ROMANCE DAWN STORY   作:ヘビとマングース

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out of the blue(3)

 思わず足を止めたのは、背後から音が聞こえたからだ。

 小さな石が瓦礫の上から落ちる音。

 大したことではないとはいえふと気になり、振り返った時、ミス・メリークリスマスは壊れた家の内部に立つナミの姿を見つけた。

 

 数度の平手打ち。壁への激突。数々の攻撃で服は破れて、肌は切れて、多量の血を流しながら俯いて立っている。息は乱れているようで体は力なく揺れていた。

 それでも、震えはなかった。

 手にはしっかりとクリマ・タクトを握っていて、どこよりも力が入っている。

 まさかまだ戦う気なのか。

 

 その姿を見てもさほど脅威と感じなかったミス・メリークリスマスは冷静に振り返る。

 やるならやるでいい。とどめを刺すだけ。

 彼女は再び鋭い爪を構えた。

 

 「まだ生きてたのか。思ったよりしぶとい」

 「あんたに、何がわかるのよ……」

 

 ぽつりと小さく呟いた。

 その声に注意を引かれてミス・メリークリスマスは耳を傾ける。

 

 「死にたくなるくらい辛くて、苦しくて、それでも生きて生きて生き抜いて……やっと出会ったのがあいつらなのよ。どうしようもないくらいバカで、迷惑ばっかりかけられても、それでもあいつらがいいの。あんな奴ら、他にはいないもの……」

 「なんだ。また泣き言かい?」

 「あんたが」

 

 大きく息を吸って顔を上げ、強い輝きを持つ目でナミが敵を見つめた。

 もう恐怖心はない。迷いもない。

 力強く武器を握って、初めて勝ちたいと思いながら敵の前に立った。

 

 「何も知らないあんたが、勝手なこと言わないで! あいつはねぇ、ルフィはやると言ったら必ずやる男よ! 海賊王になるって言ったら本当になるの!」

 「フン、所詮口先だけだ。何の証拠もねーじゃねぇか」

 

 ミス・メリークリスマスがナミにとどめを刺すべく歩き出そうとしたところ、左手側からもわずかな物音が聞こえた。同じく小石が蹴られたような音。

 そちらを向けばチョッパーが立っていた。

 毛皮は自身の血で濡れ、右腕はだらりとしていて力が入っていない。さっきの一撃であばら骨も折れていた。なぜ立っていられるんだという風体に見えるが、目は死んでいない。今までになく強い光を持っている。

 

 蹄の間に黄色い丸薬を持ち、それが情報で聞いた薬なのだと気付いた。

 背中合わせでMr.4が彼の方を向いて、それぞれが対峙する。

 

 「おれも思ってる。ルフィは絶対海賊王になるって」

 「そりゃおめーが“バッ”だからそう思うさ」

 「違う。ルフィには絶対折れない“旗”があるんだ。ルフィが諦めない限り、おれ達も絶対に諦めない……おれ達の船長を、誰にもバカになんてさせない!」

 「旗ぁ? 海賊旗のことか? 何を言い出すかと思えば……」

 

 ミス・メリークリスマスは再び嘲笑する。

 二人はもう乱れない。ようやく覚悟が決まった。

 ここで勝利することはビビとアラバスタのためだけではない。自分達のためでもあり、ひいては海賊“麦わらの一味”のためでもある。もはや逃げることは許されなかった。

 

 体力は限界。ダメージは許容範囲を超えている。

 ただでさえ戦闘が得意な二人ではなかった。

 

 それでも退くことはできない。仲間を侮辱した彼女達を、嗤った相手を、このまま見逃すことだけは絶対にできなかった。

 ボロボロの体で、ナミとチョッパーは同時に前へ一歩を踏み出した。

 

 心意気だけは買ってもいい。しかし気合いだけでは勝てないのが裏の世界。

 その世界で生きてきたMr.4ペアに迷いも恐れも存在しない。ナミ達が何を語り、何を成し遂げようとしても、彼女達は自らのやるべきことをやるだけだ。

 今は任務がある。

 そろそろ次に行こうと考えてミス・メリークリスマスは素早く穴を掘った。

 

