僕は仮面ライダーアマゾン   作:ふくつのこころ

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羨望

 木場祐斗は主人から宛がわれた、自宅であるマンションで机に向かい、今日に出された授業の課題をこなしながら考える。

 

 それは、自分を友と呼んでくれる新たな同性の友人のことであった。名前はアモン、木場と同じ年齢ほどながらも己の実力向上のために各地を放浪して回っていたという少年だ。木場や同級生で同じ眷属のイッセーよりは背は低いが、それでも、その不敵な眼差しは何処か憧れるものがある。これをイッセーは男のロマンと言い放つのだろうが、大方それであっているのかもしれない。

 

 迷いなく堂々と“にんげん”でありながらも、仮にも上級悪魔であるリアス・グレモリーに尻込みすることもない彼の様子は憧れすらも感じる。おそらく、彼はこれまでも強敵との戦いを乗り越えてきたのだろう。もちろん、木場だって先の主人の未来をかけた不死のフェニックス眷属との戦いを仲間たちと乗り越えてきたという自負はあるが、最後を決めたのは何時だって、土壇場を乗り越えてみせたのはイッセーだった。

 

 日課でトレーニングをしているし、筋トレや走りこみも欠かしていない。それでも、何が自分に、今の自分に足りないのだろうと考えることが最近は多くなっている。アモンが訪問してきたときは流石に表に出さなかったが、主との折り合いも悪い。

 

 速く強き剣であること。

 

 それが主に救われたときに誓い、これからの人生の道標としたのではなかったのか。こんなときばかりはイッセーを、同級生ではあるものの、新入部員として入ってきた少年を羨ましく思う。彼は何時だって思うままに動き、自分がそのときに何をなすべきなのかを把握している。

 

「……少し散歩にでも行こう」

 

 今の状態ではいい具合に宿題を仕上げることはできないだろうと思い、ノートを閉じた。部屋着からランニング用の服装へと着替え、戸締りをして外へと向かう。一人で暮らしている為か、出迎える声も送る声もない。部屋を出てから鍵をかけ、それからできるだけ音を上げないようにマンションのエントランスへと向かう。自動センサーが反応し、扉が開いた所からランニングはスタートだ。

 

 普段であればランニングはもう少し遅れた時間にするところだが、今夜は頭のめぐりが悪いようなので少し速めにおこなっている。呼吸を整えながら、ちょうどよいペースを模索する。途中、この時間に夜風を浴びながら走るのを好む近所の人々に笑みを浮かべて挨拶を返しながら、夜のランニングの目的地としている場所へと向かう。朝の学校に登校する前と夜の一回とで一日二回のランニングはかかさない。

 

 部活動の際は体力作りのためにイッセーと行なうこともあるが、以前は早い段階から木場の体力についていけず、肩で呼吸していたイッセーも今となっては木場を追いかけられるほどの体力を得ることが出来ていた。なんでも、フェニックスとの戦いの後からリアスと同棲するようになってから、モチベーションが湧いてきたらしい。ただでさえ、ハーレムキングを目指すと豪語する彼、馬鹿らしい夢と思うものの、これまでの経緯を考えれば、それも可能なのではないかとさえ思えてきた。

 

 さて、ここでグレモリー眷属について触れておこう。

 

 リアス・グレモリー眷属の剣術とスピードを得意とする“騎士(ナイト)”木場祐斗。

 リアス・グレモリー眷属の回復を得意とする“僧侶(ビショップ)”アーシア・アルジェント。

 リアス・グレモリー眷属の怪力の持ち主“戦車(ルーク)”塔城白音。

 リアス・グレモリー眷属の仙術を得意とする“女王(クイーン)”塔城黒歌。

 

 そして、倍化の能力を持つ赤龍帝の“兵士(ポーン)”兵藤一誠だ。

 

