僕は仮面ライダーアマゾン   作:ふくつのこころ

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誕生


AMAZON

 砕け散った音の正体はそれぞれ二つである。

 

 一つは異形に変身したアモンの腕部分にあるアームカッター、これはヴァーリの拳との衝突により、刃が砕け散った。これはアモンの身体の底上げされている治癒力があれば、すぐにでも次に必要な時までには使えるようにはなっているだろう。ただし、全身の骨や筋肉が悲鳴を上げている為、今誰かに襲われれば、不意打ちでない限り対処できるという自信はあるが、それでも100%とまではいかない。

 

 二つ目はヴァーリの禁手の白い鎧である。アモンの必殺技、大切断を妨害しようと放った一撃は見事、アモンのアームカッターを砕くことで阻害することができた。しかし、大切断は決まらなかったものの、ヴァーリの鎧がまるでチーズをスライスするように薄く切り裂いたのは間違いない。

 

 アモンは自分の意識が遠のいているのを感じる。

 自分は正しいことをしたのだ、とアモンの心情を食らい尽くそうとする獣を抑えるための鎖へと変えるかのように信じ込ませる。付け入る隙を与えてはならない、あっさりと自分は切り捨てたではないか。白い敵に、白い敵対者にお前を理解することはないだろうといったニュアンスの言葉を。

 

「つ、強いな……。流石、伝説の戦士と言ったところか」

 

 ヴァーリは息も絶え絶えになりながらも、アモンの健闘を賞賛する。嬉しくもなんともないが、身体の一部を切裂かれたことで痛みのあまりに言葉にもならないアモンには答えることができない。

 

「次は互いに万全な状態でやり合おう。いいだろう?」

「俺は、お前が、先生から、なにを学んだのかが気になるところだ」

 

 かつてのように、一つ一つ言葉を噛み締めるようにアモンはヴァーリに投げつける。ヴァーリは互いの戦いによる衝撃で生み出されたクレーターを一瞥し、二ヤリと笑っていた。見覚えがあると思えば、アモンの荒事の師でもあるコカビエルにそっくりであった。アモンは思う、ヴァーリはコカビエルに拾われていれば幸せではなかったかと。養父からして戦闘狂、強さを求めるのであれば、コカビエルが興味を持った場合に限ってコカビエルは指南してくれる。

 

 問題はどう考えてもコカビエルが子供を拾い、育てるところが想像できないのだが。

 

 アモンは変わらないヴァーリの様子に呆れ、「では、さらばだ!」と魔方陣を描いて退散していく様子を見ていた。元々、望まない戦闘であったし、次にまた同じように吹っかけられたときまでには万全の状態になっておきたいところだ。また目障りなことをすれば、今度こそ、あの口を閉ざしてやらなければ、アモンの気が済まないからである。

 

「せん、せい……」

 

 アモンが意識を投げ出したところで、一人の人影が通りかかった。

 

 

 久々に親友の娘と嫁の顔でも見に行こうと思い立った堕天使総督、アザゼルはよからぬ魔力の流れを感じ取った。大きなものが一つと揺らいでいるものが一つで二つだ。そのどれもが彼にとっては縁のある存在であったため、なるべく早く急行した。辿り着いた時、大きなクレーターが採掘場の中央に一つと中央に倒れている養子がいる。

 

「お、おい!アモン!しっかりしろ!誰にやられた!?」

「あれ、先生……。久し、ぶり……」

「ああ、久しぶりだな。それにしても、とんだやんちゃなガキになっちまったな本当に!」

 

 駆け寄ってアモンを抱える。自分より小さな養子は腕の中でも、あの自分の後ろを必死になってついてきた幼少期を思わせる寝顔をしている。怪我や身体に体内の細胞組織がボロボロになっていることからよほどの無茶をしたのだろう、生命力の波動も乏しい。もう一つの見知った魔力の持ち主は見当たらない。これといって姿を隠しているわけでもなく、完全にこの場から去った後らしい。優しく腕の中で抱え、相変わらずのアモンにアザゼルは思わず語調が強くなってしまう。

 

 そこから過去に朱璃に注意されたことを思い出し、くしゃくしゃにアモンの髪を撫でた。対して表情の変わらないアモンだが、それでも、非常に消耗しているのが見て取れる。とりあえずは応急処置を、と魔力による回復を行なう。もとから回復能力を持っているアモンだが、この状態でも機能できるほど高い回復力かと言われれば、そうではないだろう。あくまでも、アモンが変身する姿はアモンの感情の起伏に左右されやすい。

アモンの感情の昂ぶりによる能力の上昇があるとしたら、その逆もまた然りだからだ。

 

「ヴァーリってやつと戦ったんだ。自分と俺が兄弟みたいなものだとか言って。俺は戦うつもりはなかったんだけど……」

 

 アザゼルがアモンに治療のために緑色の暖かな光を放ったことにより、いくらかアモンは回復できたようだ。少なくとも、会話がスムーズに出来るくらいにまで調子が戻ってきたのは大したものだろう。再会に喜ぶよりも今あったことを話すのを見ると、やはり、彼は変わらないようだ。

 

「それでボロボロになっちまった、ってか」

 

 アモンの能力とヴァーリの能力はあまりにも相性が悪い。身体能力による殴り合いを行なうアモンとエネルギーを低下させるヴァーリの能力は天敵とも言えるだろう。いや、もう一人の赤い龍-――赤龍帝の能力くらいしか互角に渡り合えるものはない。あの現象の能力に押し勝とうと思えば、減少させることのできないほどの莫大なエネルギーをぶつけるか、ヴァーリが対抗できないほどのスピードが求められる。

