ROMANCE DAWN STORY   作:ヘビとマングース

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ねじまき島

 航海を再開したゴーイングメリー号は、曇天の下で海を進んでいた。

 立ち寄った島で必要な物を買い揃え、航海の準備は万端。大きな問題も特に起こっておらず、出発はいつもとさほど変わらず平然としたものであった。

 

 ただいつもと違ったのは、船に部外者が二人乗っていたこと。

 ゾロが見つけた泥棒兄弟、ボロードとアキースは、甲板に座っていた。

 周囲を海賊たちに取り囲まれ、まだ幼いアキースは不安そうな表情を隠せなかったが、覚悟を決めていると見えるボロードは強い眼差しで彼らを見ている。前に居たのはルフィとキリ。一味の船長と副船長が揃って彼の提案を聞こうというのだ。

 

 手を組もうと言い出した彼の提案はひどく簡単なものだった。

 とある島を支配する海賊を倒してほしい。言うなればただそれだけのこと。

 その対価として渡された情報は、その島にあるというダイヤモンドクロックについて。

 

 「ダイヤモンドクロック?」

 「ああ。その島の象徴とも言うべき代物だが、その名の通りダイヤモンドで作られた時計だ。お前たちが思ってるより大きな物だぞ」

 「頂くわ」

 「早ぇよ!? まださわりだぞ!」

 

 思わず反応してしまったナミをウソップが止め、ボロードの視線は改めて二人へ。

 ルフィは自身が釣り上げた巨大魚の料理を食べながらであるため、集中できているかは不安な姿ではあるが、その分キリが真剣に話を聞いている。ボロードの視線は彼に向きがちだった。

 

 「そのダイヤモンドクロックを持っていっていいから、海賊を倒して島を解放してほしいと」

 「そういうことだ」

 「おいしい話ではあるけどずいぶんな対価だね。その島の人間?」

 「いや……」

 「ということは時計は盗むことになるってわけだ。まぁそこは別にいいよ。海賊だし、いざその時になったら別に躊躇わない。ただそこまでしてボクらに頼むのがわからないな」

 

 乗り気に見えるキリではあったがすぐに頷こうとはしなかった。

 まだボロードを信用していないのは目に見えて伝わった。おそらく隠そうともしていない。それを感じ取っていたボロードも当然のものとして受け取って、それでも意見を変えようとはしていなかったようだ。

 それはまるで、彼らに頼るしかない、と考えているようにも見えた。

 

 「島の人間じゃない、故郷でもない人間が海賊に頭を下げてまで助けてほしいなんて。どうしてそんなことを?」

 「それは……」

 「大体予想はつくけどね」

 

 キリの目がちらりとアキースを確認する。ボロードの隣に座る彼は所在なさげにしていて、気丈に振舞っているが現状に不安を覚えているのは明らかだ。

 ボロードも彼の視線に気付いて顔を伏せる。

 予想は当たっているらしい。彼の態度だけで感付くことができた。

 

 「まぁいいか。ボクらにも利益があるなら試す価値はある。相手は?」

 「トランプ海賊団。ここ数年、ねじまき島を拠点にしている一味だ」

 

 キリの質問にボロードが即座に答えた。

 その名を聞いてキリがシルクに視線を送る。何も言わずに頷いた彼女は手配書の束から該当する者たちを探し始めた。

 

 彼女が手配書を探す間、キリはさらに質問を続ける。

 ついさっき不意に言われた。目的地はねじまき島になる。その名は聞いたことがなかった。

 

 「ねじまき島って言ったね。どんな所?」

 「言っておくが、おれは解放してほしいと頼んだわけで……」

 「略奪なんてしない。ボクらも色々入用でね。欲しい物はたくさんあるし、略奪はしないにしても力を貸してくれる人を探してる。どんな特徴があるのか知りたいんだ」

 「手は出さないと、約束してくれるんだな?」

 「もちろん。ただ忠告しておくけど、海賊が必ず約束を守ってくれるなんて思わないことだ。大体の奴は嘘つきだからね」

 

 そう言われてボロードの顔が険しくなるが、彼はゆっくりと口を開いた。

 

 「ねじまき島は……機械技術が発達してる島だ。小さな町が一つあるだけだが、そこに入ることは簡単じゃない」

 「海賊が支配してるから?」

 「それだけじゃない。島自体はさほど広くないんだが、ほとんど人工島のような物で、町は島内と言うより空にあると言っていい」

 「空に町? なんだそりゃ。さっぱりわからねぇ」

 