 女王と戦車はかつてリアスに救われた恩があり、黒歌に至っては実力がリアス以上であるらしいが、「面倒を見てやらないといけないにゃあ」とリアスの様子を見て少し嬉しそうに何らかの処置を受けて加わったとか。実際は何処かの眷属であった頃、なにかをやらかしたらしいが、色々な事情のあるグレモリー眷属において事情はあまり話されることはない。

 互いに事情があるのだろう、ということで誰も琴線に触れることがなく、糸で言うならば張った状態を常にピンと続けているのが現状である。そんな中でイッセーはやってきた。眷属になりたての頃から様々な騒動を起こしてきてはいるが、それに助けられたものも少なくない。アーシア・アルジェントだって命を落としたところを彼に助けられているし、彼には不思議な魅力があるといえる。

 

「……僕は、みんなの役に立てているだろうか?」

 

 お目当ての場所へと到着。

 そこは駒王の町を見渡すにはちょうどいい、高い丘である。満天の星空も拝めるし、恋愛には年相応に興味のある木場としても恋人が出来れば、此処をデートに連れて来たいと考えている。最も、今の木場にその余裕はないのだけれど。変わらぬ光景は美しく、日本のしがない地方都市であるにしろ、はじめて訪れたときからずっと住み続けるようになってからは思い入れが湧くようになっていた。

 柵にもたれ、頬杖をつく。冷たいひやりとした夜風が頬を撫で、後ろ向きへ後ろ向きへと向かっている思考を押し返そうとしているのか、はたまた後ろ向きへと押していこうとするのか。気分がよいときはここで走り終えた後、近くの自販機で水分を補給しながら夜景を楽しんでいるが、今の木場にその余裕はない。

 

 自分は眷属に貢献できているのか?

 自分は主の騎士として振舞えているのか?

 自分は普通の学生として生きていていいのか?

 自分は、木場祐斗は幸せになっていいのか?

 

 そればかりが頭を過ぎる。

 

 そんな木場に近づいてくる気配がある。白髪で病人のように白い肌、さらに神父の装束であるカソックが特徴的である。それらに全く合わない機械的な意匠のあるベルトを腰に巻きつけたフリード・セルゼンであった。

 

「よぉ、クソ悪魔ちゃんの一匹じゃねえか?今日はお仲間はいねーってヤツです?」

「フリード・セルゼン……!?なぜここに!?」

「いー、表情だなぁ、全くよぉ?クソ悪魔ちゃんのそういう表情、心地いいなあ!」

 

 木場は目を疑った。

 確かに、フリードはあの日、黒歌とリアスによって身体を消し飛ばしたはずだ。なのに、どうして五体満足で生きていられるのだと。そんな木場の様子にフリードは満足そうにほくそ笑む。

 

「これ、何か分かるか?」

「それは、ベルト……?ベルトがどうしたって言うんだ?なぜ、お前が生きている!?」

 

 フリードは自らの腰に装着しているベルトを取り外し、木場に見せ付ける。すると、フリードはベルトを装着し、ベルトについているハンドルを回す。

 

「悪魔をブッ殺すモンスター、アマゾン。これに生まれ変わったおかげで俺はNEWフリード・セルゼンに生まれ変わった!あの猫耳の爆乳ネーチャンと赤髪の悪魔は絶対にヤって殺す!ああ、爆乳ネーチャンのほうは飼うのもいいなあ」

 

 腕にカッター部分が存在する紫色に蒼の複眼の蜥蜴の頭を持った獣人の姿、アマゾンに変身したフリードは下卑た欲望を語る。自らを殺す要員となった二人を新しい力で負かせ、その後はどのようにして扱ってやろうかと語る様子はグレモリー眷属の騎士として許せない。咄嗟に二振りの剣を作り出し、その自慢のスピードを以ってしてフリードへと切りかかるが、

 

「な……ッ!?」

「いったろ~?今の俺ちゃんはNEW俺ちゃん。前の俺ちゃんと比べて遅れはとりませーん、っての!さてさて、その小枝をへし折った後はどうしてやろうか?腕と足、それぞれの指をへし折ってやろうかなぁ?小枝をケツにブッ刺してやるのもいいなぁ!」

