居酒屋で愚痴を聞くだけの簡単なお仕事です   作:黒ウサギ

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居酒屋お待ちの人には申し訳ないのですが、広げすぎた風呂敷を畳むのに悩んでいるので暫しお待ちを。
暫くはアニメ基準になるかと思われます。
話は変わってアニメ版の方が観覧数多いのですねと。やっぱりオリジナルのお話よりもベースのあるアニメの話がわかり易いんですかねと…


番外編:新田のソロはロボットのOPになる

血の滲むような努力を行いそれを眺め。

流した汗が煌めくのを眺め。

楽しさと緊張を胸に抱えながら迎えたライブ当日。

天気も良く、まだ出来てから3年の新しいこのモールには人が大勢集まっている。そのど真ん中と言ってもいい場所で今回のライブは行われる予定となっている。

既に足を止めて何事かと待っている人もいるし、横目で見るだけで立ち去る人もいる。

 

「まぁ待ってる人がいるなら上出来だわな」

 

宣伝も告知もして誰もいないよりはマシである。それに今回のライブを行うのは殆ど顔出しもないアイドルだ。高望みをしない方が良いだろう。

舞台裏にて、緊張の面持ちをした新田とアナスタシアに話しかける。

 

「あんまり人はいないかも知んないけど、初めてのライブならこんなもんだ」

 

「はい、分かってはいます」

 

「アー…、この前の美嘉のライブに比べると、少し寂しいですね…」

 

気持ちは分からんでも無い。あのライブの後なら確かに物足りない気持ちも有るだろう。

とはいえ最初は誰でもこんなもんだ

 

「高垣楓だって最初はこんなもんだったぞ、それにアイツの場合は舞台はこんな派手じゃないし、もっと小さかった」

 

今でも鮮明に覚えている、楓さんの初めてのライブに武内君と付き添って、無名の楓さんにファンが産まれる瞬間を見て、彼女の笑顔を見て

 

(あの時、プロデューサーで良かったって思えたんだよなぁ)

 

拍手貰って泣き始める楓さんを止めるのは大変だった、一緒に泣き始めたファンに楓さんの歌を褒められた時はこちらも涙が出た。

 

「ですね、皆スタートラインは変わらないですよね。私達はこれから、ですよね」

 

「ミナミ、一緒に、頑張りましょうねっ」

 

「うん!アーニャちゃん!」

 

仲良く手を取り合い、笑い合う二人を見て、大丈夫だと実感する。問題があるとするなら武内君の方である

 

(口数少ないし、ちゃんと伝えられてるなら良いんだけど…)

 

武内君なら人が少なくても「当然の結果です」としか言わなそうだし、不安である。でもそんな彼を今は信じて、俺は『ラブライカ』の二人を応援しようと思う。

 

 

 

 

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結果から言えば『ラブライカ』は成功し、『ニュージェネレーションズ』は失敗に終わったと言える。

先にラブライカの方から言おう、二人は振り付けのミスも無く歌詞も間違えずに、無事にステージを終えた。少ないながらもお客さんからの拍手も貰え、観客の顔は笑顔であった。個人的には花丸上げたいレベルの成功である。が、問題はニュージェネレーションズ。振り付けもミスすれば、アップテンポな曲にも関わらず笑顔は無い。何があったと思い、裏で話を聞こうとしたところ

 

「私、アイドル辞める!」

 

そんな声が聞こえてきたのでさぁ大変。と言うかお前ふざけんな、折角武内君が出した企画書も通って俺だって色々仕事の為に各方面に頭下げて取ってきた仕事もあるんだぞ。少し怒りながら本田の背後に近づき、ワッショイと高い高いする。

 

「わっ、ちょ!?下ろして!!」

 

「うっさいわ小娘、何がアイドル辞めるだ。あんま巫山戯た事言ってるとお前が今まで使用してきた施設の料金とかレッスン代徴収すんぞごら」

 

「待って!本当に下ろして!恥ずかしいから!スカートの中見えてるから!」

 

そんな事気にすんなと言いたいが、見れば武内君は顔をそらしているし、島村と渋谷も下ろしてくれと頼んで来ている。悪者ですね自分と嫌悪しながら本田を下ろし、何があったのか聞いてみた。

で、聞いてみて分かったことはこの子割とバカである。と言うかやっぱ天狗になってた。溜息と共にゲンコツを振り下ろす。大きな音と共に振り下ろされたそれは周りで待機していたCPの面子のが冷や汗を流すほどである。と言うか緒方気絶したし、多田も青い顔してるし。まぁいいやと本田の目を正面から見て話し出す。

