ROMANCE DAWN STORY   作:ヘビとマングース

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トレジャーバトル 三回戦

 《さぁ! 実況に戻ってきたぞ、ロッキー・ハッタリーだ! 想像以上の苛烈さで二回戦が終わった後だが呆けている場合はない! 続いて三回戦を始める!》

 

 安全な位置で見ている観客たちは大いに盛り上がっていた。

 一回戦、二回戦と、舞台が違ったことも相まって趣の異なる試合展開を見せている。これなら試合が続いても飽きることなく観戦することが可能だ。

 そして次は、いよいよ待ちわびていた優勝候補の登場だった。

 

 《舞台は常秋島! エース&キリペア VS スモやん先生&その弟子ペアの一戦だァ!》

 

 歓迎するかのような怒号が町を揺らす。

 Mr.2の活躍すら忘れた。それ以上の強者を彼らは知っている。

 島に降り立ったエースの姿には、数えきれないほど多くの期待が寄せられていたようだ。

 

 ブルースクエアの南側、常秋島。

 そこは町の四方にある小島の中で最も広く、きれいな円形の島だが全体が町になっており、今は人の姿が消えて閑静な場所となっていた。

 町や家を壊しても後で直すので存分に戦って欲しい。事前に言われていたため気は使わない。

 やはり中央に宝箱が置かれ、そこを挟んで十字型に四人が立った。

 

 キリとエースは微笑を湛えて、スモーカーとたしぎは真剣な目で敵を見ている。

 ハッタリーが実況で観客を盛り上げる間、キリは彼らを見てにこやかに話しかけていた。

 

 「うーん、やっぱり見たことある気がするなぁ。どっかで会わなかった? 例えばだけどローグタウンとかでさ」

 「気のせいだ」

 「わ、私たちは怪しい者じゃありませんよ」

 「そう言われると逆に怪しいんだけどね」

 「まぁいいじゃねぇか。それより大事なのは試合だ」

 

 エースが仲裁したことでキリは追及をやめる。

 その代わりエースに向けてのみ、二人にも声は聞こえただろうが少し小さく告げる。

 

 「エースは“先生”を頼むよ。煙の能力者で腕は確かだ。海軍本部大佐くらいには強い」

 「具体的だな。任せろ」

 「その間にボクが宝を運ぶ。速攻で行ける?」

 「おう」

 

 作戦会議は筒抜けであったとはいえ、それで喜ぶほどスモーカーは単純ではない。

 なぜ事前に決めておかなかったか。或いはまだ試合が始まっていない現時点でその場を動こうともせず、小声とはいえ聞こえてしまうその距離で話すのか。理由は単純だ、聞こえたところで止められないという自信を持っているに違いない。

 そしてその自信は間違いではないとスモーカーも判断していた。

 

 火拳のエース。この男が居るだけで勝利が驚くほど遠い。見えないとさえ思うほどに。

 観客がキリの存在を必要ないとすら言っていたが、間違いではないだろう。

 彼はきっと一人で参加しても優勝できる実力がある。

 

 大会に参加した以上、勝たなければならない理由は彼らにもある。

 最悪の状況の中で、スモーカーは尚も勝ちを奪うべく、絶えず思考を動かしていた。

 

 この場がルールで支配されているのが不幸中の幸いだった。難しいとはいえ今やるべきことはそう多くない。彼らの攻撃を掻い潜り、宝箱を自陣に運んで守り切ればいいだけ。

 これが驚くほど難しいのだがあの二人の命を奪えと言われるよりは簡単であろう。

 試合開始の合図があるまでスモーカーは一瞬たりとも油断していなかった。

 

 《よぉし、それでは全員準備ができたな! 試合を開始するぞ!》

 

 その合図があるまで、四人は一切動こうという素振りを見せず、立ち尽くした状態を保つ。

 

 《Ready~……GO!!》

 

