ROMANCE DAWN STORY   作:ヘビとマングース

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断章 空から降る敵

 まだ黒煙が上がる町の中。崩壊した建物がずらりと並び、そこに住んでいる人たちの姿が消え、残っているのは気絶して倒れた海賊と、彼らを倒した海賊たちだ。

 激しい戦闘があったのはその惨状を見れば明らかだった。

 以前は平和だっただろう景色は失われ、港町の半分が破壊されている。

 

 パチパチと上機嫌に手を叩く音がしていた。

 壊れた家の屋根に立ったアプーはなぜか楽しそうに笑っている。

 

 「アッパッパッパ! やっぱりお前らイカレてんな」

 

 手を叩くのをやめて眼下に居る面々を見回す。

 以前から噂は聞いていて、実際手合わせしたこともあるとはいえ、敵を前にしてこれほど苛烈になるのかと感心せずにはいられない。そういう彼自身も大規模な破壊に関わっているのだが、自分だけ棚に上げての発言だった。

 

 つまらなそうに舌打ちしたキッドは敵の船長を地面へ放り投げる。

 血だらけになったその男は、彼を満足させるほどの実力を持っていなかったらしい。

 

 同じく剣を納めたホーキンスが何の感慨もない目で町並みを眺めている。

 ずいぶん破壊してしまった。逃げた町民はきっと彼らのことを怖がっているだろう。

 本来はこの町を襲った海賊を撃退しようとしたのだが、想像していた以上に被害が大きくなり、もはや町民にとってはどっちも同じ野蛮な海賊でしかないに違いない。

 上手く行けば協力を望めるかと思っていたのに、これではそれも不可能だ。

 

 「ずいぶん壊したものだな」

 「あぁ?」

 「紙使いが言っていただろう。協力者を募れと。どんな些細な物でも金獅子打倒のために掻き集めるために。ここもその一つだったはずだが」

 「フン。馬鹿馬鹿しい。大体海賊が妥協してどうする。必要なもんは奪えばいいだろ」

 

 不機嫌そうなキッドはそう言って壊れた家の中に入って、使える物がないか探し始める。

 ホーキンスは彼の姿を見もせず、何も言わなかったが、話を聞いていたアプーが下りてきた。彼はキッドが入った家の入口に立って机をひっくり返す姿を見る。

 

 「まぁお前の言いたいことはわかるぜ。確かに必要な物は奪っちまえばいい。だが今は一応味方を増やしてぇって時だろ? 悪評広めてると誰も近付いてこなくなるぞ」

 「おれたちは海賊だ。ヒーローになるつもりはねぇ」

 「アッパッパ。そりゃ確かに。そういう話だが、お前はどうなんだよ?」

 

 アプーはホーキンスに振り返った。だが彼は背を向けたままだ。

 

 「どちらでもいい。略奪に興味はないが、止める理由もない」

 「相変わらず愛想がねぇなー」

 

 呆れた態度のアプーは溜息をついて身軽に歩きだした。

 敵を倒したことは事実。それなら上手く話をつければ町民からの評価もあるかもしれない。

 ヒーローになる気はない。キッドが言った通り、それは彼も同じだった。ただ単に人からの尊敬を欲して海賊を討伐した訳ではない。海賊を討伐したのは彼が金獅子の傘下であることを明言したからであり、金獅子への反抗を態度で示すためだ。

 ヒーローになる必要がなくても、金獅子の傘下を倒したのが自分たちで、立ち向かう意思があることを広める必要はある。

 

 アプーは町民が逃げた方向に向かおうとしていたようだ。

 その途中で自分の仲間へ気軽に言う。

 

 「お前らも好きなもん持ってっていいぞ。どうせすぐ出るんだから急げよ、なぁ」

 「船長……ほんとによかったんですかねぇ?」

 「いいんだよ。壊しちまったもん直せねぇだろ。それにオラッチたちは良いことをしたんだ。少しくらい報酬があったって罰は当たらねぇよな?」

 「あんたやっぱり悪い奴だなぁ……」

 