 

「お客さん少ないからどうした。お前らプロだろ?なのに何あのステージ、笑顔で踊らないし歌わない。何人かのお客さんは笑顔で拍手してくれてたけど、俺からして見れば謝りたいレベルだ。」

 

これは本田だけでなく、ニュージェネレーションズの面々にも言えることだ。本田を心配するあまり自身の事を疎かにして振り付けのも、歌も酷いものになっていた。

 

「でもっ、私友達に凄いライブやるって言って!わざわざ登りまで作って応援までしに来てくれて!こんな小さなステージだよ!?私恥ずかしいじゃん!」

 

「黙らっしゃいこのアンポンタン。応援に来てくれた友達がいんのに何であんなステージにした?寧ろそっちの方が恥ずかしくない?そもそも武内、お前何も言わなかったの?」

 

「当然の結果…とだけ…」

 

口数少なすぎて意思疎通が出来てないのね、おじさんの不安はよく当たる。取り敢えずお前も後で説教なと告げて本田に向き直る

 

「ラブライカの二人には言ったけど、初めては誰でもこんなもんだ。人はいない拍手は貰えない。高垣も姉ヶ崎もそうだった。大方前回のバックダンサーで浴びた声援とか期待してたんだろうけど、最初からそんな事になってたらこの業界どんだけアイドル増えると思うよ。」

 

「でも…」

 

「デモもストも無い。高垣が、姉ヶ崎が今の舞台に立てるのはこんな事で挫けずに、努力を続けてきたからだ。そんな人達にペーペーのお前らがスタートで並べる訳ないだろ。お前らもよく聞いとけ、努力は報われるもんだ。最初から努力が実を結ぶわけはないが、必ず実を結ぶ。何時か報われる」

 

俯いたままの本田の頭に手を置いて、優しく語る

 

「だから諦めんな。アイドル辞めるなんて簡単に言うな。アイドルになりたくてもなれない奴だっている。お前はそんな奴らの上にいるんだ」

 

その言葉に反応したのは島村だった。聞いた話では養成所の仲間が激しく入れ替わりする中、彼女は諦めずに続けてアイドルになったらしい。詳しくは武内君が知っている。泣き始めた本田をくるりと反転させて武内君と向かい合わせる

 

「もし、本当にアイドルを辞めたいなら止めない。お前まだ若いし別に支障は無いだろうし。でも、辞めたら何時か後悔させてやる。テレビをつけたら島村が、渋谷が、お前が捨てたCPの仲間が笑顔で歌ってる姿を見せつけてやる。」

 

そう告げて、彼女の言葉を待つ。

 

「そこまで、言われて…辞めるなんて出来ないよ…。プロデューサー、しまむー、しぶりん。ごめんなさい!」

 

うん、それでいい。

謝った事で結果が変わるわけではない。それでも、本田は一歩踏み出したと俺は思う。

らしくないことしたなと、後は任せると武内君に告げて俺は1人その場を立ち去った。

 

 

 

 

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「私、頑張る。努力する。今日の事を忘れないで、こんな事二度と起こさない様に笑顔で、皆を楽しませるアイドルになる!」

 

そう告げた彼女の顔は、晴れ晴れとした太陽の様に眩しかった

 

(自分では、こんな顔をさせることが出来なかったでしょう…)

 

力不足を痛感しながら、先輩の姿を思い知る。

思えば、自分の元から彼女立ちが去っていった時も、こうして叱ってくれた。まるで息子をしかる父のように。その記憶を懐かしく思いながら、ふと違う記憶を思い出す。以前の城ヶ崎さんのライブの時も、先輩はこうして1人消えて苦しそうに蹲っていた。まさかと思い、後を追いかけようとするが、大切なアイドルを送り届けなければならない。どうしたものかと悩んでいた時に、神崎さんが手を挙げた

 

「えっと、その…」

 

何故か恥ずかしそうに俯いて、話しづらそうにしている彼女に不思議に思いつついると、新田さんが助け舟を出してくれた

 

「ごめんなさいプロデューサーさん。少しお花を摘みに行って来ますね」

 

あぁなる程と許可を出す。どうせならと、新田さんに先輩を連れてきて欲しいと告げる。すると彼女は頷いてくれ、神崎さんと共に消えていった。

 

「プロデューサー、女の子の気持ちを少しは理解してみようか」

 

「努力します…」

 

