僕は仮面ライダーアマゾン   作:ふくつのこころ

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今回は深夜の勢いに任せたので、いつもより長くなります。
原作との口調の変化とかアレンジもありますのでご注意を


悪魔と龍とAMAZON
北欧の地で


旅を続けて暫くの年月が経った。相変わらずアモンの背は伸びる気配を見せず、170センチあればいいほうだろう。ここ、北欧において日々の生活費を稼ぐために運搬屋を請け負っているが、筋肉はついたものの、魔力の素養はあんまりないらしい。数年前に出発の際に養父が渡してくれたベルトで変身さえできれば問題なく戦えることと、平常時での戦闘力の高いアモンには全く関係のないことだが。

 

「……さて、次はこの家か。頻繁に頼んでいるよな、この商品」

 

 段ボールを片手に呟くアモン。

 神の子を見張る者(グリゴリ)の周囲でもなかなか見にいくことのなかった街と通りだが、この地域の街によく届け物に来ることもあって観察する機会は多かった。レンガ造りの建物が多く、まだまだガス灯を使っていて夜は薄暗い。かつて養父に都会に連れて行ってもらったことはあるが、眩しい“しょっぴんぐもーる”の中はアモンには喧騒や照明の明るさもあってあまり好ましくなく、こういったガス灯の方がかえって好感が持てた。

 

 毎度のようにアモンの営んでいる運び屋は注文すれば世界のどこにでも商品を送ってくれるサービスと名前が被ってしまうことから名前がある思いついた名前が付けられず、それに一人で細々とやっていることから特に名前も大層なものにする必要はないかと思い、「野座間急便」と看板を立てて始めた。金さえ払えば何でも運びます、という謳い文句から色んな注文が入るようになり、アンダーグラウンドな代物を運んだこともある。

 

 その中でも特に利用回数が多いのは、この宛先が「ロスヴァイセ」とある女性なのだが、毎度のように安い品物を大量にまとめ買いをして自宅に送るようにしている。どうも、話したところ節約性のようで安いものはたくさん買い込まずには気が済まない性格をしているらしい。その分、しっかり者なようだが出会いがないということを嘆いているのを聞いた。ふと、頭をよぎるのは一部を除いて完璧であると豪語する男が浮かんできた。彼に彼女を紹介すればいいのではないだろうか、と考えたアモンだったが年の差を思うと若い女性を紹介するのは間違っているような気がした子心。

 

 ロスヴァイセの暮らしている社宅へと訪れる。なんでも、彼女は北欧神話勢力という一大勢力を纏めるオーディンの下で働いている戦乙女(ヴァルキリー)なんだとか。普通ならば信じられないような言葉だが、養父や荒事の師匠が堕天使のアモンが信じないわけがなく、彼女の言葉を信じた。野座間急便をはじめた時、何度かオーディンに仕事を貰い、物を運んだことがある。ロスヴァイセからオーディンに紹介されたとき、“テスト”と称して低級とはいえドラゴンをけしかけられたことは絶対に忘れない。

 

「は、はいっ!?どちら様ですだ!?」

「こんにちは、野座間急便です。ロスヴァイセさん、今大丈夫?」

「あっ、アモンくん!?待ってて、すぐに出るから!」

 

 社宅のアパートの階段をきしきしと音を立てて上り、ロスヴァイセの部屋のある二階へと辿り着く。そこでノックをした後、かえってくる凛とした声と訛りのある口調。きっと寝起きだろう、真面目な彼女のことだから昨日も徹夜していたに違いない。

 

「そんなに無理しなくていいよ。用意ができてないなら、また出直すから」

「大丈夫だから!私が頼んだことだし」

 

 扉越しからでも分かる慌てた様子、時刻は土曜日の午後二時半である。年頃の女性が起きるにはいくらなんでも遅すぎやしないかと考えるアモン。そしてこうも律儀なのだ、アモンが年下と知るや否や親しげに気を利かせてくれるところには親しみが持てるが、たまには不真面目になってもいいのではと思った。

 

「こんにちは、アモンくん。ごめんね、また来させちゃって」

「気にしないで。これくらい仕入れるのは容易いし。……ていうか、ロスヴァイセさん。また訛り出てたよ」

「え、本当!?嘘、これで何回目なの……」

「結構、出てるんじゃない?」

 

 扉を開けて出てきたロスヴァイセはアモンに微笑み、荷物を受け取る。ゆったりとしたセーター姿で長い銀髪を纏め、眼鏡をかけている。これが自宅での彼女のファッションらしい。ついついアモンの前で田舎の訛りが出てしまい、それを聞かれていることにショックを受ける彼女の様子はがびーんというのが似合う。背の高さもあってアモンとはまるで姉弟のようにもみえ、それがかえってアモンの身長へのコンプレックスを煽るのだった。

