僕は仮面ライダーアマゾン   作:ふくつのこころ

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白い龍の皇との邂逅

 朱乃の家に滞在することとなり、アモンはバラキエルが部屋着としている着物を貸し出された。着替えはショルダーバッグに入っている上下二枚をローテーションでしている以外になく、今着ているものは穴や糸のほつれが少ないアモンが持っている服の中ではまともな部類である。ズボンはジーンズが二本、両方とも膝に穴が開いていてクラッシュジーンズとでも言えばごまかしは利くだろうが、上二枚となれば話は別だ。

 

 案内された客間で着物を着てみるが、180センチ以上はあるであろうバラキエルと170センチあるかないかと言ったアモンでは身長差が開いているのは明白で小柄なアモンは着物がぶかぶかだった。愛用しているコートをハンガーにかけ、帯を少しきつく締め、ぶかぶかなのを支えるために通常よりも多く結んだ。少し動き辛いように傍目からは見えるが、この格好で戦闘することはかつてのような状況でなければ二度とないと願いたいところだ。何度も幼馴染の家を荒らされては困る。

 

「着れた?アーちゃん。……ぶかぶかなのを着ると思い出しますわ、帰ってきたときはアザゼルおじ様や父様くらいは身長はあると思ってましたけど、私とあんまり変わらないのを見ると小さい時みたいね」

「悪かったな。発育はあんまりよくないみたいだ。少なくとも、160は超えていてよかったよ。小さすぎるのは困るし」

「大きいわけでもありませんけどね?アーちゃん」

 

 入りますわよ、の一言の後に朱乃が障子を開けてアモンに近づいてくる。成長したからか、以前よりも彼女から発せられる甘い香りが鼻腔をつく。ロスヴァイセ然り、女性というのはシャンプーやらに気を遣うのだろうか、と思ったアモン。節約性と聞いているが、シャンプーやボディソープは流石にいい物を使っていると聞いたときは自分らしくないが安心したのをよく覚えている。

 ちなみに養父の身長はバラキエルとあまり変わらない、羨ましい限りだ。

 

「朱璃母さんはもう寝た?」

「ええ、寝ましたわ。……お布団の敷き方、覚えてるんですのね」

「簡単には忘れないだろう、普通」

 

 アモンの後ろに敷かれた布団に目を向けると、朱乃は意外そうな表情を浮かべている。あれから、それなりの時間が経つが、神の子を見張る者ではベッドで生活していたアモンが敷布団の敷き方を覚えているのが意外だったようだ。甘い香り以外に良い香りが漂っている。朱乃の片手にあるのは丸い盆で上には二つおにぎりとお椀に味噌汁が入っている。長旅のアモンに気を遣って夜食を作ってくれたんだろう。

 

「そんなアーちゃんにご褒美です。はい、お夜食」

「これは……、らいすぼーるってやつ?」

「あってるけど……、日本語ではおにぎりね。アーちゃんてもしかして日本人じゃかったりする?」

「そうじゃないか?多分。けど、国なんて関係ない。俺は俺、それだけを忘れなかったらいいんだ」

 

 朱乃の持つ盆からおにぎりを手に真面目なことを言ったりするアモン、言葉と行動があっていないような気がするが、真面目にそんなことを言うのは実にアモンらしいのではないだろうか。色んな所を見て回るとアモンは言っていたが、あのアモンの養父のことだ、幼少期から様々な外国語でも教え込んだのではないだろうか。体力についてはアモンは全く問題ないので違法滞在だとか法律的な問題を除けば、アモンはどこにでも行けるタフネスを持ち合わせている。

 

「座って食べたら?アーちゃん」

「そうする」

 

 朱乃から言われてはじめておにぎりを少しずつ口に運んでいくアモン、少し大きめに作っておいたが、こうやってみるとアモンは小動物のようだ。リスとかネズミとかそう言った部類でなく、イタチやクズリと言った部類にだが。着物姿でおにぎりをもぐもぐする様は昔と変わらない可愛らしさがある、と朱乃は思った。「口に米粒ついてるわ」と口端についた米粒を取り、自分の口に運ぶとアモンは変わらずおにぎりを頬張っている。

 少し変化が欲しいと思うのはアモンと過ごしてきた少女だからこそ、というところだがアモンにそれを求めるのはいささか無理がある。ならば、此れから共に過ごす上で教えていきたいところだが、

 

 アモンが何かに気づいたようだ。今度は自分が口につけて齧ったところを見つめている。変な具はもちろん使っていない、さきほどアモンが着替えている間に手早く握ってきたものだ。具は明太子と瓶詰の鮭フレークとポピュラーなもののはずだが。まさかとは思うが、賞味期限が既に切れていて味に変なところがあったのではないだろうか。

 

「どうしたの、アーちゃん」

「朱乃、この赤いやつ、辛い」

「それは明太子。アーちゃん、食べたことないの?」

「めんたいこ……?それは何?」

「それはね……、魚の卵なんだけど、辛く味付けしてあるの」

「辛く……、それはまた不思議だ」

 