 「言いたいことはそれだけかい? 遺言は受け取ったよ。安心して死んでいきなァ!」

 

 ミス・メリークリスマスが、海へ潜る魚のように地面へ潜った時、まずナミが動く。

 家の中にあった樽をクリマ・タクトで殴って壊し、中に入っていた水をぶちまけたのだ。足元の床が水に濡れるものの、外見的な変化はそれだけである。

 その直後に彼女は三本のクリマ・タクトを両手と頭に乗せ、手品のように水を出した。

 

 「レイン=テンポ!」

 「今度は水芸かい? アタシには効かないけどねぇ」

 

 岩もレンガも掘り進んで、ナミの正面に現れたミス・メリークリスマスが腕を振るう。強烈な平手打ちで彼女を仕留めようとするが、すでに何度も見ているナミは咄嗟に横へ跳んで回避した。

 反応はまずまず。優れている訳ではないが悪くもない。

 長年海賊から逃げ続けた経験がそうさせるのか、彼女の回避技術は悪くなかった。

 

 回避は上々。だが攻撃しなければ結果は変わらない。

 ミス・メリークリスマスはナミの攻撃の威力が大したものではないと気付いている。姿を見せたまま敢えて退かずに地面を走って追い始めた。

 

 地上で正面切って対峙した。多少驚きはするがもう怯まない。

 ナミはしっかりした足取りでさらに後方へ移動する。

 

 「ハハハッ! 結局口だけじゃねぇか! おめーに一体何ができるって!」

 「スプリンクラー!」

 「水芸はもういいっつってんだろうが!」

 

 辺りに水を撒いた後、三本の棒を合わせて一本にする。

 時を同じくしてミス・メリークリスマスが前へ跳んで追いつき、ナミの体を今度こそ捉えた。

 

 「土竜平手打ち(モグラバナーナ)!」

 「あうっ!?」

 

 クリマ・タクトで防御したが力で押し切られた。

 ナミの体は勢いよく倒れ、家の中に散乱していた物を巻き込んで大きな音を立てる。

 それだけで終わりにはせず、ミス・メリークリスマスがさらに距離を詰めた。このまま二撃目でとどめを刺す。そうすれば戦いは終わりだ。

 

 ナミは自らの意思で地面を転がり、その途中、落ちていた物を拾う。

 同時に左手ではクリマ・タクトの一本を取り外し、ミス・メリークリスマスに向けて振った。

 

 「電気泡(サンダーボール)!」

 

 クリマ・タクトから出たのは静電気程度の電気を帯びた気泡。ミス・メリークリスマスの手が触れるが、チクッとした程度で大して痛くもない。

 攻撃は続行。迷いすら生じなかった。

 

 続けて、立ち上がりながら右手で取った瓶を投げつける。

 即座に反応したミス・メリークリスマスは鋭い爪で瓶を割るものの、衝撃で中身が飛び散って全身に浴びる羽目となった。どうやら酒瓶だったようだ。

 今度は多少の苛立ちが生じて、歩む足取りに力が入る。

 

 大口を叩いた割には逃げてばかり。ナミは家を出ようとしていた。

 せっかちなミス・メリークリスマスがこれに苛立たないはずがない。

 早く次の任務へ、異なる標的へ向かおうとしているのに、そんな時に限っていつまで経っても彼女は目の前に居続ける。今も本気で生き延びようとしている。徐々に苛立ちは増していき、余裕があるからこそ冷静さを失いかけていた。

 

 だからだろうか。ナミが壊れた窓へ駆け寄った時、ミス・メリークリスマスは飛び掛かる。

 待っていたナミはすでにクリマ・タクトの形を変えており、素早く迎撃した。

 

 「いい加減にしろよてめー! いつまで逃げ回るつもりだァ!」

 「サンダー=テンポ!」

 

