IS 復讐の海兵   作:リベンジャー

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事情によりタイトルを次回予告から変更します。どうかご了承ください。


耐えろソレイユ!禁酒の3日間

タンジェントから3日間の禁酒を言い渡された翌日、ソレイユは足取り重く教室に入ってきた。日頃の激務とIS学園での様々なストレスを癒す飲酒を取り上げられてしまい、ソレイユは憂鬱だった。

そんな所にソレイユが来た事に気づいた本音が近寄ってきた。

 

「おはよーソーソー」

 

「ああ、おはよう本音さん」

 

本音に挨拶を返して、とりあえずソレイユは席に着いた。この地獄の三日間をどう乗り切るか思案しようとすると、いつもならのほほんとした本音と数人の女生徒が真剣な顔で横に立っていることに気づいた。

 

「どうした本音さん?何か用かい」

 

「ソーソー昨日はどうもありがとう!」「「ありがとう!」」ございました!」」

 

頭を下げてお礼を言う本音達にソレイユは頭に?を浮かべた。ソレイユ本人としては彼女達にお礼を言われるような事をした記憶はない。

 

「何のお礼だ。俺は特にお礼を言われるような事をした覚えはないぞ」

 

「何言ってるの~昨日ソーソーはいきなり出てきた変なISを倒してくれたし、お姉ちゃんも助けてくれたんだよ~ちゃんとお礼を言わないと駄目だと思って~」

 

「ああ、その事か。別に気にしなくていいぞ、俺は海兵として為すべき事をしたにすぎないからな。それにお礼ならアリーナで既に言ってくれたじゃないか」

 

「そうかもしれないけど、やっぱりちゃんとお礼を言いたかったの~」

 

本音の後ろにいる生徒達も同意見であり、どんな理由であれ助けてくれた事には変わりないからお礼を言わせて欲しいとの事である。ソレイユも彼女達の気持ちを無下にするのも悪いと思ったのでお礼を快く受け取る事にした。

 

そんな微笑ましい光景を恨みがましい目で見る人物が一人居た。言わずと知れた織斑一夏である。複数人にお礼を言われ、周りに人がいるソレイユと対照的に織斑一夏の周りには誰も寄って来ていなかった。ほぼ一緒にいる箒は謹慎中かつソレイユに殴打された事で入院中であり、今まで複数いた男性操縦者目当てのミーハー達もいなかった。というのもクラス対抗戦で見せた数々の醜態のせいで殆どの生徒達は一夏に興味を無くしてしまったからである。

 

大口を叩いたわりに2組のクラス代表である鈴音に手も足も出ずコテンパンに負けた。乱入してきたISにも同じように手も足も出なかった。それなのに撤退しようともせず突撃を繰り返して、挙句の果てにバリアを破壊して自分達まで危険に晒した。これらの事で周囲の一夏への評価は急転直下の大暴落となった。代表決定戦に負けたときはまだ、あれは海軍の少将が強すぎただけ等と擁護の声も聞こえていたが、今ではそのような声は全く聞こえず、「所詮は姉の七光り」、「初の男性操縦者と期待していたがとんだ期待外れ」と嘲りや軽蔑の言葉が出るようになってしまった。今や一夏に進んで近寄って来るのは狂信的な織斑千冬信者、腹に一物ある生徒、ソレイユに恨みを持つゴミクズぐらいのものである

 

無論、そのような声は一夏にも聞こえておりそのたびに悔しい思いをしていた。それ故に一夏はお礼を言われるソレイユを恨みがましい目で睨みつけている。

 

「(チクショー!何であんな奴がお礼を言われて俺が馬鹿にされなきゃならないんだ。俺だって皆の為に戦ったんだぞ。それなのに何で女性に暴力を振るうような最低な奴がチヤホヤされてるんだ。どう考えてもおかしいだろ。称賛されるべきは俺のはずだ。だって俺は侵入してきたIS相手に一歩も引かずに戦い続けて鈴音を守り通したんだぞ!あいつは最後に出てきて美味しい所を奪っただけじゃないか。こんなのおかしい!絶対におかしい!!俺が正しかった事を必ず皆に認めさせてやるからな)」

 

ソレイユに見当違いな逆恨みをぶつける一夏。そんな一夏をソレイユは相手にすることは無くみんなと楽しくおしゃべりを続けるのだった。

 