 

 注文の品を渡し、彼女のサインを支払いとともに貰う。「確かに受け取ったよ」と代金の数を数え、余った分をおつりとしてロスヴァイセにアモンは差し出すが。

 

「ああ、それは取っておいていいよ。お釣りはいいからね」

「貰えないよ。釣銭はきっちりしないと。ロスヴァイセさんらしくない」

「じゃあ、お小遣いってことでどうかな?アモンくんの!」

 

 アモンの手を両手で包んで微笑む様子はまるで小さい子供に飴を渡すかのよう。アジア人としては十代半ばほどで、おおよそ17歳ほどと思われるアモンは子ども扱いされるのは嫌な年頃。節約に煩いはずなのにロスヴァイセと来たら、どうしてそんな言い方をするのだろうか。念のために、といって出費を減らしている女性の言葉には思えなかった。

 

「今から時間ある?お腹空いたでしょう?上がっていって?」

「まぁ、時間はあるけど……」

「じゃあ、スコーン食べて行って?」

「いや、でも……」

「アモンくんの好きなジャムあるから、ね?」

 

 あまり気乗りのしないアモンだったが、アモンの好きなブルーベリージャムがスコーンと一緒に出されるのであれば話に乗らないアモンではない。

 

「いただきます」

「はい、じゃあ、上がった上がった!」

 

 半ば押されるようにして家に上がるように言われたが、昔から押しの強い女性が周囲には多いようだとアモンは感じる。しかし、その表情はいつもより柔らかかった。

 

❊❊❊

 

「アモンのう、気のいい坊主だと儂は思うぞ?それが急にどうしたんじゃ?」

「ええ、オーディン様に彼の印象を聞こうと思いましてね」

 

 その日、かつてアザゼルと会談をしたビルにおいて隻眼の北欧神話勢力の主神・オーディンとサーゼクスは会談を行っていた。オーディンは杖を突き、赤い魔王から尋ねられるアモンという黒髪の少年への印象を述べた。赤い魔王はいつものように銀髪のメイドを連れている、柔和な笑みを浮かべている魔王と反対に銀髪のメイドは表情を崩さない。貞淑なメイドと言えば聞き触りはいいが、とっつきにくいのは彼氏いない歴イコール年齢の戦乙女を思い出す。

 

「そういえば、彼がノザマ急便なるものを運営しているんだとか」

「そうじゃな。儂も何度か頼んだことがある、今時珍しい戦士の目をしていたんでな、興味を持ったんじゃ。生活費を稼ぐため、という理由じゃったがの」

「貴方がそういうとは珍しいですね。伝承では、オーディン神はさる戦に備えて優秀な戦士を戦乙女に導かせ、兵士――エインへリアルとして戦わせるんだとか。似た伝承はもう一つありますね、貴方の加護を受けた狂戦士・ベルセルク。有名どころでは、かの竜殺しの大英雄シグルドの父、シグムンドをエインへリアルに迎えるために策を講じたことも。その子・シンフィヨトリを欲したために因果を弄ったことも」

「何が言いたい?悪魔というのは面倒だ」

 

 オーディンはため息をついた。サーゼクスが言わんとしていることは分かる、「貴方はアモンを自らの傍に置きたいか?」そう言っているのだ。銀髪のメイドの視線が強くなるのは分かる、自分たちの種族のことが侮辱されたならば誰だってそうする。あえて、それを言及しないのは赤い魔王の口から直接聞く必要があるからだ。何か事情を知った風の魔王、ここまで余裕を保てるのは何か知っていてもおかしくはない。

 

 流石はかの大戦の後、周囲を知己のあと三人とともに四大魔王として君臨しているだけのことはある。腹芸はお手の物と言ったところで、女好きな普段の様子を見せる暇を全くオーディンに与えない。主神さえも脅かすのは流石はルシファーの名前を継ぐだけのことはあると言えよう。

 

 北欧神話屈指の竜殺しの英雄、竜殺しの英雄の父、竜殺しの英雄の異母兄弟の怪力無双の持つ戦士のことを言われれば、それを肯定することも否定することもなく言葉は返さない。

 

「単刀直入に言いましょう、欲しくありませんか?竜を屠り、魔なるものを身一つでねじ伏せた仮面の戦士――仮面ライダーの力」

「……なぜ、それを儂に?」

 