 

 おおかた、いつものヴァーリの悪癖と見て間違いないだろう。強者を見ればところ構わず喧嘩を売る性格は直っていないらしい。場所を変えるだけ成長したと見るが、表情の乏しさに比べて根が優しいアモンを戦いに駆り立てたヴァーリがどのような手段に出たのかは想像にたやすい。

 

「先生、俺は間違えてない」

 

 幼稚園児が保育士に自らの無罪を主張するように、アモンは言う。

 

「俺は奪われたくなかった。なのに、あいつは言うんだ。俺に戦わせるために俺からオレの大事な人を奪うと」

「――ッ!」

「俺、戦った。朱璃母さんみたいな人、増やしたくない。俺、ヴァーリが許せなかったんだ。だから、俺、戦ったんだ」

 

 アザゼルはアモンの暗い声と会話の内容から、内心、頭を抱える。アモンを戦いに駆り立てたのは、アモンがなにも逆上したからではない。アモンは激怒したのである、戦わせるためだけに己の大切な存在を奪うといったヴァーリを。出生からアモンとヴァーリは似通っているところがあり、兄弟と言ってもいいかもしれない。しかし、姫島親子の愛情を受けて育ち、彼なりに情愛を学んだこともあって、感情表現もいくらか豊かになった。そこにアザゼルからも与えている愛情があるとは気づいてはいないが。

 

 そんなアモンに対し、アザゼルなりにヴァーリには愛情を与えていたつもりだったが、ヴァーリには姫島親子に相当する存在もなく、ただひたすらに、我武者羅に強さを求めた結果がそうなったらしい。自分は一体何処で教育を間違えたんだ、とヴァーリの生まれや境遇に同情できるところはあるものの、今回ばかりはフォローできそうになかった。そして、なによりも二人はアザゼルにとっては大切な養子(むすこ)である。

 

「……オレが背負ってやる。恥ずかしいかもしれねえが、今は――――」

「いや、いい。先生にしてもらうのははじめてだ」

「そうだっけか?小せえし、持ちやすいのは助かるな。さっさとでかくなりやがれ、飯も食ってるか?」

「食ってる。そうだ、先生に聞きたいことが――――」

 

 アザゼルはアモンを抱え、外れていたであろうドライバーを回収する。若干、罅が入っているが、少し修理すれば大丈夫だろう。この様子を見る限り、アモンは己の中の獣を制御しようと意識しているらしい。

 

「アマゾン」

「?」

 

AmonMadZariableOtherunkNowns(アモンの宿す狂喜に満ちた生命体X)。

 

 略して、“アマゾン”。

 

 それがアモンの宿す、獣への名前。単語の意味や文法は滅茶苦茶だが、これほどしっくりくる名前は他にないだろう。

 

「それがお前の宿してる奴の名前だ。呼びにくいだろ?呼んでるかしらねえけどよ。特別にオレが名付けてやった、感謝しろよ?」

「ありがとう、先生」

「変身するときにでも叫べ。それっぽいぞ」

 

 素直に背中から礼を言うアモン。

 つくづく、調子が落ちるようなことを平気で言ってのけるのは大したものだ。

 

「そうしてみる。それで、聞きたいことなんだけど……」

「おう、大体答えれるぜ?まだまだ現役だ」

「アキ姉のおにぎり、とても美味しかったんだ。でも、コンビ二のは冷たかった。なんでだろう?」

「……」

 

 アザゼルに9999ダメージ!

 

 アモン、未婚のオレに聞くんじゃねえええええ!

 なんとか叫びたいのを堪え、アザゼルは答えに戸惑う。ここは朱乃に直接、アモンに聞かせるのが親と言ったところだが、まだまだアモンは世間や女心を知らない。下手に怒らせて関係が希薄になるのはアモンの望みではないだろう。アザゼルは意外と過保護であった。あとは、お手製のとコンビ二のとで比べられるのは本位ではあるまい。

 

「それはな、アモン。お前を思って作ったんだ」

「俺に?」

「ああ。コンビ二の奴は、昔、お前に買ってやったような玩具みたいにたくさんある。だが、お前に作ってくれたおにぎりは一つだけしかない」

「三つだったよ?確か」

 

 アモンはさらりと否定。

 天然なのだろう、悪意が感じられないのがまた酷いものだ。これでは怒りようがないといったもの。今している説明が幼子にしているものと変わらない気がするが、アモンにはこれくらいが今でも丁度いいかもしれない。

 

「そうだったんだ。大事にしないと、アキ姉」

「おう、泣かしたらバラキエルにブッ飛ばされるからな?」

「その前に朱璃母さん」

「ありえるから困る」

 

 アザゼルはアモンを背負ったまま歩き出しながら、アモンの言葉に笑う。そのあと、わりと真剣な様子で言った言葉にはこれまたアザゼルも真顔になってしまう。朱璃の怒った表情が笑顔なのがまた恐怖を呼び起こす。

 

 その後、アザゼルに背負われながら朱乃の家に帰宅したアモンだったが、朱乃に叱られながらも手厚い看護を受けたという。その様子に何かを思い出したアザゼルは帰宅した親友の方を見、親友は部屋の様子を見た後にあらぬ方向を見て口笛を吹いていた。

朱璃は言葉にこそしないものの、微笑んでいる。

 

 未婚総督は、未来の息子の姿をそこに見た気がした。

 

 




いい感じに纏めるはずだったのにどうしてこうなった
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