 部下の呆れた目から逃げるように進むとキラーが待ったをかけた。

 仮面を着けて外そうとしない彼は、表情を知ることはできず、人となりがわからない。

 相変わらず変な奴だとアプーが訝しげな顔を見せる。

 

 「町の連中のところに行くのか?」

 「ああ。ちょいと世間話にね」

 「別に構わんが、問題を大きくするなよ。すぐに次の島に向かう」

 

 淡々としたキラーの言葉にアプーは肩をすくめて不服そうだった。

 

 「そもそも、なんでオラッチがお前らと一緒に行動しなきゃいけねぇんだ? はっきり言って気持ち悪いぜ。一番気に入らねぇっていう奴だろうが、お前らの船長は」

 「おれの提案だ。こちらが組織的に動いていることを伝えられる上に、万が一イレギュラーが起きても対応できる。これだけの面子が居れば誰が相手でもそう簡単には負けない」

 「そうか、お前の提案か。よく言うこと聞いたな」

 

 キラーがキッドの入った家に顔を向ける。すると中から壁を蹴り壊しながらキッドが出てきた。拝借しただろう物を袋に詰めて、決して上機嫌ではない顔だ。

 

 「あの敗北が相当堪えてるんだろう。これほど聞きわけが良いのは初めてだ」

 「それにしちゃ町を破壊しまくってるがな。相手はそんなに大したことなかったぜ?」

 「まぁ、癖のようなものだ。直そうと思ってもすぐにはできん」

 「はた迷惑な癖もあったもんだな」

 「お前が言えた義理ではないだろう」

 

 からからと笑ってアプーは歩き出す。

 以前ほどギスギスした空気ではないとはいえ、いまだに距離を測りかね、決して信頼し合っているとは言えない関係。会話することそのものに興味はない。

 

 「じゃ、ちょっくら行ってくるか。オラッチの評判も関わるしなぁ」

 

 歩きだしてすぐ、彼は立ち止まる。

 視線は空へ向かい、妙な物を見て眉間に皺が寄った。

 

 「って、なんだありゃあ……」

 

 薄い雲の向こう側、何かの影が見える。

 空を見上げてそんな物が目に入ると嫌な予感はしないが、まさかと思う気持ちもある。アプーはまだ冷静にその影の正体を確認しようとしていた。

 彼の呟きと歩みが止まったことで、他の者も空にある異変に気付いたようだ。

 

 雲の向こうで動く何かは島の方へ来ているようだった。

 近付いてくるのを感じて誰もが警戒し始める。

 空に敵が居ないとは限らない。そう思うのは彼らが空飛ぶ海賊と敵対したからだ。

 

 いよいよ影が島の上空に到達した。

 その頃にはほぼ全員が身構え、敵の来襲を警戒していたのである。

 

 予想は、或いは予感は正解だったと言っていいだろう。彼らはその影がある地点から何かが落下してくるのを目撃する。やはりあれは空を航行する帆船だったようだ。

 落下する物体は誰が止めることもなく町に到着する。

 ドスンと着地した途端に地面が揺れた。

 巨大なそれは動物だった。異様に巨大で奇妙な外見であったが、確かに動物だ。

 

 見事に着地したのは巨大な熊だった。

 前脚が異様に長く、後ろ脚二本で直立し、可愛らしい顔をしているものの、その場に立っていた海賊たちを見つけると途端に雄々しく吠え始める。

 その挙動を見て、ただ遊びに来たのだと思う人間が居るはずもなかった。

 

 「おいおい、こりゃあ……こんな展開ってありか?」

 「おもしれぇ。向こうもその気ってわけだ」

 

 状況を理解したキッドが好戦的に笑い、持っていた袋を投げ捨てて歩き出した。

 右手に力を込めると周囲に落ちていた金属が集められ、右腕に纏い始める。見る見るうちに大きくなっていく腕を掲げてキッドはついに走った。

 それに気付いたテログマも咆哮を上げながら前へ走る。

 互いが戦意十分な状態で接近していき、いよいよという瞬間にキッドが右腕を突き出した。

 

 「オラァァァッ!!」

 

