ROMANCE DAWN STORY   作:ヘビとマングース

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千年竜伝説

 「竜の巣?」

 

 ルフィは驚いた様子で呟いた。

 アピスがわずかに頷く。

 

 「千年竜はそこで生まれてくるって言われているの。そして死ぬ時もその島へ帰るんだって。だけどリュウ爺は高齢で、もう自分で動くのも難しい状態。だから巣に帰れなくて困ってたの」

 「死ぬのか、こいつ」

 「……わからない。だけどリュウ爺本人が言ってるの、竜の巣へ帰りたいって」

 

 なぜそんなことがわかるんだ、と思った瞬間に思い出したが、彼女は能力者だ。動物の声を聞き、自らも語り掛けることができるヒソヒソの実の能力者。その力は竜と話すこともできるらしい。本人の希望が聞けるからこそ島へ連れて行ってくれる人間が必要だったのだろう。

 気になるのはなぜ今日まで連れて行かなかったのかだ。

 年老いているとはいえ方法はいくらでもありそうな物だとは思う。

 ルフィは気になった時点ですぐに問いかけた。

 

 「なんで連れて行かなかったんだ? こいつ帰りたがってたんだろ」

 「船を用意するのに手間取ったの。この島の人みんながリュウ爺のこと知ってるから、協力しておっきなイカダを作ったんだよ。だけど、完成した頃になってあいつらが来て」

 「あいつらって?」

 「海軍よ。基地はちょっと離れた所にあるのに、わざわざここまで来たの。リュウ爺を狙って」

 「あーなるほど。こいつ珍しいもんなぁ」

 「それだけが理由じゃないわ」

 

 アピスは厳しい目となって説明を始めた。

 

 「伝説によれば、千年竜の骨からは寿命を延ばすことができる秘薬が作れるんだって。どこで知ったのか知らないけど、それを狙ってあいつらはリュウ爺を捕まえに来たの。だから私が嘘をついて、リュウ爺が居る場所を教えるって言って船に乗り込んだ。その後、すぐに隙を見て逃げ出したんだけど」

 「それで漂流してたのか」

 「一応目的地を適当に言っておいたけど、そこが間違ってるってわかったらきっとまたこの島へ来る。私を探すかもしれない。そうなる前に早くリュウ爺を連れ出さなきゃ」

 「うーん、それは大変だなぁ」

 

 でも、と続ける。

 違和感を感じて振り返ったアピスとルフィの目があった。

 彼はふざけてなどおらず、腕を組んで至って真面目に問いかける。

 

 「でもさ、なんでそこまでこいつを守ろうとすんだ? 死にかけたんだろ。それにおまえらがなんで友達になったのかも聞いてねぇぞ」

 「……理由なんてないよ。さっきも言ったけど、リュウ爺は千年近くこの島を守り続けてた。だからこの島の人間みんなにとって、リュウ爺は親で、家族で、大切な存在」

 

 アピスの顔にはわずかに笑みが戻った。

 表情は柔らかくなり、緊張しているだけの状態からは抜け出す。

 思い出すのは子供の頃のこと。物心ついたばかりの時、祖父に手を引かれて初めてリュウ爺に出会った。とても雄大で力強い体躯。それとは対照的にやさしい目。あの瞬間のことは今でも忘れていない。恐怖心を抱くより先に羨望を抱いたのを覚えている。

 島のみんなが親のように慕い、家族として認識する、とても大事な存在。

 軍艦島の守り神は誰よりも彼らに密接で親身だ。敵が来れば島民を守って打ち払い、長年の経験から嵐が来ることを事前に察知しては教え、それでいて争いを好まない。

 この島の平和が続くのはきっと彼のおかげ。

 その彼が死期を感じ取り、今まで離れようとしなかった島を離れ、故郷に帰りたいと言う。

 必ず連れて行かねば。

 強く決心するアピスはルフィに頼むしか道がないと思っているらしく、目の中の意志は揺らがない。彼を見つめ返してはっきりと告げた。

 