そのうち山田先生が入ってきて朝のHRが始まり、織斑千冬が副担任に降格されて自分が担任になった事が最初に告げられた。いきなりの爆弾発言にクラスは沸いたが、山田先生がこうなったいきさつを説明すると一部の千冬信者以外の生徒達は納得して静かになった。これ以来千冬の評価は一夏同様下がっていくのであった。

 

その日の授業はISを使った実技がありクラスの全員がISスーツを着てグラウンドに出ていた。内容はISを持つソレイユと織斑に飛行操縦の見本をしてもらい、他の皆はそれを見学するというものだ。本来ならこういった基本的な事はもっと早く行われていたはずなのであるが、いろいろと諸事情(千冬が半殺しにされた事、教師の半数が死亡した事)があった為今まで座学のみ授業がされていた。

 

「ソレイユ君、織斑君。お願いします」

 

「はい」

 

「おう!」

 

ソレイユは返事とともにラーを展開して飛び立った。対照的に一夏は勇ましく返事をしたわりに手間取ってしまい千冬からの叱責を受けてしまった。数秒後、何とか白式を展開した一夏は飛び立っていった。飛行中、二人は全く口を利くことは無く、ピリピリとした空気のみが流れていた。ソレイユからしたら相手をする価値も無い存在であったし、一夏の方も男らしくない最低な奴だと認識していたからだ。

 

「(何だよ!あいつあんなに上手く飛べるのかよ。だったら俺にアドバイスの一つでもくれてもいいじゃないかよ。心の狭い奴、やっぱりあいつは男らしくない。男だったら・・・」)

 

やがて着地するポイントに着いたのでソレイユは降下していき上手に着地したが、自分勝手な事を考える一夏はそれに気づく事無く飛行を続けた。

 

「よっと」

 

「ソレイユ君、お見事です」

 

「ありがとうございます・・・何やってんだアイツは?」

 

「織斑君、空を飛ぶのが楽しいんでしょうか?」

 

一夏は結局そのまま3分程飛行を続けた。そして業を煮やした千冬からの叱責を受けて慌てて降下したがスピードを緩める事無く降下したせいで地面に直撃し大きなクレーターを作ってしまった。

 

「馬鹿者!!誰が落下しろといった!」

 

「で、でも千冬姉・・」

 

「織斑先生だ!馬鹿者!」

 

叱責を受ける一夏をソレイユは呆れた目で見ていた。戦闘だけでなく降下するときまで突っ込んで行くのかと。一部の女生徒達も若干呆れているようで蔑んだ目で見る生徒も2,3人おり、タンジェントに至っては大爆笑していた。

 

「ニャハニャハニャハニャハ!!あー面白い!!ニャハニャハニャハ!まるでお笑いですよ!!ニャハニャハニャハ!!」

 

大笑いするタンジェントを一夏はキッと睨みつけたがその事で、ちゃんと聞けと更に叱責を受けることになったのであった。そして授業終了後、一夏は昼休み中にクレーターを埋める事を命じられた。

 

「ソレイユ男同士なんだからお前も・・・あいつらは何処だ!?」

 

「あの二人ならチャイムが鳴ったのと同時にすぐに居なくなりました」

 

「ッチ!織斑、穴はお前一人で埋めておけ。いいな!?」

 

教師にあるまじき態度を見せて、千冬はさっさとグラウンドを後にした。そんな千冬を呆れた目で見た山田先生も一夏に、織斑君頑張ってくださいねと一声かけて去ってしまった。一夏は他の生徒に手伝ってもらおうとしたが、皆スタスタと着替えに行ってしまい、仕方なくブツブツ言いながら一人で穴埋めを始めるのであった

 

「何だよ・・・皆冷たいぜ。少しくらい手伝ってくれたっていいじゃないか・・・特にソレイユとタンジェントは海兵なんだろ・・・海兵なら困ってる人がいたら助けるもんじゃないのかよ・・・それ以前に男同士なんだから助けろよ・・・畜生が・・・」

 

 

「あんな馬鹿の助けなんか御免だっつーの」

 

「それはそうですがソレイユさん、あんな事で未来視を使うなんて覇気が泣きますよ」

 

