ステーシーズ 少女再殺別録   作:友氏

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唐突に何か書きたくなり、渋川と詠子の捏造小話をちょっとだけ。
約使とモモも好きですが、やっぱり個人的にはこの2人がベストコンビです。


ありもしないゆめ

「渋さん、こっちこっち!」

「おいおい、詠子。そんなにはしゃぐなよ」

「渋さんが落ち着きすぎなのよ。ほら、早く早く」

 

 詠子は満面の笑みを浮かべながら、そう僕を手招きする。明るい声は僕を引き寄せ、自然と足が速まっているのを感じた。うずうず到着を待っていた彼女は、ようやく近づいてきた僕の腕を取って言う。

 

「詠子ね、こんなの初めてなの。デートみたいだね、ちょっとドキドキするね」

 

 デート……。その言葉は、少し犯罪じみたものを感じる。僕は10も歳の離れた女の子に腕を取られていることを実感して、思わず後ずさりをしてしまった。詠子はそんな僕の様子を見て、下品とも言えるニヤついた表情を浮かべる。

 

「あっ、渋さん。今何か考えた?」

「ばかいえ。周りから見たらきっと変な見栄えなんだろうなって思っただけさ」

「ふーん? 本当かなあ?」

「当たり前だ」

 

 僕は少しばかり赤くなった顔を彼女に見られないように、詠子より少し歩を進めた。絡んだ腕を少し緩めて、彼女の手を取る。

 

「デートなんだろう。男がリードするもんだよ。ほら」

「あっ……」

 

 彼女の顔をうかがい見れば、繋がれた手と手に視線を落として、ぽかんと口を開けている。その反応はあまりにウブで、新雪のようで、愛らしくて……彼女はまだ、少女だった。

 

「詠子」

「なぁに? 渋さん」

 

 少女である彼女には、こんなに明るい未来が待っていて。

 

「……詠子」

 

 生きる希望も、夢も、何もかもが、彼女を包んだはずだった。

 

「渋さん」

 

 だが、世界はどうして、こうなってしまったのか。

 

「ありがとうね」

 

 15歳から17歳までの少女が突然死を迎え、生ける屍「ステーシー」と化す。

 

「詠子、僕は」

 

 再び殺すと書いて“再殺”。ステーシーを殺すことのできる再殺権は、家族・恋人のみに限定される。

 

「ありがとう。ごめんね。大好きだよ」

 

 これはありもしない幻想(ゆめ)。

 僕は、彼女に、何をしてあげられたのだろうか。

 

 “ライダーマンの右手”が、唸りを上げる。

 

『別れても、また出会えたら、それでチャラよ』

 

 彼女は笑って。最期まで。

 

「ありがとう。ごめんな。大好きだ」

 

 165分割の肉片になるまで、僕は、その衝撃を彼女に与え続けた。

 

 これはありもしない、幻想。

 

『詠子ね、サチコのこと、ちゃんと再殺したんだよ。お父さんとお母さんを食べちゃったサチコのこと。再殺部隊が間に合わなくてね。ちゃあんと、165分割にしたんだよ』

 

『詠子には兄弟も恋人もいないから。渋さんにその権利をあげるね。詠子のこと、しっかり再殺してね』

 

 僕は、君に。

 最期の救済を、与えられたのだろうか。

 

 その答えは、ない。

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