猟犬の見る悪夢   作:大2病ガノタ

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『R-TYPE Final』Stage F-Cより


どこまでも

 

 

 

 

『よう、お前ら。聞こえてるか?』

 

 

 

私は今、R戦闘機のコクピットの中に居る。

 

 

 

『あー、返事はしなくていいぞ。一人ひとりの返事を聞いていたら作戦が始まっちまうからな』

 

 

 

『R-13B カロン』のコクピットは、私用に設えた、と言うより私の乗っていた『R-13 ケルベロス』の物をそのまま流用していた。

私のバイド汚染はサイバーコネクタを通し機体に悪影響を与えてしまう。しかし私と共に回収されたコクピットだと影響無く稼動したため、今の形になっていた。

そのせいか、この機体が完成し初めて乗り込んだ時は、まるで私の為に存在しているかのような錯覚を覚えたものだった。

 

 

 

『さて、今更言うことでもないが、今ここに集まっているのは自分の残りの人生捨てて英雄になろうとしている大馬鹿野郎共だ』

 

 

 

私達の現在居る場所は宇宙、それも総勢100機以上に(わた)るR大隊の先頭に待機していた。

その大隊の中心に、現在演説中の大隊長が搭乗する究極互換機『R-99ラストダンサー』が居た。

 

 

 

『今回の作戦、『Last Dance』なんて言って俺たちが集められたがよ。本当にバイドを倒せても俺たちが向かうのは帰還出来ない26世紀だ。何が起きるか誰にも分からん』

 

 

 

約100年前より発令された対バイドミッション。その最後の局面は大きく3つに分かれる。

一つ、第一R大隊が亜空間入り口に巣食うS級バイド『ノーメマイヤー』を撃破し26世紀への入り口を確保する。

二つ、撃破後、そこを我々第二R大隊が突入し26世紀へ向かう。

三つ、『R-99 ラストダンサー』を中心とした別の第三R大隊がマザーバイドを撃破し終局。

 

 

 

『今からでも遅くはない。帰る場所がある奴、心残りのあるやつ、それと童貞は引き返して艦隊に拾ってもらえ。俺が許可する。特に最後! 女を知らん奴は一発キメてこい!』

 

 

 

この作戦の為に、編成された以外のR戦闘機達も我々の露払いのため出撃し今も戦闘を行っていた。

大隊長の言葉で大隊内で小さな笑いが起こり、女性のパイロットから『教官セクハラでーす』という声も出た。

 

 

 

『ははっ。まぁ冗談はさておいて、だ。実際、今の俺にはその命令を出す許可も与えられているんだ。お前ら、もう一度よーく考えてみろ。そして、帰還する奴はこの場を去れ。責める奴が居たら俺がぶっ飛ばしてやる』

 

 

 

その言葉に私は、苦笑いを禁じえなかった。大隊長が言うようによく考えても、私がここで引き返す理由など無いからである。

帰るべき故郷は既に落ち今でもバイドが巣食っている。自分の居場所は既にこのコクピットにしか無く、同時に私が水先案内人とならなければ、この作戦は根本から崩れてしまう。

私と同じように、誰一人と動かないR大隊を確認した大隊長はため息を付く。

 

 

 

『……はあーっ、全く。お前らは本物の馬鹿だ。なら、そんな馬鹿共に俺個人から言っておくことがある』

 

 

 

大隊長がそんなことを言うので私は彼の言葉に耳を傾けた。

 

 

 

『生きて26世紀まで行ってよ、バイドを作ったっつー世界を見てやろうじゃねぇか。俺たちのこの目でよ。きっと今まで見たことの無い世界がそこにあるぜ。天国か地獄かは分からんがな』

 

 

 

そう大隊長が言う。私は夢という形で26世紀の地球を知っているが、バイド起動後の景色までは分からなかった。それにずっと気になっているのが、バイド製造目的の『敵』。

『今』の宇宙にも居るのだろうか、そして26世紀では撃破出来たのだろうか。ずっと気になっている。

 