昼休みのチャイムが鳴った瞬間に、ソレイユは見聞色の覇気による未来視で千冬からの命令を視たソレイユ達は素早く逃げ出していた。一夏の手助けなど時間の無駄でしかないし、千冬からの命令も聞く義務も無いし、その言葉すらも聞きたくなかったからだ。食堂に向かおうとしていると鈴音が向こうから駆け寄ってきた。

 

「ソレイユ少将、良かったら今日のお昼ご一緒してもよろしいでしょうか?」

 

「うん?別に俺は良いが」

 

「ニャハニャハニャハ。私も構いませんよ。ちょうどこの前の試合の感想をお話ししたかった所だったのと、提案したい事もありましたし」

 

二人が誘いを了承してくれた事に鈴音は安堵の微笑を浮かべた。ちなみに本音と簪は今日は別の友達と食べるのでいなかった。

 

食堂に着いたソレイユはいつも通り大量の料理(今日は鈴音が一緒なので中華の気分)を頼んで二人が取ってくれていたテーブルに向かった。向かう途中に偶然織斑の姿を見たが、腹に一物抱えた雌共にチヤホヤされて情けない顔をして喜んでいた。雌共の思惑など全く気付かず、俺の事をきちんと評価してくれる人もいるんだな~と大方考えているのだろう。ある意味幸せ者と言えるが。ソレイユは関わるのは御免だと見つかる前にさっさとその場を離れた。タンジェントと鈴音が座っているテーブルを見つけたソレイユも鈴音の正面に座った。3人はとりあえず食事をして粗方食べ終わるとソレイユから口火を切った。

 

 

「さて、鳳さんこの前の試合の感想なんだが俺としては100点満点だと思う」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「ああ、織斑に手も足も出させる事無く一方的かつ見事な試合運びだったよ。なあ、タンジェンント」

 

「ええ。それに加えてあのISとの戦闘もよくやっていたほうですよ。いきなり現れた正体不明の相手に対してお荷物を抱えながら被害者を誰一人出すことが無かったのですから。大したものです」

 

二人の評価に鈴音は満面の笑みを浮かべた。ここ数日の特訓が報われたのが嬉しかったのと、聞きたかったあの事を教えてもらえるからだ。

 

「では約束通りソレイユ少将が目隠しをしていたのに、私の攻撃を軽々と躱していた理由を教えていただけますか!?」

 

「ええ、お話ししますよ」

 

二人の会話が聞こえていた周囲はすぐにおしゃべりを辞めて聞き耳を立てた。それは瞬く間に食堂に広がり静寂が訪れ、聞こえる音は食堂のおばちゃん達の調理する音だけになった。一夏だけはそれに気づかず急に静かになった周囲に困惑していたが。

 

「ではお教えいたしましょう。ソレイユさんが貴方の攻撃を躱せていた理由、それは覇気を使っていたからですよ」

 

「覇気・・・?気とかそういった物の類ですか?」

 

「まあ、似たような物です。覇気とは全世界の人類に存在する意思の力です」

 

聞いていた周りの生徒達の殆どはこの時点で興味を無くしてしまった。胡散臭い、オカルト、嘘っぱちと感じて聞く意味が無いと思ったからである。しかし一部の生徒は引き続きタンジェントと鈴音の会話を一言一句聞き逃さないように集中していた。たとえ眉唾な話であろうとソレイユの圧倒的な強さの秘密が知れるなら聞いておきたかったからだ。因みに一部の生徒の中には勿論本音と簪も入っていた。

 

「説明を続けますよ。覇気は大きく分けて三つに分かれます一つは「武装色の覇気」もう一つは「見聞色の覇気」最後に「覇王色の覇気」です。因みにソレイユさんが貴方との模擬戦で使っていたのは「見聞色の覇気」です。覇気を使えるようになれば「気配」「気合」「威圧」「殺気」「闘争心」等の感覚を自在に操れるようになれます。それが出来ればどれ程強くなるかはソレイユさんを見ていれば分かるでしょう。私も覇気は使えますよ」

 

「それはどうすれば使えるようになるんですか!?」

 

「それに関しては一部例外は有りますが、修行あるのみとしか言えませんね。といっても闇雲に修行したとしても全く意味はありませんよ。長期間の適格かつ過酷な鍛錬を行う事で最初の一歩を始める事は出来るのです。事実、殆どの人間は覇気というものに気づかないまま、あるいは力を引き出そうにも引き出せず一生を終えています」

