精霊達の日常〜Another Story〜   作:Atlas_hikari

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※この小説は百合要素を含みます。
苦手な方はご遠慮下さい。


初の代理投稿なのです!
ペンネーム:林檎飴 さん

それでは、どうぞ!



八百万 神々もまた 恋しれり

麗らかな春の午後のことだ。

青空の下に二人の少女の声が響いた。

「「好きな人ができた!?」」

「しーっ!声が大きいよ二人とも!そこまで驚くことじゃないでしょ!?」

女三人寄れば姦しいとはよく言うが、彼女らもその例外ではなかった。

人が疎らな団子屋の一角で、彼女らは話を弾ませる。

「い、いや…悪い意味じゃないんだ…」

「そうですのよ…恋愛に人一倍疎そうなミコトさんが恋心を抱くなんて…」

「夢にも思わなかったからなぁ…」

「ひどいなぁ二人とも…私だって恋くらいするもん!」

ミコトと呼ばれた少女は落胆の色を見せる。

「も、勿論ですが変な意味じゃありませんのよ!?」

「そ、そうだぞ!心の底から意外だっただけだ!」

「トミちゃんもマトイちゃんもフォローになってないよぉ…」

トミ、マトイと呼ばれた少女たちはあからさまな動揺を見せつつミコトのフォローに回る。

「まぁそれはさておいて…」

(さておくの!?)

「ミコトは一体誰を好きになったんだ?私たちだけでいいから教えてはくれないか?」

するとミコトは急に態度を変え

「えぇ…それはちょっと…」

と露骨に焦り始める。

それを見たトミは『好きな人がバレる事に対しての焦り』と解釈し、ニヤリと笑みを浮かべ

「私たちはミコトさんの恋路を応援したいんですのよ!だからぜひお教えいただけませんこと?」

ダメ押しとばかりに頼む。

するとミコトは

「え?そうなの?…それならしょうがないなぁ…」

ミコトは二人の前で耳打ちの姿勢をとる。

二人が耳を近づけたタイミングを見計らってミコトは口を開いた。

「実は……ツクヨちゃんなの……」

それを聞くと、二人は落ち着いたようすで席につき茶を一杯啜り、そして二人同時に叫んだ。

「「えええええええええ!?」」

「ツクヨって…あのツクヨさんですの!?」

「なんということだ…まさかミコトがツクヨに恋をするとは…」

「二人とも声大きいよ!誰かに聞かれたらどうする……の……」

ある一点を見つめたまま徐々に威勢を無くしていくミコトに疑問を持った二人はミコトが見つめる方を見た。

すると、そこには目を見開いて心底驚いた様子でミコトを見つめるスオウと何かを察したような神妙な面持ちで立ち尽くしているセイがいた。

 

