僕は仮面ライダーアマゾン   作:ふくつのこころ

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お久しぶりです
仮面ライダーハートのあらすじ、公開されたみたいですね。発売はまだですが、今からでもとても楽しみです

ところで、次のライダーのデザイン、バオー来訪者のバオーに似てませんか?


ある夏の日で

 アザゼルが言うには、アモン自身には悪魔の因子が入っているとのこと。アモンが“獣”と呼ぶ姿はその因子の影響によるものだという。

 

「というわけで、お前にはそいつの制御を学んでもらう必要がある。あとは言葉を話すことと、……最低限のマナーを身につけろ!アモン!」

 

 これからの指針をアザゼルはアモンに語るが、“獣”の姿になって首に爪を突き付けているアモンに裏拳を叩きつけた。万全の態勢であれば、至近距離の攻撃は魔力を用いて身体能力を強化する時間さえあれば、持ち前の頑強さも相まってダメージを減少させることもできる。しかし、そうさせる間も与えずに反射できるのはアザゼルが強者である証拠である。

 己の攻撃を抑えることのできる強者と再確認できたことによってアモンの戦闘衝動が昂るが、アザゼルはもう一人の養子を彼から連想してため息をついた。

 

 また同じようなタイプかよッ!?

 

 しかも、今度は理性で戦闘衝動を抑えているのでなく、戦闘衝動を隠すことのできていない野生児と一般的に称する存在、扱いを覚えるのは難しいだろう。先が思いやられるが、あのように自分から言った以上、いまさら投げ出すわけにはいかなかった。

 

「さぁ、どこからでもかかってこいクソガキ!」

 

 若干投げやり気味のアザゼルは野生児(クソガキ)を躾けることとした。

 

――

 

 その後、日が経つにつれて野生児から人間へと近づいてきたアモンにアザゼルは服を買い与えた。個人的には黒と赤の浴衣でも着せた方がいいのでは、と言ったところ、バラキエルに「それ完全にお前の趣味だろ!それで虐められたらどうするんだ!」と猛烈に反対されたからである。アザゼルは代金を出すだけだったが。

 

「欲しい服はあるか?」

「うーん、よくわかんないや。こーとがいい」

「いい趣味だ、アモン。お前ならわかってくれると思ったぞ!」

 

 ぶかぶかの革ジャケットはアザゼルの古着をアモンがお下がりでもらったモノ、他は部屋着でちぐはぐしたものだ。それに隣に浴衣姿の強面の男がいれば、好奇の視線を集めるのは間違いない。バラキエルにアモンの服についてどうこう言われたアザゼルだったが、本人がそういうのであれば仕方ないなと豪快に笑い飛ばした。一方のアモン、自分の趣味が養父に近づきつつあることに気づいていないようできょとんとしていた。

 

 笑い飛ばすアザゼルだったが、元がいいアモンが成長してロングコートにブーツといったところを想像すると様になっていて笑えなかった。よく旧知の友人から黒歴史をいじられるが、実際に自分の想像から出てきたようなイメージになられるのはなんだか違う気がした。神の子を見張るものの支部の近くにある、街に於いて子供用の服を探しに来たが、目的が変わろうとしていた。

 

 正直、本人がいいっていうんならコートでもよくね?

 

 子供服売り場に入ることに躊躇いがあったアザゼルはアモンを連れ、“ウィザード”と看板にある男性服店に入ろうとするが、

 

「やあ、アザゼル」

「お前は――!」

「今日は買い物かい?」

 

 そんな二人に声をかけたのは長髪の赤毛の男だった。傍らには銀髪の美しいメイドを従え、柔らかな笑みを浮かべている。メイドの方の美しさと男の方の顔立ちの良さもあって、さらにその気品も加わり、絵になっている。男の方はアザゼルに目を向けた後、アモンに微笑んだが、アモンの方は男から感じられる雰囲気に身を少し震わせた。

 

「サーゼクス、どうしてここに?」

「いやね、今日はちょうどオフの日だったんだよ。しばらく書類仕事に追われててね、こちら側に来ることがなかったから気分転換にって来たのさ」

「書類の方はサーゼクス様が日頃からきっちりとやってくだされば、溜まることはなかったはずです。そこはしっかりしていただかないと。……あら、可愛らしい子」

「あー、紹介しよう。オレの養子になったアモンだ」

 

