僕は仮面ライダーアマゾン   作:ふくつのこころ

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突き付けるのは

————そうしていることが人間らしい。

 

 友の、木場の言葉はアモンの心を震わせるに至った。

 変身が途切れていない、心はまだへし折れていない。

 ゆっくりと立ち上がる、向けられる視線は三種類ほどで、一つは嫌悪感、一つは興味、一つは信頼と三者三様だ。

 それでもいい、それでも、立ち上がる気力をくれる言葉をかけてくれる相手がいるならば、アモンは立ち上がれる。立ち上がって見せる。

 

「……頭が冷めた。そうだな、それが俺の長所か。この姿になっても、未だに変わらないだろう」

 

 よろよろと、生まれたての小鹿のように頼りなくとも、異形の複眼はしっかりとフリードアマゾンとコカビエルを見据えている。

 俺にできることは何か?

 俺は未だに戦えるのか?

 俺はトモダチを守れるのか?

 俺は勝てるのか?

 アモンの中を侵食していくのは、敗北したという負の感情ではなく、この場を切り抜けようとする前向きな感情。

 

「それでこそ、アモンくんだ!」

「待たせたな。俺には光を作りだすことはできない、この場における切り札はキバだ。光の魔剣とやらでどうにかしてもらえないか?そのフリードとやらの言うように、この肉体は悪魔のそれに近しいらしいからな」

「てめぇ……、ふざけるんじゃねえぞ、クソ虫が!」

 

 立ち上がり、その異形の口をギパッと開いて笑うアモンに業を煮やしたフリードは腕を大きく振るい、殴打しようとする。しかし、その攻撃が届くことはなく、合間に何かに切り付けられたような感触があった。

 ジュウ、と肉を焼く音がする。目の前で平然と行われていた作戦会議、ブラフでもなんでもなく、実行に移された憎き悪魔ちゃんのカットインである。

 

「なるほど、確かに僕の光の剣は効果があるようだ。……これには、僕の体質にも感謝をしておかなくてはならないかもしれないね」

「何かあるのか?」

 

 呟くようにして言った言葉にアモンアマゾンは首を傾げた。

 何でもないことのように木場が言った言葉に対して疑問を投げかける様子、自然と特に何も考えていないように見えるからか、不思議なもので嫌悪感がない。

 

「それはあとで、ね!」

「聞かせてくれるとは有り難い。主君や同僚にも言わない話を俺に先にしてくれるとは」

 

 信頼の証だろうか、なんてアモンは呟き、互いに背中合わせになりながら、それぞれがコカビエルとフリードの方を向く。

 

「……答えは出たのか?アモン。独りよがりでいるのはまだまだ餓鬼だ、そんなお前を見たら、アザゼルの奴も悲しむだろう」

「答えは出ていない。それをこれから探していくんだ、他でもない俺自身が。コカビエルさんに、アザゼル先生の教え子として証明してやるんだ。アザゼル先生の教えは、決して間違っていなかったのだと」

 

 鋭い爪のある人差し指を突き付け、啖呵を斬る様にコカビエルはかつてを思い出す。

 今でこそ、研究職に加え、自らの趣味と化している神器について執着を見せているが、かつてのアザゼルはこのアモンのように無鉄砲なきらいがあった。アザゼルが無鉄砲な行動をするたび、コカビエルがそれを正すといったことがよく見られた流れであったのだ。

 もう一つ、思い起こしたのは風の力を纏った人間の男だろうか。

 

————俺は生きとし生ける人間すべてを守る。

 

そんな大言壮語を堂々と自らの理想であると語り、身一つで人外に食らいついていった男。

これまでの赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)の宿主、白い龍(バニシング・ドラゴン)の宿主を見てきたが、二天龍やドラゴンの力を持たないのにもかかわらず、威風堂々と殴り合って見せたのはコカビエルの記憶に新しい大バカ者だ。

 

「――証明してみせる、だと?お前が?」

 

 口端が吊り上がるのが隠せない、思い出話をするのは昔馴染みたちのように好みではないが、今はその主張を曲げても良いとさえ思えた。

 