 「私がヒソヒソの実を食べたのも、リュウ爺と話してみたいと思ったから。悪魔の実の図鑑で形を調べたから食べたの。リュウ爺は私のお願いをなんでも聞いてくれたわ。だから今度は、私の番。絶対にリュウ爺を竜の巣へ連れて行ってあげたい」

 「うん」

 「だけどこの島にはイカダを引っ張れる大きな船がないから、私たちだけじゃだめなの。ルフィ、手伝って。リュウ爺を竜の巣へ連れて行くために」

 「ああ。いいぞ」

 

 考えもせずにあっさり頷かれた。驚いたアピスは目を大きくする。

 

 「ほんとに!?」

 「おれも竜の巣っての見てみたいしな。ただし、手伝うだけだ。リュウ爺を連れてくのはおまえの役目なんだろ」

 「う、うん」

 「ちゃんと送り届けてやれよ。その代わりうちには優秀な航海士もいるからな」

 

 だから安心しろ。

 そう言ってルフィはリュウ爺へ歩み寄って鼻先に手を置く。

 リュウ爺の反応はない。ただ瞬きしただけだった。

 

 「よろしくなリュウ爺。おれはルフィ、海賊王になる男だ」

 

 老いたせいなのか、ほとんど動くこともない。

 ただ、触れてみてわかる。言葉にはできない感覚が伝わってくるようだった。

 ルフィは驚き、すぐに微笑んで鼻先を撫でる。

 言葉は通じなくとも不思議と彼の気持ちがわかる気がした。

 

 「そうだよな、故郷に帰りたいんだよな」

 「うん。リュウ爺は仲間から離れて、ずっとここに居たから」

 

 アピスは恐る恐るルフィの顔を見上げる。

 

 「わかるの? リュウ爺の言葉」

 「いんや。でもなんか言いたいことはわかる気がする」

 「どうして?」

 「んん、なんとなくだ」

 

 そう言ったルフィはにかっと笑った。何の根拠もない発言だったのだ。しかしなぜかリュウ爺の気持ちを汲んでいるようで不思議な気分になる。

 アピスも不安を消し飛ばして笑った。

 なんとなく。そう、なんとなくだがルフィに任せれば大丈夫な気がする。

 必ずリュウ爺を竜の巣へ連れて行く。決意を新たに表情を引き締めた。

 傍を離れたルフィは近くにあった小さな岩の上に座る。そのまま腰を落ち着けるようでアピスを見やり、笑顔で言った。

 

 「なぁ、リュウ爺の話聞かせてくれよ」

 「いいよ。あのね、すっごくかっこよかった話があるんだけど、三年前くらいに――」

 

 アピスもまたルフィの隣へ腰掛け、昔話を始める。

 交流を図っての事か、それともただ興味が沸いただけかは定かでないものの、二人はそうして話を始めた。リュウ爺がどんな行いをしてきたか、またはアピスとどれほど仲睦まじかったか。伝説についてというよりも、彼女たち二人の関係性について。

 音のない洞窟の中で二人の声が反響し、しばしリュウ爺は二人を見守っていた。

 

 

 *

 

 

 家の奥から持ち出してきた小さな箱を手に、ボクデンがテーブルへ戻る。

 ナミの目の前に置かれたそれは年季が入って古ぼけている。お宝の類には見えないが、差し出された以上は不服を露わにするのも戸惑われた。

 困惑した顔のナミは首をかしげる。

 

 「これは何?」

 「あいにくおまえさんらに払えるほどの金はない。代わりにこれを持って行ってくれ」

 「って言ってもお宝には見えないわね」

 「ちょっとナミ。ごめんなさい、悪気はないんですけど……」

 「構わんよ。こんな物しかないうちも悪いじゃろう」

 

 悪いという気持ちもどこへやら、不服そうにしたナミは木箱の蓋を持ち上げる。するとその中身を見て瞬時に表情が変わり、驚愕を露わにした。

 見覚えはない。だが噂なら聞いたことがある。

 そこにあるのは奇妙なフルーツだった。

 皮には螺旋を描く模様がいくつも並べられていて、色は水色。明らかに危険だと思わせる毒々しい色をしている。それだけにこれは間違いなく悪魔の実なのだと理解できた。噂に聞いた通りの奇抜な外見である。一体どこで生まれているのかと不思議に思った。