 訳が分からないと思わずウソップが口を挟む。

 他の者たちも同じ感想を抱いているようで、話を聞いても想像できなかった。一体どんな形をしているのか予想を立てることすらできない。

 気にせずボロードは説明を続ける。

 

 「島は当然、トランプ海賊団が占拠してる。そこで町の人たちを無理やり働かせ、自分たちが使う兵器を作らせてるんだ。奴隷のようなものだ。彼らに自由はない」

 「そういう奴が居るのよね、海賊の中には……」

 

 顔をしかめたナミがつい反応した。

 彼女も同様の経験がある。黙ってはいられなかったのだろう。少なくともこの時点で、彼女にはトランプ海賊団を倒す理由が二つは用意されたのだ。

 

 「おそらく侵入者に対する罠も多く設置されてる。正面突破は不可能だと考えてくれ」

 「相手と罠の種類にもよるけどね。どの程度の物かわかる?」

 「種類まではわからないが、トランプ海賊団の船長、ベアキングは冷酷な男だ。自分に逆らう奴は簡単に殺してしまう。侵入者にも同様だろうな」

 「ずいぶん詳しいね。昨日今日知ったわけじゃなさそうだ」

 

 頬杖をついたキリが気の無い声で呟く。

 微笑みを湛えている彼だがなぜか気になる。一応話を聞いている風で、同時に魚を食べるのに忙しいルフィを見るのとは印象が違った。何か見透かされているような気がして仕方ないのだ。

 

 難しい顔をするボロードだが、彼には覚悟があった。

 最大の目的はトランプ海賊団を倒すこと。それだけを考えて口を動かす。

 

 「時間をかけて調べた。それでも全てを知ることができたわけじゃないが……」

 「執着が強いわけだ。島内の状況は?」

 「小さな町が一つだけだ。トランプ海賊団の兵士が支配してる。むやみやたらと殺すわけじゃないようだが、少なくとも、作りたくもない兵器を作らされてるのは間違いない」

 「となれば武装もそれなりなわけだね。ふむ……」

 

 頷いたキリが何かを思案する。

 その様子に嫌な予感を感じない訳ではなかったが、誰かが指摘する前にシルクが言った。

 

 「あったよ。トランプ海賊団。幹部四人と船長に懸賞金がついてて、一番上は6660万ベリー」

 「んん、まずまず。厄介なのは科学力だね。雑兵の装備も整ってそうだ」

 「それに、船長のベアキングと幹部のハニークイーンは能力者だ。他の三人もねじまき島が生み出した装備を持ってる」

 「詳しいね。実際自分の目で見てきた?」

 

 キリに問いかけられ、わずかに逡巡したボロードだが、覚悟はあった。彼は唐突に左手にしていた手袋を取る。

 その手を見て数名が息を呑んだ。

 現れたのは機械仕掛けの左手。いわゆる義手だ。どうやらトランプ海賊団を知った時、本来の腕を失ったらしいことが彼の態度からわかる。

 

 「ああ……この目で見た」

 「だから“手を組もう”か。自分一人では不可能だと知って」

 「おれもしがない泥棒だ。払える物なんて何も持っちゃいないが、あいつらは違う。トランプ海賊団が持ってる物なら何でも持って行ってくれ。おれはあいつらが失脚すればそれでいい」

 

 真剣な、それでいて熱を感じる静かな言葉である。

 彼らは黙り込み、ボロードの頼みを受けて真剣に考えた。

 

 そんな折に、黙っていられなかった様子のアキースが口を挟む。

 そもそも彼は唐突に海賊に捕まってしまって、自身が憧れるボロードが彼らを頼っていて、この状況その物にまだ違和感と憤りを持ったままだった。

 なぜボロードが彼らを頼らなければいけないのか。下手に出なければいけないのか。

 そんな怒りが彼の口を動かさせた。

 

 「しがないってなんだよ、ボロード……おれたち、世界一の泥棒になるって決めただろ? こんな奴らの力なんて借りなくていいよ。おれたちだけでさ――」

 「アキース」

 「おれとボロードが組んでるんだ! 絶対やれるって! お前らは知らないだろ、ボロードはすげーんだぞ! 喧嘩は強いし、航海術は持ってるし、何だってできる!」

 