 Y字型に組み替えたクリマ・タクトの先端から、ボクシンググローブが飛び出した。

 ミス・メリークリスマスの顔面に直撃する。しかし痛くはない。当たった衝撃は微々たるもので逆に驚いてしまうほど。彼女は思わずぽかんとしてしまった。

 

 その隙にナミは割れた窓をさらに壊して外へ飛び出る。

 遅れたミス・メリークリスマスが驚き、慌てて地面を蹴った。

 

 「て、てめー、なんだそりゃ!? 真剣に戦う気はあんのか!」

 「失礼なこと言わないで。これが私の戦い方っ」

 

 狭い窓を通り抜けて、先に出たナミが下に、後から来たミス・メリークリスマスが上を取って腕を振りかぶる。それを見たナミは咄嗟に自分の外套に手をかけた。

 本来は砂漠の熱に耐えるための物。しかし今は必要ない。

 華麗に脱ぎ捨てて腕を振り、ミス・メリークリスマスの視界を疎外すると同時、上手く腕に絡ませてぐいっと引っ張る。まるで巴投げの要領でミス・メリークリスマス自身を投げ飛ばしたのだ。

 

 「おりゃあっ!」

 「ぎゃほっ!? くっ、小娘がァ!」

 「フン。伊達に海賊やってないのよ」

 

 外套の下の服も所々破けていたが、むしろ彼女の妖艶さを助長するかのよう。

 立ち上がったナミはミス・メリークリスマスから距離を取り、移動しながらクリマ・タクトを振り始める。何か目的があるようだ。

 

 一連の行動を見ていて、Mr.4は動かなかった。

 従ってチョッパーも静観していたものの、ナミが通りへ出てきたのを見て動き出す。

 

 これ以上のダメージを受けるのは危険だ。もう一撃も受けられない。船医として、仲間の治療を優先したいと考えている彼は倒れる訳にはいかないと思った。

 ここから先は今まで以上に気を使う。一方でかつてない感覚に悩まされてもいた。

 倒すべき敵を見据えて、今までになく力が漲ってくるのがわかる。

 

 「効果は三分……ランブル」

 

 丸薬を噛み潰す。

 独特の感覚が全身を走った。

 

 今から三分間、能力の変形点が増える。

 右腕は使えない。腕を使わず、いくつの変形点で戦えるのか。

 考える暇も無くチョッパーは早速変身した。

 

 「とっておきの変形点を見せてやる。角強化(ホーンポイント)

 

 その姿は他の変形点とは些か様子が異なる。

 体のサイズは人型に近く、普段よりも大きくなり、両手は人型、しかし四足歩行。そして何より特筆すべきは巨大化した立派な角。更には背中の毛が極端に多くなってふさふさしていた。

 獣と人の狭間。そしてトナカイの特徴である角が強化された姿だ。

 

 チョッパーは無事な左手と、折れたはずの右手で地面に触れて立つ。

 痛みは感じる。本来なら動かせるはずもない状態だった。

 しかし怒りのせいか、意志のせいか、今はどうなってもいいという想いで庇おうとしない。

 

 視界に捉えるのはMr.4ではなくミス・メリークリスマス。彼は性格的に抜けている。自身に危機が迫らない限りは中々機敏な動きを見せない。

 すでに作戦は決まっていた。

 話し合った訳ではなく、二人とも自分がやるべきことがわかっている。

 チョッパーは四肢で強く地面を蹴り、ナミを狙うミス・メリークリスマスに背後から接近した。

 

 幸いと言うべきか、距離を取ろうとするナミに集中していて気付かれることはなかった。

 背後から迫り、その大きな角で彼女の体を捕まえる。

 

 「桜並木(ロゼオコロネード)!」

 「ぐほぉ!? な、なんだこりゃ……!?」

 「フォ~……」

 

 掬い上げるように激突して、ダメージを与えた上でミス・メリークリスマスの体を運ぶ。

 強固な角は人体を運んでもびくともせず、軽々とした様子だった。

 ミス・メリークリスマスを運んで向かうのはMr.4そのもの。呆然と見つめる彼に真っ直ぐ正面から接近し、そのまま体当たりすることを狙っていた。

 