 

「そ、そうですか・・・分かりました」

 

出来る事なら自分も覇気を使えるようになりたいと考えていた鈴音はガックリした。出来る事ならタンジェントとソレイユにこのまま師事して覇気について教えてもらいたかったが、二人との師弟関係は元々クラス代表戦までだと言われていた。流石にこのまま教え続けて欲しいと厚かましい事は言えなかった。しかし鈴音の考えとソレイユ達の考えは違った。

 

「まあまあ、ガックリするのは早いですよ鳳さん。ここに来る前に提案したい事があると言っていたでしょう。単刀直入に聞きますが、鳳さん、このまま私達に師事し続けませんか。流石に月謝はいただきますし、週に2回程度になりますが」

 

「ああ、俺達も仕事があるからな。指導出来るのは火木の放課後に一時間程だ。それでも良いならどうだろう」

 

二人の言葉に鈴音は歓喜した。出来る事ならこのまま二人に師事し続けたいと思っていた所にこの提案なら願ったり叶ったりだ。

 

「は、はい!喜ん「そんなの駄目だ!!」・・一夏!?」

 

鈴音が返事をしようした瞬間一夏が割り込んできた。一夏は見るからに不機嫌そうな顔をしていて不満ありありといった感じだ。

 

「鈴、前にも言っただろ!こんな奴等なんかと関わるなって。こいつらは男らしくない最低な奴等なんだぞ!トレーニングなら俺達と一緒にすればいいんだ。こんな奴等なんかとやるよりよっぽど為になるぜ!!」

 

言いたい事をひとしきり言うと、今度はソレイユ達に向き直った。

 

「おい、何鈴を誑かしてんだよ!?鈴は俺の幼馴染なんだぞ!お前らなんかより俺達とトレーニングした方が「五月蠅い!!」鈴!?」

 

自分勝手な理屈を吠える一夏を鈴音は怒鳴って止めた。鈴音の顔には怒りと悲しみが7:3で出ていた。怒鳴られた織斑は少し唖然としていたが、すぐに鈴音に食って掛かった

 

「・・・な、何だよ、鈴!?」

 

「いい加減にしてよ一夏!あんたはどんだけ私を怒らせたら気が済むのよ!?」

 

「お、俺は鈴を怒らせるつもりなんて無い!!」

 

「そう・・・じゃあ言葉を変えるわ。あんたはどれだけ私の邪魔をしたら気が済むのよ!?」

 

「じゃ、邪魔!?」

 

鈴音の言葉に面食らった織斑だったが、周囲から見れば邪魔しているようにしか見えなかった。

 

「お、俺は邪魔なんて」

 

「十分してるじゃない!私はソレイユ少将とタンジェントさんに鍛えてもらって強くなったのよ。だったらこのまま訓練を見てくれるんだったらそうしてもらいたいと思うのが普通じゃない。それを幼馴染みだからという理由だけで辞めさせようとするなんて。あんたいったい何様のつもりよ」

 

「で、でもこいつらは男らしくない・・」

 

「そんなの訓練に関係無いじゃない!!だいたい何を見て二人を男らしくないと言ってんのよ。私から見ればあんたの方が男らしくないわ!ハッキリ言って最低よ!」

 

織斑の言葉を遮って鈴音はバッサリと言い捨てた、そしてソレイユ達に向き直って頭を下げた。

 

「先程の申し出、喜んでお受けいたします。詳しい話はまた後日聞かせてください」

 

鈴音は自分のトレーを返却口に返すとそのまま足早に食堂を出て行った。まるで織斑の顔など今は見たくないとでもいうように。ソレイユとタンジェントも織斑をゴミでも見るような目で一瞥した後、トレーを返して出て行った。周りの生徒達は気まずい雰囲気の中食事を再開したが、一人織斑だけはポツンと立ったままブツブツと自己弁護の言葉を繰り返していた。そのうちに一緒に食事していた女生徒達に促されて席に戻り、周囲にチヤホヤと上辺だけの慰めの言葉を言われて、自分の何が悪いのかを顧みる事無くすぐに上機嫌に戻った。

 

 

それから学校が終わり、基地に戻ったソレイユは鍛錬の後、ワインを飲むタンジェントと一緒にノンアルコール飲料を飲み、気分だけでも飲酒した気分になって部屋に戻った。しかし、やはり物足りなくこれも自分が未熟だった罰だと無理矢理納得させて就寝した。