「そーだよ!プロデューサー!おじさんも言ってたじゃん!努力は報われるって!」

 

そんな赤城さんの返しに、自然と笑顔になる。

今回の事で、皆思う所があるかもしれない。でも、いい方向に進む事が出来る、そう思う。

暫く皆さんと他愛の無い会話をしながら、迎えに行った二人と先輩を待つ。すると、新田さんが焦ったように走ってきた

 

「神楽さんからの伝言です、蘭子ちゃんは送り届けるから先に戻っててくれって」

 

まさかと思っていたが、やはり先輩は体調を崩していた。その事に気付かなかった自分に情けなく思いながらも、一先ずここは新田さんと神崎さんに任せて皆さんを送ることにする

 

「すみません新田さん、新田さんも残って先輩の事をお願い出来ないでしょうか」

 

小声で会話する私たちに、皆さん不思議に思ったのか声を掛けてくる。

 

「いえ、どうやら神崎さんが少し体調を崩してしまったらしいので、神崎さんは新田さんにお任せして皆さんを送らせて貰います」

 

「そういう事なの、ごめんね皆。先に帰ってて?」

 

新田さんはそれだけ告げて、こちらを見て頷き去っていった。

 

「蘭子ちゃん大丈夫かなー?」

 

「ミナミが付いてます、きっと、大丈夫ですっ」

 

「美波ちゃんは大人だもんねー☆」

 

そんな事を言いながら、皆さんの帰り支度を待ちながら考える。先輩は大丈夫なのかと。でも、今は新田さんに任せ、私たちはこの場を後にした。

 

 

 

 

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「すまんな、神崎…」

 

なんと言うか、怒ったことで血圧が上がったせいなのか頭痛が襲ってきてトイレ近くの壁にもたれ掛かっていた所を新田と神崎に見られた。慌てる二人を何とか落ち着かせて、人に酔っただけと告げる。渋々と言った形で納得してくれたのか、武内君には取り敢えず先に帰るように伝えてくれと新田に頼み、何故か神崎はここに残った。もじもじと手を擦り合わせて、何がしたいのだろうかと悩んでいると、彼女は意を決した様に近くのベンチに腰掛けて、膝を叩いて来た。

 

「その…私が具合悪い時、ママが良く膝枕してくれましたから…。だから、神楽さんも…どうぞ…?」

 

で、冒頭にいたり謝っている。

流石にこんなおじさんが膝枕とかキツイだろと思ったのだが神崎が頑なに譲らず膝枕を勧めてくるので、最終的にはこっちが折れた。

女性特有の柔らかな肌と、何かしらの香水の香りに恥ずかしくもなりながら横になっていたわけだが、意外とこれが落ち着く。膝枕恐るべし…

そんな風に考えていたら、今度は撫でられた。

 

「神楽さん、何時も頑張ってるって聞いて、その…感謝の、気持ちです…」

 

恥ずかしそうに告げる神崎に、少しなさけなくなりつつも、感謝されていることに嬉しくなってしまう

 

「神崎も新田も皆も、絶対シンデレラになれる。ありがとな、久しぶりにお礼言われた気がするよ」

 

「いえ、その…私口下手ですし、恥ずかしがり屋ですから、こうして行動にしか移せなくて…」

 

「それでも、ありがとうだ。……あーよし、元気でた!」

 

まだ少しだけ頭は痛むが、楽になったのも事実。立ち上がり神崎の頭を撫でて、笑顔でもう一度ありがとうと感謝を述べる

 

「よっし、神崎。好きなもん買ってやる!欲しい物あったら何でも言え!」

 

「ふぇっ!でも、皆帰ったし、私だけそんな…」

 

「いいからいいから、行くぞ!」

 

少し強引に手を取り、立ち上がらせて歩き出す。その手はとても暖かく小さくて、こんな子に心配させた事が情けなくて、恥ずかしかった。

途中で新田と合流して食べたクレープは、二人の笑顔もあって、今までで一番美味しく感じた

 

 

 

 

 

 




例のごとくあまり意味の無いタイトルから始まった今回のお話。
ちゃんみおアイドル辞めない見たいなので島村さんは風邪を引きませんししぶりんも引きこもりません(目をそらしながら)
基本このお話は原作改変になるので、気に入らない方は今後の番外編もご注意を
次回も申し訳ないのですが番外編続きます。アニメで言うなら蘭子特集ですね

感想お待ちしております。皆様の感想が黒ウサギのエネルギーになります
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