「ツカ レタ」
戦いは終わった。
私は全ての『衛兵』を薙ぎ倒して『御柱』が開いた破滅の門、そこから溢れ出たエネルギーをも避けて、全てを破壊した。
しかし私も『盾』も疲労が溜まりに溜まっていた。握っている鎖には問題無くとも、体が休息と補給を求めていた。
「イキ ノコ ツタ」
私はやり遂げた達成感と共に脱力する。『光』であった火の玉に引き寄せられて来たが、不思議と満足感に満ちていた。
だんだんと意識が遠のいていく。しかし私の2つの目が変質しており、今にも産まれたがっていた。
「…… イヤ コノ ママ デイ イカ」
私を引き寄せた火の玉は何も言わないし何ももたらさない。
私は生きている。
「…ン?」
産まれたがっている目が見せたのか、私は自分の周りに艦隊を見た。
その艦隊は何をするでもなく、ただ火の玉を見ていた。
艦隊の旗艦と思われる、赤い戦艦が私を見る。それだけで、私と同類なんだと分かってしまった。
だからか、私は
「モウ イイ デシ ヨウ ?」
そう言って残った力で光に飛び込む。
艦隊は驚いていた。だが私は自分の行動に後悔していない。
---私の死に場所は、死ぬ意味は、これでいい。
変質し掛けていた体は、火の玉の業火によってドロドロに溶けていく。文字通り身を焦がして艦隊を見ると、赤い旗艦も私の隣に飛び込んできた。
『コレ デモ ウダ レモ キズ ツケ ズニ スム』
そう言った気がした。私は完全に溶け切る前に、確かにその声を聞いた。
『アリ ガト ウ』
私は微笑んで、そっと目を閉じた。
そして開く。
「……あれ?」
私は自室のベットの上に座っていた。部屋の窓から差し込む日差しと景色が、どうしようもなく懐かしく思えた。
「ここは、私の部屋?」
見渡すと見慣れた、自宅の自室だった。
私は戸惑いながら、何故戸惑うのかも分からずにベットから降りる。
自分の姿を確認するが、特におかしな所は無いように思う。なのに違和感がある。
「うーん…何だろう? すっごく悪い夢を見ていたけど……あれ? チョーカーなんてしてたっけ?」
ふと首に触れると、チョーカーらしきものが首に巻いてあった。鏡が部屋に無いので確認出来ないが、ベルトのような金具が後頭部にあると手で感じた。
首を傾げつつ部屋から出てみる。当然だが見慣れた廊下に出た。
そのままリビングに行くと、途中で犬の鳴き声がした。
「あれ、この辺に犬飼ってる人って居たっけ?」
首を傾げ唸ったままリビングに入る。そこには新聞紙を読む父の姿があった。
「…おはよう。随分寝ていたようだな」
「-----」
父の姿を見た瞬間、私は泣きそうになった。思わず声が出ず、平和な日常がとても愛おしく思えた。
「…うん、おはよう」
その一言で私は、とても長い、醒めない悪夢から開放された気がした。
先程堪えた涙が流れる。
「お、おい、どうした?」
「いや、ちょっと嫌な夢を見た気がして」
「夢?」
「うん。それは…」
夢の内容を父に言おうとした時、犬の鳴き声が外から聞こえてきた。
「なんだアイツ、今日は妙に騒がしいな」
「?」
父が新聞紙を畳み机の上に置くと、椅子から立ち上がり玄関に向かった。私も父の後を追い玄関に向かう。
玄関の扉を開けると、一匹の大型犬が屋内に入り私に駆け寄ってきた。
「あれ? 犬飼ってたっけ?」
「寝ぼけているのか? お前が飼いたいと言って昔拾ってきたんじゃないか」
「んー? んー…」
ハッハッと尻尾を激しく振る黒く赤目の犬は、長い間私と共に過ごした信頼感を思い出させた。
撫でると気持ち良さそうに目を細めるので、思わず撫で回していた。父はそんな私と犬を見てため息を吐く。
「はあ、お前達は昔から仲がいいな。…そういえば、夢を見たとか言っていたな」
「ああ、そうだった。聞いてくれる?」
「悪い夢なら言ってしまえ。気が済むまでな」
「…うん」
撫でられている犬が私を心配するように目を向けてきた。私は微笑んで父に見た夢のことを、ゆっくりと話し始めた。
これにて終焉。次回は各解説を行います。