 

 

禁酒生活2日目、この日ソレイユとタンジェントは仕事の為に学園を休み、街外れにあるビルに来ていた。ビルの前には厳格なガードマンが二人立っている。

 

「ここは関係者以外立ち入り禁止です。身分を証明できるものをご提示ください」

 

「ん、これを」「はい、どうぞ」

 

「・・・確認出来ました。どうぞお入りください」

 

ビルに入った二人は直ぐにエレベーターに乗り、地下に向かった。今日ここでCP-Mと大切な会議があるのだ。

ここでCP-Mについて説明しよう。CP-Mとは政府が新たに新設した諜報機関だ。これまでの諜報機関と違うのは海軍という組織の中に存在する諜報機関というところである。今までCPと海軍が合同で任務をする事は多々あったが、あくまでも任務を達成するた為であり、決して一枚岩という訳では無かった。それにより間違った情報が訂正されないまま海軍に伝わってしまったり、その逆もあった。おまけにCPの深刻な人材不足もそれに拍車をかけてしまい合同で行う任務に失敗が多くなってしまった。それらを解消する為に創設されたのが海軍の中の諜報機関のCP-Mである。

 

エレベーターで地下3階に降りると、既にCP-Mのメンバー、スコール・ミューゼル、オータム、織斑マドカが待っていた。

 

「待たせたようだな。申し訳無い」

 

「俺達もさっき来たとこさ。早く向かいに座りな」

 

「ああ、そうしよう」

 

会議は最初に、ソレイユが日本に来てからの報告が行われた。文書ではきちんと報告していたが、万が一間違いが無いようにする為である。

 

「なるほど、織斑千冬の顔が崩壊したのは間違いないんだな。よかったなマドカ、これでもうあの女と間違われることは無いぞ」

 

「あんな女の事はどうでもいい。だが・・・スッキリはした」

 

「同じ女として少しは同情しちゃうけど、まあ自業自得ね」

 

ソレイユの報告が終わると今度はスコール達の報告が行われた。現在のイギリスの現状から始まり、世界各国と本国の情報が事細やかに提示された。しかしその中にソレイユが一番知りたかった情報は無かった。

 

「ふーむ、成程。世界各国と本国は今こんな状態なんですね。相変わらず丁寧に簡潔で纏められていて見やすい報告書です。皆様お疲れ様です」

 

「まっ、俺達は口先だけの女尊男卑主義者とは違うからな。これぐらい出来て当たり前だ」

 

「そうね、スコール。・・・ソレイユ少将、険しい顔をしてるけどどうかしたかしら?」

 

「いや・・・麦わらの一味の情報は今回も無いなと」

 

ソレイユの言葉に仕事に文句を言われたと思ったマドカはムッとした顔をした。それに気づいたソレイユは慌ててフォローした。

 

「申し訳無い。仕事にケチをつけた訳じゃないんだ。ただ麦わらの一味の情報が少しでも知りたかっただけなんだよ。嫌な気分にさせてしまったのなら悪かった」

 

「ならばいい・・・それにしてもお前は何でそんなに麦わらの一味に拘るんだ?」

 

「マドカさんそれは聞かないでいただけませんか。誰にでも言いたくない事の一つや二つある物ですよ」

 

「悪いが俺も気になるな。お前が海兵であり、麦わらが海賊だから気になるのは当たり前だろうが、会合の度に聞いてるよな。少々度が過ぎてるぜ」

 

マドカに続いてスコールもソレイユに問い質したが、ソレイユは困った顔をするだけで答える事は無かった。見兼ねたオータムが仲裁に入り、この場は収まる事となった。それからは今後の方針やらいろいろと話し合いが行われ、終わる頃には時計の針が5時を指していた。今回はこれで終わろうとお互いが帰宅の準備をしているとソレイユがマドカとオータムを呼び止めた。

 

「・・・さっき知りたがってた事だけど教えるよ。もう長い付き合いになるしな」

 

「なら早く教えろ」

 

「ああ、勿体ぶりやがってよ」

 

タンジェントはソレイユに本当に良いのかと確認したが、ソレイユは静かに頷いた。

 

「俺が麦わらの一味・・・いや麦わらに拘るのは、あの人が俺にとって恩人だからだ」

 