「グッ……」

 

 目の前からフリードは消え去り、背後から重い一撃が繰り出される。地面に叩きつけるようにして木場は伏せてしまい、その衝撃で両手の剣はへし折られてしまっている。

 

 あまりにも速すぎる。

 

 獣人の姿、アマゾンとなったフリードの力は桁外れだ。今の自分を呪うとすれば、変身を許す前に破壊するべきではなかったろうか?

 

 否。そのような行いは果たして騎士として誇りのある行為と言えるだろうか?

 

 しかし、そのように思考する時間を作るフリードではない。獣人に変身したことで使用できるようになった、カッターで切り刻まんと迫ってくる。伏せた状態から何とか姿勢を立て直し、回避することに専念する。アマゾンと呼ばれる姿になって発揮されるパワーは非常に高く、次々と木は崩れ去っていく。元々、ベースの人間時にしても身体能力が高かったこと、さらに戦士としての実力が高い為か、変身後の攻撃はより一層のこと鋭くなっていっている。

 

 斬斬斬斬斬打打打斬斬斬斬打打打打――!

 

 斬っては殴り、斬っては殴り、斬っては殴りの繰り返し。ブレード部分は同じ剣士である木場はわかる、使い勝手がいいのだろう、軽やかな足運びと共に繰り出してくる。

一方の木場はアマゾンの力を持たないため、身体能力でごり押しをされるようであれば、防御に回るしか手の内ようがなかった。

 

「おやおやおやおやぁ?全く本調子じゃねーじゃないですか、全ッ然、剣に重みがないぞ~?」

「それは、君の気のせいなんじゃない……かなっ!」

 

 折れた剣を投げ捨て、新たにトゥーハンドソードを作りだす。それを可能とするのは木場の神器(のうりょく)魔剣創造(ソード・バース)、剣を作り出すものだからだ。作りだす剣のイメージは出来るだけ頑丈なもの、フリードの攻撃に耐えうるもので頑丈そうな身体にもダメージを与えれそうなもの。自慢のスピードの生かせない、大きな重い剣だが、鈍重だからこそ、一振りは必殺となりうる。

 木場がアマゾン・フリードの瞬間移動のような動作の後、現れたところを見計らって直感でここぞとばかりに入れた一撃はアマゾン・フリードのあばら骨を損傷させるのに十分な一撃だったようだ。

 

「そこが君の隙だったようだね?」

「よくも!よくもやってくれたな!?虫のように羽を毟り取ってやる!」

 

 想定外の事態にフリードの口調からは余裕が掻き消えて見える。今ならば、続けて一撃を、といったところでフリード・アマゾンはトゥーハンドソードに手をかける。無駄なことを、と木場は思った。しかし、フリード・アマゾンが笑っているようにも見えた。

 

 そして、フリード・アマゾンはそのまま剣の刀身を握りつぶした。

 

「!」

「終わりだ、クソ悪魔ちゃん」

 

 フリードの狂気染みた様子は感じられず、冷淡な声が響く。

 

 何があったか理解できなかった。すぐそこにもフリードの凶刃と表現できる爪が近づいて来ているというのに。命の危機が目前にあるのに。これでは、自分はもう――。

 

「いいや、終わりにはさせない。アマ、ゾーンッ!」

 

 最近よく聞く声、それもとても力強い。雰囲気はフリード・アマゾンと同じような気配と言うのに、叫ぶ声はアマゾンと引っかかるものなのに、勇ましく思える。その声の主は同じような異形の腕でフリード・アマゾンの腕を掴んだ。

 

「俺ちゃんと同じ姿……?まさか、お前、“スカルマン”ってか?」

「なにそれ?助けに来たよ、キバ」

 

 声の主は誰でもない、アモンだった。

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