週六時間授業で部活のオプション付き。
家に帰るとごはん食べて風呂はいって疲れで寝る。
まるで執筆の時間が取れない…。
ここにきて先人たちの偉大さと大変さが少し理解できたように思う。
「どうしよう雄二!?僕の身内が度し難いレベルのイタイ人なんだけど!?」
「そ、そうなのか…。だが、スクール水着を握りしめて鬼気迫る顔をしてるお前も十分イタイと…」
「え!?ち、違っ……!これは姉さんの」
「どうしましたかアキ君」
「どうしたも、こうしたもないよ!姉さんの水着が大問題なの!」
そうですか、とミラー越しに僕と手に握りしめた紺の水着を見る。
一度目を細めてから目の前の道路に目を戻す。
「アキ君は勘違いをしているようですね」
「勘違い?」
首を傾げる。
姉さんの声には多少の呆れが感じられた。
ちなみに、こんなことをしているうちに雄二はまた眠りについた。
こいつめ…あとで見てろよ。
「ええ、勘違いです。なぜならーー」
と、まあ僕の勘違いで済んで良かった。
もしこれが姉さんなら学生だからみなSchool水着を着るのが当たり前など言いかねないからね。
しかし本当によかっーー
「その水着はアキ君のです」
「アウトぉーっ!!」
「(ビクッ)今度はなにがあった!?」
「大変だよ雄二!?姉さんが」
「待て!まさかお前『この水着は姉貴のじゃなくて自分のだった』なんて言うなよ?」
「…………」
「おい…まさか、な…?」
「ち、違う!断じて違う!これは姉さんが勝手に」
「ちなみに、姉さんのはこっちの白い方です(チラッ)」
「なんで白!?なんでもうきてるの!?ああ、もうっ。僕一人じゃ手に負えない…」
『(ブショァァアア)……白…ナイスセンス…』
『ムッツリーニ君!?大丈夫!?命が吹き出してるようにしか見えないんだけど!?』
「とにかく!チェンジ!チェーンジ!!近くのお店によって他の水着をかってきてぇ!」
****
「まさか海に向かう車の中でこんなに疲れるとは思わなかったよ」
「ったく。お前のせいで全く眠れなかったじゃねぇか」
僕の全力のシャウトが聞いたのか、姉さんは新しい水着を買うためにお店の近くに車を停めて入って行った。
姫路さんや他の女性陣には車の中は退屈なので一緒に店にいくように勧めた。
その際、秀吉と木下さんがなにやらもめていたがその喧嘩は僕からみたら可愛らしいものに見えた。
で、僕らは、
「あちぃ…なんでよりによって車の番なんだよ…」
「しょうがないじゃないか。エンジン切るわけにもいかないし…」
「確かにそれはそうだがなにも全員じゃなくてもいいじゃねぇか…」
縁石に腰を落とし、頭に応急的な処置でタオルをかぶって僕ら男子三人は車番。
流石の雄二もこれには応えたようで顔には幾つもの汗の球が滑り落ちて行っている。
「ムッツリーニ?大丈夫?」
その奥、店の日陰の位置にあったベンチにはもう一人の友人が顔にはタオル、額には持参のクーラーボックスの中にあった保冷剤を乗せている。
本当なら店の中にいるべきなのだがそこに陳列されているものを見て死んでもらうわけにはいかないので僕らは渋々と日陰を明け渡した。
「…………なんとか」
震える手で親指をあげて見せるムッツリーニ。
しかしその手は力なく体の上に落ちた。
「遅いなぁ姉さん…なにやってるんだろう」
「女の買い物は長いっていうしな…あと五分は覚悟した方がいいぞ…」
そんなこという雄二の目は明らかに焦点が定まっておらず、口は力なく笑の形になっている。
僕は車の中になにか飲み物はないかと立ち上がる。
その時だった。
「ちょっといいか?」
一人の男が僕を引き止めた。
声は低く落ち着いた雰囲気の中に冷たさがあった。
身長は雄二ほどあり、しかしスラっと細いしなやかな体つき。
「なんですか…」
見上げるようにその顔を見る。
眼鏡。
それ以外なにもわからなかった。
既に僕は暑さと疲労によりフラフラの状態だったため世界が歪んでみえた。
「道を教えて欲しいのだが」