筆が乗ってるうちに書くのが最良ですね!
黒ウサギ頑張りますっ!(島村感)
………え?
私の事が、好き?
神楽さんが、私の事を…?
言われた事を最初は理解出来ず、頭の中で何度も理解するために反復させる。
『好き』
言葉としての意味は理解出来る。だけど、今まで私はその気持ちは家族に対するものでしか無かったし、家族以外の他人から好意を向けられたことは無かった。
私は自分でも地味であると理解している。本の虫であるし、無口である。私の事を好きになる人なんて物好きな人だとしか思えない。
(…そうなると、神楽さんはその物好きな人で、本気で私の事を…好き…?)
頭が沸騰したのではないかと思える程、顔が真っ赤になっている。体が火照り、今すぐにでもお茶を飲んで涼みたい。
お茶を取りながら、チラリと神楽さんを見る。何処かソワソワしながら、恐らく私からの返事を待っているであろう彼。
お茶を飲み、また考える。
神楽さんの事は、多くを知っているわけでは無い。寧ろ知っている事と言えば名前位だし、後は学部が同じというだけ。それに、胸を…揉まれた人ですし…。せ、責任を取ってもらう事を考えれば…
(何を考えているんでしょう、私は…)
今考えるべきは責任の所在ではなく、彼の事をどう思っているか。
次に思い浮かぶのは、下着売り場での事。
(…もしかして、余りいい記憶が、残ってない…?)
でも、そんな少ない記憶の中で、彼の笑顔が脳裏に浮かんだ。趣味の話をしていた時の笑顔、好きな俳優の話をしていた時の笑顔。思い浮かぶ神楽さんの笑顔は決して多いわけではない。寧ろ少ないくらい。
(でも、そんな笑顔が…私も…)
答えは決まった
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文香さんに告白して、どれくらい経っただろうか。
5分、10分?もっと過ぎたかもしれない時間は、俺にとっては無限に思えた。それでも、文香さんと一緒にいるこの空間は悪くないと感じてしまう。
いつの間にこんなに好きになっていたのか、自分でもよく分からない。気が付けば、俺にとっては文香さんはとても大きな存在になってしまっていた。儚げな彼女と一緒にいたい、その笑顔をずっと見ていたい。そう思えるほどに気持ちが高まっていた。
(なんか独占欲高いなぁ…)
なんて思っていると。
文香さんが俯いていた顔を上げた。
「神楽さんの、お気持ちはとても嬉しいです…」
「うん」
「でも、私達はまだそんなに…お互いを知りません…」
確かにそれは否定出来ない。実際彼女と知り合ったのは二ヶ月前だし、それに二ヶ月の中で彼女と過ごした時間、交流した時間は殆ど皆無である。
「ですから…、今直ぐにお返事することは、出来ません…」
ごめんなさい。と言いながら頭を下げる文香さんを見て、それでも俺は嬉しかった。駄目だとは言われていない事が嬉しかった。つまりまだ好転する可能性があるということだ。それならば、まだ諦める必要は無い。
「まだチャンスが、有るんだよね」
そう聞くと、コクリと頷いてくれた。
「なら、その答えだけでも今は十分嬉しいよ。これから、文香さんが俺の事を意識してくれる。それで俺の事を好きになってくれたら嬉しい」
今日はいきなりごめんね。
と告げ、俺は駆け出しそうになる足を抑えながら帰路に着いた。
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夜、浮かれた様子で家で過ごしていた俺は、美嘉ちゃんにあの後の事を聞かれた。
「それで、悠人さんは愛の逃避行に及んだんだ★」
「愛の逃避行って…、そこまで大袈裟な物では無いんだけどね…」
美嘉ちゃんは今どきの女の子らしく、他人の恋の話に興味があるようで、それでそれで!と続きを促してきた。
「走り続けて疲れてさ、何処かで休もうかなって考えてたら…文香さんが家に招待してくれたんだ」
「そっ…か…」
家に招待ねぇ…。と呟く美嘉ちゃんは何処か複雑な感情を顔に浮かべていた。余り女の子向けな表現ではないが、歯の奥に引っかかったイカが取れなくてもどかしい。そんな微妙な表情。
「続けるね、それで彼女の部屋に上がらせて貰えて…」
「貰えて?」
「告白してきた」
………おや?
