『先程、基地の浄化作業が完了した。生存者は……確認出来なかった』
『そんな…』
『……』
「…クソォ!」
私と『R-13 ケルベロス』は今、巡洋艦の格納庫に居た。
隣には『R-9Ⅱ デルタ』と『R-X アルバトロス』が、自分と同様に地球連合軍からの通信を聞いていた。
私の脳裏には1年前の、落ちていくエバーグリーンの光景が蘇った。かつて故郷を失った私は、またしても帰る場所を失ったのだった。
どうしようもない無力感とバイドへの怒り、憎しみがふつふつと湧き上がる。
『…連戦続きで申し訳ないが、君達には引き続き任務に当たってもらう。今回の騒動の発端は討ち果たされたものの、肝心のバイド反応は消えていない』
通信の通り、私の初めての実戦となった今回の騒動の発端である『プロトタイプR-9』はデルタにより討たれた。
私はヨーロッパのエネルギー炉に巣食っていたバイドを殲滅後、その足で宇宙要塞アイギスに突入。立ちはだかるバイドを殲滅しながら最奥に鎮座していた『QTキャット』を撃破した。
その内部より高度バイド反応を抱えた第一次バイドミッションの英雄『プロトタイプR-9』が出現。追いかけようとした時、サイバーコネクタが外部の情報と一緒に『プロトタイプR-9』の記憶を拾ってしまう事態が発生した。
私はその世界でケルベロスと共に戦い、汚染された故郷と再会し、漂う多くのバイド達を破壊することに成功する。
だが、私がもたついている間に『帰還』した『プロトタイプR-9』により基地が汚染され、デルタにより開放された。
『諸君は補給が完了次第、衛星軌道に出現した異層次元、そこに存在するバイドの巣に突入しこれを殲滅してもらう。そこからA級を超えるバイドの反応があった』
「A級を超える反応!?」
『前大戦で確認されたバイドコアに近い数値だ。これを叩けば、今回の騒動は終結すると結論付けられた』
『本当ですか!』
それを聞いてデルタとアルバトロスのパイロットは『終わり』を見出し沸き立つ。私も声に出さないが基地の皆、そして故郷の仇をこの手で討てると歓喜した。
『…この作戦が終われば、犠牲者を弔う慰霊碑が建てられるだろう。帰還したら休暇を取って行くといい』
「……その慰霊碑は、どんな形なんでしょうかね?」
『それは建てる責任者に聞いてくれたまえ』
気を使った通信に私は思わず、エバーグリーンの慰霊碑でありプラチナでPOWアーマーを模した『プラチナハート』を思い出し聞いてみた。その返事に思わず苦笑する。
同時に、補給が完了したことを知らせる音が鳴る。私は機体の安全確認を行い、異常が検出されないのを確認すると格納された『アンカー・フォース』との接続を確かめた。
『それとこの任務には絶対の条件が存在する』
『条件?』
『…任務を遂行し必ず帰還せよ。以上だ。諸君の健闘を祈る』
その言葉を最後に通信が切れる。私は数瞬後、デルタとアルバトロスのパイロットと共に笑った。仲間と共に盛大に笑った。
…そこで私は、あの日以来初めて、笑ったことに気が付いた。
『こりゃあ帰らないと減俸物だな』
『いや、下手をするとクビにされるやもしれん』
「その時は我が社が高待遇で雇わせてもらいますよ」
『そいつはいいや!』
笑いの余韻を楽しみながら軽口を言い合い、巡洋艦から順次発進する。
私も、この騒動ですっかり愛機となったケルベロスと共に発進する。
宇宙空間に出た私は、他の2機と同様にフォースを装備し直しビットを射出した。そして異層次元に突入するためのシステムを起動させる。
するとフォースから光が現れ、私とケルベロスを導くように周りを浮遊し出した。
『アルバトロス、ケルベロス、準備はいいか?』
『いつでも』
「問題無く」
『よし、また後で会おう! 突入!』
デルタの掛け声と同時に我々は、異層次元へと突入した。
私は、必ず帰ると心に誓い気合を入れた。