居酒屋で愚痴を聞くだけの簡単なお仕事です   作:黒ウサギ

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ちょっと息抜き。
息抜きし過ぎじゃない?っていう突っ込みは無しでお願いしませう


新田美波

 

 トントントンと包丁をリズムよく動かしネギを輪切りに、更にそこから細切れに刻む。

 梳いた卵に刻んだネギを混ぜ合わせ、良く掻き混ぜたそれを熱々に熱されたフライパンへと流し込む。

 ジュウジュウと焼ける音を聞きながら、鮭も並行して焼いていき、サラダの盛り付けも行う。

 

「お、おはようございます・・・」

 

「うっすおはよ。そろそろご飯出来上がるから席に着いて待ってて」

 

 起き上がって来た彼女にそう告げて、自分はさっさと朝食の準備を終わらせる。

 

「あの、私も何か手伝います」

 

「じゃあ箸と茶碗だけ用意してもらっても良い?こっちも出来上がった物持ってくから」

 

 そう告げると彼女は笑顔を浮かべ、手早く準備を済ませていく。自分も作った卵焼きと鮭の切り身を皿に移し、冷蔵庫から作り置きしていた切り干し大根を持ってテーブルに向かう。

 既に彼女は席に着いており、自分が来るのを待っていてくれたみたいだ。

 

「さてと」

 

「頂きます」

 

「召し上がれ」

 

 こうして彼女と一つ屋根の下で過ごすようになってから一週間。

 いくら親戚だからと言ってうら若き男女が同じ屋根の下で過ごすのは如何なものかと思うが、年頃の娘が一人暮らしをするよりかは向こうも自分の所に預ける方が良いと思ったのだろう。あっという間に彼女がここで暮らす事が決まりこうして今に至る。

 一週間も経てば流石に彼女と過ごすのも慣れてくるのだが、歳不相応色気が中々に怖い。湯上りでしっかりと服も来ているのに何故か迸る色気、運動終わりに汗で張り付いた髪がとても色っぽい。

 母さん父さん、良くこんな子と二人っきりにして海外に出かけてったな。間違えあったら困るのは俺だけでなくあんた等もなんだからな・・・。なんて言い訳?みたいな事をしても現状が変わるわけでは無いので素直に考えるのをやめておく。

 

「ご馳走様でした」

 

「お粗末様でした」

 

 食べ終えた食器を洗い場に持っていき水に漬けて洗いやすくしておく。

 

「じゃあ、私一限目からなので行ってきますね」

 

「ん、これ持ってきな」

 

 確か彼女は今日サークルに顔を出す予定だったので、お昼が必要になると思い作っておいたお弁当を手渡す。

 

「毎回ありがとうございます・・・」

 

「気にしない気にしない、どうせ食費とか生活費は貰ってるんだし食べた食べた」

 

 申し訳なさそうに頭を下げる彼女に苦笑しつつ、そのまま玄関まで笑顔で見送り自分もお店の用意をすることに。

 こんな朝が、最近の新田美波と過ごす自分との毎日。

 

 

 

 

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 正月に親戚一同と集まる事があり、久し振りに店を閉めてそちらの集まりに顔を出したのが全ての始まり。

 懐かしくも変わらない顔ぶれに少しだけ安堵しつつ、数年ぶりに顔を合わせたためにいろんな人に声を掛けられ疲れて外で一服していた時だった。

 集まった家の前に一台の車が停まり、そこからまた別の親族が降りてくる。その中に自分と同じ年ごろに見える人がいた。それが彼女、新田美波。最後に会ったのは5年程前なのだが、暫く合わないうちに大分成長していた。何処がとは言わないけどね。

 そうして彼女を見ていたのだが、向こうも視線に気づいたのかこちらを見て、走り寄って来た。

 

「久し振りです、神楽さん」

 

「ん、久し振り」

 

 吸っていた煙草の火をもみ消し、灰皿に吸殻を入れる。記憶が確かなら彼女はまだ未成年だったはず。と言うか、見た目が完全に自分と同じぐらいの年齢に見えるんだけどさ、俺の微妙に残っている記憶が確かならこの子高校卒業してないよね?今年卒業だっけ?