 メイドの女性、グレイフィアは赤毛の男――サーゼクスの言動にため息をついた後、アモンが目に入ると表情を和らげた。こちらに対してもアモンは表情をこわばらせたままだったが、そんなアモンの緊張をほぐすためか、グレイフィアはアモンの頭に手を伸ばして撫ではじめた。突然のことに驚くアモンだが、この震えが止まらない以上はどうしようもできない。

ただ撫でられているしかできなかった。

 

「アモンというと、悪魔の侯爵の中で最も強靭な者――って意味だね。いいのかい?堕天使の総督さんが悪魔の侯爵の名前を養子につけてしまっても?――おっと、はじめまして、アモン君。私はサーゼクス・ルシファー。ゼクスお兄ちゃんと呼んでくれても構わないよ?」

「こ、こんにちは……」

 

 サーゼクスは人のよさそうな、否、悪魔のよさそうな笑顔を浮かべているが、アモンは理由は知らないが、その笑みを直視することができなかった。礼儀はしっかりとなと教わっているため、なんとか挨拶を返せたが、自分の中の獣が咆哮を上げ、警戒しているのだ。

――こいつは危険だ。

これはアモンは後になって知ることとなるが、魔王であるサーゼクスは母方の血筋の力で滅びの魔力と呼ばれるものを扱うことができ、本来の姿は並の者では一瞬にして消し飛ぶような膨大な魔力の塊の姿に変わることができるという。

 

アモンの中に埋め込まれた悪魔の因子はアモンをその矮躯から巨躯へと変貌させ、獣染みた身体能力を発揮することができる分、本能による勘が冴えわたっていることもあり、この赤毛の男が強者であることを理解させた。そして、自身がこの身体を得ることになってしまった種族の仲間であることも。

 

「おや、これは嫌われてしまったかな?」

「そんなことはないだろ、多分。バラキエル夫妻や戦闘指南を受けてるコカビエルにはなついてるんだがなぁ……」

「アモン君、私はグレイフィア。ほら、お姉ちゃんと言って御覧?」

「お、おねえちゃん……」

 

 サーゼクスを先ほどたしなめていたグレイフィアだったが、根本的なところではサーゼクスと変わらないらしい。おそるおそる、言われた通りの呼び名で呼ぶアモンが可愛らしく映ったのか、グレイフィアはご満悦の様子である。アザゼルはアモンが彼らを恐れている理由に気づくまで時間はかからなかった。

――悪魔の因子を入れられた人間だから、こいつらが上級悪魔(かくうえ)だってのが分かって怖がってんのか?

 だとすると、この場で偶然とはいえ、出会ってしまったのはまずい。アモンの中に潜む“獣”はアモンの衝動とともに現れる。今、こうして大人しいのはアザゼルのことを親と認識できるように時間を過ごしてきたという自負もあるし、できるだけ、アザゼルの考える人間らしい生活を与えてきたつもりだ。

 

 それが自分にとってのトラウマを与えてきた奴らと言ってもいい者に出会えばどうなるだろうか?途端に“獣”を縛っていた理性(くさり)は裂け、“獣”が現れるのではないだろうか?それではアモンに人間らしいものを与えたいという目的が達成されなくなってしまう。あの銀髪の少年に与えたかった平穏をこの黒髪の少年に押し付けようとしているが、それはいつか必ず伝わると信じるしかない。

 

「悪いな、そろそろ行かねえと。こいつに服を買ってやらなくちゃな」

「……アザゼル、もしかして彼が件の子かい?」

「今はその話をするときじゃない。怖がってんだろ、アモンがよ」

「君が言うなら仕方ないね。では、また話をさせてもらおう。またね、アモン君」

 

 アモンには理解できなかったが、サーゼクスとアザゼルはあまりいい話をしているわけではないというのは分かった。手をひらりひらりとさせ、アモンに笑いかけてからサーゼクスが去ると、グレイフィアも「またね」と額を口づけしていった。普段のアザゼルならば、ここで囃し立てるところだが、今はそれはしない。

 

「とりあえず、コート買いに行くか」

「うん」

 

 店に入ると、そこは二十代前半の若者が気に入りそうな内装であった。店主の青年は特徴的な指輪を填め、アザゼルとアモンの姿を見つけると、当然のように接客として話しかけてくるが、その目的がアモンがコートを欲しがっていると伝えると、目を丸くした。それからすぐ後に店員の小柄な女性がその件のコートをアモンが選ぶのを手伝い、子供用にサイズを合わせますよ、とアザゼルに提案するものの、アモンがそのままでいいと言ったので会計を済ませて出てきた。

 

