監督の声と共に収録が始まる。
びっくりしたのは台本なしの完全アドリブオンリーってこと。つまり
「長きに渡る因縁も、今日ここで決着となるだろう…」
絶賛黒歴史を製造しているわけである。
「貴様ら仮面の戦士達、そして各国の姫達。よくここまで来てくれた、よくここまで抗ってくれた。だが、無意味であったと知れ!」
もうどうにでもなれと意気揚揚と声を荒らげる。見てみろ蘭子ちゃんのあの恍惚とした顔。絶対俺のこと同類と思ってる、もしくはこの仕事受けて良かったと思ってるに違いない
「いくぞ2号、3号!アイツを倒せばこの戦いも終わりだ!全力で行くぞ!」
「おう!」
「はい!」
その声と共に彼らは構えを取り、声を合わせて叫んだ。
『変身ッ!』
周囲を広く照らすほどの、眩い光と共に彼らは変身した。ちなみに、前回話したあきえもん特製のベルトがここで使用されている。他にも物凄く有り得ない物も作ってもらったんだけど
「せいっ!」
繰り出された拳を慌てて避けて、背後から蹴りを出してきた武内君の脚を掴み光ちゃんに投げつける。
これ確実に玉取りに来てます。余計なこと考えてると神楽が死にます。笑えないぜ!
体勢を崩した光ちゃんと武内君を放置し、Pと殴り合う。
『これは今までの恨み!これはこれからの恨み!』
直接脳内に話しかけてくる辺り、恨みが深い。
『ここでお前を思いっきり殴ることで、俺は貯めていたストレスを解消する!』
『殆ど恨みとか関係無しに私怨じゃねーか!』
こっちだって恨みはあるんだよ!と蹴りを繰り出すが
『闇に飲まれよ!』
聞き慣れた中二病満載の声と共に、俺の腕が文字通り闇に飲まれる。比喩であらず、割と真面目に左腕無いです。痛みも無いです。
これがあきえもんが三日三晩かけて、マキノさんと泉ちゃんと作り上げた『
先程の頭の中に語りかけてきたのもこの機械のお陰。蘭子ちゃんの闇に飲まれよがブラックホールみたいなのを作り出したのもこの機械のお陰。
何が言いたいかって言うと
『アイオライトブルー!』
『ピンキーライブリー!』
『トリプルスター!』
確実に死に近づいています。助けろまじで。
痛みこそ無いけど、無駄にリアルに左腕の感覚無いし、衝撃は来る。素直にやばい
「な!」
今回はそれを、Pを盾にする事で回避して事なきを得る。すると、先程投げ飛ばした武内君が入れ替わる形で襲い来る
『胸を借ります、先輩!』
『うん、普段ならドンと来いだけどさ、今はちょっと遠慮して欲しい』
「無双」
-正拳突き!!
岩をも軽く粉々にする拳が途切れることなく襲いかかる!
流れる冷たい汗を拭くことも出来ないまま紙一重で躱し、逸らし、叩き落とす。その一瞬の隙を距離を詰めてきた3号、光ちゃんが飛び蹴りを放つ。
高速移動による分身で躱すと同時に背後に周り、全力で回し蹴りを放つ。
腹部に当たり、ボキボキ骨を折る感触と立ててはいけない音がなったけどこれも機械のお陰で光るちゃんは無傷なので、容赦なく蹴り飛ばす。
「まず、1人」
結構力を込めたので衝撃で少しは動けなくなってると思う。現在進行形で俺の精神ゲージがガリガリと削られていくけど仕事だからと割り切る。冷静に居酒屋店主のやる仕事じゃないとか思ったらいけないのだ
そこからはまさにファンタジーだった。
美波ちゃんとアーニャちゃんが2人で俺を氷付けにしようとしてくるし、楓さんは弓矢で目を的確に狙ってくるし、文香ちゃんはなんか本から腕出して殴りつけてくるし、346の俺に対する恨みが天井知らずである。
まぁこの後全員この作品見てから悶える事になるんだよな、と軽く現実逃避する。蘭子ちゃんだけすっこい生き生きしてるけど、他の参加者軽く赤面してたからね…。
「よくここまで追い詰めた、初めてだよ、これ程に傷付いたのは」
撮影時間の終わりが迫っているカンペを見せられたので、終わらせる方向に持っていく。
「ここまでして、まだ倒れないか!」
