猟犬の見る悪夢   作:大2病ガノタ

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『R-TYPE Final』R's MUSEUMより


R-13B カロン

 

 

「『R-9W ワイズマン』、ナノマシンとサイバーコネクタ技術の融合によりパイロットの任意で波動砲を誘導出来る画期的な機体。しかし搭乗パイロットのメンタル面に多大な負荷が掛かり、パイロットの乗り換えはキャノピーごと入れ替えることが多い」

 

 

 

私は今『Team R-TYPE』とかいう集団に隔離されている。

一週間ほど前に目を覚ました私は、素っ裸でカプセルの中で漂っていた。愛機のコクピット内部でなく、ましてやパイロットスーツまで着ていなかったので盛大に混乱したものだった。

ちょうど経過確認のために通った研究員と目が合わなければ出してもらえなかっただろうと思う。

 

 

 

「凄いな。20年でここまで技術が進歩するものなのか。それとも20年もあれば進歩するものなのだろうか」

 

 

 

その『Team R-TYPE』とか言う組織が言うには、私は20年近くもの間、愛機の『R-13ケルベロス』と共にバイドに取り込まれていたらしい。

『RX-12 クロス・ザ・ルビコン』という機体により撃墜されたものの、奇跡的に回収されたが、軽度のバイド汚染が確認されたために研究素材扱いされていたらしい。

今でこそ首にサイバーコネクタの保護と、暴走時の処分の目的で波動エネルギーの詰まった首輪を嵌められていた。

 

 

 

「しかしサイバーコネクタ技術を受け継いだのにパイロットを使い捨てるのは関心しないな。効率が悪すぎる」

 

 

 

今思い返すと、私が入っていた隣のカプセルに肉塊が入ったカプセルがあったが、アレは何だったのかと思う。

ともあれ私の現状を一言で表すと『生きたモルモット』であろう。病的に真っ白な部屋に真っ白な服、真っ白な寝具に備え付けの真っ白なトイレ。

何より最悪なのが、天井の隅4箇所に監視カメラが付いており24時間撮影されていること。そして老廃物どころかトイレに流した排泄物まで研究に使われているらしいということだった。

 

 

 

「『R-13A ケルベロス』…。改良して制式化されたケルベロス…。やはり殲滅力で一歩抜きん出た性能だな。欠点も無くなっているようだし、後継機まであるのか…」

 

 

 

そんな状態で私は何をしているのかというと、外に出られないのをいいことに『Team R-TYPE』の極秘資料を読ませてもらっていた。

一日三回出てくる食事の時に駄目元でカメラに『暇つぶしできるものは無いか』と頼んでみたら、意外とあっさり提供されたのだった。

同時に、ああ、本当にここから出すつもりは無いんだなと理解したが。

 

 

 

「…『R-9AⅡ デルタ』は後継機が既に稼働中、『RX-10 アルバトロス』も後続機が出ているけど…『R-11A ピースメーカー』って民間だったが我々が居たときには既に開発されていた筈。なぜ後継機扱いに?」

 

 

 

今見ているのは地球連合軍の機体目録であり、R戦闘機を中心に編集され開発中の機体のデータまで入った、本当に極秘のデータだった。

最も、絶賛発動中のオペレーション『Last Dance』の直前に軍、民生全てのRを纏めたことで、今私が言ったような矛盾が発生していたけれども。

 

 

 

「しかし、何だろうこのB系列とやらは。狂ってるとしか思えない。というかコレだけで『Team R-TYPE』とやらの狂気が分かるな。『バイドをもってバイドを征す』って何…」

 

 

 

そうして資料を見ながら無駄に時間を浪費していると、唐突にポーンと場違いな音が聞こえた。

あまりに唐突過ぎて驚いた私は、部屋を見渡してソレを見つけた。通常食事が出される場所に、通信端末が一つ置いてあったのだった。

そしてその通信端末は、画面に『着信中』の文字が映っていた。

 

 

 

「……出ろ、ということか」

 

 

 

