マシュマロ型提督   作:gromwell

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金剛の台詞の英語部分が微妙なのは察していただきたい!機械翻訳だからね、仕方ないね!


第二話『そのお腹を守りたい』

 麻守鎮守府とも呼ばれる内地近海鎮守府、その中心部である司令棟の地下に設えられた作戦会議室は重苦しい雰囲気に包まれていた。

 

 非常時にはシェルターとしても機能するその室内には、折り畳み式のパイプ椅子に腰掛け、折り畳み式の机に両肘を付き、組んだ両手を額に当てるという同じポーズで落ち込む鎮守府所属の艦娘達の姿があった。

 

 皆、揃って盛大な溜め息を吐いていた。何度も何度も。

 

 彼女等を悩ませていたのは、先日の愛宕によって引き起こされた麻守提督腹部改装事件。別名、提督のお腹があんなに気持ち良い訳がない!事件。

 

 麻守の尋常ならざる悲鳴に驚いた陸奥と高雄が執務室へ駆け付けてみれば、そこにはもはや生きた屍と化した麻守のお腹を三重・四重にキラキラしながら揉みくちゃにこねくり回す愛宕の姿。

 

 ともあれ、そのままにはしておけぬと愛宕を引き離してみれば、上半身真っ裸の麻守の姿が否応無しに視界中央を制圧・占拠する訳で……。

 

 そのお腹が触ってもないのに、スプーンでつつかれたプリンみたく、ぷるるんふよふよしてる訳で……。

 

「まさか、陸奥までもがああなるとはな……」

 

「やっぱり火遊びは駄目ね……。でもそう言う長門こそ」

 

「うむ、あれの感触は……、その、胸が熱くなるな……」

 

 ほんの悪戯心・出来心で麻守のお腹に触れた陸奥が、あっさりその心地良いもちもち感と極上の柔らかさの直撃弾を浴びて大破炎上・航行不能に陥った。

 

 高雄の救援要請によって駆けつけた長門に曳航されて、漸く我に返ったのはつい先ほど。

 

 因みに長門もこの時、うっかり麻守のお腹に触ってしまい、危うくミイラ取りがミイラになりかけた。

 

「「はぁ………」」

 

 ビッグセブン二隻の溜め息が重なる。己の不甲斐なさにちょっぴり涙目。

 

 しかして、このまま麻守のお腹を放置しておく訳にはいかないというのが、会議室に集まった艦娘達──長門・陸奥・金剛・高雄・赤城・加賀の総意である。

 

 ちなみに愛宕は罰として、適当な遠征に単艦で送り出されて鎮守府から離れていた。無論、失敗前提である。

 

「高揚状態をno costで発生させられるというのはとてもexcellentデース」

 

「かと言って、放置してしまっては余所の鎮守府の艦娘にも悪影響を与えかねません」

 

「そうですね……。ここは余所の艦娘に対して、キラ付け代金として間宮羊羹を徴収するというのは如何でしょうか」

 

「提督のお腹を羊羹で売る気?……一航戦の誇りは何処にやったの、赤城さん」

 

 会議を始めて既に二時間が過ぎようとしているが、問題解決の糸口はみえない。

 

 困った事に、麻守のお腹は艦娘を気分高揚状態にする事が判明していた。

 

 原因や理由については明石や工廠の妖精さん達が現在全力で調査中である。

 

 軍医にも診て貰ったものの、精神的にはともかく麻守の身体には特に異常はみられなかった。

 

 むしろ痩せる事は良い事ですと、今回の愛宕の行動には一定の理解と賛同を示してさえいる。

 

「原因の究明を待つ時間は無い。だが、その場しのぎの策すら見つからないのが現状だ。それに、この高揚状態化の手段を失うのも惜しい……」

 

 悩ましげに長門が呻く。

 

「上手く利用出来れば、艦娘の精神を安定させる事も可能だろう。間接的とはいえ、戦力の向上も期待出来るのではないだろうか?」

 

「お腹セラピー……、いえ、この場合は麻守セラピーと言う訳ね」

 

「やはり、これは間宮羊羹獲得の手段として……!!」

 

「馬鹿め、と言って差し上げますわ!」

 

「テートクのお腹を掴むのはこのワタシデース!」

 

「あら、あらあらあら!掴んじゃ駄目って言ってるのに、ちゃんと聞いてた?」

 

 時折、脱線しながら会議は紛糾していく。

 

 しかし、この場の誰しもに共通しているのは、麻守の身に無理や危険が及ばない事を前提としているという事。

 

 そういう点では皆の意思は一致していた。

 

 ただ一人、執拗に己の欲望を主張している者が居るには居るが……。

 

 彼女の名誉の為に言い訳じみた釈明をすると、彼女とて普段ならばそんな事は思いもしないのである。

 

 ただ、今回は日取りが悪い。何故なら彼女は休暇中だったのである。

 