 これが報酬。ナミの眉間に深い皺が刻まれる。

 金銀財宝を期待していた彼女にとっては裏切られた気分なのだろう。

 聞いた噂では、悪魔の実一つで数億ベリーの取引も行われているらしい。そう考えればこれ以上ないほどの報酬だ。だがイーストブルーは四つの海で最も平和な海であり、政府に気取られない裏取引など存在しない。これを使って大金を手に入れようと画策するならばそれ相応のリスクと、何より手間がかかる。もし成功したとしても名前が売れることは必至だろうと推測できた。

 海賊専門の泥棒は無名であるからこそできた芸当だ。

 悪魔の実を売って大金を稼げばそれなりに拍が付く。それを良しとするか否か。

 盛大に溜息をついたナミとは対照的に、シルクは覗き込んだそれに目を大きくした。

 

 「ねぇ、これって……」

 「悪魔の実よ。何よ、意外にどこにでもあるんじゃない」

 「これは数年前、海賊が持っていた物を手に入れた。それ以来食す者もなく持ち続けていたが、珍しい物であることは知っている。これで勘弁してくれんか」

 「海賊が? まさか、戦って奪ったんですか」

 「そうとも言える。が、戦ったのはわしらではない」

 

 首をかしげるナミだったが深くは追求せず、それよりも目の前のこれをどう処理しようか考える。食べるつもりは当然ない。最も利用価値があると言えば海軍に売りつけるくらいか。しかし如何せん海軍を信用している訳でもないため、相手は選ぶ必要があった。

 そうして考えているとシルクの表情の変化に気付く。

 何かを考えているのかじっと悪魔の実を見つめ、やけに真剣な顔になっていた。

 まさかとは思う。不穏なことを言い出さないかと心配になる。

 しかしシルクは意を決し、予想とは違わず、ナミの顔を見るとそれを言い出した。

 

 「ねぇナミ。悪いんだけどこれ、私に譲ってくれないかな」

 「あんたまさか……バカなこと考えてるんじゃないでしょうね。これを食べたら一生カナヅチになるのよ。それに考えてみなさいよ、あんたたちの船に二人もカナヅチが居るんだから。海に落ちたあいつらを助けるだけでも役に立てるでしょ?」

 「うん。そうだよね」

 「昨日今日だけじゃなく一生よ? そこまでしなきゃいけないことなの、海賊って。どいつもこいつもなんでそんなに海賊を良い風に考えるわけ? ただの犯罪者じゃない」

 

 シルクは真剣な顔で頷く。だがナミの顔は見ない。

 意識はあくまでも悪魔の実へ向けられていて、考えるのは仲間のこと。

 そんな態度にナミの苛立ちが増した。

 

 「海賊がどうとか、それだけじゃないよ。私はみんなの傍に居れるだけの価値が欲しいだけ。そのためには、カナヅチになるのだって怖くない」

 「バッカみたい。あいつらだって所詮海賊なのに」

 「ナミが海賊嫌いなのは知ってるよ。だけどね、確かに海賊に憧れてた部分はあったけど、それ以上に大きかったのはルフィとキリだったから。私はあの二人に出会ったから海賊になったの。それ以外の人に出会ったならきっと海に出る事はなかった」

 

 ようやくシルクがナミを見た。だがそこに普段のやさしさはない。船上で見た笑みはなく真剣な様子で彼女を睨みつけている。

 

 「海賊は嫌いなままでいい。だけど私の仲間を悪く言わないで」

 

 流石に怯んだ。やさしいだけの人物だと思っていたが怒ることもあるらしい。

 二の句を告げられず、再び視線が悪魔の実へ戻るのを見送る。

 唇を噛んだナミはシルクが実を持ち上げる挙動を目にしていた。

 