私はその通信端末を取るが、いかんせん20年後のソレも技術の進歩で変わっていたため、通話状態にするだけでも一苦労だった。

通信に出ると、軽快な声が聞こえてきた。

 

 

 

『どうもこんにちは! 気分の程はどうですか?』

「あ、はい。えっと…」

『今日はですねぇ、ちょっと聞きたいことがあってお電話させて頂いてるんですよ! ああ、今あなたが使用している端末は、この通話が終わった後もあなたの所持品として扱っていただいて構いません!』

 

 

 

やたらとハイテンションで人の話を聞かない通信相手に戸惑う私。ここ最近誰とも話す機会も無いところにこの相手は、正直厳しいと言わざるを得ない。

 

 

 

『いやぁ以前からあなたとは個人的に会話をしてみたいと思っていたのですよ! バイド戦争初期のパイロットにしてバイドの中にて夢を見た者! しかもそれがただの夢ではなくバイドの記憶と推定される内容! 更に! 軽度のバイド汚染を受けながら人としての姿形を維持している! 一研究員として非っ常に興味がそそられますなあ!』

「………え、えーと…」

 

 

 

私があまりのテンションに着いて行けずに思わず戸惑った声を出すと、向こうは残念がるように言葉を続けた。

 

 

 

『しかし私にも予定がありますし、何より今日は通話するための立会人なので、実際に顔を合わせるどころか長話させてもらえないのですよねー』

「そ、そうですか」

『で、す、が! 近いうちに必ずお会いするつもりなので! そこはお楽しみに…って分かってますよ。もー変わりますんで。それでは、また訪ねた時はよろしくお願いしますね!』

「は、はぁ」

 

 

 

私は終始圧倒されっぱなしで聞いていたが、その後に通話を変わったであろう低音ボイスの声が聞こえた。

 

 

 

『これだから『Team R-TYPE』のキチガイ共は…。失礼、わたくし『R-13』系の機体開発計画を任された者です』

「『R-13』系と言いますと、制式化されたケルベロスの?」

『はい、そちらも担当しておりました。そしてこの度、開発中の『R-13A2 ハーデス』に次ぐ機体、『R-13B カロン』の開発が決まりお伺いしました』

 

 

そう言われて、私は先程見ていた極秘資料を見る。後継機が開発中とは聞いたが形式番号と名前は今初めて知った。

しかし、既にケルベロスは制式化され話せることも無い私は疑問に思うことがあった。

 

 

 

「そうなのですか。それで、今回はどのようなご用件で?」

『はい。今回『R-13Bカロン』の開発を行う上で是非あなたの力をお借りしたいのです』

「…? 失礼、最新鋭機の開発に私が役に立てるとは思えないのですが。それに私は既に20年前の、過去の古い人間です。話せることは『Team R-TYPE』という人達に全て話してありますし、バイドに侵されたこの身は危険だと思うのですが」

 

 

 

私は自分自身を『人間』と定義しているが、同時にバイドに軽度とはいえ汚染されていることの危険性も理解しているつもりだった。

バイド汚染された者の悲劇は、私達は相対した『プロトタイプR-9』という結果を目の当たりにしているだけに尚更である。

しかし、私の疑問は通信相手の言葉により吹き飛ばされた。

 

 

 

『あなたは当時開発初期の危険なサイバーインターフェイスの実験に志願したばかりか、それに成功し当時の最新鋭機を受領した幸運と実力があると判断させていただきました。加えて、『R-13Bカロン』は開発目的が特殊でして』

「と、言うと?」

『…オペレーション『Last Dance』の最終段階、26世紀へ辿り着く道標となる機体。特殊なフォースとR大隊の先頭を切れる破壊力を持つ機体』

「………、…は?」

 

 

 

驚愕する。その時の私を表現するなら、その一言に尽きるだろう。しかし同時に、次に何を言われるのか、私はどこか予測出来ていた。

 

 

 

『この機体のパイロットは、この作戦が立案される最後の後押しとなった、あなたです』

 

 

 

そして、私の『悪夢』の終わりを告げる『Last Dance』が、始まろうとしていた。

 

 

 

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