ROMANCE DAWN STORY   作:ヘビとマングース

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一日の始まり

 サンディ島、アラバスタ王国。

 今日も平穏な一日を始めようとするその土地で、ある男が呟いた。

 

 「今日は、なんだか……」

 「んん? どうした」

 

 首都アルバーナの町並みで、中年の男が空を見上げていたようだ。

 近くに居た男が怪訝そうな顔をして声をかける。

 今日の空は雲一つなく晴れ渡っており、とても美しい、鮮やかな青に染められていて、しかし見上げる男はその様子に何かを感じていたようである。

 

 「いつもと違う気がするなぁ……」

 「そうか? 晴れてるのはいつものことだろ」

 「確かにそうなんだが、そういうことじゃなくてだな」

 「そういや近頃、雨が降らんなぁ。昔からこの町だけはたまに降ってたのに」

 「ああ……」

 「アラバスタ全域に降ってくれりゃ、反乱なんて起こらなかっただろうになぁ。世の中そう上手くはいかねぇやなぁ」

 

 話しながら男は仕事のために樽を運ぶ。

 背後の動きを確認しようとはせず、もう一人の男は空を見ていた。

 

 「やっぱり、何か違う気がするんだがなぁ……」

 「おい、さぼってる場合じゃねぇぞ。今日も仕事だ。昨日と今日が違うのは当たり前で、今日は今日で精一杯仕事しなきゃいけねぇのよ」 

 「うーん、それもそうか。何か違うってのは当たり前なんだよな」

 「そりゃそうさ。今日には今日の空模様があるってなぁ」

 

 そう言われて、空を見ていた男も仕事のために動き出した。

 

 所変わって王宮。

 今朝はいつもより騒がしく、町並みはいつも通りの様相でも、王宮内だけが慌ただしい様子を見せている。兵士が廊下を走り回り、召使いが右往左往していた。

 

 廊下の一角、腕を組んで厳めしい顔をする男が居る。

 他の兵士とは異なる服装をした彼は護衛隊の副官である。

 隊長であるイガラムが居ない今、王宮に居る二人の副官がしっかりしなければならない。

 チャカは険しい表情で兵士からの報告を待ち、ひどく落ち着かない様子だった。

 

 「チャカ様!」

 「国王様は?」

 「やはり見当たりません! くまなく探したのですが……!」

 

 一人の兵士が報告のため駆け寄ってきたが、やはり望んだ結果は得られない。

 チャカはさらに表情を厳しくして、思わず頭を抱えてしまう。

 

 今朝起こったばかりの大事件。それは、寝室から国王の姿が突如消えてしまうという、不可解且つアラバスタ王国にとって一大事であった。

 昨今、内乱で揺れる国内の状況を考慮して国王の部屋の前には警備が居た。

 それでなくても城内は常に侵入者を警戒している。国王に近付く者を必ず調べる。しかし昨夜、怪しい者を見た者は一人もおらず、城内のどこにも怪しい痕跡さえ残っていない。

 

 本当に国王だけがきれいに消えてしまっている。

 これを異常と言わずして一体なんだと言う。

 国王の身を案じるチャカは焦りを募らせ、いくつもの可能性を考慮して犯人へ辿り着こうとするものの、あいにく思い当たる節も実現可能な手段も思いつかない。

 

 国王が自ら部屋を出てどこかへ行ったという可能性はあるだろうか。

 それなら部屋の前に居た警備の兵士に声をかけるはず。黙っていても気付くはず。やはりそれは考えられない。ならば最も可能性が高いのは誘拐ではないか。

 できるはずがない、と思うことこそ思考の罠だと思えてくる。

 城内の警備を潜り抜け、一切痕跡を残さずに国王だけを連れ去る。

 可能か否かはこの際置いておくとして、それならばこの状況も納得できそうだ。

 

 「まさか反乱軍が……? いや、それでも誰にも気付かれずにというのは考えにくい。しかし国王様はいまだ見つからず……一体何が起こっているのだ」

 「チャカ様、無礼を承知で申し上げますが、まさかコーザの奴では? 彼は幼い頃にこの城へも頻繁に出入りしていましたし、我々が知らない秘密の通路などがあっても不思議ではないかと」

