僕は仮面ライダーアマゾン   作:ふくつのこころ

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精力いっぱいに最新話


再会

 その後のフライトは滞りなく、日本に到着した。幼少期の時にどうやって朱乃の家に行っていたかと思いだせば、そういえば魔法陣だった。飛行機を降りる直前、名残惜しそうなグレイフィアをやんわりと断って木場とともに飛行機から降りた。空港からもサーゼクスによる手回しなのか、あっさりと出ることができた。

 

 電話の連絡帳を開き、「アキねえちゃん」と登録してある朱乃の連絡先を開く。改めて生の声を聴くとなると、流石のアモンも緊張感に包まれる。表情は相変わらずだったので緊張しているのかな、とアモンの様子を窺う木場も苦笑いしていたが。プルル、と着信するが――。

 

『アーちゃんッ!?アーちゃんなの!?電話なんて珍しいわ、どうしたの急に?もしかして帰ってきた?帰ってきたなら顔を見せに来ないと雷で一週間ずっと責めて二度と私から離れようとは思わせませんからね、ええそうですとも!……ねぇ、返事は?アーちゃん?』

 

 電話の向こうから聞こえてくるのは確かに幼馴染のはずだ、数年も経っているのだから多少の変化は仕方ないだろう。しかし、言っていることはまるで朱乃の母の朱璃のようではないか。バラキエルを責めているときの生き生きとした様子を思い起こさせる。そんなにストレスでも溜めていたのかとしばらく静かに聞いていると、言葉尻が不安そうに消え入りそうだった。

 

「声を聴くのは久しぶりだね、朱乃。アモンだよ」

『それなら良かった。アーちゃんじゃない誰かから電話がかかってきたら、私、自分を抑えることができない気がしますもの。それで、帰ってきたの?今どこ?』

 

 朱乃は口調が母親のほうに似ているが、根本的な性格の方は変わっていないようだ。

 

「かえってきた、というのが俺の場合正しいのかわからないけど、二ホンには来た。先生に頼まれたんだ、二ホンに行くようにって。特に断る理由もなかったし、引き受けようと思ってさ」

『ふうん?お仕事で来るってことなんですのね?アーちゃん。私の顔を見に行くとかではなく?』

「もちろん、寄るよ。そういう約束だったし。それで、頼みがあるんだけど」

『私にできることなら何なりと言ってくださいな、アーちゃん』

 

 少し朱乃の機嫌が電話越しに悪くなったのを感じたが、アモンが朱乃の家に寄ると言ったとき、少しばかり機嫌がよくなったように感じた。ヒトというのは構ってもらいたがるものなのかと養父やロスヴァイセを思い出すアモン。

 

「しばらく泊めてほしいんだけど」

『二つ返事でもちろんよ、アーちゃん。部屋着は父様のでいい?』

 

 二つ返事で構わないと言われたことには流石のアモンも驚いた。

 

❊❊❊

 

「しかし、意外と近いところなんだね?僕の家からも」

「ユウトもこの付近に?」

 

 その後、サーゼクスの手回しでリムジンで移動することになった木場とアモン。朱乃の家の住所を伝え、リムジンが走り出して空港からだいぶ時間が経った後、目的地の駒王町に到着した。リムジンを二人で降り、ちょうど朱乃の家の周辺で降ろしてもらった時には時刻は既に深夜三時半。もうこんな時間になってしまった。

 

「そうだよ。ここは僕らの主さまの治めている土地でもあるからね、僕の住んでいる家もある」

「そういうのってさ、人間は知ってんの?一帯を誰が支配しているのかって」

「いや、それは……」

「悪魔って身勝手だ。そういうところは好きになれない」

 

 アモンはかつて自分が見た夢を思い出した。「人間が役立てることを光栄に思え」と言った彼らの特徴はまごうことなき人間のそれと大差ないが、蝙蝠の翼を生やしていたことから悪魔に違いない。他に黒い翼を生やしている種族と言えば堕天使が挙げられるが、もしそうだとしたら相打ち覚悟でもアザゼルやバラキエルをきっと“獣”や“異形”ともよばれる姿に変身し、かつての自分ならば殺していたろうから、それはないだろう。

