今年もこんな感じになるかもしれませんがよろしくお願いします。
二日後の朝、ソレイユは基地の食堂でテレビでニュースを見ながら朝食をとっていた。テレビからはイギリスが例の要求を受け入れた事をアナウンサー達が語っていた。
「どこのテレビ局もこの話題で持ちきりだな。まあ、国連の常任理事国である国がこんなことになったんなら当然か。おい、御代わりをくれ」
「はい」
ソレイユは部下の海兵から丼を受け取ると再び米を掻きこんだ。これでもう10杯目であるがソレイユはまだまだ余裕な顔であった。相変わらずの食事量だったが、周囲の海兵にとってもこれもいつもの光景なので気にしていなかった。食堂で働くシェフ達もいつも多くの食事を食べてくれるソレイユには好意的なのである。
「ソレイユさん、そろそろお時間ですよ」
「ん、もうそんな時間か?まだ食い足りねえが、腹八分目ぐらいだからこれで我慢しとくか」
IS学園に向かう為にソレイユは食堂を出ていった。向かう先はソレイユの軍艦である。初めは公共の交通機関や車を使っていたのだが、安全上の問題などを考えて、今日からは軍艦で通学するようにしたのである。
「じゃ、行ってくるぜ」
「皆さん、私が考えた鍛錬メニューはきちんとやるように」
「ソレイユ少将にタンジェントさん、お気をつけて!」
ソレイユとタンジェントは数人の海兵と共にIS学園に向かった。事前に学園側には通達していたが、生徒達は初めて見るであろう軍艦に大騒ぎとなってしまった。降りてきたソレイユとタンジェントを見ると殆どの生徒は蜘蛛の子を散らすように去って行ったが。
「あーやれやれ朝から酷い目にあったよ」
ソレイユが教室に入ってきた瞬間、教室の中の殆どの人間が視線を逸らし口を閉ざした。先日の女性徒を落とした件で、怒らせると本当にヤバいという認識が出来てしまったのだろう。最もそんな事など全く気にしないソレイユは自分の席に着席した。
「おはよ~ソーソーとタンタン」
「うん?ああ、おはよう布仏さん」
「おはようございます。ところで布仏さん、タンタンというのは私の呼称ですか?」
「うん。タンジェントって名前だから~タンタン。嫌?」
「う~む。何かパンダか麺料理の名前のようでちょっと・・・」
「そう~じゃあ、何か別のを考えるね~」
「ニャハニャハニャハ、それでお願いします」
「(普通にタンジェントさんって呼ぶ、呼んでもらうという選択肢は双方に無いのかな)」
このようにソレイユに挨拶したり、話しかけてくる生徒は布仏本音と彼女と親しい一部の人間だけになってしまった。
「布仏さん、ひとつ聞きたいんだが俺が怖くねえのか?金曜日の件は布仏さんも見ただろう。自分もあんな目に合うとは思わねえのか?無理してねえか?」
「え~う~ん。ソーソーって女尊男卑主義者にはキツイ態度をとったりするけど~私や私の友達や山田先生みたいな普通の女の人には普通に話してくれるし~それなりに丁寧な態度だよね~」
「え・・ああ、まあ、そりゃ何もしてない人には当たり前だ。俺が憎んでいるのはあくまでも女尊男卑主義者と犯罪者だけで、全ての女を憎んでる訳じゃ無いんだからな」
ソレイユは本音から全く予期しない言葉を受けながらも、なんとか言葉を返すことが出来た。ソレイユとして純粋に本音を気遣って言った言葉だったのだがこのような返答が来るとは想像外だった。
「うん。だからね~私はソーソーが普通の人に危害を与えるような人間だとは思ってないし~私の友達にもそう言ってるんだ~。だからね~私はソーソーの事は怖くないし~こうやって話してるのも楽しいんだよ~無理なんか全然してないよ~」
「そうか・・・ありがとうな布仏さん」
「別にお礼なんて良いよ~私がそうしたいからそうしてるんだし~。あ、ソーソー今日のお昼こそ一緒に食べようね~この前紹介したいっていう子がいたでしょ~」
「ああ、いいよ。せっかくだ、今日の昼ごはんは俺が奢るよ。ちょっとした臨時収入があったんだ」
「本当~じゃあ、食堂のスーパーデラックスパフェでもいいの~」
「ああ、お安い御用だ」
本音はソレイユと約束を交わすと、別の友人達の元に戻って行った。タンジェントは二人の会話をニヤニヤしながら眺めていた。
「いやー良い子ですね~あの布仏本音という子は」
「ああ、良い子だよ。最近の屑みたいな女とは大違いだよ」
「しかし、お二人のやり取りは見ていて恥ずかしくなるぐらいに甘酸っぱかったですね~」
「タンジェント!!」
「ニャハニャハニャハ」
タンジェントのからかいの言葉にソレイユは顔を赤くしたが、タンジェントはどこ吹く風という様子で笑い飛ばした。
「まあ、布仏さんの事はひとまず置いておいて。ソレイユさん、先生が来るまで暇でしょう。花札でもしませんか、遊び方はこいこいで」