 仮面の戦士――仮面ライダーの名前を聞いたのはいつぶりだろうか。彼の戦士は己の名前を決して自分から名乗ろうとしなかった、その仮面や身を包む強化皮膚で自分を偽るかのように。ただ、己の大切な者の為に戦い抜く様は矮小な人間でありながらも神話の英雄に匹敵する強さだった。

 

 神の血筋でもなく。

 特殊な武器もなく。

 神の加護もなく。

 特殊な出生でもなく。

 

 唯、己の肉体だけで渡り合う姿はその場にいた者を魅了した。人間が関係ないのに巻き込まれている、脅威に脅かされている、恐れているという理由だけで自分の身を顧みずにだ。細い腕を振るい、足を振るって大地を飛び回る。ただ鍛えあげた肉体だけで渡り合う姿はまるで—―己の血族であった、ヴォルスングの英雄やエインへリアルとなった戦士たちをを思い出した。

 

「その理由ですか?教会は答えを濁すでしょうし、彼の居場所でもあった神の子を見張る者では良い返事はないでしょう、彼の養父のアザゼルがいますからね。旧魔王派なんて論外です。この話をして私の望む返事はギリシャ神話勢力からは返ってきません」

「それで儂か」

「はい、様々な戦士を見てきた貴方であれば返ってくると思ったのです」

 

 かつて悪魔は先の大戦において急激に種を減らし、種の存続を危ぶまれた。そこで誕生したのが悪魔の駒(イーヴィル・ピース)と呼ばれるものだが、それの制作には闇があると言われる。サーゼクスが旧魔王派を論外とするのは、悪魔の駒の以前の眷属作りの前段階になされていた研究にあるのだろうと推測する。

 

「それを儂に言ってどうするつもりじゃ?赤いルシファー」

「それはですね、オーディン様。私は今でもこの様々な勢力の裏で起こっている争いを起こさせないため、抑止力を作ろうと思っているのです」

 

 オーディンは若き赤い魔王の瞳の奥に悪魔らしい欲望を感じた。悪魔というのは総じて欲望に素直で、契約は必ず守るという特徴がある。後者のモノは幼少期のころからの教育によるものだが、前者については種族特有のものと言える。この若い魔王は人間の文化に興味があり、よく人間界を訪れているというのは知っている。

 

 人間界の文化には、特に日本という国には“トクサツ”というものがある。そのトクサツというのは特徴的な撮影技術を用いり、変身ヒーローを主に取り扱う分野だ。その分野に魔王ながらも関心のあるサーゼクスは冥界においても魔王戦隊なるものを番組として作り、自らが他の魔王とともに出演しているほどに関心がある。

 

「抑止力、じゃと?」

「ええ、抑止力です。アザゼルにも頼もうと思っているんですがね、蘇らせようと思うんですよ」

「蘇らせるじゃと?」

 

 オーディンは眉を吊り上げる。何かをよみがえらせる、こと人間については人間をモノ扱いにしているとして禁じられている。それは神であろうと何だろうと特例がなければ、行うことは許されない。

 

「仮面ライダーを抑止力とするんです」

「何を言っておるのか、本当にわかっとるのか?」

「ええ、もちろんですとも」

 

 赤い魔王は柔らかい笑顔で言ってのけた。かの人間の英雄、仮面ライダーを再現すると。

 

❊❊❊

 

「ねえ、アモンくん。美味しい?」

 

 ブルーベリージャムをスコーンに塗り、口に運ぶアモン。その表情は幸せそうで、女性らしさのあるロスヴァイセの部屋で小さなテーブルを挟んでロスヴァイセは微笑んでいた。既に四つ目、焼いているロスヴァイセは幸せそうに食べているアモンを見ていると約九朗も苦労とも思わない。

 

 ブルーベリー独特の甘酸っぱさと砂糖をあまり使っていないスコーンの素朴な味もあって、ジャムを大量に塗りたくっても大丈夫だ。これは何度も重ねられた研究の成果と慕っている祖母から学んだ秘伝のレシピから独自にアレンジをした代物である。

 

「美味しい。いくらでも食べられる」

「じゃあ、代金はこれからはスコーンにする?」

「代金は貰うよ、きちんと」

「分かってるよ、真面目だね、君は」

 

 頬杖をついて笑っているロスヴァイセ、その様子を見ていると神の子を見張る者(グリゴリ)で出会った朱乃を思い出す。手を伸ばして撫でてくるところとか、一人っ子らしいロスヴァイセは面倒見がいい方なのではないだろうか。面倒見のいい人に限って相手がいないのは養父を見ていると分かる、お人好しと相手に思われ、それ以上に進まないのだ。

 