「なんでスウちゃんとセイちゃんが聞いてるの……?」

魚のような死んだ目に涙を浮かべ頬を紅く染めているミコトを目の前に戦神二人はバツが悪そうにしている。

「悪ぃなミコト…俺らも聞く気は無かったんだが…」

「ああ…店に入るタイミングがまずかったな…」

気まずそうな二人を哀れに思ったのかトミが助け船を出す。

「まぁ知られてしまったものは致し方ないですわね…」

するとスオウは水を得た魚とばかりに

「そうだぞーミコト!潔く諦めろー」

「お前はもう少し悪びれろ。そして空気を読め」

そんなやり取りを目の前にミコトは

「むむぅ…」

と頬を膨らます。

その横でマトイは

「でもまぁよかったんじゃないか?ミコトからしたら恥ずかしさでいっぱいだろうが私たちからすれば友の悩みも聞けたし何よりも恋路を応援できるからな!」

するとミコトは僅かに顔色を変えて

「本当……?女の子が女の子を好きになったのに?気持ち悪くないの?」

と尋ねる。

これに対し各々が反応した。

「全くもってそんなことは思いませんわ!愛に性別はいらないですもの!」

「トミの言うとおりだな!ミコトが誰を好きになっても気にしないぜ!」

「つまりそういうことだ。俺たちはミコトの恋を本当に全力で手助けするぞ」

セイの言葉に一同は頷く。

するとミコトは泣き出した。

「みんな…本当にありがとう…嬉しすぎて…言葉が出ないよ…!」

泣きながら感謝し、団子を頬張るミコトを見て

「そういえば俺たち団子食い損ねたな」

「八つ時だからと思って入ったが…もう黄昏時だしな…」

するとマトイがこんな提案をした。

「それなら、これから改めて皆で飯でも食いに行かないか?」

この提案は好評なようで

「いいですわね!お寿司でも食べに行きましょう!」

「うむ、たまには贅沢もいいものだな」

そして3人は席を立った。

残ったスオウはニヤッと意地悪そうな笑みを浮かべ

「ミコトはどうするんだ?来ないのか?」

それを聞いてミコトは団子を飲み込み、涙を拭って最高の笑顔でこう返した。

「もちろん一緒に行くよ!みんなとはずっと一緒に居たいもん!」

そう言って二人揃って店を出た。

 

その後、寿司代を誰が払うかでモメたのは別のお話。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

仲間に秘密を告白してから数日後…

 

卯月のとある日の朝、ミコトは桜並木の一角で想い人を待っていた。

非常にそわそわしており、そして

「ツクヨちゃんとデート……楽しみだなぁ……!」

道行く誰もが見てわかるくらいには浮かれていた。

 

ーーー

 

何故こうなっているのか、発端は数日前に遡る。

「で、結局の所ツクヨの件はどうするんだ?」

マトイはエンガワを頬張りながら尋ねる。

「ん~…本当に迷ってるんだよ…やっぱり私が女の子に告白するのは変かなぁって…」

大トロを食べながらミコトは答える。

「愛に性別は関係ありませんわ!…とは言っても現実にこうなると由々しい問題ではありますわね…」

三皿目のイクラを片付けたトミも言う。

「もう何も気にしないで告白しちゃえばいいんじゃねーのか?」

大胆なことをサラッというのはアワビを注文したスオウ。

「そんな無茶苦茶な…とは思ったが案外それもいいかもしれないな」

とお茶を啜りながらセイも共感を示す。

「どういうことだ?」

何皿目か分からないエンガワをつまむマトイ。

「ミコトが本当にツクヨの事を好きなら回りのことなんか気にすんなってことだよ」

醤油をアワビに浸けながらスオウは語る。

「そんなので簡単に決心がつけばいいのですがね…そんな簡単に気持ちが変わる方なんて滅多に」

中トロを食しながらトミがそう呟いた瞬間だった。

「みんなの言う通りだよね…うん!そうだよね!私頑張ってみるよ!」

海老の尻尾を口からはみ出しながら宣言した。

「今度ツクヨちゃんとデートしてみるよ!」

そこまで話が進んだとき、セイが気付いた。

「…そういえば…代金って誰が払うんだ…?」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ということで、ミコトは今日ツクヨに想いを告白することになった。

ミコトにとっての大きなイベントであり、その分準備も万端だった。

「おめかしもしたし…ツクヨちゃんに渡す蒼玉も用意できたし…大丈夫!」

ただ一つだけ本調子ではないものがあった。体調である。

別に風邪を引いている訳ではないのだが、昨日の夜にはしゃぎすぎて一睡もしていないのだ。

「うぅ…やっぱり少しでも寝ておけばよかったなぁ…すごく眠い…」

隈こそ無いものの、三寸でも目を瞑れば直ぐに夢の世界へ旅立てるくらいの眠気がミコトを襲っていた。

「だ、だめだめ!寝ちゃだめ私!」

ミコトは自分の頬を叩き眠気を払おうとする。

とその時、ミコトは妙案を思い付いた。

「そうだ!眠気覚ましついでに今日の成功を祈って和歌を詠もう!」

すると、言うが早いか荷物の中から筆と短冊を取り出した。

「う~ん…どんな歌にしようかな…………………………よし、決めた!」

 