 敵は金獅子一派。そう思っての全力の一撃であった。しかしテログマは普通の動物ではなく、普通の熊よりよっぽど大きく、力が強く、凶暴性は比べ物にならないほど差がある。その生物は戦闘用に育てられた熊だったのだ。

 キッドの拳は正面から受け止められた。

 長い腕が絡みつくように拳を受け、強い筋力で抱きつくように押さえ込む。

 

 驚愕した時にはテログマがその拳を持ち上げ、キッドの体を投げ飛ばそうとしていた。

 咄嗟に能力を解除して、金属が集まって出来た腕がバラバラになる。キッドの体は空中へ投げ出されるがすぐに着地の姿勢を取った。その最中にテログマの腕が向かってくるのを目撃する。

 

 まるで格闘技を習得しているかのような美麗さと、普通ならあり得ないスピードでパンチが繰り出されていて、キッドの体は殴り飛ばされた。瞬時に顔の前で腕を交差し、防御したとはいえ、想像もしなかった衝撃に腕の骨が軋む。

 彼は壊れた家屋に突っ込み、壁を破壊して姿を消した。

 

 「ハッ! こいつはヤバそうだな……!」

 

 ほんの一瞬の攻防だが、こいつは危険だと全員が瞬時に理解した。

 即座にアプーが能力を使用するべく体を楽器に変化させる。しかし笛になった腕を銜える前にテログマが飛びかかってきて、避けようと後ろへ飛んだ瞬間、異常に発達して長い前脚が伸びるように目の前へ迫り、殴り飛ばされた。まるでこうした状況を想定したかのような肉体である。

 

 同じく危機感を覚えたホーキンスは能力を使用していた。鞘から抜いた剣を構え、刀身が藁のように変化して奇妙な軌跡で伸びていく。それすらもテログマは身軽な動作で避け、流石に驚愕したホーキンスを華麗に殴り飛ばした。

 

 本能に従う動物とは思えないほど鮮やかな動き。

 殴り方や攻撃を避ける仕草を見る限り、人間らしさを感じてしまうのだ。

 

 装備した籠手から刃を出し、自ら飛びかかったキラーはテログマの反応速度に驚く。

 やはり動物らしくない動きでキラーの刃を避けて、逆にキラーが攻撃を避けようと動くと先読みするかの如くパンチを繰り出してくる。辛うじて避けたが、不思議な感覚だった。

 キラーは素早く動き回って攻撃を行う。

 テログマは全て見えているかのように避け、隙を見つけては反撃を行った。

 

 気配を感じてキラーは後ろに跳んだ。バック宙をして距離を取り、パンチを避ける。

 入れ替わるようにしてキッドが飛ばした金属が無数に飛んできた。

 流石にそれは想定していなかったのか、テログマの体に次から次へ金属がぶつかり、鋭利な物はわずかに毛皮を切って、しかし硬い皮膚なのか血を流す様子はない。

 

 危険を感じて彼らは集結した。

 キッド、アプー、ホーキンス、さらにキッドや他の部下たちまで。

 全員が勝利の余韻を捨て、強者を相手にする心積もりでテログマを見ていた。彼らの様子が変化したのを感じ取ったテログマもまた威嚇すべく咆哮する。

 さっきの海賊たちの数倍は強い。それはこの短時間でも確かだと判断していた。

 

 「てめぇ、調子に乗ってんなぁ……!」

 「金獅子が送り込んできた、ってことでいいな?」

 「どうやらこいつが金獅子の主戦力のようだ」

 

 傘下の海賊と比べ物にならない。実力で言うなら断然こちらだ。

 呟いたホーキンスはこの生物こそ金獅子が主力とする戦力だろうと想定する。一匹だけとは限らない。このレベルが数匹、或いは数十匹存在すると考えて間違いなかった。

 

 唸り声を響かせて身構えるテログマは、しかしぴたりと止まって動かず、感情的に突進してくることが無くなった。彼らが勢揃いしたことで警戒している様子だ。

 この態度を見てからもわかる。戦闘用に改造・教育されている変種の動物だ。

 機を窺っている様子のテログマを見てキッドは舌を鳴らした。

 