 プルルル、とアモンの懐で携帯電話が震える。数年前から機種変更をしていないため、すっかり今となっては旧式となってしまったろうが、仕事をする分には問題がない。

 

「電話が来たみたいだ。ごめん」

「いいよ、相手の人に待たせると悪いし」

 

 ロスヴァイセに確認を取り、電話に出る。久々に見た名前だった。居間から少し離れたところに立ち上がった。

 

「はい、野座間急便」

『おう、見違えた声してんじゃねえか。元気か?』

「先生、久しぶり」

『淡泊だな、お前は。……どうだ、調子は』

 

 電話の相手はアザゼルだった。旅に出てから親心という奴だろうか、あまり連絡をよこさなかったのは気を遣ってのことだろう。せっかくアモンが旅に出ているからと自分からは連絡をしなかったとアモンは考えている。

 

「上々だよ。今は野座間急便て名前で運び屋やって生活費稼いでる」

『お前が運び屋ねぇ……、そうだ、アモン。お前、ヴァーリに会ったか?』

「いや。ヴァーリって先生の養子の一人だっけ?」

『ああ。……ちょっと野暮用でな、今から日本に行けるか?というか、今お前何処だ?』

 

 ヴァーリと言えば、アザゼルの養子の一人だと聞いたことがある。旅に出るまで一度も会ったことがなく、聞いたところによると武者修行に出たんだとか。悪魔と人間のハーフらしく、色々と苦労をしたらしい。ヴァーリのことを語るアザゼルの目はどこか寂しげだったのをよく覚えている。

 

 今いる場所と言えば、北欧のロスヴァイセの家だ。国の名前はあまり興味がないので覚えていないが、ロスヴァイセは女性名。ここからアザゼルが辿り着く結論は一つ。混乱を避けようとするのが普通だが、アモンは違った。

 

「ロスヴァイセさんて世話になってる人の家。それで何で行けばいい?徒歩?泳ぎ?」

『おま、まさか、女の家か!?つか、馬鹿かアモン!泳いでいけるわけねー……って、お前ならやりかねんな。飛行機は用意してある、サーゼクスに頼んでおいた。ほら、あの赤い髪のにいちゃんだ。要件は飛行機の中で聞け』

「ああ、ゼクスにいちゃんだっけ」

『そうだ。それと、その女との関係を――』

「早く場所を」

 

 面白がって養子(むすこ)の対人関係を探ろうとするアザゼルに有無を言わさずにくうこうとやらの場所を聞き、電話を切った。

 

「電話終わった?」

「うん。先生(ようふ)から。今から二ホンに行けだって」

「もしかして、お父さん!?じゃあ、ご挨拶をしなくちゃ……って日本に!?どうして突然」

 

 電話を終えると、ロスヴァイセは身を乗り出した。いつもお世話になってます、とまるで母親のように電話に出るつもりだったのだろうか。そこまでロスヴァイセにされれば、アザゼルになんとからかわれるか分からない。

 

「分からない。でも、いつものことだ。ここから近くにある空港で飛行機の手配をしてくれたみたいなんだ、行かなくちゃ」

「今から?明日でもいいんじゃない?泊まっていけばいいのに」

 

 時刻は午後五時半。今からすぐにフライトが可能なのは、やはり彼の力でなければできないだろう。食べかけのスコーンを口に押し込み、数度咀嚼した後にアモンは飲み込んだ。

 

「そういうわけにもいかない。仕事は信頼が大事、ってね。今から行くよ、スコーン食べさせてもらったし」

「晩御飯は……」

「また今度で。今度は逆に俺からお願いするよ」

「忘れちゃだめですよ?アモンくん」

 

 残念そうなロスヴァイセに上着を羽織り、アモンはしゃがんで視線を合わせる。

 うるうると目を潤ませるロスヴァイセ、本心から寂しがっているし、残念そうだ。

 

「忘れないよ、俺は。ロスヴァイセさんも忘れないで」

 

❊❊❊

 

「……冷たくなったな、あいつ」

 

 電話の向こう、浴衣姿の父親は息子の成長を感じて少し寂しくなった。

 




ロスヴァイセさんて年下の子にプライベートで接したら、こんな感じになるんじゃないかと予想
銀髪人妻メイドさんに堕天使の妻、幼馴染の女の子と年上に好かれるアモンさん
助平爺のスケベ要素の霊圧が消えたおでん
真っ黒なシスコン魔王

腹の探り合いなんて言う慣れないことをしたから、もしかしたらつじつまの合わないところがあるかもしれませんが、ご容赦を

抑止力ってところでアラヤとかULTRAMANを思い浮かべてしまった

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