 今はベンチに座り、近くの移動式屋台だろうか、そこで買ってきたアイスクリームを二人して舐めている。アモンは今自分がいる国は分からないが、今日は気温が“たかい”ことと“あつい”ことは分かった。サーゼクスとグレイフィアとの初邂逅から、店の中でもほとんど口をアモンは利かなかった。

 

「なぁ、あいつらのこと怖かったのか?」

「……」

「お前と俺が会ったのは実はな、サーゼクスの頼みによるものなんだ」

「あのあかいひと?」

「ああ」

 

 ようやく、アモンが口を開いたかと思えば、表情はまだぎこちない。それどころか、アザゼルの方を勘繰っているようにさえ見える。

 

「だが、これだけは覚えていてほしい。オレはお前に人間らしくあってほしいと思っている」

「にんげんらしくって?でも、せんせいはだてんしじゃないか」

「違いねえ。でもな、お前は元は人間なんだ。酒はまだ早いけどよ、酒を飲んだり、ダチと馬鹿をやったり、女の尻を追いかけ――いや、女を好きになったりとそんな風になってほしいわけだ。お前の中に獣がいたとしても、獣に呑まれちゃいけねえ。獣は押さえつけろ、押さえつけて飼いならせ。そして、恐れるな」

 

 ずっと、アモンに言い続けなければならないことをアザゼルはここでも説いた。人間であること、人間らしく、理性を持って生きることの大切さや目的を教え続けなければならない。そうしなければ、北欧神話に出てくるオーディンの加護を受けた敵を屠るまで戦い続ける狂戦士(バーサーカー)のようになってしまう。

 

 せんせい。

 

 ようやく、アザゼルのことを呼んでくれたと内心嬉しかった。誰のことも神の子を見張るものの中では呼ばなかったし、先ほどの“おねえちゃん”呼びはほとんど脅しに近しいものであったのでノーカンだ。帰れば自慢しようと思う反面、顔が緩まないようにするので精いっぱいだった。

 

「でも、せんせい、それがなんのやくに――」

「これからだ、これから役に立つ。例えばだ、アモン。お前はあのサーゼクスの嫁にキスされたわけだ。あんな美人な女を好きになってしまったとき、お前ならどうする?日頃から教えてやってるオレの教えは?」

「まも、りたい……。おんなのこは、おとこがまもるもの」

「そうだ。それでこそだ。なら、お前には何ができる?」

 

 自分の教えをほとんど強制的に言わせたものだが、アモンはよく覚えていたようだ。そういう様子や例えは彼のトラウマ的に考えて良いものではなかったが、容姿の美しさで引き合いに出すのはちょうどいい。いつか、人妻にお前はキスされたんだぜと弄れるくらい表情が豊かになればと信じて。

 

「ぼくができることは、へんしんすること」

「変身?そうするにはどうすればいい?今のお前は“獣”を恐れている。そんな状態では、お前はかえって大切な女を護れないかもしれない。悪かったら、傷つけるかもしれないぞ?」

「そのために、かつように。ぼくのなかにいるやつにかてるようにする……!」

 

 そういうアモンの目はいつになく強く、それでいて真っすぐなものだった。強力な力とは、必ずしも壊すために使うものではない。強さとは敵に勝つだけではないとアザゼルは言いたかったのである。

 

「その意気だ、馬鹿息子。お前がいつか、“獣”を、自分の中にいる奴を飼いならせるようになれば、それこそイイ男になれる」

「ぼくに、なれるかな?そんなひとに」

「なれる。オレが保証してやる。デカくなったら、酒を飲もう。旅をしよう。それでもって、女の話をしよう。これでも、オレはお前の親父だ。母親はいないけどよ、その辺はバラキエルの嫁にでも甘えてろ。人妻に甘えれるのはガキでも小さいうちだ、楽しんでおけよ?特権だからな」

 

 覚えておけよ、と言うアザゼル。誰か彼の友人がここにいれば、突っ込みを入れるだろうが、ここまですべてアザゼルがアモンに生きる目的を与えるためにやったことだ。真摯なアモンの視線がアザゼルの方を向いているのであれば、突っ込みは誰も入れれまい。

 

「長ったらしく話したけど、アイス溶けてるぞ?」

「うわっ!?ほんとう、どろどろになってる!」

「どうやら、オレも同じらしいな……」

 

 気がつけば溶けていたアイス、コーンの部分にわずかに残っていたが、それは時すでに遅し、コーンに液体として溜まっているだけ。アザゼルも同様に堕天使とその養子は慌てて零れないうちに食べきった。

 コートを買った日に濃厚な時間を過ごし、アモンには忘れられない日となった。

 




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