「だけど、私達は諦めません!」
Pと武内君が終わらせる気が無いんですけどそれは…。もう終わろうよ、疲れたよパトラッシュ…。諦めてもう悪役が勝利させてもらおうと1歩踏み込んだ時
「やっと、やっと届いた……」
完全に、意識の外からの攻撃だった。吹き飛ばして、起き上がる気配も無かった光ちゃんが、光り輝く剣を突き刺していた
「1号さんが言ってた、私はまだ未熟だから、お前の相手にはならないって。でも、お前の意識から外れた時が私の戦い何だって!」
つまりあれか、クレイモ〇と同じパターンかこれ。
「そのために、私は鍛えてきた!お前に、勝つために!」
叫び声と同時に、剣が俺を両断する。
「馬鹿な…」
ズレた視点で倒れ込む。二分された空を見る機会とこ無いから少しだけ眺め続ける。
「これが、私達の絆の力だ!」
あ、うん。光ちゃんすっごいノリノリだね。と言うかそのセリフはどこぞの鬼武者のセリフだね。
悪役らしく爆発した方が良いのかなと思っていたが、Pが念話的なあれを送信してくる。
『神楽、最後はセリフ決まってるからカンペ見て!』
『いや、両断されてるから見づらいことこの上ないんだけど』
気合で頑張れよ!なんて言われて、炎の妖精であるテニスプレイヤーが脳裏に浮かんだ。
視線を横にずらしてカンペを見る。えーと…?
「これで、野望は潰えるのか…」
「あぁ、これでお前は終わりだ」
「そう…か、せめて最後に、もう一度だけ、貴女の笑顔を…」
「本当に、馬鹿な人…」
え?と声がするほうを見る。
周子ちゃんがいた。ずっと見てなかったからいつ出てくるのかと思ってたけど、ここで?
もう終わりに近いんだけど…
「本当に、私の為にこんなに傷ついて…」
「……気に止む必要は無い。全ては私がやり始めた事だ、君の為、なんて言いながらも多くの命を奪った。許されないことをした」
「本当に、許されないことをして来たわ。国を壊し、人を壊し、世界を壊し。それでも、私は貴方の事をずっと」
-愛していたわ
言葉と共に、フリであるはずのキスシーンが始まる。頭の中にクエスチョンマークが乱れて、思考が停止する。
だってガッツリ唇塞がれてますもん。下がフリーダムに動き回ってますもん。他の人からも見える角度だけど、何もリアクションが無いし。あれか、ご都合主義万歳のせいか。
長く感じる時間も終わりを告げて、俺の体が崩壊していく。もうこんな経験無いね、自分の体が崩壊する感覚とが生涯絶対経験する事できないし
「やっと、終わったな」
「はい」
「1号さん、2号さん、姫の皆が居たから、私達は勝てたんだ。誰1人欠ける事なくいたから、勝てたんだ!」
私達の勝ちだ!
そんな叫び声と共に、撮影は終わった。
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撮影が終わり、我が店で打ち上げである。
料理をぼーっと作りながら、あの時のキスについて考える。とは言っても纏まる気配は微塵も無い。むしろ謎ばかり増えていく。
あきえもんが作った機械がキスのフリは許さなかったからあんなにリアルな感触があったのか、それとも本当に周子ちゃんがキスしてきたのか
(さっぱりわからん)
そんな周子ちゃんはのんびりご飯を食べている。
考えても詮無きことなのかなと思考を完結させて、自分も飲みに加わる事に。
「いやぁ殴った殴った」
「流石、先輩です。あんな簡単に対処されるとは、思いませんでした…。これからも精進有るのみです」
武内君は何処を目指すつもりなのかと不安になる。記憶に間違いが無ければ確かアイドルのプロデューサーだよね、君。
最近のプロデューサーは暴力的なのかも知れない。そんな事実に少し恐怖する。
ま、楽しかったから良いか。
皆が笑顔で入れますように。そう珍しく神様に祈りながら酒を煽った。
たまに書きたくなるバトル。
次回はちゃんとウサミン出るから…多分!