生徒会長の話題がのぼってから3日が過ぎたころ、特別正のクラスではカムイ学長によるルーン工学の授業が行われていた。
その授業も終盤にさしかかろうというところで、カムイ学長は生徒会長の件についての会議を始める。
ちなみにミラとザックは居眠りをしている。ミラは腕を枕にしてうつ伏せに。ザックは顔の前に本を広げて隠れるようにして頬杖をついている。そしてその本は教本ではなくただの雑誌だった。
「はいそれでは、ルーン工学の授業はここまでにしておきましてぇ、先日お話した生徒会長の件ですが、皆さんの考えはまとまりましたでしょうか? どなたか立候補してはいただけないでしょうかねぇ? 特にソフィさん、カモメさんだったら私も嬉しいかなぁなんて……。ハハハ」
学長もやはりソフィ達を押しているな。とソウマは思った。
「ありがとうございます……。ですが、国の事もあるので、生徒会長という大役をやってもいいものか簡単には判断がつかず……」
「私は一端の軍人ですので、そのような大役はつとまりませんね」
元々氷の国の王女であるソフィは、国と学園両方を統治することは不可能に近いと感じていた。現在も、頻繁に国と行き来しているソフィだ。王女をやっているのだから生徒会長なんか簡単にできるのでは? とソウマは感じたが、あまり目立った行動はできないのかもしれない。
カモメもまだまだ自分は力量不足だと思っているようだ。
教室がしんと静まり返る。
「もちろん、ほかの方でも大歓迎ですよ」
後付けで学長はそう言ったが、それでも立候補者は現れなかった。
「どうですか? ヴィルフリートさん。あなたならそのぉ、威厳もありますし、お似合いかと……」
「我はそもそも冒険家とは遠い存在。そのような者がこの学び舎の長にならざるべきであろう」
「そうですよねぇ……」
誰も立候補しないまま、授業終了のチャイムが鳴ろうかという時、カムイ学長はコホンと咳払いをし、姿勢を正した。
「仕方ありません。あまりこういうことは言いたくなかったのですが……。生徒会長になった場合のメリットをお伝えしましょう」
また一つ咳払い。生徒たちは黙って聞いている。
「生徒会長になりその責務を全うした場合、卒業後、魔術ギルドのシルバーの称号を得ることになります。冒険者ギルドのシルバーももちろんつきます。間違いなく皆様のこれからの活動に良き影響を与えるでしょう」
「魔術ギルドのシルバー!?」
そう叫んだのはクライヴだった。
「ふにゃ?」
そしてミラが起きた。
茶熊学園を卒業すれば、おのずと手に入る冒険者ギルドのシルバーライセンスだが、それプラス、魔術ギルドのシルバー。一言で言えば誰もが羨む国家ライセンスだ。
学術都市スキエンティアにおいてはちょっとした権力者になれるし、国の施設、魔法工学院にも無料で出入りできる。自分の好きな研究ができるということだ。
定期的に行われる魔術会議にも参加することができ最先端の情報も得ることができる。他にも、ライセンスを質に入れて融資を受けることができるが、その場合の金額はここでは伏せておこう。
その他もろもろ沢山のメリットはあるが割愛。国の80%以上の住民は間違いなくこれを欲しているだろう。
教室内の空気がわずかに変わる。
ライセンスに反応を示したのは数人。誰も立候補せず気まずい雰囲気だったが、学長の話を聞いてそこに動揺の空気が生じる。カムイ学長もそれを感じ取り。
「では次の授業にまた改めて聞きます。時間もそれほどありませんので、次で最後としましょう」
そして授業終了の鐘が鳴った。