 「バカを言え。コーザはもう大人だ。そんな通路があったところで城内に入って警備の者が気付かないというのはやはり違和感がある。子供の頃と同じようにできるものか」

 「しかし、国王様が黙って城を離れるとは思えませんし……」

 

 チャカは報告に来た兵士と話し、現状を正しく理解しようとする。しかしわからない。この不可解な現状を上手く理解することができずにいる。

 国王はどこへ。またその手段は如何なるものを。

 考えれば考えるほど答えから遠ざかる気がしてきて、チャカは厳しい顔をした。

 

 「ええい、考えていても仕方ない。とにかく国王様をお探ししろ。昨夜抜け出されたとしてもそう遠くまでは行けない。アルバーナ中を探すんだ」

 「ハッ!」

 

 敬礼をした兵士がその場を去っていく。

 チャカも慌ただしい足取りで廊下を歩き、どこへともなく移動を始めた。

 

 どこへ向かえばいいのかがわからない。

 状況が状況であっても、国王が居なくなっただけでこの体たらく。自らを情けないと思う。

 国を守る者として、如何なる事件が起ころうとも忠義を尽くし、国を守らなければ。そんな考えとは裏腹に今の自分は焦るばかりで何もできていないと感じた。

 

 このまま何も起こらないで欲しい。ただの悪戯であってくれれば幸いだが。

 そう思う一方、突然の異常事態でなんとなく察するものがある。

 今日、この日に、何かが始まろうとしているのでは。

 

 チャカがそう思った時、廊下の向こうから走ってきた兵士が大声で叫んでいた。

 

 「チャカ様ッ! た、大変です! すぐに広場へお急ぎください!」

 「国王様を見つけたか!?」

 「は、はい! しかし……とにかくお急ぎを! ペル様も向かっておられます!」

 「わかった!」

 

 簡潔に答えるとチャカは全力で駆け出した。

 あの慌てぶり。国王はきっと見つかったのだろうがやはり問題が起こっている。最悪の想定すらしながらもチャカは自身が持てる力を全て振り絞り、王宮から近い場所にある広場を目指す。

 

 かくして彼は集った町民を押しのけて広場へ辿り着いた。

 そこで見たものは、おそらく想定したよりも悪い光景だっただろう。

 

 広場を見下ろす高い位置。建物の屋根にはアラバスタ国王、コブラの姿があり、猿ぐつわを噛まされた状態で、頭から血を流しながら跪いていた。

 その隣には武器を振り上げる犯人だろう男。

 見上げたチャカは背筋に悪寒が走ったことを知る。

 そこに居たのは見間違うはずもなく、成長したコーザの姿だったのだ。

 

 「愚かな王はいくつもの町を捨て! 自分が住むこの町だけを守り! 国民の命を無暗に奪った大罪人だ! この王が人の痛みを知っていたのなら、救える命はいくつもあった!」

 「コーザ……そこで、何をしている……?」

 「チャカ!」

 

 怒りか、悲しみか、恐怖か、絶望か。握った拳を震わせるチャカへ一人の男が駆け寄った。

 護衛隊の副官としてチャカと肩を並べる男、ペルという人物だ。

 彼もまた激しく動揺しており、しかし今、そう遠くない場所で自身が守るべき王が傷つき、拘束されている。この状況を見て現状の打開を考えているらしい。

 どうすれば人質に取られた王を傷つけずに救えるのか。

 必死に考えながらも相棒へ声をかけて、心から王を心配していた。

 

 「すまない、おれが着いた時にはもう……!」

 「謝る必要などない。それよりも今は、これ以上の怪我をさせずに助けることが重要だ」

 「ああ、わかっている。だがこちらが動けば奴も動くぞ」

 「コーザめ、自分が何をしているのかわかっているのか……!」

 

 腸が煮えくり返りそうになるほどの怒りを覚え、二人はコーザを睨んで怒気を放つ。相手がそれに気付いた様子はないが、もし気付いていれば最悪の結果にもなっただろう。

 二人は冷静になるよう努め、一時とはいえ怒りを押し殺そうとする。

 