「「「恩人!?」」」

 

ソレイユの言葉に3人は驚いた。赤犬の義息子であるソレイユが海賊を恩人と言うなど3人には信じられる事では無かった。

 

「勿論俺が勝手に思ってるだけだ。向こうは何とも思って無い。そして恩人だからこそ俺の手で捕えたい。もし他の海兵に捕まったらどうなるか分からないからな。ここからは自分語りになるけど聞いてくれるか」

 

3人を見やると3人は真剣な顔で肯定した。それを聞いたソレイユは語り始めた。

 

「麦わらに会うまでの俺は白騎士事件とその後いろいろあって、喜怒哀楽の感情のうち怒哀しか無かったんだ。哀は今でも不完全な状態だけどな。海兵にになってから元帥に褒められたり、タンジェンントとの鍛錬で自分が強くなったのを感じて、センゴク大目付を始めとした沢山の人達に助けられて段々と喜の感情を取り戻す事は出来たんだ。でもそれは、嬉しかったけど楽しいといった感じでは無かった。それは趣味の畑いじりで収穫できた時も同様だったんだ。せっかくガープ中将に貰った「海の戦士ソラ」を読んだ時も心から楽しいと思えなかった。心に余裕も無かったしな。でもある日ガープ中将に連れられてルフィさんと出会って半年間一緒に過ごす事になって、最初の頃は何だコイツと思ってたんだけどよ、一緒に過ごしてるうちにいつの間にか俺、心から楽しくなってて気づいたら心の底から笑うようになってたんだ。一緒に狩りをしたり、修行をしたり、飯の取り合いをしたり、その度に笑ってた。ルフィさんとはいろいろ思い出あるけど、一番印象に残ってるのは、ある日、ルフィさんは俺を仲間に誘ってきた事があったんだ。海兵の俺をだよ。勿論断ったよ、でもあの時は一番笑ったな。ルフィさんは俺に感情を取り戻してくれたんだ。特にあのニカッとした笑いは忘れられないよ。・・・話は以上だ」

 

話し終えたソレイユは足早に部屋を後にした。タンジェントは3人にこの話は他言無用だと厳命してソレイユ追って部屋を後にした。ソレイユの過去のあまりの重さにスコールとマドカは軽々しく聞いた事を後悔した。オータムは今度会ったときに高級Barに連れて行ってお詫びする事を決めた。

 

「あの話を聞くたびに私達は不愉快になるんですよ。私達では出来なかった事が麦わらには出来たって事なんですから。私達のほうが付き合いが長いんですよ。それなのにたった半年の共同生活で感情を取り戻せたなんていまだに信じられません。たしかに麦わらは海賊ではありますが気持ちのいい男でありますし、一緒に居て楽しくなるというのも理解できます。それでもですね・・・」

 

帰り道、すっかり不貞腐れてしまったタンジェントを何とか宥めながらソレイユは基地に帰るのであった。その日の訓練は普段の3倍はキツイものだった為、寝酒無しで熟睡出来た事は余談である。

 

 

禁酒生活3日目、二人が教室に入った瞬間に強烈な憎悪が込められた視線が向けられた。今までの視線より強いものだった為、何事だと思い視線の先を見ると以前にソレイユが落とした女生徒がいた。暫く入院していたが、今日から再び登校してきたようだ。普段ならこの程度相手にしないソレイユだったが、禁酒3日目でイライラしていたので、女生徒に向けて親指を下に向けた。一瞬にして醜い顔を益々醜くして、いきり立ってソレイユに飛び掛かろうとしたが、タンジェントから殺気交じりの牽制を受けて女生徒は悔しそうな顔をしながら引き下がった。そんな情けないゴミクズにソレイユは、口を横に引っ張ってアカンベーと挑発して席に着いた。

 

その光景を見ていた織斑一夏はまたもソレイユに対して「あんな事をしておいて、謝りもしないなんてやっぱり最低だ!」と思っていたのは誰も知らなくていい事である。

 

それから昼休みになるまで特に問題が起きる事は無く、せいぜい授業で立て続けに失態を犯した一夏が昼休み中に姉から説教を受ける事になった事があった事と、件の女生徒が事あるごとに不意打ちを事故に見せて仕掛けてきた事ぐらいである。全て未来視で躱して、時には反撃を喰らわせたが。

 