 「こいつ、一端に考えてやがるってのか?」

 「迂闊に手を出すなよキッド。こいつはおれたちから手を出すのを待っている」

 「バカ野郎。睨み合ってても状況は変わらねぇだろうが」

 

 右手の指をガッと開いたキッドは能力を使った。

 周囲にある金属がふわりと浮かび上がり、彼の下へ集まっていく。

 テログマはその様子をじっと見ていた。驚いた様子はない。

 キッドの手元で金属が集まり、歪な球体が完成した。剣や銃、鉄骨や家具の一部、壊れた物や破片も多かったが固められて巨大になれば十分な武器である。

 

 「躾が足りねぇ獣は、ぶん殴るのが一番いい」

 

 腕を振ったキッドは投げるように金属の塊を前へ飛ばした。

 当然の如くテログマはパンチを繰り出してそれを殴り飛ばそうとする。

 テログマの前脚が触れる直前、集まって固まっていた金属は全て弾かれたように吹き飛び、各々が四方八方へ散っていく。想定外の状況にテログマは驚いたらしく、自らの体に当たる金属を嫌がるように激しく動いていた。しかし強靭な皮膚に傷はない。

 

 目くらましを成功させて、キッドは飛び上がっていた。

 気付いた時にはテログマの目の前に居て、振り上げた右腕を思い切り振り下ろす。

 

 「舐めてんじゃねぇぞコラァ!!」

 

 上から下へ、鼻先をぶん殴る。彼の全力を込めた一撃でダメージがあったらしく、テログマは驚いた様子でたたらを踏む。だがそれも一瞬。すぐに前脚を振ってキッドをはたこうとした。

 その前脚へ無数の斬撃を加えて、キラーの刃が硬い皮膚を初めて裂いた。

 テログマは今度こそ悲鳴を上げて大きく後退する。

 

 すかさずキッドが追い縋る。

 両腕に金属を纏わせ、一回り大きくなった拳で殴りかかった。

 テログマは反撃のため前脚を振るがくぐって避け、懐に飛び込んで腹を打つ。

 

 「オラァ!」

 

 鈍い音を立てて丸い腹を殴る。すかさずもう一撃。テログマの悲鳴が洩れる頃にさらにもう一撃を叩き込んだ。

 勢いよく跳んだキッドはテログマの顎を殴り、体勢が崩れたところで能力を使用した。

 両腕を合わせて、同時に金属を飛ばすとまるでロケットパンチのようにテログマの喉元を打つ。テログマは背中から地面に倒れ込んで、暴れるようにして四肢を振り回した。

 

 離脱したキッドに代わり、ホーキンスが剣を抜いて前に出る。

 藁のように変化して刀身が伸びる剣がテログマを襲った。

 

 「藁備手刀(わらびでとう)

 

 迫る刃を目にしてテログマは大きく跳び上がった。俊敏な動きで軽やかに避けてしまい、それだけでなくホーキンスの頭上を取って彼を踏み潰そうとする。

 冷静に移動したホーキンスはそれを回避した。

 テログマは荒々しく着地し、さっきまではなかった奇妙な音楽を聞いた。

 

 アプーが自らの体を楽器として演奏していた。

 いまだ同盟の味方にすら明かしていない謎の能力。その力は楽器が奏でる音色により、テログマへ攻撃を加えようとしている。

 

 「ステイチューン! 悪いがクマ公、お前に慈悲をかける気はねぇ」

 

 音楽を聞いているとそれだけでテログマの左前脚が飛んだ。鮮血が散り、あまりにも呆気ない様子で体の一部が地面に落ちる。

 痛みに唸っていると今度は胴体の辺りで爆発が起こった。

 テログマは悲鳴を上げ、堪らず地面を転がった。

 

 「アッパッパッパ! いいねぇ。調子がいい」

 

 ホーキンスが追撃のため異なる能力を使用していた。

 彼の背後にはいつの間にか巨大な藁人形が浮遊していて、持っていたカードから一枚選ぶと、彼はすぐに攻撃へ移行する。

 本人の動きに合わせて藁人形が動き出し、手にあった巨大な剣を振り抜いた。

 