 その間にもコーザは叫んでいる。

 国王コブラは王の器ではない。こいつこそ人殺しだ。王が愚かだから人が死んだ。

 思い付く限りの言葉を並べて王の尊厳を傷つけ、その姿を汚そうとしている。その場に集まった人々、その声を聞く者にとってはそんなコーザの姿こそ狂気のものに見えたが、本人はそれでも構わないようだ。徹底的に国王を攻撃する。

 

 チャカとペルの表情は見る見るうちに変わっていった。

 主君をけなされて黙っていられるはずなどない。

 今にも動き出そうとするが、おそらくそれを狙っているのだろうと、必死に我慢する。

 二人は血が流れるほど強く唇を噛み、救い出すチャンスを探っていた。

 

 「耐えろ、チャカ。ここで動けば思う壺だぞ」

 「わかっている。だが、一体なぜ、あの方がこれほど辱められなくてはならない……!」

 「コーザっ、なぜこのような凶行を……!」

 「たとえ敵同士になったとしても、貴様のことは認めていたというのにっ」

 

 感情のままに怒鳴るコーザが、右手に剣を持ち、左手でコブラの肩を掴んだ。

 瞬間、チャカとペルは背筋を凍らせる。

 剣を高々と掲げ、ついにコーザはやってはならない選択をしたのだ。

 

 「もはやこの王に国を治める価値などない! 人々を傷つけた王には傷つけられた人々の痛みを与える! この男は処刑だ!」

 「なっ!?」

 「ペル……もはやおれは我慢できんぞ……!」

 

 チャカの姿がゆっくり変化していく。

 黒い体毛が生え、牙や爪、頭に耳などが現れていき、動物と人が混じった姿になる。

 イヌイヌの実、モデル“ジャッカル”。一瞬にして戦闘用の姿となったチャカは、自身にしか扱えない長い剣を抜き放ち、膝を曲げて力を溜める。

 

 その様子を見るや否や、ペルもまた変身した。トリトリの実、モデル“(ファルコン)”。空を飛ぶことができる動物(ゾオン)系能力で、彼はこれでアラバスタ最強の戦士と呼ばれる。

 素早く剣を持ち、翼を大きく広げた。

 

 「コーザッ!!」

 「それだけはやらせんッ!!」

 

 チャカが地面を蹴り、ペルが空を飛んでコーザへ向かう。

 その速度は、とてもではないが常人に反応できるものではない。

 二人に気付いた時、コーザは一瞬にして眼前まで迫った二人を呆然と見上げて、そしてなぜか、驚異的な二人を目にしてにやりと笑みを浮かべていた。

 それは確実に彼らしからぬ表情だ。

 

 「あ~ら大変。あちしってば大ピンチ?」

 

 緊迫した状況に似つかわしくない呑気な声。

 この時、二人は瞬時に理解する。

 自分たちは嵌められたのだ。

 

 その時物陰から飛び出した二つの人影があり、気付いた時にはチャカとペルへ襲い掛かって、一瞬の交差の後に二人が全身から血を噴き出していた。

 まるで鋭利な刃で切り裂かれたかのような、鋭い棘で串刺しにされたような傷だった。

 建物を見上げていた町人たちの前で、王国最強の兵士が敗れる。

 力なく落下しようとした二人をMr.1ペアが首根っこを掴み、捕えた。

 

 観衆が呆気に取られたのを見てコーザが叫ぶ。

 パフォーマンスは成功だと言っていい。

 コーザに化けたMr.2は開戦を告げる大事な役目を担う。この時、この瞬間、アルバーナは確かに戦場と化し、大きな混乱へと包まれていった。

 

 「悪政の時代は終わった! 今こそ我々の国を守る時! 市民よ、立ち上がれ! 今日この日からアラバスタは変わる! 今度こそ、人が人として生きられる国を!」

 

 人々の顔が変わる。

 抱えきれないほどの恐怖。自分にも無関係ではない事態だと理解せざるを得ない。

 

 「反乱軍……なんてことを……!?」

 「悪しき王族は根絶する! 国民に自由を! 国家に平和を!」

 

 時を同じくして、広場に居た者たちにもわかるほどの変化が町に起こっていた。

 アルバーナの各地から火の手が上がったのである。

 黒々とした煙がいくつも見られて、轟々と建物が燃えている。現場を見に行かずとも状況から考えて反乱軍の仕業であることは簡単に想像できた。何せリーダーのコーザが王を捕え、護衛隊の二人を倒してそこに居るのだ。

