オリ大名をブッこんでみた。   作:tacck

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第十九話です。
サブタイを美濃動乱でこれから数話一貫させるか、一話ごとにつけるか悩んだためにああなりました。

では、どうぞ


第十九話 美濃動乱①【堂洞合戦】

 

 

利治を受け入れてから二週間後、織田信奈が今川義元の上洛軍を桶狭間で撃破したという報告が雷源にもたらされた。

それを聞いて雷源はただ一言「嘘だろう?」と言い、昭武は「だから言っただろ」とドヤ顔を浮かべる。と言っても昭武自身、信奈が勝つとは本気で思っていなかった。

 

(買い被り過ぎかと思ったが、まさか本当に勝っちまうなんてな。オレも中々見る目があるじゃねえか)

 

その後の報告で、織田家と三河で今川から独立した松平と手を組んだと聞くと雷源はすぐに織田家へ書状を送った。

しかしそれより先に織田家からの書状が届いたのだった。

書状が届いた時、雷源は思わず「これはいい!正直出来過ぎだな!」と大笑いしたという。

書状の内容は、自分は西濃を攻めるから熊野家には中濃を攻めてほしいという援軍要請だったのだ。

一度そうと決まると雷源の行動は早い。次の日には美濃組と残留組を決めて、豪族、村長に動員令を出し、兵が全て集まるとその日のうちに軍の編成を済ませて、美濃組は桜洞城南門に集められていた。

美濃に行くは斎藤利治、星崎昭武、瀬田優花、琴平桜夜、琴平宗晴の五将で兵数は四千。

今現在の熊野家の動員兵力の限界が五千五百程度であることを考えるとほぼ総力戦と言える。

 

「雷源殿、このご恩はいつか必ず」

 

「いいってことよ。個人的な感情だがな、俺は義龍が気に入らねえんだ!血が繋がってるとかないとかその程度のことでてめえを育ててくれた人間を殺すなんざ許せねえ」

 

雷源は義龍とは相容れなかった。片や親を殺された人間、片や親を殺そうとした人間。風聞では義龍の実父は道三が追放した前守護、土岐頼芸とされているが、それでも雷源は嫌悪感がするのは否めなかった。

またかつての自らと似たような境遇に陥っていた利治に親近感を覚えていた。

 

「お気持ちお察しします」

 

自らに入れ込んでくれている雷源に利治は深々と頭を下げた。

 

一方昭武は桜夜に何やら尋ねていた。

 

「桜夜、美濃の豪族に忍びや細作を出していたようだが、誰かこちらに力を貸してくれる豪族はいなかったか?」

 

飛騨から稲葉山城に進軍するにはどうしても中濃を通らなければならないため根回しや工作は必須である。豪族を一つ一つ叩き潰して進軍することもできなくはないのだが、それではあまりに被害が出すぎるし、何より稲葉山城は天下の堅城なので兵数は残しておく必要があった。

 

「加治田城主、佐藤忠能がこちらに梅村良澤なるものを寄越してわたしたちに内応する旨を伝えて来ました」

 

加治田城は中濃三城といわれる城の一つで、中濃三城は互いに義龍政権を外敵から守るために同盟を組んでいた。この三城の一角が崩れたことは熊野家にとって僥倖だった。

 

「加治田城が味方についたのは大きいな。他はどうだ?」

 

「すみません。他にも中濃三城の一角、堂洞城主の岸信周に長近さんと盛清さんを派遣したのですが、内応を拒否されました。実際には盛清さんたちが会ったのは信周ではなく、その息子の岸信房でしたが、彼は私たちに自らの決意を見せつけるために自らの息子を斬り捨てました。他の諸侯はみな日和見です」

 

「なっ⁉︎そこまでするか?」

 

昭武には信房の行為に驚きを抱かずにはいられなかった。

 

「昭武殿、どうしますか?」

 

「どちらにせよ中濃三城は獲る必要がある。……そんなに戦いたいならまずは堂洞城から、だな」

 

「昭武殿、準備はよろしいか?」

 

話が済んだと見て利治が昭武に声をかける。

 

「ああ」

 

昭武は頷くと、利治は美濃組四千の前に立ち檄を飛ばした。

 

「これより美濃に進軍する!謀反人の義龍よ!首を洗って待ってるといい!」

 

「「おおおおおおーー!!」」

 

利治の檄に兵が猛々しく吠える。彼は父道三から義龍にはない将としての華を受け継いでいた。

 

斎藤・熊野連合軍四千、出陣。

 

 

数日後の美濃・堂洞城

 

「伝令!加治田城主佐藤忠能が我らを裏切り、熊野方につきました!」

 

「何だと⁉︎」

 

堂洞城主岸信周は伝令のもたらした報に憤っていた。佐藤忠能とは長井道利を通じて同盟関係にあったのだ。

 

「おのれ忠能……!中濃三城をもって義龍様を支えると誓ったあの言葉は、偽りであったか!」

 

「信周様、どうなさりますか」

 