「・・・フゥーー、よし、やるか。レートはいつもの通りでいいな」
ソレイユとタンジェントが花札に興じている頃、馬夏は椅子に座ったまま突っ伏していた。あの騒動の日の放課後、山田先生に再度地図をもらい(その際に一言も暴行の謝罪をしなかったので、さすがの山田先生も顔をひきつらせていた)、織斑千冬が入院している病院に行ったのだが、そこで医師から絶望的な事を聞かされていた。
教室の別の場所では女生徒達が集まってお喋りをしていた。
「ねえねえ知ってる、今日2組に転校生が来たんだって」
「え、こんな時期に?」
「あ、私知ってる!しかも代表候補生なんだって」
「えーーーっ!という事は2組の代表も変わったりするのかな?」
「今度のクラス対抗戦はデザート半年間フリーパス券が商品だから織斑君には是非とも頑張って貰わないとね!」
「うんうん!でも、専用機持ちって1組と4組にしか居ないよね。だったら楽勝じゃ・・」
「その情報古いよ!」
突然響いた声に驚いた女生徒が声のした方に向くと、贈答用の箱を持った小柄な女生徒が立っていた。
「私は中国代表候補生の鳳鈴音!2組も専用機持ちである私がクラス代表になったからそう簡単には勝てないわよ!!」
「そ、その代表候補生が何か用?」
「別に、ただ宣戦布告をしに来ただけよ。それと・・・あ、あの人かしら?」
鈴音はソレイユを発見するとソレイユの元に行こうとしたが、周囲は慌てて止めようとした。
「ちょ、ちょっとストップ!何をするつもりなの!?」
「どうしたの?ただ挨拶をしておこうかと思っただけよ」
「悪い事は言わないから、あの人には係わらない方が良いわ。下手に刺激して怒らせでもすればとんでもない事が」
「大丈夫よ、ただ挨拶するだけなんだから」
鈴音は騒然とする周囲をよそにスタスタとソレイユの元に歩いて行ってしまった。周囲はどうなるか気が気で無かった。
「よし、四光成立。これで辞めるぜ」
「おや、こいこいしないんですか?上手く行けば五光も狙えるというのに」
「ああ。よくばって、おまえに上がられたら全部パアだからな。これで辞めとく」
「ということは・・・トータルで私の負けですね。悔しいですね~」
「これで1000ベリー儲けだな」
「あ、あの!?すいませんがソレイユ少将様でございますでしょうか?」
ソレイユが勝利の余韻に浸っている所に鈴音は意を決して話しかけた。突然の大声に二人は何事かと視線を向け、周囲の緊張は高まった。
「確かに俺はソレイユだが、俺に何か用か?」
「私、今日からこちらのIS学園に転校して参りました中国代表候補生の鳳鈴音と申します。本日はご挨拶に参りました」
一瞬の沈黙の後、ソレイユは顔をほころばせた。
「ご丁寧なあいさつ有難う。もうご存知の様だが俺は海軍本部少将のソレイユだ。宜しく」
「こ、こちらこそよろしくお願いします」
ソレイユが差し出した手を鈴音は握り返した。その光景を見た周囲はホッとした。金曜の様な事が起きないかと危惧していたが、大丈夫そうである
「あ、あとこれ。よかったら受け取ってください」
鈴音は持っていた箱をソレイユに差し出した。
「何だこれは?」
「中国のお酒の紹興酒です。IS学園にいる中国出身の先輩に聞いて、お酒が好きとの事だったので持って参りました。私個人が自発的に持って来たもので、国の思惑などは一切ありませんので。どうか受け取ってくださいますようお願いします」
「そうか・・・改めて聞くが本当に国のお偉いさんから持って行けと言われて持って来たものではないんだな。もし、そうなら受け取る訳にはいかない。賄賂になってしまうからな」
「ち、違います。本当に私個人が持って来たものです。信じてください!」
鈴音の必死な顔を見たソレイユは嘘は言って無いなと確信した。タンジェントもコクリと頷いていた。
「どうやら、本当のようだな。失礼な事言って申し訳ない。ありがたくこれは受け取るよ。わざわざ持ってきてくれてありがとう」
「いえいえ、私が勝手にしたことなので」
「君は礼儀をきちんと知っているな。もう少し話をしたいが、そろそろホームルームの時間だぜ。一度クラスに戻りな」
「は、はい。失礼します」
鈴音はそう言うと自分のクラスに戻って行った。鈴音はソレイユへの挨拶をきちんと出来たことにホッとしたと同時に話に聞いていたよりも普通の人物だと思った。
イギリスに突き付けられた不平等条約
イギリスはそれを受け入れることにしたが、その時に流れた女王と官僚達の涙の訳とは
そして織斑一夏に突き付けられた残酷な事実とは
次回、IS 復讐の海兵
「幕間1」
あいつらは必ず地獄に落とす!!