 「ルフィは海賊王になるために、ゾロは大剣豪、キリはルフィのために命を賭けるって言ってた。私もそれくらいじゃなきゃみんなの傍には居られない。悪魔の実を食べて弱くなることはないってキリが言ってたし、強くなりたいの。それにルフィも、カナヅチなら海から落ちない海賊になればいいって。全部みんなの受け売りなんだけどね」

 「ちょ、ちょっと」

 

 苦笑したシルクは両手で悪魔の実を持ち、間近に見る。

 味は相当悪いと聞いている。だけど一口食せばそれで能力は手に入るはず。

 覚悟を決めてシルクがナミを見た。

 すでに怒りの念は皆無で笑顔。妙に清々しい姿だ。

 

 「ごめんナミ。これ、もらうね」

 

 がぶりと一口、噛みつかれる。

 口内に広がるのは形容しがたい味。なんと言っていいのかわからないがとにかくマズイ。経験した事のない味でもそれだけは理解できた。

 ひどい形相になるものの必死に耐え、吐き出さずに数度咀嚼。それすらも辛くて彼女は無理やりに呑み込んだ。喉の内側までマズイ味を感じて何度かせき込んでしまう。

 それでも、食べた。

 悪魔の実を食べたのだ。

 シルクは残った実を置き、自分の両手を見下ろす。何の変化もない。試しに指を開いたり手首を返したり、些細な動作をしてみたが今までと何一つ変わらない。

 そんなシルクにナミは溜息を抑えきれず、あからさまに肩を落とした。

 彼女だけは冷静に状況を判断できる人間だと思っていた。だが勢いで動いてしまう部分もあったらしい。そんな面子ばかりではないかと妙な疲労感が拭えなくなる。

 

 「まったく、こいつらは……まぁいいわ。どうせ悪魔の実を捌けるルートなんてなかったし。その代わり、私があげた物なんだから代わりのお金はもらうからね」

 「うん。それくらいならなんとかするよ。ナミにお願いしてもらったんだもんね」

 「そこまで素直に頷かれると逆に戸惑うわ。ハァ、もう。手を組んだの失敗かしら」

 

 頭に手をやったナミはやれやれと首を振る。

 裏に何かを抱えているキリやゾロより、彼女やルフィのような素直な相手の方がやりにくい。長く海賊を相手に泥棒していたせいか自然とそう考えていた。

 ともかく悪魔の実の処理は済んだ。予定外だがこれはこれで良い。

 問題なのはこれからどうするか。

 この島に海賊はいないし、ただの島民から盗むつもりはない。お宝を手に入れるには海賊を見つける必要がある。次の航海で標的を探すしかなかった。

 その航海が何やら不穏な空気を感じるのだ。

 アピスとボクデンのやり取り、そして何より彼が話したがっている内容が気になる。

 一通りのやり取りを見終えてついにボクデンが話し出そうとしていた。

 

 「そろそろいいか。では本題を」

 「ちょっと待ってよ。まだあいつもアピスも戻ってきてないじゃない。お茶を入れるだけにしては時間かかり過ぎてない?」

 「そうじゃな。だがもういいだろう。では本題を」

 「待たなくていいわけ? あの麦わら帽子はあんなでも船長なのよ」

 「言い忘れていたがアピスは理由をつけてはわしの話から逃げる癖がある。よって今頃裏にはおらんじゃろう」

 「はぁ? じゃあなんで追わなかったのよ」

 「おまえさんらが聞けばいいだけじゃろうと思って。もういいか?」

 

 お茶の一つも出さぬまま長話が始められようとしている。

 振り回されるばかりのナミは表情を歪めるがシルクは気にせず、真面目に聞く姿勢となる。

 ボクデンはようやく話し始めることができた。

 

 「おまえさんらに頼みたいのは、この島を守って来たリュウ爺を竜の巣へ連れて行って欲しいということ。そのためにはまず千年竜について知らねばならないじゃろう」

 「千年竜って、あの?」

 「それって絵本に出てくる空想上の生物でしょ。とっても強くてやさしいとかなんとか」

 「いいや、実在する。千年竜はこの世に実在しておるのじゃ」

 