 向かってくる敵。だが角の上には逃れられない味方の姿。

 敵に対しては考えずとも反撃の手が出るMr.4だが、今はそれができそうになかった。助けるか、迎撃か。迷った挙句に思わずバットを構えようとして彼女に怒鳴られる。

 

 「おい“バッ”、アタシが居んだろうが!? 早く助けるんだよ!」

 「フォ~~……」

 「は、早くしろ――ぎゃああっ!」

 「フォ~!?」

 

 結局どうすべきかを逡巡したまま、愚直な体当たりを許してしまった。ミス・メリークリスマスを抱えた角がMr.4の胴体を強く叩いて、彼の巨体はミス・メリークリスマス諸共倒れる。

 チョッパーの右腕が血を噴き出して震えている。

 素人の目から見ても重症。もう一切力が入らなくなり、これ以上は無理をしても動かない。しかしそこまで無理をした意味はあったと本人は思う。

 

 「飛力強化(ジャンピングポイント)!」

 

 素早く変身して高く飛び上がる。その動作で無事だった家の屋根に着地した。

 目的は運ぶことであって、体当たりで倒すことではない。

 今、走りながら雲を作っていたナミが二人を射程に捉えて、大きな雷雲の下にMr.4ペアの姿があった。ちょうど起き上がろうと二人で慌ただしく動いているところだ。

 

 「ええいクソっ! しぶてぇ奴らだな!」

 「う~~ん~~~」

 「おめーがトロトロしてっからだ! この“バッ”! “ノッ”!」

 「いいわよチョッパー。そこで十分」

 

 焦りが生まれているのか二人が気付く様子はない。

 そこでナミは落ち着いて雷を降らせるきっかけを宙に放った。

 電気泡(サンダーボール)が黒雲に吸い込まれ、その影響で雷が活発化し始める。

 

 「んあ? なっ、しまっ――!?」

 「サンダーボルト=テンポ!」

 

 凄まじい強さの雷が二人の頭上から降り注いだ。逃げることも許さない速さで捕まり、全身が痺れて激痛に包まれ、視界がゼロになる。

 攻撃を受けていたのはほんの一瞬。しかし二人の体は黒焦げだった。

 

 ガクガク膝が震えている。だがミス・メリークリスマスは気を失わなかった。

 必死に意識を繋ぎ止め、そう遠くない位置に居るナミを強い眼差しで睨みつける。

 これが最後。

 次に意識を失うことすら考慮に入れて、彼女は地面を蹴ると腕を上げてナミへ飛び掛かった。

 

 「こ、のっ――“バッ”ヤローがァァァ!!」

 「きゃああああっ!?」

 

 平手打ちではなく爪で体を貫くように。

 素早く接近して思い切り右腕を突き出した。その爪は確かにナミの胸を貫く。しかし驚くほどに手応えを感じずに、何の感触も得られない。

 そう思っていると驚愕した顔のナミの姿は霞のように消えてしまった。

 

 「なんちゃって」

 「な、にっ……!?」

 「本日は湿度の上昇により、町中でも蜃気楼を見ることがあるでしょう。そして急激な気候の変化があり得ます。トルネードに……ご注意ください」

 

 何が起こっているのか、目の前を見ているミス・メリークリスマスにすらわからなかった。

 胸を貫かれたナミは笑顔で語りながら近付いてきて、決して急がず歩いて、ミス・メリークリスマスの前に立つとクリマ・タクトを構える。

 

 蜃気楼と言っていた。自分が刺したのはまさしくそれだったらしい。

 あり得ない、と思いながらも、彼女は体から力が抜けるのを感じていた。

 

 先程の雷によるダメージが大きい。蓄積していた分もある。

 手数は決して多くなかったはずだが、その分一発一発のダメージが大きかったのだろう。

 手が届く距離に立っていて手が出せず、悔しげに歯を噛み鳴らしたミス・メリークリスマスは、背後に居るMr.4に振り返ろうとして、許されなかった。

 