 アキースは拳を握りしめ、興奮した面持ちで主張した。しかしその言葉に対する彼らの態度は冷やかなものだった。誰も口を開かず、じっと彼の顔を見つめる。

 奇妙な空気は感じていて、それすらもアキースを苛立たせた。

 こいつらはわかっていない。ボロードを認めようとしていない。その想いが衝動となる。

 思わず体が動いた時、アキースを止めたのは他でもないボロードだった。

 

 「もうやめろ」

 「でも! こいつらボロードのこと何も知らないでさ! なんでボロードが頭下げなきゃいけないんだよ! そんなの泥棒兄弟じゃないだろ!」

 「必要なことなんだ。おれたちだけじゃトランプ兄弟には勝てない……」

 「そんなことねぇよ! おれとボロードだったら勝てるって! そりゃ、前は失敗したかもしれないけど、おれだってピストルの練習はしたし、何よりボロードは強いだろ! そんなのやってみなきゃ――!」

 「アキース!」

 

 ボロードが大声を出した時、アキースの体がビクッと震えた。

 見つめ合って改めて気付いた。長い付き合いになるが、かつてこれほど追い詰められたボロードを見たことがあっただろうか。そこに居たのは普段のボロードではない。何かに焦り、怯え、普段の自信に満ち溢れた男の顔ではなかった。

 

 ようやく事態の重さを知ったらしく、アキースは所在なさげに口を閉じ、座り直す。

 どうすればいいかもわからず俯いてしまった彼が気になったものの、今はその時ではない。改めてボロードはキリに目を向けた。

 彼は待っていた。まだ話し合いは終わった訳ではない。

 不意にキリが目を伏せて、頬杖をついたままボロードに問う。

 

 「どうする? 彼の意思を尊重することもできるけど」

 「頼む。力を貸してほしい」

 「よっぽどの事情みたいだね。仲違いしてまで海賊に頼むとは」

 

 目を開けたキリがルフィに視線を投げた。

 ちょうど魚の骨を噛み砕いている最中だった彼は、視線に気付いても二人を見ていた。

 

 「船長に任すよ。ボクはどっちでもいい」

 「うーん……」

 

 ガリガリと骨を噛み砕いて、呑み込んだ時。ルフィの目はアキースを見ていた。

 

 「おいお前。自分の身は自分で守れるか?」

 「あ、当たり前だ! バカにすんな!」

 「おれはボロードじゃねぇし、お前の仲間じゃねぇから、危なくなっても助けてやらねぇぞ。それでも戦えんのか?」

 「戦えるよ! おれだって戦える……!」

 

 固く握りしめた拳を震わせながらも、俯いたアキースは感情的に叫ぶ。

 ルフィは淡々とした様子で彼を見つめていた。

 いつになく静かで、笑みを見せることもなく表情はなかった。

 

 「ボロードの腕が無くなったのだっておれのせいで、おれがもっと強かったら、ボロードが傷つく必要なんてなかったんだ……」

 「アキース、お前はそんなこと気にしなくてもいい。おれが勝手にやったことだ。腕の一本くらい後悔はしてないし、お前が気に病むことじゃ――」

 「おれのせいだろ! 足手まといになったからだろ!?」

 

 感情が爆発したらしく、思わず立ち上がったアキースはボロードに向き直った。

 ボロードは驚きながらも彼から目を離せず、叩きつけられるようなその言葉を受け止める。

 

 「ボロードが言ったんだろ! 二人で世界一の泥棒になろうって! なのにおれ、おれが足手まといになってていいわけない……! お前の相棒はおれなんだぞ! こいつらじゃなくて!」

 「わ、わかってる……でも、今回ばかりは相手が悪くて」

 「そんなこと知るか! おれはボロードに命がけで守ってもらったんだ……だからおれも命がけでボロードを守る! それがおれたち泥棒兄弟だろ!」

 

 最後にはアキースがボロードの胸倉を掴んで、反論は許さないとばかりに言い切った。思わぬ出来事に言葉を失った彼は何も言えず、初めてぶつけられた想いに目を白黒させている。

 一方でルフィは笑みを浮かべていた。

 彼の決断はすでに終えられたようで、唐突に席を立つ。

 

 「そっか。じゃ、がんばれ」

 「え……?」

 