幾時も

想い積もらせ

恋心

我が言の葉は

「すき」と紡がん

 

「素敵な詩だね」

「でしょ?久しぶりの自信作なの!」

「うん!ミコトちゃんらしい良い詩だと思うよ」

「ありがとう!ツクヨちゃ…ん…?」

そこまで言ってミコトは気付いた。

「うわぁ!ツ、ツクヨちゃん!?」

「そうだよーツクヨちゃんだよー」

「い、いつからここにいたの!?」

「ホンの少し前からだよー」

ミコトは驚きのあまり、まだ目をパチクリさせている。

そんなミコトをお構い無しにツクヨは話を進める。

「今日は誘ってくれてありがとうねー」

「う、うん!こっちこそ来てくれてありがとう!」

微笑ましい光景である。思わず彼女らの回りに満開の白百合が見えそうな、そんな穏やかさだ。

「これからどこに遊びに行くの?」

「それは着いてからのお楽しみ!

私が一生懸命考えたプランだから期待してて!」

「おぉ…それは楽しみだなぁ♪じゃあ時間も勿体ないし早く行こうよ」

そう言うとツクヨはミコトの手に指を絡ませる―俗に言う恋人繋ぎである。

ツクヨが確信犯であるかどうかは分からないが、ミコトは下界の人間から聞いたことがあった。

だからこそ、ミコトは余計に意識してしまったのだ。

「ツ、ツツツクヨちゃん!?この手は!?」

「え?ああごめんね…ミコトちゃんは手繋ぎたくなかった?」

「いや!そうじゃないけど!」

半分しどろもどろになりながらも、ミコトはツクヨの手を引っ張る。

「さ、さあ!今日はいっぱい遊ぼう!」

 

―――

 

十数時間後、ミコトはとある場所で目を覚ました。

(あ…あれ?ここどこ?)

ミコトは焦った。何せ気が付いたら見知らぬ天井が目に入り、そして見知らぬ蒲団で寝ていたのだから。

ミコトはとりあえず体を起こし、記憶を過去に遡る。

(えっと…朝にツクヨちゃんと会って…そのあとお汁粉屋さんに行って…見世物芸を見物して…そして河原を散歩してて…あれ?そこからの記憶がない…?)

と、ここまで思考を進めたその時だった。

「目が覚めた?」

という聞きなれた声が部屋の中に響いた。

ミコトが声のする方に振り向くと―そこには心配そうな顔でミコトを見つめるツクヨがいた。

「ツクヨちゃん!これってどういう…痛っ!」

「ああ動かないで!まだ腫れてるんだから…」

それを聞き足元に視線を走らせると、確かに左足首に包帯が巻かれていた。実際の様子は伺えないが、ツクヨの言うとおり腫れているのだろう。

「ねぇツクヨちゃん…一つ聞いて良い?」

「どうしたの?ミコトちゃん」

「私はどうして今ここにいるの?」

それを聞いたツクヨは軽く頷き、ゆっくりと語り聞かせてくれた。

 

ツクヨの話は長かったので要約すると

・河原を歩いているときにミコトが足首を捻った

・そのせいでミコトがよろめきは川に落ちてしまった。

・川は浅かったので川底に頭を打ってしまったのだろう

ということだった。

 

「じゃあ、もしかしたらそのときの衝撃で…」

「記憶が飛んじゃってるのかもねー」

あっけらかんと言い放つツクヨに対し、ミコトは相当落ち込んでいた。

「そんな…そんなそんなそんな!」

軽くヒステリーになりながらミコトは涙を流しはじめた。

「折角のツクヨちゃんとの思い出が消えちゃったなんて…そんなの嫌だよ!」

ツクヨはそれに対して慰めようと思ったのか

「大丈夫だよーミコトちゃん!