 そう言ってまたアモンは食べはじめた。おにぎりを貪る様子は可愛らしいが、明太子のことについてアモンが理解できたかと言われれば、また話は別だ。しばらくの間、子の幼馴染に教えれることは教えようと固く誓った。

 

 

 翌朝、朱乃は“がっこう”とやらに行くらしく、朱璃の方も神社の仕事があるようでアモンは一人残された。学校に行く前、朱乃からは「この街の散策にでも出かけたら?」と言われたが、どこに向かえばいいのかアモンには分からなかった。朱璃に一言言ってから出かけるも、現代日本の中でも際立って浮いているアモンの服装は街中でも派手で浮いている方だ。途中、電子機器の巨大な筐体がたくさん並んでいる施設や“コートを買った店”との認識で覚えている服屋やカフェと通ってきたが、いまいち、次の目的地が定まらない。

 

 野座間急便を営んでいるときは次の目的地を宅配という形で決めることができたし、駒王に来たのもアザゼルからの頼みである。年の方は十代半ば、おおよそ十七歳ほどのアモン。アモンほど若い年齢であれば、昼間に出歩いていれば警察に補導でもされるんだろうが、その身から放たれる年不相応の気配がそうさせなかった。過酷な環境を生き延び、身を投じてきたからというのもあるが。

 

「この違いはなんだ?朱乃のとどう違うんだ、同じ具なのに」

 

 昼時ということもあり、アモンはコンビニで腹を満たすためにおにぎりを購入した。フィルターを外したり、ノリをつけるのに苦労したが、ほとんど適当に巻き付けてそれらしい形を作ることとした。そんな様子を通行人はいぶかしそうに見ているが、気にするアモンではない。昨日の夜、朱乃が夜食にと作ってくれたおにぎりと同じ具、明太子のおにぎりを買ったアモンは昨日の物との違いに首を傾げていた。冷蔵庫にあったであろうことから冷たいのは分かるが、材質は同じはずだと。

 ぶつぶつ呟きながら歩き食いをする様子は近寄りがたさをいくつか緩和しているようにも見えた。そんなアモンだが、背後の気配を感じてそちらの方へと即座に振り替える。銀髪で北欧系だろうか?端正な顔立ちで、おそらく人間だ。その中に半分以上、人間ではないものが感じられるが。

 

 その人物は少年だった。アモンとほとんど変わらない背丈で、アモンが気がつくと嬉しそうに近づいてくる。まるで、そうあることを分かっていたように、そうあるべきだと案じていたようにも見える。かくれんぼで相手を見つけた時の子供―—そんな印象を抱いた。

 

「はじめまして、兄弟」

「俺に兄弟はいない。誰だ、お前は」

「つれないなぁ、全く。俺と君は出会うことを運命づけられていたのかもしれないな、赤と白のように。知っているかい?赤い龍の帝王と白い龍の皇帝を」

「赤い龍———赤龍帝、白い龍は白龍皇か。先生から聞いたことがある」

 

 赤い龍の帝王、ドライグ。

 白い龍の皇帝、アルビオン。

 

 それぞれ、先の大戦で“ある戦士”に敗れ、神器に封印されたという二天龍と呼ばれるドラゴンの中でも最上位に位置する存在。その名前をアモンは知らないはずがなかった、彼の養父のアザゼルは人間の身が宿すことのできる異能、神器に並々ならぬ興味を抱いているのだから。

 

 彼によって受けた教育の中には神器についての基礎的なこともあり、アモンの旅の道中にも神器能力者と出会ったこともある。だが、この少年は何が言いたいと言うのか?

 

 アモンが疑問を抱いていると、先生という言葉に少年は反応したように思える。まるでその言葉を待っていたかのようにだ。

 

「その先生というのは、もしかして堕天使総督かい?」

「なぜそれを知っている?もしかして、お前は……」

 

 アモンの指摘に少年は銀色の翼を広げた。機械的な、しかし、強大な力を感じさせる翼を。口端を吊り上げ、少年はさらに両手をも広げる。

 

「俺もアザゼルの養子だからさ。名前は聞いているよ?すさまじいまでの戦闘スキルとタフネスを誇るんだって?それに、噂では変身するらしいじゃないか。かつての大戦の英雄のように―――」

「たまに聞かされはしたが、お前がそうなのか」

「そうだよ。あいにく、君の方が一つくらいは上にも見えるけど、養子になったのは俺が先だ。はじめまして、アモン。俺は白龍皇ヴァーリ・ルシファー。兄さん、とでも呼んだ方がいいかな?」

 

 銀髪の少年――ヴァーリ・ルシファーは、もう一人のアザゼルの養子だった。

 




公式で確かヴァ-リの身長は169㎝らしいので(変わっていたら分かりませんが)、だいたいアモンは身長は同じくらいです
ヴァーリって一応、悪魔の子供でもあるので昔話を聞いてアモンの話と照らし合わせてオラ、ワクワクすっぞ!って感じてそうですよね
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