ROMANCE DAWN STORY   作:ヘビとマングース

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ナワバリ

 ふわぁ、とナミはあくびを抑えられなかった。

 仮眠は取ったが夜通し続いた宴の影響は少なからずある。こうした生活やイベントはすでに慣れているとは言っても健全な体は睡眠を欲するものだ。おそらく出航してから昼寝をすることになるだろうとは朝の時点で彼女もわかっていた。

 

 町を丸ごと巻き込んだ宴は盛大に行われ、町民たちの笑顔を生む結果となって朝方に終わった。

 用事を済ませた麦わらの一味は早くも島を出ようとしており、出航の準備をしている最中。

 

 皆も夜通しの宴には慣れていて、男たちに関しては疲労の色も見せず今も騒いでいる。欄干に頬杖をついて呆れているナミに気付くこともなくいまだに楽しそうだ。

 よく知る仲間ながら、よくもあれだけ体力があるなと呆れてしまった。

 

 「いやぁ~見せてやりたかったね実際。お前らが上で戦ってる間にここら辺は海獣ドクアザラシでいっぱいになっちまったんだ。辺り一面が紫色になってたんだぜ。奴らの皮膚の色だ」

 「ええっ!? そうだったのか!?」

 「そうだったのかウソップ!? でもおれ、一匹も見てねぇぞ!」

 「馬鹿だなチョッパー。お前が怖がると思ってお前に気付かれる前に倒したからだよ。しかしそれも簡単じゃなかった。あの激闘は流石のおれ様でも息を呑むほどだった……」

 

 宴のテンションが続いているのか、ウソップの口は止まらず、上機嫌な語りは次から次に嘘をついて聞く者を楽しませた。すっかり虜となったルフィとチョッパーは目を輝かせて聞いている。

 少し冷静に考えれば彼が嘘をついていることなどわかりそうなものだが、考えることを放棄しているのか、それともわかった上で楽しんでいるのか、二人が疑問を持つ様子はない。ウソップの言うことに素直に頷いて全て呑み込んでいる。

 

 「いいなーウソップ。おれもそいつ見たかったなー」

 「すげーなウソップは! いつの間にそんなことしてたんだ! おれ全然気付かなかった!」

 「お前らがあいつを見なかったのは運が良かったかもな。ドクアザラシは丸っこくて可愛いやつなんだ。だけど凶暴で滅茶苦茶強くて一度暴れ出すと手がつけられない。毒も吐くしな」

 「そいつに勝ったのかー!」

 「毒吐くのか!? 危ねぇーなー」

 「しかも五百匹は居たな。あれには流石に焦ったぜ。もっとも、全部おれが仕留めたわけだが」

 「すげー!」

 「五百匹も!?」

 「まぁおれにかかれば朝飯前ってやつさ。大したことじゃねぇって。それで言うなら五歳の頃に戦ったドククジラの方がよっぽど強かったぜ。あの時もおれが一人で仕留めたっけ……」

 「えぇ!? ドククジラも居んのか!」

 「しかも一人で勝ったのか!? ウソップって強ぇなぁー」

 「いやいや、どうもどうも」

 

 ますます勢いに乗ってきたウソップの嘘は止まらなくなっていた。

 さらに次の話へ繋げようと彼が佇まいを直した時、船に食料を運び込もうとしていたサンジが木箱を抱えてメリー号の甲板にやってくる。

 上機嫌なウソップに歩み寄り、持っていた木箱を落とすように彼の胸へ押しつけた。

 

 「ほぉ~、そりゃすげぇ。なら逞しいキャプテン・ウソップにもぜひ手伝ってもらおうか」

 「ふげっ!? お、重~!?」

 「お前らもだよ。積み込みも済んでねぇのに遊んでんじゃねぇ、ったく」

 「だって気になるだろ。ドクアザラシとドククジラだぞ」

 「五百匹も居たんだぞ!」

 「そんなに居りゃおれやお前も気付いてるはずだろ。いいからとっとと運べ。それとも今日のおやつは抜きがいいか?」

 「急げチョッパー! 全部運ぶぞ!」

 「うん! わかった!」

 