 頑強な皮膚を持つテログマの体を簡単に切り裂いて尚、藁人形の口から釘が吐き出されて追撃を狙う。素早く反応したテログマは転がって逃げたがダメージは大きかった。

 急にがくっと体が揺れて、何事かと本人が下を見ると後足から血が噴き出る。

 キラーが足元を通り抜けて刃で裂いたのだ。

 悲鳴を上げたテログマは鬱陶しそうにその場でジャンプし、キラーを踏み潰そうとする。しかし動きの素早い彼はあっという間に距離を取った。

 

 呼吸が荒くなり、痛みを無視できなくなっているテログマは混乱している。

 度重なる攻撃は確実に効果があった。

 それを見たキッドが好機と感じて攻勢に出る。

 

 右腕に無数の金属を纏わせ、巨大な拳を前へ突き出した。

 混乱していたせいで避けるのが遅れたテログマは正面から激突してしまう。巨大な体は一瞬にして運ばれ、半壊していた建物にぶつかって全て吹き飛ばす。

 テログマは勢いよく地面に倒れた。キッドはそれでも止まらなかった。

 跳び上がって上空からテログマに向かって落下していく。

 

 「ウオオオオオオオラァァッ!!」

 

 叩き潰そうと巨大な拳を振り下ろす。避けられないテログマはその拳を全身で受けた。

 轟音が響き渡る。

 大地が揺れるほどの衝撃が走り、キッドが着地した時、すでにテログマは沈黙していた。流石に無敵という訳ではないらしい。先程の荒々しさが嘘のような静けさだ。

 

 決着は着いたと判断したキラーは腕を下ろして武器を仕舞う。

 同様にアプーやホーキンスも肩の力を抜き、テログマから目を外す。

 キッドだけが最後まで倒れた姿を見ていたが、しばらく動かないのを確認して納得した。

 

 突然の襲撃だったがなんとかなった。

 仲間たちの称賛を受けながら、彼らはテログマを見つめて確認する。

 

 「で、何なんだこいつは。金獅子の手下か?」

 「どうせそうなんだろ。おれたちのことはバレてて、報復に送り込んだってことだろ」

 「おそらく奴はこうした特殊な動物を戦力にしているんだろう。傘下はついでだ。事を荒立てるために集めているに過ぎない」

 「本当の戦力はこいつらってことか」

 

 鼻を鳴らしたキッドは不服そうに呟く。

 

 「それなりの力はあった。が、結局はこうだ。全く相手にできねぇわけじゃねぇらしい」

 「そうだな。だが一匹仕留めるのにこれだけかかった。さらに数が増えれば厄介だぞ」

 

 キラーが確認するように言うとキッドも同じことを考えていたらしい。

 一匹だけなら他の仲間の手を借りずとも四人だけで仕留めることができた。だが同様の動物があと一匹、二匹居ただけで状況は変わる。テログマの動きは明らかに戦闘に慣れていたからだ。

 

 どうやら金獅子は厄介な戦力を隠し持っているようだ。

 そう考えていた矢先、彼らは咆哮を聞いて瞬時にそちらへ視線を向けた。

 

 倒したと思っていたテログマが起き上がっていた。片方の前脚を失い、爆発を浴び、後足を切り裂かれてキッドの拳を受けたのに、まだ立ち上がってくる。

 このタフさ、明らかに異常である。

 見ていた者たちは戦慄し、怒り狂って吠えたてるテログマに恐怖を覚えていた。

 

 「こいつ、まだ動けんのか……!」

 「おかしいと思ったぜ! オラッチの爆発で死なねぇんだからよ!」

 「これが、他にも居るとするのなら……」

 「おれたちが思っている以上に状況は最悪……ということだな」

 

 戦慄した彼らだが、戦わなければ死ぬだけだ。

 今度は四人と言わず他の仲間たちも武器を取り、戦闘に参加する構えを見せた。

 状況を見てもテログマの怒りは変わらず、まるで一人も逃がさないと宣言するかのように、さらに音量を上げて吠えていた。

 

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