マシュマロ型提督   作:gromwell

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いつの間にやら前回からすっごく時間が経ってて驚きを禁じ得ない(;゚д゚)
大変お待たせしましたm(_ _)m

追記
めっちゃ誤字ってたのを修正しました


第十話『何て呼べばいいかしら!?』

 麻守鎮守府のランドマーク的建物である司令棟の地下、その会議室に主だった艦娘が集結して、いつぞやと同じく会議を行っていた。

 

 今回の議題は「あの人を何て呼ぼう!?」というものであった。

 

 あの人とは先日着任した久蘇 定徳大尉である。

 

「順当に久蘇大尉でよろしいのではないですか?もしくは大尉とお呼びすれば……」

 

 控えめに挙手をして、大和が発言した。

 

「ああ、至極真っ当な意見だな。しかし……」

 

 そう、長門が言葉を濁した。

 

「幾ら何でも、クソはないわよね~」

 

 のほほんと愛宕が言った。

 

「余所の艦娘からしたら、クソ大尉なんて呼称、悪口にしか聞こえないわよね……」

 

 陸奥がうんざりした表情で言った。

 

 偶々長距離遠征の駆逐艦達を鎮守府に泊めたのだが、その時に久蘇の呼称について誤解されたのだ。

 

 高雄と、そして久蘇本人の説明によって何とか誤解は解けたが、何とも後味が悪い出来事であった。

 

「やはり、大尉とだけお呼びしますか」

 

 赤城の無難な発言に頷きかけるも、加賀のひと言がそれにストップをかける。

 

「ですが、大尉とだけ呼んだ時のあの人は悲しげな表情をするわ」

 

 誰しも名前を呼んで貰えないのは寂しいものである。

 

「ファーストネームで呼べばOKデース!サダノリ大尉と呼びまショー」

 

「それは失礼ではないでしょうか」

 

 金剛の案に高雄がやんわり反論する。

 

「じゃあもうサダノリで!」

 

「何がじゃあですか!」

 

 投げやりな金剛に高雄の鋭いツッコミが炸裂した。

 

 そのまま、会議室を沈黙が支配する。

 

 北上や大井は「見習い提督」呼びで決定しているのか、会議室に姿を見せなかった。雪風は舌っ足らずに「たいい」呼びである。

 

「ところで提督は大尉を何と呼んでいるのでしょうか?」

 

 このふとした大和の言葉に皆が考え込む。

 

 そういえば、麻守は何て呼んでたんだっけ?

 

「何かこう、喉に魚の骨が引っかかった感覚ね」

 

「思い出せそうで思い出せんな……」

 

 どうしても思い出せずに悶々とする長門型姉妹。

 

 ともあれ、もう久蘇の呼称は麻守に準ずるのが良いだろうとの結論で会議は終了したのだった。

 

「はぁ……、困ったわ」

 

 そう溜め息を吐いて、高雄は書類の束を抱え直して執務室へと向かう足を止めた。

 

 本日の秘書艦担当の高雄には、麻守が久蘇大尉を何と呼んでいるのか調査するという役目が押し付けられたのだ。

 

 提督見習いの久蘇は麻守にぴったりぺったり張り付いて、書類仕事や艦隊への指示・統率などなどを学んでいる。

 

 その関係で二人はいつも一緒に居るわけで、そこに張り付けるのは秘書艦以外に居ないのである。

 

「もう素直に、何てお呼びしたらいいでしょうか?とでも訊いてみましょうか」

 

 その方が手っ取り早いわけなのだが、そこは一部艦娘が意地を張っていたりする。主にビッグセブンとか。

 

「変なところで子供っぽいのだから、あの艦も困ったものだわ」

 

 ほぅっと、もう一度溜め息を吐くと、執務室へと再び歩き出す高雄であった。

 

 ──で、その執務室では久蘇大尉が麻守に相談をしているところであった。

 

「ふむ、艦娘達とうまく接する事が出来ないというのかね?」

 

「はい、何というか遠慮といいますか……。随分と気を使われている様なのです」

 

 艦娘達が久蘇の呼び方で悩んでいるなどとは全く思い当たらずに、よそよそしい艦娘達の態度について久蘇大尉は悩んでいたのである。

 

「む、何か思い当たる事柄はないのかね?」

 

「そういえば先日、遠征途中の艦隊を泊めた際に私の呼称について少々誤解を受けたそうです」

 

 あの時は本人である久蘇の説明もあって誤解は解けたのだが、それが原因で接しにくく感じているのでは、と久蘇は考えた。

 

「まあ、君の名前は読み方がなぁ……」

 

 そう言ってのほほんと麻守は笑う。

 

「なるほど、確かにクソ大尉などと呼ぶのを聞いては驚いてしまいますね」

 

 久蘇は困った様に苦笑した。

 

 久蘇自身は、あのような誤解など慣れたものであるが、艦娘達はあんな誤解を受けてしまった久蘇に対して気を使ってくれているのだろう。

 