 真っ先に動いたのはキリだった。

 ポケットに突っ込んでいた両手を素早く振り、小さな紙を十数枚投げ飛ばしたのである。それらは意思を持つかのように敵である二人へと飛来していった。

 それだけならば迎撃することもできただろうと思う。

 武器で撃ち落とそうと考えなかったのは、同時にエースが動いていたからだ。

 

 両手の指で銃を模すかのようにしながら腰だめに構えていた。

 ただふざけている訳ではないことは行動で伝わる。

 指先に火が灯り、そこから弾丸のような火の玉が撃ち出されたのだ。

 

 「火銃(ヒガン)!」

 

 それらは無作為にばら撒かれているように見えた。だがよく見れば違う。いくつかの弾が二人が迎撃しようと考えていたキリの紙に当たって火を点ける。

 素早くキリが指を振るった。

 操作の能力により燃える紙が軌道を読ませぬ奇妙な動きを見せ、どこから来るかわからない。即席ながらも彼らの協力した攻撃だった。

 

 「指揮紙」

 「チッ……ホワイトアウト!」

 

 厳しい表情を見せたスモーカーが両腕を煙に変えて周囲へ伸ばした。

 彼の体ならば燃える紙が当たってもダメージはない。しかしたしぎは違う。

 自分のためというよりは彼女のために煙の腕を伸ばし、質量のあるその煙は燃える紙を捕まえ、燃え尽きて灰になるまで逃しはしなかった。

 

 その間にキリは紙を連結させ、ロープを作り出して宝箱に巻き付ける。

 強く引いて空へ飛ばし、落下してきた宝箱を受け止めた時は、まだ彼は一歩も動いていない。

 

 驚愕して、刀を抜くことはできたが、それだけだ。呆然とするたしぎは一歩も動くことができずに彼らの攻防を眺めており、次元が違うとさえ感じている。

 キリの速さに、突発的に対応したエース、そして着弾の前に気付いたスモーカー。

 能力者という事実に加えて、彼らの眼には何が見えているのか、理解が及ばなかった。

 

 だがたしぎが驚いていたのはそれだけではない。

 スモーカーとてすでに気付いている。

 ホワイトアウトで燃える紙を防御した瞬間、頭上をエースに取られていた。

 

 拳を構えたエースが笑みを作り、真下に居るスモーカーを見る。

 両腕を煙に変えていた彼が回避することは難しいタイミングに思える。しかし全身が煙で構成されているスモーカーならばたとえ“火拳”を受けたところでダメージはないはず。

 少なくともたしぎはそう思ってしまった。そのせいで次の瞬間には再び息を呑む。

 落下していったエースは火を出さずに自らの拳でスモーカーへ殴り掛かった。

 

 「なっ――!?」

 「オラァ!」

 「チッ!」

 

 腕での防御が間に合わないと判断したスモーカーは、軽く跳んで蹴りを放った。

 エースの拳と激突し、確かな肉体の感触があって、煙になって受け流すこともできずに両者の体へ衝撃が走る。本来、ロギアならばあり得ない光景だ。

 キリとたしぎは真剣にその一瞬を考察していた。

 

 二人はさらに攻防を繰り広げる。

 両腕を元に戻したスモーカーは十手を使ってエースへ突きを繰り出す。

 火になって逃げることもできるはずだがそうせず、攻撃を見切って紙一重で躱していた。

 どちらも能力者なのだが能力を使わない戦いを繰り広げている。それはロギアとは思えぬ戦闘に見え、ただ不思議に思えて仕方ない。

 

 少なくともスモーカーが何かを警戒しているのは事実だ。

 能力を使わず回避するエースに、あくまでも十手による攻撃を繰り返し続けた。

 

 この瞬間はチャンスである。

 用があるのは互いに準決勝と優勝賞品。ここは通過点でしかない。

 宝箱を運ぶならば今が最も適した瞬間だろう。そう判断してキリが自陣へ向かって駆け出した。

 

 「あっ!? 待ちなさい!」

 「バカ弟子ィ! 動くなッ!」

 