思っていたよりも、反応が小さい。と言うか反応が無い。恐る恐る美嘉ちゃんの顔を見てみると、悲しそうに、泣きそうに顔を歪めて俯いていた。
「美嘉ちゃん…?」
どうしたのだろうか。と声をかけると、ビクリと体を震わせ俺が見ていることに気が付くと、無理をした様な笑顔で結果を訪ねてきた。
「返事は保留なんだけど、ハッキリとごめんなさいって言われなかったから少しは気持ちが楽かな」
「そ、そうなんだ…。じゃあ、もしかしたらその文香さんは将来の義姉になるのかな★なーんて!」
そんな事を不意打ちで言われてしまい、思わず立ち上がりかけて机に足をぶつけてしまう。痛みに顔を顰めながら、流石にそこまでは考えてないと告げる。すると美嘉ちゃんは明らかに安心したように微笑んだ。
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何時頃だったか、だいぶ前の話。
ママに一度だけ、好きな人はいないのかと聞かれた事があった。何でそんなことを聞いてきたのかと聞き返して見たら、何でも娘とこう言う会話をするのが夢だったらしい。何で今なのかと思ったけど、小学校の時に聞いても好きという意識が軽いからなのではないかと思い、聞くのは辞めておく。
「ママも普通に女の子だねー★」
「パパの前では何時でも女の子のつもりよ、私は…。それで、美嘉は好きな人はいるの?いないの?」
少しだけ誤魔化そうと思っていたのだけど、どうやらそうもいかないらしく。
好きな人か…、と考える。
まだ、いない。それが正しい答え何だろうけど、悠人さんの顔がどうしても頭の中から消え去らなかった。
好きという訳では無い。ただ気になるだけのはず。
だから、私はママに聞いてみた
「ねぇママ。もし私が悠人さんの事を異性として気にかけてるって言ったら…どうする?」
そう聞いた時のママの顔は今でも思い出せる。やっぱりねといった、分かっていますよと言わんばかりの笑顔。その時の質問にママはこう答えた。
「誰かを好きになる事に良いも悪いも無いのよ…。前から美嘉が悠人君を気にかけているのは薄々感じてたし、私は否定はしないわ」
パパがなんて言うかは別だけどね。なんて笑いながら言うママの言葉に、私は少しだけ安心した。
「もしも、美嘉がどうしてもその気持ちを抑えられなくなったら。素直に告白しちゃいなさい。結果がどうであれ、後悔だけはしちゃダメよ?」
お風呂に入りながら、私はそんな事を思い出していた。
(後悔だけは、しちゃダメ…か)
口元まで湯船に浸し、ぶくぶく息を吐きながら泡立てる。
正直、悠人さんは誰かと恋仲になるなんて考えてもいなかった。恐らくだけど、悠人さんは人と離れる事を嫌っている。家族を失った事がきっかけなのか分からないけど、何処か私達家族との接し方も、少し距離を置いているように思えた。悠人さんなりに色々考えての結果なのかもしれないが、少しだけ、寂しい。
(だけど、悠人さんは今日告白して来たんだよね…)
大きな一歩だと、私は思う。ただそれが、その相手が私じゃないというのが、とても悔しくて、とても悲しい。
分かってはいた。悠人さんの私への接し方は莉嘉に対するものと同じ、妹としての接し方だって。頭では理解出来ているけど、心がそれを拒む。
(後悔だけは、しちゃダメ…)
ママに言われた言葉を、もう一度だけ思い出し
「悠人さん、私だって…好きなんだよ…」
一歩踏み出すことを決めた。
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少しだけ早めにお風呂に入り終わり、俺は部屋で本を読んでいた。文香さんの部屋で多くの本に囲まれ、読みたくなったからである。適当な本の適当な巻を手に取り軽快にページを捲っていく。一度読んだ本は、内容が頭に入っているためかスラスラと読める。
どれくらい時間が経ったのだろうか。丸まる1冊読み終え、時計を確認すると日をまたいでいた。明日は昼過ぎからの授業なので、夜更かししても問題は無いのだが、生活リズムを崩すと体調に響いて来るので寝ることにして部屋の電気を消そうと椅子から立ち上がった所で
「悠人さん、起きてる…?」
控えめなノックと共に、美嘉ちゃんが部屋を訪ねてきた。
珍しいな、と思いながらも起きてるよと告げると美嘉ちゃんご部屋に入ってきた。
風呂上りだからなのかその髪は未だ濡れており、慣れない甘い香りが部屋を満たしていき少しドキリとする。
先程も来たはずの美嘉ちゃんが、何処か大人びて見え、またしても心がドキリと弾む。
「美嘉ちゃんどうしたの、こんな時間に」
明日は仕事無いのかな、なんて考えながら美嘉ちゃんが座ったベットの横に腰掛ける。
返事が来ずに、そのまま沈黙だけが空間を支配して暫く。漸く美嘉ちゃんが口を開いた
「悠人さんは、さ…。文香さんの何処に惚れたの…?」
改めてそんな事を聞かれてしまい、少し恥ずかしくなるが答えていく。
「文香さんはね、些細なことで少しだけ笑顔になるんだ。大きく笑うわけじゃなくて、本当に微笑む程度なんだけど…。その笑顔に俺は凄い惹かれてる自分がいて、それに文香さんの凄い優しい雰囲気が好きで…」
そこまで喋り続けていると、肩を押されてベット倒される。
何が起きたのか理解出来ず、取り敢えず倒れた体を起こそうとすると
「そんなの、嫌だよ」
美嘉ちゃんが体の上に倒れ込むようにして乗ってきた。部屋に充満していた甘い匂いが、美嘉ちゃんが近づいてきたことで一層強くなる。薄布一枚隔てただけの、美嘉ちゃんの体から熱が伝わり心臓が早鐘の様に脈打つ。
「ねぇ、悠人さん…。こんなに近くに、素敵な女の子がいるんだよ…?」
「え…?」
その言葉を告げられて、混乱してしまう。それはつまり
「私ね、悠人さんの事が好きなんだよ…」
「ほら、私の心臓、凄いドキドキしてるの、わかる?」
そう言われながら彼女は俺の右手を手に取り、自身の心臓部に触れさせる。女の子特有の柔らかな感触に包まれながら、どうしようもないくらい気持ちが高鳴っていく。
「悠人さん、私はずっと一緒にいるよ…。本当の家族にだってなるよ…。だから」
そう言いながら、美嘉ちゃんの顔が段々と近づいてくる。どちらかがあと数センチ顔を動かすことで、キスが出来てしまえそうなほど、近づいてしまう。
「だから…、他の女の答えなんて待たないでさ…。今ここで、私を選んでよ…」
ー愛してるよ、悠人さん。
その言葉を聞いて、俺は…。
ここが分岐点です。
今回は最初から決めていたので文香endに向けて進みますが、文香ルートが終わり次第、分岐点から美嘉ルートに進みたいと思います。
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