 

 恐怖が伝染していく。一か所だけならばまだしも複数の煙が確認できた。

 まるで国家の終わりを見ているようにさえ感じられて、人々は呆然と立ち尽くすのみ。

 

 それから幾ばくもせず、広場にも反乱軍が武器を持って駆け込んできた。大抵は銃や剣を持った者たちだが、中には火を点けた松明を持っている者も居る。

 最初の一人が悲鳴を上げた時には、松明が投げられて家に火が点けられていた。

 呑気に立ち尽くしていた人々は突然駆け出し、我先にと逃げ始める。

 

 彼らが本物の反乱軍か否かなど確認する方法はない。

 武器を持ち、コーザの命令で町を破壊する。その姿だけあれば反乱軍だと判断される。

 本当はバロックワークス社員、ミリオンズだとしても、そう判断できる者は居なかった。

 

 攻撃開始の騒動に乗じてすでにコーザは姿を消している。チャカとペルを捕えたMr.1ペアもその場を離脱しており、混乱する観衆の中でその事実に気付いた者は居ない。

 指揮官を失って混乱する兵士たちもまた、突如現れた反乱軍に対応できなかったようだ。

 目的を持って殺到してくる反乱軍の攻撃を受け、一人、また一人と兵士が倒れる。逃げる市民に紛れて突然やってくる攻撃は、いくら訓練を受けていても避けようがない。それは戦闘というよりも一方的な虐殺に思えた。

 

 騒ぎが起こった広場を遠くに眺め、数本の大通りを挟んだ一軒の家。

 屋上のテラスに他のオフィサーエージェントが集っていた。

 双眼鏡を覗いて開戦の瞬間を見ていたミス・ゴールデンウィークがぽつりと呟く。反応したのは傍にある席で紅茶を飲んでいたMr.3である。

 

 「簡単に成功しちゃった」

 「それも当然。一体何年反乱が続いてると思っているのカネ。むしろいつこうなってもおかしくないと考えていなかった市民に驚きだガネ」

 「うん。みんな慌ててる」

 「これで第一段階は終了。この後、反乱軍はアルバーナ内でゲリラ戦を展開し、国王軍との戦闘が本格化することもなく時間が経過。反乱軍“本隊”の到着を待ちつつ町を破壊する。恐怖に支配された市民はあちこち逃げ惑い、やがて助けを求める」

 

 紅茶を口にして喉を鳴らすMr.3へ、ミス・ゴールデンウィークが双眼鏡を降ろして言う。

 

 「砂漠の国の英雄」

 「そうとも。そして混乱に陥ったこの町に到着した時、英雄が反乱軍“本隊”を倒し、国を救ったならば……単純な思考能力しか持たない市民は何を想う?」

 「英雄こそが王に相応しい」

 「そうなる前には当然、王が死んでいる必要がある。ボスの目的の代物を発見した後でな」

 

 遠くから聞こえてくる悲鳴を耳にしつつ、二人は冷静に会話する。

 同じテラスに居た味方もその会話は聞いていた。

 割って入るように参加したミス・メリークリスマスが簡易ベッドの上に寝そべり、Mr.4に腰をマッサージしてもらいながら尋ねる。

 

 「そう上手くいくもんかね。向こうにゃあのガキが居るんだろ?」

 「もちろん阻止するために動いてくるだろう。彼はこちらの思考を理解している。臨機応変に作戦を変えるために私が居るのだガネ」

 「本物の反乱軍が動くって確証もないはずだろう?」

 「なぁに、動くさ。Mr.2が一声かければな」

 「そっちも抜かりはねぇってことか」

 

 納得した様子でミス・メリークリスマスが口を閉ざす。

 今度はMr.5とミス・バレンタインが参加した。

 

 「それでおれたちの目的は敵の排除か」

 「キャハハ、楽勝ね。一番簡単な任務だわ」

 「敵を甘く見ない方がいい。こちらの情報は全て筒抜けだガネ。君らの弱点も全てバレた状態で楽勝と言っているのなら安心だが、わかっているのか?」

 「いらん心配だ」

 「敵の弱点を知ってるのは相手だけじゃないでしょう? キャハハハ」

 