今日の昼食は禁酒生活1日目同様に、鈴音と食べていた。本当なら本音と簪も一緒に食べる予定だったが、二人とも生徒会からの緊急の呼び出しで居なかった。呼び出されたとき、簪は非常に残念そうかつ憎々し気であった。

ソレイユが食堂にある全種類のうどんを制覇しようとしているのを尻目に、先に食べ終えたタンジェントと鈴音はこの前の事を話し始めた。

 

「タンジェントさん、先日の件なのですが月謝は幾らぐらいになるのでしょうか?国に確認を取ったところ20万までなら補助金を出すと言っておりました」

 

「ニャハニャハニャハ、やはり気になる所はそこですか。その点についてご安心ください。こちらから声をかけた事、元から師事していた事、その他いろいろの件を鑑みまして超特別価格一万円で結構ですよ」

 

「い、一万円でいいんですか!!?」

 

鈴音の驚きの叫びに向上心のある生徒は思わずタンジェントに振り向いた。たった(と言ってもいい訳では無いが)一万円を払うだけで、鈴音をあそこまで強くさせた人物に師事できるのならば無理のない事である。しかし興奮する鈴音をタンジェントは穏やかに宥めた。

 

「落ち着いてください鈴音さん。超特別価格と言ったでしょう本当なら30万円は頂くところですよ」

 

「3、30万円!?」

 

再び鈴音の叫びを聞いた生徒達の半数はこの時点で諦めた。いくら強くなれるといっても高校生に30万円は大金だから無理も無い。しかし一部の生徒(クラス対抗戦で鈴音が強くなったのを見た中国の生徒含む)は強くなれるなら30万円払っても良いとすら思っていた。見分色の覇気を使ってその事を見抜いたタンジェントは密かに見どころのある人間がまだ残っていたのだとほくそ笑んだ。

 

一方ソレイユは周囲の喧騒を意に介さず食事をしていたが、最も大事な事を海軍支部長として鈴音に言わなければならないと、普段より険しい顔をして食べ終わった丼と箸を置いた。

 

「鳳さん、一つ約束して欲しい事がある。鍛錬に他の人を連れて来る時は必ず俺達の許可を取ってからにして欲しい。もしこれを破ったとき、俺達は鍛錬を打ち切る可能性がある」

 

ソレイユのあまりに厳しい言葉に鈴音は面食らった。そんな些細なことを何故、こんなにも重々しく言うのか分からなかったからだ。

 

「どうしてこんな些細な事をと思ってるかもしれないが、とても大切な事なんだ。もし君が連れてきた生徒が女尊男卑主義者もしくはそれに準じた考えを持つ奴だったとしよう。君がそんな奴らと仲良くするとは考え難いが、表に出していないだけで心中ではそんな考えを持っている奴もいるかもしれない。そうなった場合訓練に支障がでるだろうし、そいつが君に危害を加えてくるかもしれないし。99%あり得ないが俺とタンジェントに危害が加えられる可能性もある。それだけは絶対に防が無ければならない。俺達は君を鍛える以上必ず強くしなければいけないし、危害からは絶対に守る。それが教える側の絶対の鉄則だ。その為には万全の状態で君を鍛えたいんだ。わかってくれるね」

 

「は、はい。約束します。人を連れて来る時は絶対に事前に許可を取ってからにすると」

 

ソレイユの真剣な顔と言葉を聞いた鈴音は納得すると同時に嬉しかった。二人が本当に自分の事を弟子として大事に思っている事が改めて分かったからだ。

 

「あ、最初に言っておくが、篠ノ之箒、織斑の姉、そして織斑一夏は絶対に連れてこないでくれ。これは個人的な感情では決してなく、あんな奴が居ても訓練の邪魔にしかならないからだ。君の幼馴染を悪く言うのは申し訳ないが、あいつが居たらやいのやいのと文句を言ってくるに決まってる」

 

「いえ・・・気にしないでください。実はお二人にはこれから一夏とどう接するのか聞いて欲しいんです。」

 

鈴音は姿勢を正して真剣な顔で話し始めた。鈴音の真剣な態度にソレイユ達も姿勢を正した。

 