 簡潔に告げられた一言に怒りも霧散し、アキースはボロードの胸倉を掴んだままぽかんとする。気持ちは同じだ。ボロードも何を言われたのか理解できていなかった。

 ルフィはいつもの人懐っこい笑顔で言う。

 

 「わりぃけどお前らとは手を組まねぇ。おれたちはおれたちで勝手にやる」

 「お、おい、ちょっと待て……」

 「そのダイヤモンドなんとかはもらうし、トランプ海賊団ってのもおれたちがぶっ飛ばす」

 

 状況を理解できない二人へ向けて、彼の発言は迷わなかった。

 

 「早い者勝ちだ。勝負するか?」

 「あ、当たり前だ! おれたちが負けるわけないだろ!」

 「んなことねぇよ。おれもおれの仲間も強ぇからな。おれたちが勝つに決まってる」

 「そんなの、やってみないとわかんねぇだろ!」

 「おいちょっと待てアキース……! あんたも、この話し合いは……」

 「お前らの助けなんかいらない! 泥棒兄弟が勝つに決まってる!」

 

 アキースが叫んだ直後、キリが肩をすくめた。

 席を立った彼は歩き出し、傍を通り抜ける際にボロードの肩をぽんと叩く。

 

 「残念ながらそうなったみたいだから」

 「そうなったって、お前ら……」

 「うちの船長はこうだからさ。言い出したら聞かないし、発想が自由だ」

 

 言い残して歩き去るキリは船首へ向かう。

 ボロードはぽかんとしていて、その背に声をかけることもできない。

 その間にもルフィとアキースは、まるでライバルのように敵意をぶつけて見つめ合っていた。

 

 「だったらやってみりゃいいじゃねぇか。手加減しねぇけどな」

 「へっ、そんなもんいるか! 泣いたって謝ってやんねーからな!」

 「おれが泣くか! バーカ!」

 「うるせー! バーカバーカ!」

 「ガキか」

 「どっちもガキだろ」

 

 傍から見ていたウソップとゾロが呆れていた。しかし彼らもまた一連のやり取りを聞いておきながらルフィを止めようとはしなかった。

 周りの人間にしてもそうだ。ルフィの言葉に反発して議論しようとはしない。

 すでに話し合いは終わったと言いたげにそれぞれが会話など始めている。

 状況を理解できず、置いていかれた形のボロードだけが困惑していた。

 

 その時ちょうど、船の前部で双眼鏡を覗いていたロビンが彼らに振り返る。

 にこやかな笑みを湛え、涼やかな声が届けられた。

 

 「話し合いは終わった? ちょうど見えたわよ。目的地の、ねじまき島が」

 

 その言葉をきっかけにルフィやウソップ、チョッパーがいの一番に駆け出し、船首付近に集まると船の前方を眺めた。

 確かに遠くに島が見える。そしてその姿に目を見開いた。

 

 聞いていた通り、或いはそれ以上に奇怪な風景。

 島自体は小さな物だが、何より目につくのが天へ向けて伸びた台地。形はまるでキノコか花のようでもある。茎のように細い大地が揺れることもなく直立していて、町があるだろうというのはその上なのだ。雲に届くほどの高さではないとはいえ、恐ろしい環境があったものである。

 果たしてあれは倒れないのか。自然の物か。機械とすればどうやって建てたのか。

 次から次に見つかる謎に彼らは目を輝かせて、まだ見ぬ冒険に心躍らせていた。

 

 「すんげぇ~! なんだあの島!」

 「ありゃどうなってんだ!? ほんとに島か!?」

 「あの上に人が住んでるのか? すげー!」

 「こんなところがあったんだね。流石に知らなかった」

 「フフ。まだ退屈せずに済みそうね」

 

 真剣な話し合いもすでに記憶の彼方。すでに和気あいあいと緩んだ雰囲気が漂っていた。

 困惑しているのはボロードばかり。アキースでさえもすでにやる気を漲らせていて、負けん気が先行して躊躇いや戸惑いなど今や忘れ去っていた。

 

 少し慌てた様子でボロードがキリの下へ移動する。

 まだ疑念を持ったまま。これを解消せずにはいられなかった。

 

 「手を組むという話は、これは……」

 「結果は同じなんだ。問題ある?」

 