 ルフィとチョッパーが荷物を積み込むためメリー号を一旦降り、港の桟橋に集められた木箱や樽に飛び付く。慌てている素振りはあったが元気に荷物を運び始めた。

 彼らが大急ぎで作業を始めたため、サンジは一旦足を止めて煙草の火を点ける。

 その隣ではウソップが木箱を抱えたまま、何かを後悔するように深い溜息をついた。

 

 「はぁ~、もう出航か。ここならゆっくりできそうなのになぁ。確かに移動は疲れるけど、簡単に海賊が入ってこれなさそうだし、せっかく追い出したってのによぉ」

 「文句ならルフィかキリに言えよ。どうせ決定は覆らないだろうけどな」

 「そんなに先を急ぐ必要あるか? おいキリ、どうなんだよ」

 

 ちょうど荷物を抱えてメリー号に乗り込んできたキリに目を向け、ウソップが問う。

 声が聞こえていて内容を理解していた彼は迷う素振りもなく答えた。

 

 「確かに見た目的には堅牢そうだけど、ここは海賊に支配されてたんだよ? それでも残る?」

 「また海賊に襲われるってことか? だったら余計に残った方がいいんじゃねぇか? せめて少しの間だけでも」

 「その点は大丈夫だと思う。作った武器や罠の使い方とか、島の警備についてもある程度指示しておいた。入口がこうだから作戦さえしっかりしてれば素人でも十分守れるよ」

 「じゃあ安全なんだろ。もうちょっと居よう」

 「ウソップ、ボクらはシキに目をつけられてるんだ。シキの情報網は相当なものだし、同じ場所に長居するとボクらも島の人も危険な目に遭う。今は次から次に移動していかないと。そっちの方が無事に航海を続けられるんだよ」

 「うへぇ、聞きたくなかった話だな……それじゃあおれたちに安息の地はねぇのか」

 

 答えた後でキリは自分が持っていた木箱をウソップに渡す。元々持っていたそれの上に同じサイズの物を乗せられて、思わず腕と膝を震わせた彼はよたよた歩きだし、どこかに下ろさなければと慌てて彼らの傍を離れていった。

 その場に残っていたサンジは煙草を銜えながらキリに尋ねる。

 

 「で、協力は得られたんだろ?」

 「今後のことも含めてね。この島の科学力は侮れない。快く協力してくれるってさ」

 「人助けもしてみるもんだな。脅す必要がなくなる」

 「それ、ボクのこと悪く言ってる?」

 「いいや。ちっとも」

 

 サンジは次の荷物を運ぶべく移動し始めた。

 入れ替わるようにシルクとゾロが荷物を持って甲板へやってくる。

 

 「次はどこへ向かうの? 当てはある?」

 「ない。でもどこへ行っても同じような状況さ。結局やることは変わらない」

 「ほんと嫌になるわね。どの島に行っても戦ってばっかりじゃない」

 

 少し眠そうに髪を掻きながらナミが階段を降りてくる。

 元々冒険や戦闘が好きではない彼女にとっては悪夢のような状況だ。ルフィの懸賞金が1億に達したことだけでも大変な事態だというのに、そこに輪をかけて金獅子である。いまだに受け入れ難いようで思わず溜息をついてしまった。

 

 疲れている雰囲気のナミを見てシルクが苦笑した。

 昨夜はあれだけ大酒を呑んで楽しそうだったのに今朝はこうだ。

 様子の変化に気付いたからこそ、彼女は気遣う言葉をかける。

 

 「眠そうだねナミ。飲み過ぎた?」

 「ううん。ただ眠いだけ。飲もうと思えばまだ飲めるわよ、私」

 「おれもまだまだ飲める」

 「そんなに飲まなくていいんだよ。消費が多いとサンジとナミに泣きが入る」

 