近習が問うと信周は底冷えするような表情でこう言い放った。

 

「八重縁を引っ立てろ」

 

八重縁は忠能の娘で、信周と忠能と道利が同盟を組む際、信周の息子信房が道利の勧めで娶った姫である。

 

「わかりもうした」

 

信周は八重縁を家臣に連れてこさせると、縁を後ろから刺し殺し堂洞城に面した長尾丸山に磔にした。

 

「関城の長井道利殿に援軍を出してもらうよう使者を出せ。準備が整い次第、あの裏切り者を始末してやる」

 

使者が関城に着くと長井道利は援兵を承諾し、援兵二千を連れて岸信周と合流するために堂洞城に出陣した。

 

しかし、堂洞城に先に辿り着いたのは昭武と利治が率いる熊野・斎藤軍と加治田城から出撃した佐藤忠能軍だった。

熊野・斎藤連合軍は美濃に入ってから利治が周辺豪族に要請して五百の兵を借り受け、飛騨を出た頃は四千だった兵力が加治田城の兵力の五百も足して五千人という大所帯になっていた。

この数は、昭武どころか雷源すらも率いたことがない。

 

「オレは高畑山に陣取って、道利の軍を遮断する。西側に利治殿と琴平姉弟、南側に優花、北側は忠能殿に任せる」

 

「はっ」

「任せてください」

「承知しました」

「わかったー」

「わかりもうした」

 

五者それぞれ返事をする。昭武はそれを見て鷹揚に頷くと下知を下した。

 

「ではみんな持ち場についてくれ」

 

堂洞城は西は地形が険阻で守りが堅い。が、だからこそ敵が油断して防備がおろそかになるため、西が狙い目である。

昭武はそう読んで西側の利治隊と琴平隊に全兵の半分の二千五百を配していた。

 

「行くぞっ!」

 

先陣は琴平宗晴が切った。

五百の兵が西側の険阻な地形を進んでいく。

西側を守るのは岸信周。道三の下剋上の頃から戦ってきた猛将で加納口の戦いで織田信奈の従兄を討ち取っている。

そんな彼に昭武の甘い読みは通用しなかった。

 

「かかったな小僧共!かかれーー!!」

 

信周が険阻な地形を生かして至る所に伏兵を配していたからだ。

 

「うわーーー!!」

「みな、落ち着け!落ち着くんだ!」

 

熊野軍に動揺が広がる。如何に雷源に伸びしろがあると言われても今のこの時点では、経験を積んだ凡人にやや勝る程度。星崎昭武、琴平姉弟では歴戦の猛将に挑むにはまだまだ役者不足であった。

利治隊も熊野家の部隊ほど乱れてはいないが苦戦を強いられていた。

 

高畑山本陣

 

「全体の戦況をお伝えします。南側の優花様が単騎で数十人の敵を打ち取ったとのこと。北側の佐藤勢はほぼ互角といったところです。しかし西側の利治様、琴平桜夜様、宗晴様はすでに六百ほど死傷者が出ております」

 

西側の予想以上の惨状に昭武は冥目した。

やはり自分はまだ将としては半人前だということを痛感させられる。

 

「長井の援軍はどうだ?」

 

「ただいま津保川を渡河している最中です。おそらく高畑山東側の林を通り入城するつもりでしょう」

 

「よい、下がっていいぞ」

 

昭武は伝令を下げると自ら槍を持ち、高畑山の東側の林に向かった。本陣の兵も昭武を討たせるまいと後に続く。

それから数刻後、高畑山東の林に長井道利率いる援兵二千が通行していた。

その時、突然側面から矢の雨が長井道利軍に降り注ぐ。

 

「なっ⁉︎これはどういうことぞ!」

 

姿が見えない敵の恐怖に長井道利軍は浮き足立つ。

ーーその隙を昭武は逃さなかった。

 

「今が勝機だ、かかれ!」

 

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

昭武隊八百が坂上から叫び声を上げつつ長井道利隊二千に突撃する。

 

「敵だ、敵だ!応戦しろぉ!」

 

道利は声を枯らして兵に指示を送るが、昭武隊の怒号にかき消されて聞こえない。

結果道利が率いてきた援軍二千はもはや使い物にならず、道利はほうほうの体で関城に敗走した。

 

道利隊を撃破した昭武は高畑山の本陣に一度戻ると部隊を再編して西側の援軍に駆けつけた。

 

「桜夜と宗晴、利治殿の隊はまだ敗走してはいないな。間に合ったか」

 

「昭武殿、援軍に来てくれましたか」

 

利治が昭武を見つけ、駆け寄る。かなりの混戦になっていたからだろうか、利治の具足は泥まみれだった。

 

「とりあえず敵の援軍は叩き潰してきた。これで向こうには後詰めがない。安心して攻められるぞ」

 

「それはありがたい。しかしどうやって敵の援軍を叩き潰したんですか?本陣には八百の兵しかいなかったはずですが」

 

「奴らが通る林の中に伏兵を配して、奴らが通った時に矢の雨を降らせて、槍を持って突撃しただけだ」

 