 キリが走り去る姿を見てたしぎが動く。その瞬間、スモーカーの制止と共に、たしぎの道を塞ぐように炎が壁となって地面を走った。

 足を止めてぞっとする。止め切れずに突っ込んでいれば火達磨になっていただろう。

 

 スモーカーの猛攻を避けながら、エースには周囲が見えていた。

 冷静に判断してキリの退路を作り、自らがその二人を止めるべく残ったのである。

 

 常秋島には町がある。小規模とはいえ見晴らしのいい常春島より視界は悪い。

 すでにキリの姿は見えなくなっていて、おそらくは悠々と自陣に宝箱を置いている頃だろう。

 放っておけば敗北は必至。今すぐにも宝箱を奪取しなければならない。しかしエースの相手をしてそれどころではないスモーカーは、怒声と思える声で指示を出した。

 

 「バカ弟子! 迂回して奴を追え! 宝を陣からどけてこい!」

 「はっ、はい!」

 

 指示を受けたたしぎは迷わず駆け出した。ここに居ても足手纏いになる。

 火拳のエースをスモーカーに任せ、自身はキリを追う。

 

 一際高く跳んで宙返りをし、帽子を押さえながら着地したエースは彼女の背を見送った。

 止めることもできたかもしれない。敢えてそうしなかったのはキリならなんとかするだろうという考えがあったのと、スモーカーを警戒してのことである。

 

 正しく判断するならば、スモーカーはエースの敵ではない。

 それでも彼が油断しなかったのはスモーカーの判断力が優れていたからだ。

 相手がロギアと知り、また格上であることを理解して、能力の使用をやめて十手のみを使った。この点から考察できることは一つ、十手に海楼石が仕込まれている。拳も使わず執拗なまでに十手に拘ったのはそんな理由があるからと見て間違いない。

 

 エースは、白ひげ海賊団の隊長たちの中で最も若い。それ故に経験の少なさや、持ち前の性格がそうさせる勝つまで戻らないような勝手な行動も多いとはいえ、落ち着きがないのはあくまでも他の隊長に比べればの話。

 隊長を任されるほどの男がその状況を理解できぬはずがなかった。

 

 彼の判断によれば、スモーカーは覇気を使えない。だが知っているような行動がある。

 何より今のキリでは太刀打ちできないロギアの能力者。

 たしぎを行かせてでも、彼はこの場でエースが仕留めなければならない相手だ。

 

 「しょうがねぇな」

 

 笑みを湛えたままふーっと息を吐いて、彼の指に火が灯った。

 急ぐ訳でもなく右手が上げられてスモーカーに掌を見せる。

 ゆっくり、指先から徐々に右腕が燃えていき、異様な姿を見せながらエースは笑顔だった。

 

 「一応おれも隊長だ。それなりの働きはしねぇとな」

 「フン……一応、か」

 

 スモーカーはしっかりと敵を見据え、動揺は最小限に抑えており、感情は揺らいでいない。そして普段とは違い、全く活路を見出せずにいたらしい。

 表情こそ冷静なままだがエースに勝つ姿を微塵も想像できずにいる。その方法もわからない。

 冷静に判断した上でその結果だ。

 こんな経験は初めてであり、珍しく自分から攻めることができずにいた。

 

 互いの能力だけを考えれば“火”と“煙”。相性はあってないものに思える。

 むしろ脅威と感じるのは能力以外の何かがありそうだからだった。

 

 上官に逆らうことが多くて僻地に飛ばされたとはいえ、スモーカーは本部の海兵。現在は海賊討伐を第一の任務とする遊撃隊、本体とは別の小隊を指揮していた。

 その実力は一目置かれており、命令にさえ従えば良い海兵だとも言われている。

 

 彼がまだ新兵だった頃、教官より話を聞いたことがある。

 人間には秘められた力があり、操ることができればロギアにも触れることができるという。

 一連の行動からエースがその力を持っていることは予想できた。

 ならば自分は、彼の攻撃を全て避け、海楼石を仕込んだ十手で攻撃する。それが唯一の作戦だ。

 