私の心の中には思い出いっぱい詰まってるから!」

と、火に油を注ぐようなことを言ってしまった。

するとミコトは

「じゃあ私もなくなった分の思い出作りたい!」

半ば無理難題をツクヨに押し付ける。

それでもツクヨは平気な様子で

「じゃあ今日の最後の思い出作ろうか!」

そう言うが早いかミコトを蒲団に押し倒し、両手首を押さえつけ―俗に言う床ドンの姿勢だ―妖しげな目をミコトに向ける。

「ツクヨちゃん…何をすr……!?」

ミコトが何かを言おうとしたがお構い無しにその唇を封じた。

勿論、己が唇を以てして…

 

30秒程経っただろうか、ツクヨから顔を離した。

「どう?これも一種の思い出じゃない?」

悪戯っ子のような笑みを浮かべるツクヨ。

そしてこうも続けた。

「私ね、ミコト杯の頃からずっとミコトちゃんのことが大好きだったの…もちろん恋人的な意味でね」

自慢げに語るツクヨだが相対するミコトは何故か悲しげだ。

そんな様子を見て流石に気まずく思ったのか、ツクヨがミコトを見つめていると

「!?」

ミコトが急にツクヨを抱き寄せ

「……ヨ……ん………ルい……」

「え、え…?」

「ツクヨちゃんだけズルいよ!」

―ミコトも負けじと唇を重ねた。

しかもツクヨの物とは比べ物にならないくらい長く、そして深い物だった。

 

長いような短いような、永遠か一瞬かと見紛いそうな、そんな時間が空間を支配した。

唇を再度離し、最初に静寂を破ったのはミコトの声だった。

「私もツクヨちゃんのこと、ずっと想ってた。本当に、心の底からずっと…」

ツクヨも口を開こうとするがミコトが手で制する。

「今ここで言わないと一生後悔しそうな気がするから…言わせてもらうね」

一呼吸おいて言葉を発する。

「私、ミコト・ウタヨミは…

ずっとツクヨちゃんのことが…

大大大…奴でした!」

 

この神聖な空気をぶち壊すミコトの一言に、ツクヨは一気に脱力した。

 

「あの…ミコトちゃん…?今何て言ったの…?」

「え?大奴…え!?」

ようやく自身のミスに気付いたミコトは急に焦りはじめた。

「なんで…なんで!?なんで奴って言っちゃったの私!?」

「そうだよねー私との待ち合わせ前に素敵な詩詠んでたのにねー」

そう言ってツクヨは短冊を取りだし読み上げる。

「幾時も 想い積もらせ 恋心 我が言の葉は 奴と紡がん…」

「…あ」

「あ」

「書き間違えてるうう!」

なんと、ミコトは「好」と「奴」を書き間違えていたのだ。

「ああ…良い雰囲気だったのに…ぶち壊しだよ…」

明確に気を落とすミコトだが、ツクヨは気に介しない様子で優しくミコトを抱き締めた。

「大丈夫だよミコトちゃん…私にはミコトちゃんの気持ちがよく伝わったよ…」

ツクヨはミコトの頭を撫で続けながら諭すように言った。

「そういう可愛いミスをするミコトちゃんも私は大好きだよ…」

その言葉を聞いて、ミコトも安心したように言葉を続けた。

「私も…ツクヨちゃんのことが…大好きです…!」

「お、ちゃんと言えたねー」

「こっそり書き直しておいたんだよ!」

「もう…ミコトちゃんったら…」

 

その後、二人の姿が再び目撃されたのは翌日の昼過ぎのことだという。

何があったのかは我々の知ることではないが、今まで以上に仲睦まじい様子だったという。




いかがだったでしょうか?

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それでは、また。
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