「私、しばらく一夏と少し距離を取ろうと思うんです。あ、いえ嫌いになったとかではないんです。一昨日の事も関係ありません。この事は2日前に乱入してきたISの件が終わった後に決めた事なんです。というのも、今までアイツの良い所だと思ってた所が最近になって良い所だと思えなくなってしまったんです。例えば、どんな敵にも逃げずに向かって行く所を、前までは勇敢だと思ってたんですけど、最近だとただの無鉄砲だと思ってしまうようになりまして。他にも今までアイツの近くにいて気づかなかった事も、お二人に師事しだしてからはいろいろと気づくようになりまして。だから、アイツと少し離れた位置からアイツの事を見てみる事にしたんです。アイツとの関係をどうするかはそれからでも遅くはないなと。ハッキリと思いを告げると言っていたのにごめんなさい」

 

鈴音の考えを黙って聞いた二人は否定も肯定もしなかった。彼女の決心を自分達がどうこう言う資格は無かったからだ。ただソレイユは彼女の真剣な目を真っすぐに見続けた後に、コーヒーを一杯注文して鈴音の前に置いた。タンジェントは「あなたの考えを我々は尊重します。ですが今までの思いを無にするような事はしないでください。それもあなたの大切な人生のページです」とだけ告げた。鈴音はソレイユの不器用な優しさとタンジェントの温かい言葉に、改めてこの二人に師事することにして良かったと心から思った。

 

その晩、いつもの業務を終えたソレイユは普段よりも長めに鍛錬をしていた。苦行ともいえる禁酒期間も今日で終わり、明日からはまた酒が飲めると期待と興奮が収まらずなかなか寝付けそうになかったからだ。ガープ中将から教わった鍛え方、廃船にする予定の軍艦を素手で覇気も能力も使わずに叩く「軍艦バッグ」をもう1時間も休まず続けていた。拳はもう真っ赤に晴れ上がり、所々に血が出ているがまだ辞める様子は無かった。

 

「ハア・・ハア・・痛い・・痛いが・・・もう少しだけ頑張ろう。せっかく・・・海上自衛隊から・・廃棄予定の軍艦を・・・買ったんだ。こっちに来てから・・・出来なかった分・・叩いて叩いて・・叩きまくってやる」

 

それから30分後、手を血塗れにしてソレイユは引き上げた。風呂に入った後、医務室で無茶しすぎだと怒られつつ薬を塗って、包帯を巻いてもらい自室に戻った。体はもうクタクタでグッスリ寝れそうだ。

 

「さあ・・・明日が楽しみだ。鍛錬の後、飲むぞーーー」

 

ベッドに入ったソレイユは10秒もしないうちに寝入った。明日の鍛錬と酒に胸を躍らせて。

 




禁酒期間を無事に耐え抜いたソレイユ
部下に教えられた店に行ってみると何やら喧騒が
その店には女権団の息のかかったチンピラが立ち退きを迫っていた

次回、IS 復讐の海兵
「海軍将校御用達認定 五反田食堂」
あいつらは必ず地獄に落とす!!
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神域の料理人が往く食戟のソーマ(作者:あさやん&あさやん)(原作:食戟のソーマ)

▼【グルメ界】の『エリア6』に住む『貝王 ジャイアントシェル』。その中にある文明『ブルーグリル』で、気が遠くなるほどの長きに渡り『魂の交換』を行ってきた男。▼『美味なる食材』と『優れた調理技術』を求め『人間界』『グルメ界』と旅を続け………………遂には【食戟のソーマ】の世界までやってきてしまう。▼全ては『人生のフルコース』を完成させるために!!!▼※【トリコ】…


総合評価:4708/評価:7.85/連載:21話/更新日時:2026年05月08日(金) 18:00 小説情報

サトシ君(転生者)の目指せ、ポケモンマスター!!(作者:DestinyImpulse)(原作:ポケットモンスター)

▼ 転生したのはオリ主でもモブでもなく紛れもなく主人公。▼ 定期的に世界を救わなくてはならない大役を背負いながらも、ポケモンとの出会いと冒険に胸を躍らせる。▼ ▼「通りすがりのポケモントレーナーだ、覚えておけ!ピカチュウ、君に決めた!!」▼「ピカチュウ!!」▼ コレはアニポケ主人公のサトシに転生した少年が、時にポケモンと絆を深め、時に女の子とのフラグを作り、…


総合評価:7173/評価:8.67/連載:49話/更新日時:2026年05月06日(水) 19:34 小説情報


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