僕は仮面ライダーアマゾン   作:ふくつのこころ

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コンプティークのメイド服のブリュンヒルデがあまりにも可愛いと思ったので、最近の肩慣らしにと。
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ビギンズナイト
目覚めの日


 そこは森の奥地、とある悪魔の人間界の別荘ということで申請されている場所で古い洋館が建てられている。薄暗い森に囲まれ、よほどのモノ好きでなければ此処に訪れることはそうないだろう。そんな場所に建つ洋館は既に廃墟、まるで数百年も前に何者かが暴れて破壊したような痕を残したまま変わらないと言ったところ。

 

 その場所を訪れたのは一人の浴衣を着た男性、薄い色をした髪に顎髭を生やしたどことなく掴みどころのない印象を与える人物だ。彼はそんな場所を訪れた数少ないモノ好きでかつてこの“場所”で行われていた実験の“負の遺産”を回収しにやってきた。プライベートではそれなりに良好な関係を築いている悪魔を統べる魔王によって頼まれたのもあり、重い腰を上げてやってきた。

 

 男の名はアザゼル。

 堕天使の組織、神の子を(グリ)見張るもの(ゴリ)のいわゆる堕天使総督という堕天使勢力のトップを務めている。彼の趣味は神器(セイクリッドギア)という人間が宿す異能の研究であり、自信でも神器を開発していくつか試作品を残している。

 どうも子供っぽい、よく言えば童心を忘れない紅い魔王はそんなアザゼルの作品に目を輝かせたりしているのだが、今回ばかりは話が違う。

 

 悪魔の駒(イーヴィル・ピース)

 種の存続に瀕した悪魔が作りだした眷属を増やすアイテムであり、現在ではある意味で問題となっているもの。それが悪魔の駒。悪魔の駒というのは眷属に与えることで与えた主人の眷属悪魔へと元の種族から書き換えるものであり、駒に応じた特殊な力を与えることができる。

 

パワータイプの特性を与える戦車(ルーク)

 俊敏さの特性を与える騎士(ナイト)

 魔力による力を高める僧侶(ビショップ)

 それらすべての駒の力を併せ持つ、女王(クイーン)

 これといった力はないが、主の証である(キング)

王を除く前述四つの駒に変異(プロモーション)することで力を発揮する、兵士(ポーン)

 

アザゼルが訪れた廃墟に残されたのは悪魔の駒の技術が確立する前、ある実験が行われていた。

 

「此処か。しっかし、悪魔の奴らも昔は教会側と何ら変わりねえことしてたんだよな。……結局、どこも変わらねえか。恐ろしいもんだ、」

 

 悪魔の因子を埋め込むってのは、とアザゼルは屋敷を睨み付けた。その意味とは種の滅亡に追いやられた悪魔が考え付いたまさしく悪魔の所業、それも悪魔の因子を他種族に植え付けるというものだ。そうして他種族の身体に馴染ませ、徐々に悪魔へと変貌させるという実験だ。

 試されたのは誘拐されてきた又は売り飛ばされた子供が材料として使われ、そして使い潰されてきた。昔の自分なら、そんな所業を鼻で笑っただろう。当時の自分はあまりにも若かった、だが今は銀髪の子供を養子にした今ならわかる。

 

「……胸糞悪ィ」

 

 廃墟の扉を開け、目的の品のある奥へ奥へと進む。赤い絨毯が敷かれ、シャンデリアは落ちて天井にはフックのみが残されている。手のひらから生み出した光の槍、堕天使の平均的な装備とされるそれをアザゼルは灯代わりとした。既に人の気配はなく、窓は閉ざされてかろうじて差し込む光から昼間だとわかるくらい。

 

 地下から吹き抜ける風を頼りに向かう、その先に目的の品があると専用の探知機代わりのブレスレットに填めた宝石が輝いて反応している。地下の階段をゆっくりと降り、反応のする方へと歩を進める。

 

「やけに反応してるな。別途に保管されているはずじゃないのか?それともう一つの反応は……」

 

 すると、そのときアザゼルを何かが襲う。

 わずかな光で垣間見えたのは紅い複眼、若干黒がかかった肉体を持つ異形。何かを持っている様子はないが、明確な敵意を感じ取ることができる。身体はこの廃墟の年季を表すように誇りや汚れが目立つ。口元には血がべったりと付き、まるでドラゴンを思わせるような顔は凶悪に映る。

 

 がっしりと噛み合わさっている口がギパッと開き、異形はにたぁと笑ったように見える。

――オイオイ、聞いてねえぞこりゃ。

アザゼルの予感は悪い意味で的中した、異形はそのままアザゼルの方へと直進したのである。人型をしているように見えるが、拳を作らずにその鋭い爪で引っ掻いて獲物を仕留めんとするさまはまるでネコ科の動物のようだ。

 

 その動きは何かの体術を齧っているわけではないようで、回避するのは苦ではない。アザゼルが異形の攻撃を回避するたびに石畳の床は引き裂かれ、壁は崩れる。

身の丈はアザゼルよりも大きく、上背がある。それにだらんとぶら下がったような両腕から繰り出される攻撃は重く強烈なもの。アザゼルは反射的に光の槍で応戦するが、僅かに異形の肌が焼けたのが見えた。