「そうは言っても敵は二千、兵数差は二倍半はありますよ」

 

「一度攻撃して相手が反撃する前にもう一度攻撃をかければ、二倍の兵を率いているのと同じだろ」

 

「簡単に言ってのけますなぁ……」

 

昭武の放言に利治を苦笑する。そんなことは自らの父たる斎藤道三ぐらいの将が言ってはじめて真実味を帯びるというのに、なぜまだ十も戦をこなしていない若者の時点でこうも説得力があるのかと。

 

「そうそう利治殿、余裕があれば兵にこう叫ばせておいてくれないか?道利の援軍は叩き潰した。援軍はもう来ないってな」

 

「承知いたした」

 

この時、昭武も利治も傍目で見たらギョッとするぐらいに悪い笑みを浮かべていた。

 

昭武隊は今度は琴平隊の援護に回る。

琴平隊は昭武隊の援護を受けると奮起し、信周の軍勢を押し返し始めた。

 

 

 

堂洞城の戦いは佳境を迎えていた。

北の佐藤勢は勝手知ったる山道を進んで北側の守将岸信房と一進一退の攻防を繰り広げ、西側の三将は序盤こそ苦戦していたが昭武の督戦と援護により奮起し、信周軍を押し返し始め、南側では依然瀬田優花による猛攻が行われていた。

 

「進まば生き、退かば死す!皆の者奮起せよ!」

 

「「おおおおおおおおおおお!!」」

 

信周は檄を飛ばし、兵は沸き立つ。

だが、戦況は日暮れになると決定的なものとなる。

北側の信房の兵が継戦不能なほどに消耗し、信房自身も傷を負い、切腹して果てたのだ。また援軍が来ないという事実は岸勢の士気を著しく低下させた。

 

「そろそろ頃合いだろう」

 

これ以上岸勢の抵抗は不可能と見て、昭武は攻撃の手を緩め、信周に降伏を進める使者を出した。

しかし信周は降伏を受け入れず、使者に書状を持たせて帰らせた。

書状には『我々、既にあなた方から差し出された手を振り払いました。それなのにもう一度手を差し伸べていただいたことはありがたく思っております。しかし降伏を受け入れるつもりは毛頭ありませぬ。我々が臆するところは死ぬることではなく、変節漢と蔑まれることゆえ』と記されていた。

信周は城を枕に討ち死にするつもりだったのだ。

 

「もう翻意は無理か。琴平と利治殿、そして優花に伝えよ。堂洞城を叩き潰せ、と」

 

戦闘を再開した信周の軍勢は西の四将と優花を相手に十八回にわたるかけ合いをしたが、優花の攻勢がとりわけ激しくついに城内に後退し、それを四将と優花が追い立てて敵味方の区別がつかないほどの乱戦になっていた。

その中で信周は自らの妻、坂額と共に刀を振るっていた。

 

「信房はどうしているか?」

 

「北の方は既に打ち破られていると思います」

 

「そうか……!」

 

信周の瞳から涙がはらりと落ちた。

 

「武士が戦場で命をおとすのは世の習い。さあ私たちも討死を急ぎましょう」

 

そう言った後、坂額が一首歌う。

 

先立つも暫し残るは同じ道、この世の隙をあけぼのの空

 

信周が返すには、

 

待て暫し敵の波風きり払い倶に至らん極楽の岸

 

「裏切り者を始末できなかったことが心残りであるが……致し方なし」

 

「では御前様」

 

「ああ」

 

二人は互いに向き合って刀を構え、そして互いの心の臓を貫いた。

 

********************

 

堂洞城の戦いは岸信周夫妻の自決と堂洞城兵の玉砕により幕を閉じた。

その日の晩、昭武と優花は加治田城の佐藤忠能、忠康親子の屋敷に宿泊していた。

 

「昭武殿御自ら我らのお屋敷に来ていただけるとは光栄の極み!不肖佐藤忠能、稚拙なれどおもてなしをさせていただきまする!」

 

佐藤親子は飛騨の獅子と名高い星崎昭武が今自らの屋敷にいることに激しく感激、興奮していた。

彼らは一庶民から飛騨の大勢力の二代目に成り上がった昭武に若かりし頃の斎藤道三の影を見ていたのである。彼らは保身のために長良川の戦いの時は道三側ではなく義龍側についたが、けしてそういった下剋上を嫌っているわけではなく、むしろ好んですらいた。

 

「なんかすまないな」

「いいえ、お気になさらず」

「そうだよ武兄い、せっかくの宴、楽しまないと損だよ!」

 

佐藤親子の熱烈な歓迎に未だに自分の影響力を自覚していない昭武は申し訳なさを感じ「やっぱ自分の陣で寝泊まりした方がよかったかな」と苦笑い。一方此度の戦いで一番手柄をあげた優花はひたすら佐藤親子の出した料理を貪っていた。

 




読んで下さりありがとうございました。
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次話も合戦になります。
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