 笑顔で振り向いたキリは多くを言わずにそう問いかけた。

 問われたボロードは咄嗟に考える。

 大事なのは過程か、結果か。考えずともわかることだ。そもそも彼自身が海賊とそう違わぬ身分の海の泥棒。細かいことを気にしてどうする。

 やれやれと言いたげに首を振り、深い溜息を一つ。

 それで気分を入れ替えた。ボロードは呆れた目で、しかし薄く笑みを浮かべてキリを見る。

 

 「いいや……結果があればそれでいい」

 「ん。それはよかった。じゃ、そっちも頑張って」

 

 頷いたボロードはアキースの隣へ戻っていく。そしてすぐ話し始めたようだ。

 それを確認してから、仲間たちが船の前部へ集まってくる。

 島を見てはしゃいでいた三人も加えて、彼らは彼らで作戦を立て始めるつもりだった。

 

 「で、どうすんだ?」

 「メリーを囮にするって案があったみたいなんだけど」

 「断固として反対だ! 絶対反対! メリーが傷ついたらどうする! うちには専門の船大工も居ねぇんだぞ!」

 

 ゾロが口火を切ってキリが試しに言ってみれば、すかさずウソップからの反対意見が飛んだ。普段よりも熱い彼はメリーのことになると厳しくなる。その作戦を実行することは不可能だろう。

 そうと知って煙草の煙を吐きながらサンジが提案した。

 

 「なら潜入ってのが手っ取り早いんじゃねぇのか? どうせ検問の類もあるだろうし、あの様子じゃ正面突破ってのも時間がかかるぞ」

 「町の様子、ここからじゃ確認できないしね」

 「少数精鋭で片付けましょ。もちろん私は残るけど」

 

 シルクが背伸びをしながら島の上部を眺めている隣、ナミはそそくさと自分の安全を確保する。海賊の支配が許せないという気持ちと怖さは別のようで、やはり自身が赴くことはないようだ。

 彼女らが真剣に上陸作戦を考案しようとする一方、チョッパーはロビンに質問していた。

 島を出て少ししか経たない彼。まだ知らないことも多い様子だ。

 

 「しょうすうせいえいってなんだ?」

 「必要最低限の少ない人数で動きましょうってことよ。全員では行かないの」

 「不思議作戦ってことか」

 

 納得した様子で頷くルフィも理解したようだ。

 にかっと笑った彼は真っ先に言い出す。

 

 「おれは行くぞ! トランプ海賊団をぶっ飛ばしに!」

 「立候補で決める? 敵の幹部は全部で五人。残りは四人」

 

 キリが提案したことで各々が反応した。

 

 「おれは行くぞ。試したいことがある」

 「おれはノー!」

 「おれはナミさんを守らなきゃならねぇ」

 「おれは、どうしようかな……行きたいけど、ウソップが危ないって言うし」

 「チョッパー行かないの? じゃあ私、行こうかな」

 「私も参加するわ。フフフ、一度行ってみたかったの。あなたたちの冒険」

 

 好き勝手に喋る一同の声を聞き、意見をまとめたキリが頷いた。

 すでに行く気満々な面子を見ると再考する必要性も感じなかった。これで決定だ。

 

 「ボクを入れて五人か。じゃ、さくっと終わらせよう」

 「お前、ルフィが言わなくても引き受けたろ。この話」

 「どうかな? ルフィが興味持たなかったらスルーしてた気もするけどね」

 「よく言うぜ……」

 

 早々に話をまとめたらしい彼らは、まるでこれから遠足に行くかのように盛り上がっている。

 その様を見たボロードとアキースは真剣な顔つきをしていた。

 

 「なぁボロード……」

 「うん?」

 「絶対勝とうぜ。世界一の泥棒になるって言ってただろ?」

 

 一瞬、答えに詰まったボロードだが、アキースの顔を見下ろして笑みを見せた。

 

 「……ああ。当たり前だろ。負けていい勝負なんてないからな。たとえ相手が海賊でもだ」

 「へへっ! そうこなくっちゃ!」

 

 本音を言えば、勝負など二の次。

 本来の目的はトランプ海賊団の撃破とねじまき島を支配から解放することにある。それ以外は、たとえダイヤモンドクロックであっても興味がないと言っていい。

 だが、楽しげに言うアキースの態度を見ると、勝負という言葉も悪い気はしなかった。

 

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