 「こ、こんなことが――!」

 「トルネード=テンポ!!」

 

 T字型の両端からワイヤーに繋がれた鳩が飛び出し、二匹が同時に鳴き声を発した。

 なんて間抜けな光景。

 てっきり攻撃が来ると思っていたミス・メリークリスマスは拍子抜けして笑ってしまう。

 

 「ハ、ハハッ。なんだそりゃ。つくづくおめーは戦い慣れてないな」

 

 間抜けな声で鳴く鳩が、グルグルと回り出した。

 正面にはミス・メリークリスマスが居るため、有無を言わさず巻き込まれてしまう。ワイヤーが体に巻き付き、回転を繰り返す度に彼女の体をしかと捕まえていく。

 何度も何度も回転して、回転し続け、恐怖心を感じた頃になってナミが笑った。

 

 「なっ、ああっ、あああああぁっ――!?」

 「バイバイ♡」

 

 そうして、銃弾のようにT字に組んだ二本のクリマ・タクトが発射され、ミス・メリークリスマスを捕まえたまま飛んでいく。その後方に立っていたMr.4の体に激突し、巻き込みながら。二人の姿は驚くほど速くナミの前から遠ざかっていった。

 それだけではなく、突っ立っていたラッスーにまで激突して。

 勢いは止まらず回転しながら直進していく。

 

 その先に、屋根を降りていたチョッパーが待ち構えていた。

 すでに変身を終えて腕力強化(アームポイント)となり、半身になって左腕を引いている。

 右腕はだらんとさせたまま、凄まじい勢いで飛来する二人と一匹を見つめていた。

 

 「刻蹄――」

 

 距離が近付き、前へ駆けた。

 鋼鉄をも砕くという自負を持つ蹄で、大きく膨れ上がった筋肉から力を発揮し、一つになって飛んでくる二人と一匹を殴りつけた。

 

 「(ロゼオ)ッ!!」

 

 ナミのトルネード=テンポと、チョッパーの攻撃が一つになった。

 両者に挟まれた二人と一匹は耐え切れずに意識を失い、がくりとその場に倒れた。

 

 呼吸を乱すチョッパーが人獣型に戻り、危うい足取りでナミが居る場所へ歩き始める。

 少し離れた後のことだった。思い出したかのように倒れたラッスーが咳をして、ボールが一つ地面に転がされた。そして時間が来ると爆発する。

 背後で起こった大爆発を気にせず、チョッパーは倒れ込んだナミに歩み寄った。

 

 ナミはすでに眠そうな顔で硬い地面に倒れていた。

 柄にもなく頑張ったと自分でも思う。

 疲れ切ってはいるが晴れ晴れとした彼女の顔を見て、チョッパーも堪らず隣に寝転んだ。

 

 「あ~疲れた。もう動きたくない……」

 「おれもうダメだ。立つこともできねぇ」

 「汗も掻いたし、お風呂入りたい。体も痛いし、服も破けちゃったし、お金も欲しい……」

 「あー……治療しなきゃ。このまま放置すると危ない……医者~」

 「それあんたのことでしょ」

 「あっ!? そうだった」

 

 ぐったりした様子で寝返りすら打てない。だがそこに寝ていても自分達が勝ったことだけはわかっていた。苦しい戦いだったが敵を倒したのだ。

 まだ内乱は終わっていない。早く仲間を助けに行かなければ。

 そう思っているのに体が動かない。応急処置すらできずにいるのである。

 二人はそれぞれ別の方向を見ながら、重くなる瞼と戦いつつ話を続けていた。

 

 「みんな、大丈夫かな……」

 「大丈夫よ。一番心配だったのが私達なんだし」

 「早く、助けに行かなきゃ……」

 「そうね……でも、なんか、すごく眠い――」

 

 意識を失ってしまう。

 二人は穏やかな顔で寝息を立て始め、死んだ訳ではないが、しばらくは動けないだろう。体力の限界を迎えたナミとチョッパーはそこを動けず、時間はただ静かに過ぎ去っていった。

 


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