 

 

『俺たち人類はこの100年、たった100年の間に目も当てられないような犠牲を出してバイド共と戦ってきた。家族を失い、隣人を失い、友も失って、それでも諦められずにここまで生きてきた』

 

 

 

ふとコクピットの情報を見ると、誰かのイタズラか大隊長の言葉は、地球連合軍全てに伝わっていた。

 

 

 

『じゃあよ、何で俺たちはここまで来れた? 誰かを守るため? それは素晴らしい動機だ。命令だから? 軍人だからな。金が欲しいから? 無いと何も出来ないものな。R戦闘機に乗りたいから? ロマンだものな』

 

 

 

人によってはふざけていると思われるかも知れない言葉に、誰もが耳を傾けていた。

 

 

 

『でも、どれもこれも覚悟が無いと出来ないことだ。死ぬかもしれないという覚悟、バイド共に成り果てても戦うという覚悟がよ』

 

 

 

それを聞いて、私は今一度自分に自問した。私に彼の言う覚悟はあったのだろうか、と。今までバイド憎さにここまで駆け抜けるように無我夢中だった。その中で覚悟は持っていたのだろうか。

 

 

 

『人の一生は短い。アジアの歴史の中で、とある有名人がこう言ったそうだ。『人間50年 下天の内をくらぶれば 夢幻のごとくなり』ってよ。人間が生きられる50年は天国の時間と比べると夢や幻みたいなもの、って意味らしい』

 

 

 

私はその言葉を聞いて、『デルタプロジェクト』の基地もアジアの島国にあったなと思い出した。彼の言う有名人とは、その国の歴史に登場する人物ではなかったか。

 

 

 

『それを言った有名人は、機械どころか電気すら無い時代の人間らしい。短い言葉なのに深いこと言うよな? 俺はそんな短い人生ってのは、覚悟を決めるか決めないかで価値が決まるもんだと思っている』

 

 

 

人生の価値。そう聞いた私は、もう会えない両親に思いを馳せた。私の両親の人生はどうだったのかと。しかし知る術は無かった。

 

 

 

『そんな価値ある人生を俺は教官という立場で沢山見てきたつもりだ。だが、その全てが報われた訳じゃない。中にはバイドに殺された奴も居れば、バイドになっちまった奴も居た』

 

 

 

大隊長は地球連合軍でも知らない人は居ないほどの有名人なR戦闘機の教官であり、今回の作戦には志願した者の一人だったりする。

 

 

 

『だがそんな奴らの人生は確かに価値があった! そして今! 俺も先に逝った奴らに報いるために覚悟をしてここに居る! お前たちもそうだろう?』

 

 

 

その問いに私は頭を殴られたような感覚になった。私がバイドが憎かったのは故郷を滅ぼされたからであり、同時に、大隊長の言葉を借りるのであれば死んでいった家族の仇を取るためだった。

それを覚悟だと言ってもいいのなら、私の短い人生にも価値があったと、胸を張ってもいいのだろうか。

 

 

 

『どちらにせよ後にも先にもこれで終いだ。全部の決着を付けて、笑って終わりにしよう! …以上だ』

 

 

 

大隊長の演説が終わると、通信から沢山の歓声が沸くのが聞こえた。私も胸が熱くなるのを感じ、思わずサイバーコネクタのある後頭部に触れていた。

まるで私の乗る『R-13B カロン』も、張り切っているように感じたから。目の前に浮かぶ『アンカー・フォース改』も琥珀色に脈動した気がした。

その熱の余韻が冷めない内に、私に通信が来る。現在戦闘中であるはずの第一R大隊隊長と、我々と同様に待機中の第三R大隊隊長からであった。

 

 

 

『よう、演説聴いていたぜ。先輩、随分と熱いものを持ってたようだな』

『こちらの部隊でも士気が向上したよ。ありがたいことだ』

 