「本当に良い娘達ですね、艦娘というのは」

 

 艦娘達の優しさに久蘇が目頭を熱くする。

 

 結局のところ、久蘇を何て呼ぼうかという艦娘達の悩みには少しも思い至らない久蘇大尉なのであった。

 

 そういえばと、麻守はあることを思い出してお腹をポンと両手のひらで叩いた。

 

 麻守が話題を変える時の癖である。

 

「そろそろ、君にも艦娘を迎えねばなりませんな」

 

 所謂初期艦というものである。

 

 今後、久蘇大尉はこの初期艦を通じて、実際に艦娘を指揮するという事を学ぶのである。

 

 その他にも艦娘との信頼関係の構築などの経過を見て、提督としての資質と資格があるかチェックするという目的もある。

 

 麻守の時は艦娘運用のまさに黎明期という時期で、僅か五隻の駆逐艦から選択せざるを得なかったが、現在ではその倍以上の数の艦娘から初期艦を選べるようになっていた。

 

 しかも、駆逐艦に限らず軽巡からも選べるのである。

 

「大本営所属の艦娘から選ぶ事が多いのだが、君はどうしますかな?」

 

「何というか、その、あまりピンときませんね」

 

 うむ、と麻守は頷いた。

 

 麻守自身も当時はそうであったのだ。それこそ、いつの間にやら初期艦に着任してた叢雲に、完全に尻に敷かれた状態でのスタートだった。

 

「焦って決める事ではないがね。初期艦候補のリストが届いているから、渡しておきますぞ」

 

「はぁ……」

 

 生返事でリストを受け取った久蘇大尉は何とも間抜けな表情で目を通す。

 

 艦娘の名前を見てもいまいち実感が湧かない様子である。

 

「む、そろそろ夕食の準備をせねば。では、儂は食堂へ行くが、君はそのリストをチェックしておきなさい。もうじき、詳しい初期艦候補の資料を高雄が持って来てくれるだろうから、夕食までにその資料も目を通しておくこと」

 

「承知致しました」

 

 久蘇の敬礼に見送られて、麻守は執務室を出て行った。

 

 それから少し経った頃に、高雄は執務室へ到着したのだった。

 

「あの、提督は……?」

 

 てっきり麻守も居るだろうと思い込んでいた高雄は軽くパニックである。

 

 まさか久蘇と二人っきりとは思いもしなかった高雄の狼狽えぶりに苦笑いする久蘇大尉はひとまず彼女をソファーに座らせるのだった。

 

「すみません、此方が大尉宛ての書類です。初期艦の候補に挙がっている艦娘の戦績や経歴などの資料です」

 

 ソファーに腰を下ろして、漸く落ち着いた高雄が業務を再開する。

 

「なるほど、練度が高く、秘書艦経験の長い艦娘が多いですね」

 

 高雄がテーブルに広げた資料を覗き込んで、久蘇は呟いた。

 

 呟きながらも、高雄の右手側に湯のみをコトリと置いた。

 

「あの大尉、お茶でしたら私がお淹れしますので……」

 

 見習いとはいえ提督である久蘇にお茶を淹れさせてしまい恐縮する高雄。

 

 更に湯のみを置くために屈んだ久蘇せいで彼の顔が間近である。あまりの近さに困った高雄が硬直してしまう。

 

 そんな彼女の姿を見て、久蘇も恐縮してしまった。

 

 上官である麻守の秘書艦である高雄は久蘇にとっては麻守に次ぐ上官である。そんなに恐縮されては困ってしまう。

 

 そんな結果、お互いに困り果てた久蘇と高雄は静かに見つめ合う事になってしまった。

 

 そんな時──

 

「む、何やらお邪魔なようですな?」

 

 開いた執務室のドアからにゅっと麻守が顔を覗かせた。

 

「「違います!!」」

 

 弾かれるように立ち上がった久蘇と高雄が同時に叫ぶ。

 

「ふむ、息もぴったりですな」

 

「「……!?」」

 

 顔を真っ赤にしてあたふたする二人をからかうような麻守の言葉に、高雄は眉を吊り上げた。

 

「もう、からかわないでください!」

 

「いやー、初々しいですなぁ」

 

「もう!なんですか突然!!」

 

 ケラケラ笑う麻守のお腹をぽふぽふ叩きながら高雄が抗議する。

 

 麻守のお腹をぽふぽふしている高雄が心なしかキラキラして見える。

 

 その姿を横目に、これ以上からかわれては堪らない久蘇は、こっそり秘書艦候補の資料を読み進めるのだった。

 

 結局、麻守の久蘇の呼び方が『君』であったため、久蘇大尉を何て呼ぼうという悩みは解決しなかったわけで……。

 

 久蘇の呼び方という問題は、高雄達の頭をまだしばらくは悩ませるのであった。




そろそろご飯の話書きたい
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