 Mr.3がテーブルにカップを置き、笑みを消して真剣に告げる。

 

 「この作戦で最も大きな障害となるのはキリであることは間違いないガネ。しかし逆を言えば奴を止められたのなら後は終始こちらが有利になる。数の利を覆す頭脳を持つのは奴一人。たとえここに居るメンバーが倒れようとも、反乱を止めることは不可能だガネ」

 「おいおい、おかしなこと言ってくれるぜ」

 「私たちが負けるとでも思ってるの? キャハハ、面白い冗談」

 「むしろてめーが一番可能性高いだろうが! この”バッ”!」

 「フォ~~フォ~~フォ~~……!」

 「Mr.3、総スカンね」

 「ええい、戦局を読めんバカばかりだガネ。しかし奴らの勝利は万が一にもあり得んとも。何せ作戦総指揮を執るのはこの私なのだから」

 

 Mr.3は指で眼鏡の位置を正しながら笑う。

 その他のエージェントも自分の実力に自信を持っており、負ける気など一切ない様子で余裕綽々に笑っている。決戦を前にして緊張する者など一人も居なかった。

 

 それでも戦いの時が近付いていることは感じている。

 各々が異なる姿勢、異なる方法で敵を迎え撃つため準備をしていた。

 

 コーザが着ていた物に似た服を着たまま、Mr.2は部下を引き連れて爆走する。最初の仕事は終わったとはいえ彼にはまだ次の仕事が残されていた。

 素早く取り掛かるため移動の最中に着替えすら始めていたようだ。

 周囲で反乱軍に扮した部下が手を貸し、彼らは混乱する町の中心部を離れていく。

 

 「あー忙し忙し! 急ぐわよアンタたち! 映像電伝虫は準備できてんのぅ!?」

 「はい! すでにナノハナに到着済みです!」

 「合図があればいつでも!」

 「じゃあ急がなきゃね~い! 今度はコブラちゃんにならないとぉ~!」

 「Mr.2・ボン・クレー様、次の角左です!」

 

 ドタドタと騒がしい彼らは、それ以上に騒がしい町の中で密かに姿を消す。

 その頃にはMr.1とミス・ダブルフィンガーがチャカとペル、さらにコブラを連れ、王宮へ到着。

 指揮官を失ったとはいえ、突如現れた反乱軍に対抗するため、多くの兵士が出て行ったその場所へ悠々と侵入を果たし、彼らより先に入っていたミス・オールサンデーに出迎えられる。

 

 「ご苦労様。奥で王様がお待ちよ」

 「あら、王様なら私たちが運んできたはずだけど」

 「ウフフ、言葉が足りなかったわね。新たな王が待っているわ」

 

 その言葉からすでにクロコダイルが到着していることが伝わる。

 チャカとペルを引きずりながら、Mr.1が尋ねた。

 

 「ゴミ掃除は?」

 「必要ないと思うけど、一応探してくれる? ほとんどは始末されたわ。私とアンラッキーズの手によって」

 

 平然と言っているが、それは、城内にはすでに敵が居ないことを示していた。

 確かにほとんどの兵士が町へ出たのだろうが、どんな危機的な状況でも城の中が空になることなどあり得る話ではなく、さらには兵士とは異なる召使いも存在する。しかしミス・オールサンデーは今、城内にはもう敵が居ないと言っていた。

 鮮やかな手腕に感心し、ミス・ダブルフィンガーはキセルを銜える。

 

 「あなたたちが動いたんなら討ち漏らしはないわね。新たに入ってきたならともかく」

 「しばらくは待機か……」

 「心配しなくてもすぐに忙しくなるわ。それと、その人たちはアンラッキーズが見てくれる。彼らが到着するまで優雅な一時を楽しんで」

 「そうするわ」

 

 彼らもまた淡々と話して、次に備えるため動き出す。

 出番は少し先のことになりそうだと自覚しながら、その場を離れた。

 

 そして王宮の奥。

 一足先に唯一の玉座へ座っていた男が居る。

 彼は笑い、ひどく楽しそうにまだ見ぬ敵を見ていた。

 

 「さて……決着をつけようか」

 

 今、彼の目にはただ一人の男が見えていた。

 

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