 

「……!まさか、こいつがか……?」

 

 光の槍は堕天使の平均的な装備であり、投擲武器でももちろんのこと近接戦でも活かすことができる。研究に没頭しているようなアザゼルでも堕天使の中では最強クラスの存在、その一撃は並の下級悪魔ならば簡単に滅することができる。つまり、この目の前で光の槍を受けて肌を焦がしている異形は少なくとも聖なる存在ではないのは確かだ。

 

 アザゼルの頭をよぎるのは最悪の予想、苦悶の声を上げる異形にアザゼルは距離を取って立て直す。周囲を見まわたしてみても、間違いなく“にんげん”の仕業には見えない。石肌を抉り取り、爪痕を残すのはアザゼルが知る限り人間の範疇を超えている。神器の中でも強力なものや変身能力を持つものなら異形の姿に変貌する、というのもこれまでのケースではあり得る。

 

強大な力を持つとされるドラゴンの中でも強力で二天龍と呼ばれる紅白のドラゴンのうち、赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)を宿す赤竜帝の(ブーステッド・)籠手(ギア)

二天龍のうち、白い龍(バニシング・ドラゴン)を宿す白龍皇の(ディバイン・)光翼(ディバイング)

 

 代表的なこれら二つはある手順を踏むと小柄なドラゴンのような形態へと変わるという伝承が残されている。ならば、この異形は神器(セイクリッドギア)を宿している人間が能力を御しきれずに暴走している姿だと言うのかと言われれば、そうではない。

 

「おい、坊主。よかったら、俺と話でもしないか?ずっと、こんなところにいたら退屈で仕方ねえだろ?ジュースくらいはおごってやるぜ?」

 

 我ながらいい対応であったのではないかと思う。挑発にも聞こえるが、養子とのファーストコンタクトの時にした方法と同じものだが、これで“武装”を解いてくれるのであれば上々である。しかし、異形はアザゼルの言葉に応えない。光の槍を片手にするアザゼルを未だに警戒しているらしく、決定的な隙を見つけんとしているようで様子を窺っている。

 

 異形の中身が子供で会話が通じるのであれば、アザゼルは説得を試みただろう。この状態を体感するまでは。事前に聞かされていた、とあるアイテムの回収というのが今回の仕事のはずだ。まさか、―――異形へと転じた被検体との邂逅だなんて聞いていない。異形から感じられる気配は紛れもなく、悪魔のものだ。同時に人間としての気配と匂いも混ざり合って『よくわからないもの』を形成している。

おまけにトカゲ人間ともいえる頭部や鋭い爪に膂力といった、それら動物的な特徴を見せられてはそうもいかない。

 

 子供を殺すのは忍びないが、最悪、その回収のためにはそれも頭に入れておかなくてはならないだろう。望む望まないにもかかわらず、だ。

アザゼルの呼びかけを無視し、異形は大理石をも切り裂く爪を振り回すようにして異形は暴れる。光の槍でアザゼルは再度受け止め、攻撃を受け流すが、異形は身軽な動きで距離を詰める。

 その獣のような眼には獲物を仕留めようとする捕食者の色を浮かべ、キシャ―ッと声を上げる異形――。

 

「これ以上、手間取るわけにはいかねえんだわ。さっさと寝てくれよっ!」

 

 途端、アザゼルの姿が異形の視界から消える。異形がアザゼルの姿を探すと、背後からアザゼルの声が聞こえる。

 

「こっちだ」

 

 異形の首を狙う一撃が決まる。異形が振り返ったときにはもう遅く、その身体から煙を発するように“気”が身体から流れてゆく。見上げるような異形の姿から一変、そこに残ったのは黒髪の小さな少年。服装はボロボロ、どこかの研究所の被検体のようで簡素な衣服を纏っている。身体中は傷だらけ、といった風でもなく汚れが目立つ。

 

「こんなに小せぇのに大した姿になれるもんだ。このままにしておくわけにもいかねえしな……」

 

 そういうとアザゼルは少年を担ぎ上げた。毒を吐いてはいるものの、どこか優しい声色だった。担いだまま、奥へ奥へと歩みを進めてゆく。ちょうどそこに目的の品があるからだ。しかし、深奥部へと辿り着いても目的の品があると思しき場所へと辿り着く。

 

 そこにはなにもなかった。

 

「……まぁ、いい。帰るぞ、坊主」

 

 深奥部には何もない。だが、このままに幼い少年を放っておくわけにもいかない。異形へと変じる力、それも一度はこの堕天使総督である自分をも力押しで押し切れそうになるほどの実力。何かの庇護でも与えてやらなくては、いずれは使い潰されてしまうだろう。

 

「ちっとはマシな生き方をさせてやる。それがお前に俺ができることだ」

 

 ならば、異形(かれ)人間(ひと)らしくしてやるのが筋というものだろう。

 

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