 現に彼女ただ一人だけ、艤装どころか何時もの制服、即ち弓道着に似た白い着物に胸当て、丈の短い緋袴という出で立ちではなく、薄いピンクのシャツに淡い水色のジーパンというラフな服装で会議に出席していた。

 

 格好も気分もすっかりオフだった彼女は、もちろんその思考もオフに切り替わっていた。

 

 それが突然に会議に招集された訳で、着替える間もなく会議室へ連行された訳で……。

 

 そんなんで、いきなり普段の戦闘マシーンとも揶揄される程の軍人気質なオンの状態に切り替われというのが、全くもって無茶であり、無理な注文である。早い話、今の彼女は真面目に会議する気はさらさら無かった。

 

(やる気スイッチ?知らない子ですね)

 

 今現在も食べかけのまま、自室に置き去りにした自作の特大ココアムースが頭をよぎる。

 

(せめて服装だけでも普段通りなら随分しゃっきりするのですけどね)

 

 なかなか切り替わらない自分の意識のスイッチに、ほぅと溜め息を吐く赤城であった。

 

 ともあれ、このままこの問題を野放しにしていれば、艦娘による提督に対してのセクハラという前代未聞かつ、重大事件が発生しかねないのが現状なのだ。

 

 もしも、その犯人が余所の鎮守府所属の艦娘だったなら目も当てられない。余所の提督の首が飛ぶ可能性すらあるのだ。

 

「いっそ、MVPのご褒美にしてしまえば……」

 

 ポツリと赤城が呟いた瞬間に、会議室は水を打ったように静まり返った。

 

「Please say again.もう一度言ってくだサイ、赤城」

 

「え?」

 

 戸惑う赤城に金剛は真剣な表情で言った。

 

「大事な事なので二回言ったデス。さあ、Please say again.」

 

 その三回目の催促に賛同するように、長門が陸奥が、加賀が力強く頷いた。

 

 その何ともいえないプレッシャーにどん引きする赤城の背中を席を立った高雄がそっと優しく撫でた。

 

「何もかも吐き出して、楽になりなさい」

 

 高雄が吐いた刑事ドラマの取り調べシーンみたいな台詞に目が点になる赤城。

 

 なにその言いぐさ。訳わかんない。

 

 しかし、言わねば何時までもこのプレッシャーに晒されるだろうという事は理解した。

 

 ゆっくりと記憶を辿って、先ほどの言葉をもう一度、はっきりしゃっきり口にした。

 

「いっそ、MVPのご褒美にしてしまえば、とその様に言ったのですが……」

 

 うむ、と一斉に頷く艦娘達。無駄に貫禄があった。

 

「成る程、それはいい考えね。貴女はどう思う、長門?」

 

 「妙案だな。出撃回数が少ない関係上、MVPのみとするか否かは議論の余地はあるだろうが……」

 

「流石は赤城デース!それなら皆もやる気switchがONになるネー」

 

「流石は赤城さんね。ご褒美があれば……、気分が高揚します」

 

「そうなれば、無断で許可無く触ろうとする艦娘に対しての備えが必要ですね……」

 

 そう思案する高雄の手にはいつの間にやら長大なライフルが握られていた。

 

「そういう不心得者が出ないよう、私が提督を(スコープ越しに)見守りましょう」

 

 いや、そんな不心得者を狙い撃つ気満々で言わないで欲しい。というか、普通に怖いので止めてください。

 

「大丈夫です、装填しているのは明石特製対艦娘麻酔弾ですから」

 

 衝動買いしたコレがやっと役に立ちますね、と若干埃被ったライフルを撫でる高雄。

 

 もし麻守がこの場に居れば、お前もそんな無駄遣いしてたんかい!とツッコミを入れたろう。

 

 それより対艦娘用の麻酔弾など何に使うつもりだったのか、ちょっと問い詰めてみたい。

 

「では方針が決まったトコロで、細かい部分も決めて行きまショー!」

 

 俄然やる気スイッチがONになった金剛が右手を天に突き上げて叫ぶ。

 

「「「「おー!」」」」

 

 それに賛同する会議出席者達。

 

(早く帰りたいですねぇ……)

 

 それを眺めながら、赤城は密かにもう何度目か分からない溜め息を吐いた。

 

 こうして、当の本人である麻守の知らぬ所で、麻守のお腹の運用方法が話し合われ、決定されていったのであった。

 

 そうして何とも不幸な事に、この麻守セラピー計画書は即日、鎮守府所属の艦娘全員の署名と共に大本営に提出。

 

 後日、その計画書の採用と計画実行の命令を大本営より通達された麻守の瞳から光が消えたのは、また別の話である。

 

 なお、この件の解決にあたり、MVPとされた赤城は、ご褒美第一号として麻守のふよふよお腹を堪能したのだが──

 

「この触り心地、何だか大福が食べたくなってきましたねぇ」

 

 キラ付け効果はあったものの、無性に大福が食べたくなる衝動に駆られたという……。

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