 ゾロに新品の酒瓶を一つ投げて渡しながらキリが移動していった。驚くこともなく受け取ったゾロはすぐに蓋を開け、瓶に直接口をつけながら同じく仕事に戻る。

 彼らは常に金欠の恐怖と戦う海賊団だった。

 主な資金源は海賊からの略奪であり、町や市民を襲ったりせず、機会が限られるため収入にはある程度の制限がある。しかし消費が圧倒的に多い。主にルフィの食費を始めとして、航海には色々と入用になるためすぐに金が外へ出ていってしまう。彼の言葉はそれを示していた。

 

 食料を全て管理するサンジと、一味の資産を全て管理するナミには気苦労も多いようだ。

 キリの言葉を聞いて改めて自分たちの貧乏ぶりを見つめ直し、肩を落とした彼女は溜息をついてしまう。その後は全てを忘れるかのように両腕を伸ばしながら空を見上げた。

 

 「確かにキリの言う通りね。ダイヤモンドクロックは大き過ぎて結局運べないし、手に入れたのはトランプ海賊団のお宝だけ。それも期待したほどじゃないし、町の人にもちょっと分けたし……あーあ、たまには何も考えずビーチでのんびりしたいわねー。お金のことも海賊のことも海軍に追われることも考えずにさ」

 「そうだね。たまにはそんな時間があればいいんだけど」

 「次の島はどんなところかしら。せめて気候は安定しててほしいわ」

 「またシキの手下が居るかもしれないよ。今はそんなところばっかりみたいだから」

 「はぁ……それだけは勘弁してほしいわ」

 

 心底うんざりだという顔をするナミを見て、シルクはくすくす笑う。

 船の外を見れば、皆が協力したおかげで用意した荷物を積み終えたらしい。今彼らが持っている物が最後のようだ。

 

 「ロビンちゅわーん! 君はそんな重い物持たなくていいんだよ! 僕が運ぶからー!」

 「あら、いいの? 力持ちなのねコックさん」

 「えへへ~! それほどでも~! ロビンちゃんのためならこんな荷物の一つや二つ……!」

 「おう、そうだ。全部お前が運べばいいんだ、バカ」

 「あぁ!? てめぇにゃ言ってねぇよマリモ!」

 「ちょっと力持ち、こっちにも一つあるよ」

 「そりゃてめぇの分だろうが! 自分で運べ!」

 「よーしこれで最後だぞ! おやつだサンジー!」

 「おやつだー!」

 「まだ早ぇよ! さっき朝メシ食わしたとこだろ!」

 

 仲間たちがぎゃーぎゃーと騒がしくしながら乗船してくる。

 ナミは苦笑で、シルクは微笑みで彼らを迎え入れ、出航の時が近いことを感じる。

 

 彼らが乗船し終えた頃、倉庫に荷物を運び終えたウソップが甲板に戻ってきて、ふと船の外に目を向けて気になる物を見つけた。

 小舟に乗って出航しようとするボロードだ。

 彼は一人で準備をしていて、今まさに船を出そうとしている。

 

 「おーい。お前も島を出んのか?」

 

 ウソップが手を振りながら声をかけた。仲間たちも気付いてそちらに目を向ける。

 振り向いたボロードは薄く笑みを浮かべた。以前ならまだしも、協力してもらった今では彼らに対する悪感情は持っていなかったようだ。

 

 「ああ。世話になったな」

 「ここに残ってもいいんじゃねぇか? あいつを拾って育ててたんだろ」

 「そういう生き方は性に合ってなくてな。おれは元々こうだった。今更生き方を変えて平和に町の中でじっとしてるなんて、おれにはできそうもねぇ」

 「ふーん。もったいねぇ気もするけどな……」

 

 ウソップは欄干に頬杖をついて、複雑そうな顔でそう呟く。

 他人の生き方を好き勝手に言うつもりはないが、付き合いが短いとはいえ、彼が一人で居る姿を見て何も思わない訳でもなかった。だから寂しげな顔なのだろう。

 同じことを考えたのか、サンジがボロードに尋ねる。

 

