力が強かったことが原因か。ともかく俺は後ろに思い切り引っ張られる形となり…
「ひゃっ!」
彼女を巻き込む形で倒れてしまった。
何とか彼女に被害が及ばないように、彼女をだき抱え俺が下になる様に入れ替える。
大きな音と共に倒れ込み、そのい痛みに堪え慌ててだき抱えていた彼女を体から離す。
---もにゅん
と。つきたてのお餅のような、スライムの様な、上手く例えが浮かばないがとてつもなく柔らかく温かいものに触れた。
まさかと思い恐る恐る手が触れている所を見ると。
(やっちまったぜ)
俺の両手は彼女の立派な二つの山を鷲掴みにしていた。
冷や汗を流しつつも、しっかりとこの弾力を楽しんでいる。こんな所見られたら通報される事確定である。
それにしても柔らかい。思わずといった形で両手を動かすと
「んっ…」
少し艶っぽい声と共に、盛大な張り手を顔に貰うことになった。
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カチャカチャと箸を動かす音とTVの音がリビングを支配する。何時もの城ヶ崎家で有れば今日は何何があっただとか、色んな会話が広がるのだが…
(気まずい)
それもこれも恐らく…と言うか確実に俺の左頬に咲いた紅葉が原因であろう。
彼女は痛烈な平手打ちを浴びせた後、顔を真っ赤にしたまま部屋を飛び出て行った。そんな彼女を慌てて追い掛けたが既に姿は無く、謝ることも出来ずにそのまま帰宅することとなった。
帰ってきた俺に美嘉ちゃんは帰ってきた俺に対して、何故電話に出なかったのかと問いただしてきたが俺の紅葉を見て物凄く引いていた。莉嘉ちゃんは大爆笑していたが美嘉ちゃんが部屋に連れていき、何かを説明されたのかとても優しい目でこちらを見てきた。凄まじく心が痛い。
「ご馳走様です」
夕食を食べ終わり、自身が使った食器を片付けているとおじさんが無言で氷嚢を渡してきた。
「いや、ね。若いうちは色々あるよ。うん」
その言葉が更に痛かった…
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東京の大学に進学すると同時に、叔父の所で生活させてもらっていた。
本屋である叔父の所は、本の虫である私にとってこの上なく楽園に近い場所であり。なおかつ通っている大学の文学部は本が沢山あり、そして部員は私1人だけと言う素晴らしい環境であった。何故潰れていないのか疑問であったが何でも教授の1人がこの場所を大事にしているらしい。
その場所で私は自分の中の秘めた物語を書き綴るのが最近の楽しみとなっていた。誰も知らない、私だけの秘密。
でも今日はそんな楽しみが奪われてしまった。
何度かすれ違って顔はみた事がある1人の男性。同じ学部と言うだけ、それだけが共通点の彼が私の秘密を読んでいた。火が出る位恥ずかしかった。誰かにばらされて仕舞うのではないかと不安だった。そんな彼が部屋を出て行こうとした時、慌てて襟元を掴み…
(…最低です)
む、むむむ胸を鷲掴みにされてしまった!それだけでは飽き足らず揉みしだいてきて!
思わず平手打ちをしてその場から逃げ出してしまったが、少しだけ罪悪感がある。何せ秘密を見られたのは私が油断してそのまま置きっぱなしにしてたのが原因であるし、彼が倒れ込んだのは私が襟元を掴んだからだ。寧ろ彼は私の下敷きになる様にして助けてまでくれた。
(…明日、また会えたらきちんと謝りましょう)
そう決意して、私は本を読む事に専念した。
翌日からGWに入ることを忘れていたなんて、間抜けな話である。
黒ウサギは倒れてからのモミモミのパターンがお好き。
・経済学部の可愛い子
みんな大好きCVさとりなさん
・その道な顔をした人
みんな大好き武内君
今回のちっひはアルバイトとして346所属。尚将来は確実に正社員が確定していると言う脳内設定。武内君とは既に知り合い。初対面で少し涙目になっていたのは内緒。
感想お待ちしております。
こんなグダグダ小説ですが感想が励みとなるので何卒何卒…