「その通りだ。今の俺は一人ではない。それに夢がある」

「――ほう?」

 

 独特の構え、前準備としてアモンは右足で前に踏み込み、猫背のファイティングスタイルをとる。

 コカビエルはそれをよく知っていた、昔から、アモンに稽古をつけていた時に見た変わらない“攻撃の前兆”なのだから。

 

「先生と世界を回るんだ」

 

 真剣な声色、そして力に身を委ねれば、脅威ともなりうるアマゾンの姿で以って何を語るかと思えば、かつての教え子は大まじめにも言ってのけた。

 

「ク、クハハハハハハ!何を言うかと思えば、そんなことか、アモン!お前は変わらない、どこまでも愚かでどこまでも馬鹿だ!お前ら親子は揃いも揃って見据えているものは変わらないな。――だからこそ、今ここでこのコカビエル。アモン、お前を縊り殺してやる」

 

 コカビエルは凶悪な形相を歪ませ、翼によって発生させた衝撃波をブーストに地面を蹴る。

 

「死んでたまるものか」

 

 対して、迎え撃つアモンは仮面の下は、異形の下はきっと困ったような表情をしているだろうに、組み手をするような感覚でコカビエルに応え、男同士の殴り合いを始めた。

 

 木場はフリードアマゾンと自らの魔剣を身体の一部のように滑らかに扱いつつも、アマゾン自体の地力に押されつつあった。光の力を持つ魔剣という矛盾した武器、その武器で以ってフリードアマゾンにダメージを与えられているのは分かるが、それでも元々の身体能力に差が出れば、どちらが体力が先に尽きるかは明白。

 もともと、木場の戦術は完全なスピードアタッカーだ、持ち味とする速度で以って撹乱し、隙をついて斬り捨てる。

 その戦法を得意とするため、光の魔剣でダメージを、もう片方の剣で防御という理想的な形は成されず、二本の剣を使って一方的な防戦に追いやられていた。

 

今、木場にとっての幸運なことと言えば、フリードアマゾンが怒りでほとんど我を忘れていることか。技量においては、特に剣術では、木場を圧すことも容易かったであろうフリード。しかし、アマゾンドライバーを使用してアマゾンとなってからは、アマゾンの力に頼りっぱなしであった。

アマゾンの力は確かに強大だというのは、アモンが変身したことによってコカビエルとの殴り合いを見ているだけでも伝わってくる。上級の堕天使と魔力を抜きにしたとはいえ、殴り合いをこなして見せることがどれほどの偉業かをアモンはおそらく理解していまい。

 

「これほどまでに仕上がっていたとは……、お前はこれまでに何を見た?何を感じた!」

「世界を見てきた。俺はあまりにも知識が浅すぎる、だから世界を見る必要があった。他の者より俺は物事を知らない、色々な苦労はさせられた」

 

 身体がただただ頑丈なだけで、自己再生能力を持たないのがアモンとコカビエルの殴り合いから伝わってくる。

 容赦なく投げつけられる光の槍、それをアモンが受け止めれば、アモンの身体が浄化されかかって肉を焼く臭いが充満する。

 

 フリードアマゾンとアモンアマゾン。

 

 同じアマゾンだというのに、人間であることを拘る方のアマゾンはどこまでも気持ちが良い姿を見せてくれる。語る言葉、常識と拙いものは何よりも多いだろう。いや、誰よりも多いだろう。

 それでも、アモンアマゾンはそれすらも是として受け止め、怪物としての己の力に恐怖し、力に飲まれぬように抗っている。

 

「俺は抗ってみせる」

「ほう?」

「この力にも、力に身を委ねてしまいそうになる自分自身にも。成長できるんだ、だからこそ、俺は、」

 

 コカビエルからの攻撃で身を裂き、その頑丈な皮膚からも血を噴き出す。

 それでも、アモンはゆらゆらと立ち上がって拳を叩き込む。ときには、回し蹴りで牽制を。

 その跳ね回るような動作は、例えるならば暴れ馬、しなやかさの欠片もない無骨な様子は見るも無残なものだと傷だらけの身体が主張している。

 

「コカビエルさんを超えてやるんだ」

 

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