 まぁそこらへんはおいおい分かる事だろうし、気にしなくても良いだろう。会話もそこそこに切り上げてどんちゃん騒ぎしている部屋に一度戻り、飯を食べる。

 

 飲んで食べて、喋って笑って幾星霜。まぁそんなに時間が経った訳では無いのだが時間的にはお開きにするには良い頃合いだろう。翌日からは普通にお店を開くつもりでいたし、まだそこまで時間が遅くない今のうちに帰るつもりだったのだが

 

「えっと、神楽さんお時間大丈夫ですか?」

 

「ん、美波・・・ちゃんか。そんな時間かからんのなら平気だけどどした?」

 

 何か言いにくそうにしている美波ちゃんを不思議に思いながらも、帰る準備を終わらせていく。と言っても財布を持って手荷物を少しだけ持つだけで終わるのだが。

 

「えっとですね、お母さんから聞いたんですけど神楽さんって一人で暮らしてるんですよね?」

 

「ん、それなりの場所でそれなりの家でそれなりに繁盛してるお店をやってるよ」

 

「行き成りなんですが、住み込みのアルバイトとか募集するつもりはありません?」

 

 本当に行き成りである。まぁ最近はお店も良い感じに繁盛してきているのでアルバイトを募集するのも良いかなと思っていたのだが

 

「アルバイトは募集しても住み込みはどうだろ、寧ろ見知らぬ人の所に住み込みとかまず来ないんじゃない?」

 

「あの、ですね・・・?私今年大学受験なんですけど、もしそこに合格出来るのであれば住む場所を探さないと行けなくて・・・」

 

 成程ね、大体読めた。

 

「でも親戚だからと言って男の家に住み込みはどうなの?流石に両親が許可しないんじゃない?」

 

「両親は、合格して一人暮らしをするよりは良いと言ってくれたので・・・。後は神楽さんさえ良ければなんですが・・・」

 

 そう言われて悩む。アルバイトが欲しいのは事実であるし、別に同居人が一人二人増えた所で問題は無い。ただなぁ、年頃の娘っ子が家にいるってなると理性とかそういうのとは別に厄介な奴がいるしなぁ・・・。

 一先ずはこの場で決めても、美波ちゃんが合格出来なければ意味が無い話。なので合格してからもう一度話をすることにして、その場はお終いとなった。

 

 

 

 

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 で、現在こうして二人で暮らすことになっている。つまり美波ちゃんは無事に合格して、あっという間にサークルに加入して、ありがたい事に今度うちの店でサークルの歓迎会を開いてくれるご様子。

 

「で、その噂の美波ちゃんって子はまだ帰って来ないと」

 

「大丈夫、帰ってきてもお前がここにいる間はお店に来ないように言ってあるから」

 

「中々に酷いねお前」

 

「相変わらず、先輩たちは仲がよろしいですね」

 

 なんて会話を繰り広げるのは俺とPと武内君との大学時代の良く遊んだ学友たちである。本来であればここに千川と言う守銭奴も混ざってくるのだが、あいつは今美城常務?専務だかと出かけているらしいので今はいない。

 

「だって仮にここでアルバイトやとってもさー、Pが引き抜いていくから長続きしないんだよ。だったら最初から顔見せしない方が俺に優しい」

 

「俺は悲しい」

 

「ざまぁミロ」

 

 こんな風にかる愚痴を叩けるのも、良く知った間柄だからだと思う。

 

「まぁ気が向いたら顔ぐらいは見せてやるから、ほらほら仕事した仕事」

 

 この二人は今夕飯を食べに店に来ただけである。この後もたまりにたまった書類を捌かなければならないらしいので、武内君にだけ頑張れと告げてPには塩を塗して置く。

 二人がいなくなり、食器を片づけながら考える。

 実際に美波ちゃんがアイドルとしてスカウトされた場合、俺はどうしたらいいのか。またバイトの募集を掛けるべきか、まず彼女の両親に報告するべきか、美波ちゃんの好きなようにさせるべきか。

 

「ただいまー」

 

「ま、そん時はそん時で」

 

 今悩んだところで意味は無い、だったら自分は彼女がどういう選択をしても良いように応援するだけである。




続くかは分からない。
多分次もこうして誰かに焦点を当てる話を書くかも知れない
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