 「お前一人で行く気か?」

 「ああ。アキースは家族に出会えたんだ。無理に引き剥がす必要はないだろ」

 

 言いながらボロードは小舟を押し、海に浮かべて乗り込んだ。

 船に乗ってから振り向くと最後の挨拶のために彼らを見た。

 

 「じゃあなお前ら。本当にありがとう。また機会があればどこかで――」

 「お前、荷物は確認したのか?」

 「え?」

 「ちゃんと見といた方がいいぞ」

 

 サンジが言うとボロードは船の後方、自身の荷物に目を向けた。

 きちんと確認はしたはずだが、今見てみるとかけておいた毛布がもぞもぞ動いている。驚愕した次の瞬間には、落ち着く暇も与えずその下からアキースが現れた。

 

 「ボロード!」

 「うわっ!? アキース!? お前、ここで何してるんだ!」

 「水くせぇじゃねぇか! おれたち二人で泥棒兄弟だろ! おれを置いて行こうったってそうはいかないぜ!」

 「お前、せっかく両親と会えたってのに……」

 「ボロードが言ったんだろ! 二人で世界一の泥棒になるって!」

 

 突然の事態に驚きを隠せず、受け止め難い状況だったようだが、必死に訴えるアキースを見て流石にボロードも何も感じないはずはなかった。

 これが彼の選んだ道なのだ。

 がしがしと頭を掻き、仕方なさそうに笑ったボロードは態度を変えた。

 

 「仕方ねぇな……じゃあ行くか」

 「おう!」

 「よかったなアキース」

 

 いつの間にか欄干に座っていたルフィが笑顔を見せる。

 アキースとボロードも彼らに晴れ晴れとした表情を見せ、手を振りながら遠ざかっていった。

 

 「お前らありがとなー! また会おうぜー!」

 「おう! またなー!」

 

 彼らも手を振って送り出す。

 一緒に過ごした時間は短かったが、共に戦い、宴をした。笑顔で見送る理由はそれで十分だ。

 二人が去っていった後、一味も出航すべく行動を始める。

 

 「さて、ボクらも行こうか」

 「しばらく他の海賊と出会いませんようにー」

 「言えてる。これですぐ出会うようなら神様を呪ってやるわ」

 

 ウソップとナミが不安を口にしつつも、彼らもまた出航のために準備を進める。

 一所に留まるのは危険らしく、かといって海上に居ても襲われる可能性は十分にある。考えるだけで嫌になる展開だ。

 それでも船上にある雰囲気は穏やかで、いつも通りに呑気な会話をする程度には冷静だった。

 

 準備を進めて、出航しようかと考える頃。

 メリー号に近付いてくる人影があった。

 のしのしと歩いてくる男は砂浜に立ってメリー号を見上げる。

 

 「おぉ、居た居た。まだ出航してなかったな」

 「ん? 誰だ?」

 

 声に気付いたルフィが軽やかに欄干へ飛び乗る。その上にしゃがんで男を見下ろした。

 見知らぬ男だった。町の中でも宴の最中にも見ていない。初めて見る顔で不思議そうに見下ろすと彼は笑っていた。

 

 「お前らの噂を聞いてきたんだ。おもしれぇ奴らじゃねぇか。金獅子に喧嘩売ったって?」

 「ああ。そうだ」

 「やっぱりそうか。噂は本当だったってわけだ。わざわざここまで来た甲斐があった」

 

 ルフィが話している声を聞いてキリが近寄ってきた。

 船の外に目を向け、相手の男を確認する。知らない顔だ。出会ったことはない。

 

 「おっさん誰だ? この島のやつか?」

 「いやぁ、ただの名もねぇ海賊だ。お前らに一目会いたかったんだよ」

 「へぇ、海賊か」

 「それと一つ頼みがある。おれも加えちゃもらえねぇか? お前らの海賊同盟とやらに」

 