 

 

私の居るR大隊の大隊長は第一次バイドミッションを生き延びた英雄の一人であり、同時に私に通信を繋げてきた2人の大隊長も、『サタニック・ラプソディー』を生き延びた『R-9AⅡデルタ』と『R-Xアルバトロス』のパイロット達だった。

彼らは全員、装備は違うものの『R-99 ラストダンサー』に搭乗している。

 

 

 

「通信を入れて大丈夫なんですか? 今は戦闘中でしょうに」

『ハッ! この程度は朝飯前よ。それより、お前は大丈夫か?』

「何がです」

『お前自身のことだよ。…帰ってこれなくてもいいのかって』

「ああ、それですか」

 

 

 

その言葉を聴いて、私は嬉しかった。自分を心配してくれる人がいたことが。

 

 

 

「大丈夫ですよ。お参りも済ませて報告もしてあります。それに、これは私にしか出来ないことなので」

『確かにそうだけどよ…』

『俺たちはお前みたいな言葉を言う奴を沢山見てきた。それこそ先輩に次いでな。そういう奴に限って命を散らすものだ』

 

 

 

2人が心配そうな表情でこちらを見てくる。しかし私は、笑顔を浮かべた。

 

 

 

「確かに、私は死に場所をどこかで求めているのかもしれません。ですが同時に、私の記憶が、私の中に居るバイドが、こうするべきだと言ってくるんです」

『お前…』

『その言葉は、まさか…まさか…!?』

「どの歴史でも英雄というのは都合の良い生贄です。ですが、次の争いの元凶となってしまうのは悲しいことだと、私達は20年前のあの日、見た筈です」

 

 

 

私は、バイドが私自身をゆっくりと、長い時間をかけて変えようとしているのが分かった。それは、あの日に見た『プロトタイプR-9』が凍結処理された後にバイドとなったのと同じだった。

 

 

 

「既にレポートになっていると思うので作戦終了後に確認していただければと思います。……私自身をどうにかするためにも、今回の作戦は渡りに船だったんですよ」

 

 

 

私の瞳は今、両目とも琥珀色だったものが片方だけ漆黒になりつつあった。

これはバイドに取り込まれていた際に見た記憶と、この機体に乗ってから進行し出したバイド汚染によるものだと判断されていた。

…侵食されている、というか『染まってきた』私からすれば、微妙に間違っていると言わざるを得なかったが。

 

 

 

「もう私の故郷が無くなるなんてことにしたくないんです」

『……そう、か』

『…ん? ! そうか、分かった』

 

 

 

その時、第一R大隊長が部下からの報告を受けたのか通信を我々限定から全軍に変えた。そして事態を動かす報告をした。

 

 

 

『こちら第一R大隊。我が隊所属の『R-9A アローヘッド』が目標のS級バイド『ノーメマイヤー』を撃破した! これより任務を第二R大隊の援護に変更する!』

『了解した。貴君らの健闘に感謝する。…では、水先案内人、先導を頼む』

「了解!」

 

 

 

第二R大隊の大隊長が敬礼し、私に合図が来る。

私も敬礼すると、機体のエンジンを唸らせた。

 

 

 

「お二人共、最後にお二人と話せて良かったです。どうか人類を、お願いします」

『…ハッ! 当たり前だ! お前はお前の心に従え!』

『行って来い。そして、勝ってこい!』

「…ありがとうございました。…行きます!」

 

 

 

かつての戦友に感謝し、私は機体を発進させて亜空間に突入する。

そして『ノーメマイヤー』が使っていたバイドのリングを変質させ、バイドが辿った道を開いた。

 

 

 

「今です!」

『第二R大隊、突入せよ!』

 

 

 

私がその道を先導し、それに100機以上のR戦闘機が続く。それを確認した後、私は自分の(・・・)記憶を頼りに、26世紀(ウマレコキョウ)を目指した。

 

 

 

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