 エースは笑みを消さない。余裕がある、ということか。

 それはその分の実力差があることを予感させた。

 

 ハッタリーの実況が続く中、もはや二人の耳には入らず、敵の足止めにのみ集中する。

 どちらが先に動いてもおかしくない、そんな一瞬。

 沈黙を破ったのはエースだった。

 

 「陽炎!」

 

 突き出された右腕が火に変わって伸びてくる。

 咄嗟にスモーカーは腕を変えて煙にして伸ばし、拳をぶつけて止めた。

 

 「ホワイトブロー!」

 

 その炎、おそらく十手では止め切れないと判断したのだが、効果のほどは微妙。

 エースの体自体が火となり、軌跡を残して宙を走っていたようだ。その速度は速い。常人では反応できないスピードでいつの間にかスモーカーの目の前にまで到達している。

 

 再び近接戦闘。互いに人型になって対峙した。

 これを予測したからこそスモーカーは十手を残し、片腕で対処した。

 

 相手よりも先に攻撃を叩き込む。スモーカーはこの対峙の一瞬、全てを忘れてその目的にのみ従事した。たしぎや宝箱を気にしていてはやられる、そう判断して一時全てを捨てる。

 エースは全力で応えようとしていたようだ。

 称賛。それ故に手を抜こうなどという思考を一切排除する。

 

 「武装硬化――」

 

 スモーカーの十手がエースの顔の真横を抜ける。首の動きで回避されてしまった。

 帽子を落とすことさえできない。

 悔しく思う暇もなく、なぜか皮膚が黒く染まっているエースの右腕を見つけ、理由はわからないがまずいと思った。だが逃げるだけの時間は与えられず。

 エースの拳が、スモーカーの腹を打つ。

 まるで鉄の塊で殴られたような感触だった。

 

 打撃の衝撃のみならず、離れる間際に火が放たれていた。

 それは彼の必殺。捉えた敵を逃さない一撃。

 スモーカーの体は巨大な炎に包まれた。

 

 「火拳!!」

 

 巨大過ぎる炎の塊に呑み込まれたままで、彼の体は家屋の一軒を吹き飛ばし、向こう側へ消えてしまう。炎の残滓は辺りに漂って静寂が来た。

 エースは穏やかな顔でその場に立ち、スモーカーが消えていった先を見る。

 

 《す、凄まじい一撃ィィ! やはり火拳は別格! スモやん先生は生きているのか!?》

 

 ハッタリーの実況が聞こえる程度には状況は安定した。

 エースの視線の先、スモーカーが瓦礫を押しのけながら戻ってくる。

 見逃すはずのない明確な変化があって、彼は驚愕と共に困惑している表情だった。

 

 《あ、あれはっ、焦げているのか!? スモやん先生は煙の体を持つ能力者のはず! しかしなぜか焦げているぞ! エース選手の火拳がそうさせたというのかッ!?》

 

 理解が及ばないと、ハッタリーを始めとして観客たちは激しく混乱している。

 火が煙を燃やしたというのか。

 その真偽を確かめる方法さえなく、彼らはどよめきを発するのみで、正しい答えを持つ者はどこにも現れない。しかし気付く者は気付いていた。

 あれは奇跡で起こったものではないと。

 

 「おれに触れただけでなく能力まで……やはり何かカラクリがあったか」

 「ああ。お前も知ってたんだろ? だから能力を使わなかった」

 「覇気って力か……」

 

 唸るようにスモーカーが呟く。

 この時、勝てない、とはっきり思わされてしまっていた。

 

 《弟子は今動けない! スモやん先生、早くしないと回収船が到着してしまうぞ!》

 「向こうも終わってるみたいだな。でもゲーム自体が終わったわけじゃない。どうする?」

 

 スモーカーはこの場を離脱してたしぎの下へ向かおうかとも思案した。だがもしそうなった時にエースが見逃すはずがない。

 この場で対峙した時点でスモーカーは捕まっていたのだ。

 