 ルフィはあっさりとその言葉を受けたが、キリは怪訝な顔をした。

 自分たちのことが知られている。シキが敢えて情報を広めているとすればおかしな話ではない。元々は彼らもシキと対立し、シキの名を利用して自分たちの名を広め、戦力を増強して、ゆくゆくはシキを打倒するつもりだった。しかし、こうして自分たちに近付いてくるにはあまりにも早過ぎるのではないだろうか。

 同盟は結成したばかりでまだ明確な戦果を上げていない。

 このタイミングで近付いてくるということは、おそらく自分たちを利用したがる人間だ。

 

 キリは警戒して件の男を見る。しかし本人が言う通り、手配書で見た顔ではない。おそらくはまだ無名の知られていない海賊だった。

 だからといって安心はできず、会話はルフィに任せて彼は観察に集中する。

 

 男は友好的な態度だ。

 少なくとも今は騙まし討ちをする素振りもない。興味本位で声をかけた風にも見える。

 

 「海賊同盟に? 仲間にしてほしいのか?」

 「まぁ要するにそういうことだ。だがおれァこれでも船長でね。お前らの部下になりたいってわけじゃねぇ。そこだけは頼むぜ」

 「どうするキリ。同盟に入りたいってよ」

 

 振り向いたルフィに見られているのを知りながらキリは視線を動かさない。

 警戒されている、と本人も感じ取ったのだろう。

 楽しげに、豪快に笑う彼は両手を広げて友好的な態度を示した。

 

 「ゼハハハハ! 仲良くやろうぜ。おれも金獅子を仕留めてぇだけさ」

 

 確かに味方は必要だが、彼の参入は果たして吉と出るか、凶と出るか。

 敵には伝説と語られた海賊。普通に戦って勝てるはずがない。ならば危険な賭けに出てでも確率を上げることはきっと必要になる。

 素早く思考を巡らせたキリは思わず前へ出た。

 

 「なぜボクらのところに?」

 「あぁ? 噂を聞いたからだ。勝ち馬に乗りてぇのは誰だって同じだろ?」

 「その噂はどこから? 言っちゃなんだけどボクらはまだ大して何も結果を残してない」

 「なんだ、警戒してんのか。そうなるのは仕方ねぇが、目的は今言った通りだ。おれは金獅子の首を獲りてぇだけなんだよ」

 

 彼の発言にキリの表情は曇る。その顔を見て男は笑った。

 

 「もちろん名を上げるためにだ。別にお前らを騙まし討ちしようなんて考えじゃねぇ。まぁ信用するとも思ってねぇけどな」

 「わかった……詳しい話を聞くにしても、ボクらは慈善団体じゃない。手を組むためにはそれなりの対価がほしいところだ」

 「ああ、わかってる。何が欲しい? 情報か? それとも金か?」

 

 金という言葉に反応してナミがキリを見るものの、彼はそれを黙殺する。

 キリが厳しい顔で黙り込んでいるのを確認すると男が言った。

 

 「お前ら、いずれは新世界へ行くんだろう? おれはあっちの海に詳しくてな」

 「ということは、向こうの出身?」

 「ゼハハハ、どう思うかはお前らの自由だ。だが良いことを教えてやろう。おれは白ひげのナワバリに詳しいんだ」

 

 予想していなかった名前を聞いてピクリと眉が動いた。

 反応があった。海賊がいくら集まろうとそんな情報は集まらなかったのだろう。

 些細な挙動から相手の野心を見抜き、この時男は確信を得る。

 話は通じた。同盟に入ったも同然だと。

 

 「仲良くできそうだな。まずは何の話から始める? ゼハハハハ……」

 

 彼にはわかった。キリの目は警戒しながらも相手を利用できないかと考えている。彼も同じことを考えていたからだ。

 同盟に入るのは成り上がるため。得る物を得れば興味はない。

 今後の動きを頭の中で想定し始め、男は面白いと言いたげに楽しそうな笑顔だった。

 


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