 興味深い話だった。

 千年竜の名は世界に広く知れ渡っている。その多くが絵本を用いた童話によってだ。

 強くてやさしい千年竜はある一人の少女と出会い、少女の願いを叶えてやるため一緒に冒険するストーリー。あまりにも有名でイーストブルーにも出回っている。

 読んだことはないがシルクもその名を知っていて、ナミは母親に読んでもらった経験がある。

 その千年竜が作り話ではなく実在する。この発言にはルフィでなくとも興味を持たずにはいられなかった。

 

 「千年竜とは海における最強生物とも言われておる。空を飛び、地を駆け、海を泳ぐ。普段は心優しく人々を傷つけないのじゃが、一度怒れば、海王類でさえも仕留めてしまうとも」

 「ますます作り話っぽいわね。海王類ってそんなに弱くないでしょ」

 「左様。つまりそれだけ強いということになる」

 「すごい、そんな生物が実在してるんだね」

 「ねぇシルク、あんた信じるの? 竜なんて空想上の生物、伝説とかがあっても実在はしないものよ。そんなのがほんとに居るなら今頃大問題になってるじゃない」

 

 話半分で聞いているらしいナミとは違い、シルクは前のめりに目を輝かせている。自身が能力者になったか否か、そればかり気にしていたはずがすっかり話に惹き込まれていた。素直過ぎるとも言うべきそんな彼女の姿にまたナミが呆れる。

 信じるか否か、そんなことはどうでもいいとばかりにボクデンが続けた。

 

 「千年竜は千年の寿命を持つ生物じゃ。しかし、その生まれは皆が同じ場所であり、戦いや事故で突発的に死んでしまわない限り、死に場所に選ぶのも己の故郷。千年生きたリュウ爺は今、自身の死に場所を求めている。己が生まれたロストアイランドにある竜の巣を」

 「ロストアイランドの、竜の巣。そこが千年竜の故郷」

 「そうじゃ。千年竜はそこで生まれ、そこで死ぬ」

 「何を根拠にそんなこと言ってんのよ。本当に竜が実在するかどうかもわからないのにこんな話聞かされても、信用できないわよ。大体おじいさんはなんでそんなこと知ってんの」

 「すべて壁画に描かれていた。わしらの先祖から語り継がれた言葉じゃ」

 

 ボクデンの言葉に二人が口を噤む。

 想像以上に大きな話であると思い知ったようだった。

 

 「この島の特徴とも言える岩山の内部には、この島で生きた先祖たちの言葉が残されている。それこそが千年竜の伝説じゃ。千年もの間この島を守り続けたリュウ爺に関する多くの情報が残されており、彼が敵ではないこと、この島を守ってくれる存在だと教えてくれた」

 「千年も……どうしてそんなに長い間、島を守ったんだろう」

 「理由はわからん。言葉での意思疎通はできぬし、唯一言葉を交わせるアピスが尋ねても彼は答えなかった。なぜ守るのか、真実を知るのはリュウ爺本人のみ」

 「竜とも話せるの、あの子は。なんでもありねヒソヒソの実……」

 

 本来は通じ合えないはずの生物同士の言葉での交流。それが悪魔の実の能力によるものだと思い出してシルクは再び自身の能力を気にする。だがこの場はぐっと堪えて、話に集中した。

 ボクデンは尚も話している。むしろ今からノってきた様子すらあった。

 

 「さらに千年竜には他の生物にはない特徴があって、寿命を全うするまで生きた千年竜はロストアイランドへ戻り、故郷の地にてなんと――」

 

 その後もボクデンの話は続くのだが、これが異様に長く、最終的には千年竜に関係があるのかという話にまで行ってしまった。最初こそ真面目に聞いていた二人も次第に表情を変えてくる。

 これを知るからこそアピスは逃げたのだと理解したのは数十分を越えた後。

 ボクデンの語りはいつになっても終わらず、二人が疲れ果てても気にせず続けられた。

 


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