 

 木場が何かを言う前にアモンはそさくさとポケットに手を突っ込み、朱乃の家を目指す。悪魔は身勝手という言葉から読み取れる自分たち悪魔とアモンの並々ならぬ関係、その自分よりも小さな背中に何かかける言葉はないかと探してみるが、浮かばずに見つめることしかできない虚しさが胸中を支配する。やがて、浮かんできたのは、

 

「アモンくん!」

「?」

「友達に、なってくれるかい?悪魔とかそういうのじゃなく、木場祐斗とアモンという一人として!」

「俺が、お前とトモダチ?」

 

――お前は人間であることを忘れるな。

 木場の言葉を聞いていると、アザゼルの言葉を思い出した。養父はいつまでも願っている、アモンが人間らしく生きていくことを。木場の言葉はアモンを振り返らせるには十分だった、さらにアモンを驚かせるくらいにも。周囲の大人たちはみんなアモンを守ろうという意志が強かったのを感じている。異性もその傾向が強いのに、同性もほとんどそれだ。

 

 アモンは自分を対等に見てほしいと思う存在が欲しかったのかもしれない。

 木場祐斗とアモンという『一人』として友達になってほしい。

その言葉はアモンの身体に、それも心の奥へと深く深く刻み込まれていった。

 

「それならいいよ、ユウト。俺とユウト、トモダチ」

 

 すぐにくるりと踵を返し、アモンは朱乃の家へと向かう。後ろから聞こえてくる木場の言葉には手をひらひらとして返す。

 

初めての同性の友人ができた日だった。

 

「あ、来た来た。久しぶり、アーちゃんっ!」

「朱乃、ちょっと息が苦しい……」

「なあに、アーちゃん。久しぶりに会えた幼馴染を抱きしめて悪いの?」

 

 遅い時間にもかかわらず、姫島神社の奥にある居住スペースの日本家屋は灯がついていた。ノックをする前に引き戸は開き、部屋着姿の朱乃が出てきて両手を広げてアモンを抱きすくめた。久しぶりに会う幼馴染、昔と何ら変わらないようで色んなところが成長していた様子。身長はほとんど変わらず、ロスヴァイセと並んで背が高い女性の部類に入るだろう。

 

 着物姿で上に上着を羽織り、髪を下している様子は幼い時に見た朱璃を連想する。ぎゅっとアモンを抱きすくめているものだから、しばらく時間が止まったように感じた。最後にこの家に自分から訪れたのは旅に出る数年前、手紙を届けに来た時以来だろう。ひっそりと書いた手紙をアザゼルから隠し通すのは至難の業だったが、届けられたのならば幸いだ。

 

「悪いと言ってないんだけど……」

「でも、まだアーちゃんのこと許してないからね?私」

「あら、アモンくん久しぶり。早く入りなさいな、疲れたでしょう?お部屋は用意してありますからね。アモンくんと話すのもいいけど、朱乃。アモンくんも疲れてると思うから、ほどほどにしなさいよ?」

「わかってるわ、母様。ほら、アーちゃん入って?」

 

 奥から聞こえてきたような気がする朱璃の声、どこかよそよそしさを感じるのはなぜだろう?けれど、これ以上、幼馴染を待たせるのは野暮というものだ。「お邪魔します」と建物の中に入り、引き戸を閉める。玄関にある置物や雰囲気、何もかもが数年前のあのときと変わらない。そう、姫島の家の者が襲撃に来た時から玄関先だとかが荒らされていること以外には何にも—―。

 

 朱乃の靴のほか、朱璃の物とバラキエルの物らしきブーツもある。アザゼルの趣味が映ったのか、裏の生地が臙脂色のコートに作業着風の着物に合わない革のサンダルを脱いで玄関から上がる。家の中に入ってきてもなお、手を放すことをしない朱乃。ふと思い立ったのか、朱乃は笑顔でアモンを見つめる。

 

「どうかした?」

「分かってる癖に。お邪魔しますじゃないでしょ?アーちゃん」

 

 本当に、何も変わらない。

 

「ただいま、朱乃」

「おかえりなさい、アーちゃん」




最終回っぽいけど、まだまだ続くんだなこれが
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