 「やめとけよ。お前はここから逃がさねぇ」

 

 彼の言葉を聞いて確信する。最初からこうなることを予想していたに違いない。

 

 「お前がここを動かなきゃキリは必ず宝を守る。おれたちの連携はせいぜいそんなもんだ。それだけできれば勝てる」

 「ずいぶん奴を信用してるんだな……てめぇらどんな関係だ」

 「弟の右腕さ。他に理由がいるか?」

 「麦わらの義兄弟……嘘じゃねぇってことか」

 

 スモーカーは大きく息を吐いて戦闘態勢を解く。

 十手を肩に担ぎ、冷ややかな、それでいて熱を感じさせる目でエースを見つめた。

 

 「もういい……疲れた。おれは次を目指すことにする」

 「お、そうか。そりゃ有難いね」

 「だがてめぇが奴の兄貴ならはっきりさせといてやろう」

 「ん?」

 「麦わらはいずれおれが捕える。必ずだ」

 

 迷いのない口調に少なからず驚く。

 熱の理由はそこにあったのだ。

 エースは何の心配もしていない様子で、からから笑ってその言葉を受け止めた。

 

 「お手柔らかに頼むよ。あいつはまだ発展途上だからな」

 「フン、海賊の成長を待つ海兵がどこに居る」

 「なんだ、やっぱり海軍だったのか」

 「とっくに気付いてやがったんだろ。おれも好きでここに来たわけじゃねぇ。でなきゃわざわざこんなふざけた名前で参加したりしねぇよ」

 《試合終了~! ブルーチームの陣地に回収船が今到着!》

 

 ハッタリーの絶叫によって試合の終わりが告げられる。

 空には花火が上がっていた。

 

 《勝者はエース&キリペア~!》

 「くっ、不覚……!? これだけ時間を与えられて、何もできないなんてっ」

 

 ブルーチームの陣地前、いくつもの紙のロープで全身を拘束されるたしぎの姿があった。

 キリは港に用意されたリングの中に居て、地面に置いた宝箱に腰掛けている。そうしてにこにこと彼女の姿を眺めたまま、試合は終了してしまった。

 侮辱にも思える状況にあり、たしぎは悔しさのあまり歯を食いしばる。

 一方でキリにはそんなつもりはなさそうだった。

 

 「やぁ、やっと終わった。拘束が破られるんじゃないかと思ってひやひやしたよ」

 「馬鹿にしてっ!」

 「バカにはしてないよ。実際、拘束が解かれたら面倒だった」

 

 キリが指を振ったことでたしぎに絡みついていた紙が地面に落ちる。

 彼女はその場を動かず話を聞き始めるのだが、刀を納めようとはしない。

 

 「陣地には必ず向かわなければいけないけど、この後ろはすぐ海だ。能力者にとっては何よりも怖い場所。海ネコが助けてくれるとはいえ無力化は免れない。特にボクはだめだからね」

 「それが私を恐れる理由だと?」

 「他にも理由ならあるよ。“白猟”の右腕だし、紙の体なんて斬られたら一溜まりもないし」

 

 キリは平然と語っていた。つまり全て考慮した上で動いていたのだろう。

 何より彼女を驚かせたのは名を変えていたスモーカーに気付いていたことだ。

 当然と言えば当然なのだが、自らが頭を捻って名前を考えたためか、その事実に狼狽した。

 

 「き、気付いていたんですか。あの方がスモーカー大佐であることを」

 「というよりわかりやす過ぎだよ。サングラスに葉巻でアロハって、上手く隠せてもせいぜいヤクザの休暇にしか見えないって」

 「うぅ、時間がなかったので仕方なかったんです。直前も海賊討伐に出てましたし……」

 「ほんとに隠したいなら、あの二人組みたいにやらないとね」

 

 そう言ってキリは出場者が乗る船に目を向けた。

 二回戦は見ていなかったはずの人物が再び甲板へ現れている。

 エースが彼を気にするのと同じで、Mr.Sもまたエースを気にしているようだった。

 


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