急に削除して申し訳ありませんでした。
見返したみたところ書きたかった部分の内容が思いの外薄っぺらくて嫌になったので、大規模な編集をしました。……といっても話の大筋は変わってないです。文量は過去最大になってしまいましたが……。
その後、白雲斎は縄で半兵衛の四肢を縛った上で、ドーマンセーマンの護符と名刀「虎御前」を取り上げて事情聴取を行った。
半兵衛曰く、自分は身体が弱くて本来は故郷の菩提山で晴耕雨読の日々を送っていたが、叔父の守就が元道三の片腕ということで義龍の心象が悪かったので、家名向上のために自分が義龍に知恵を貸したとのこと。
しかしその結果として半兵衛が軍師の地位に急に上り詰めてしまったので初出仕の際に半兵衛を妬んだ義龍の家臣に暗殺される可能性が浮上。それを防ぐために今回護衛を集めることとなったという次第であった。
「……くすん、くすん。白雲斎さん、これでわたしの知ってることは全て話しました。だからといってころさないでください……ぶるぶるぶる」
「よかろう」
「へう、ああ、ああ……」
白雲斎によって四肢の拘束を解かれると半兵衛はそのまま床にへたり込んでしまう。白雲斎の事情聴取は泣き虫の半兵衛相手でも容赦のないものであった。拷問こそ行われてはいないものの、半兵衛の心には深い白雲斎への恐怖を刻みつけられた。
その様子を見て他家の良晴、犬千代、長政はもちろん主家の昭武と優花でさえ引いていた。
仕官面談から三日が経ち、ついに半兵衛の初出仕の日を迎えた。
半兵衛主従は今、金華山……稲葉山城がある山を登っている。金華山という名は椎の花が咲き誇ると山全体が黄金色に輝いて見えることからきている。金華山は井ノ口から見れば北東に位置し、これは京の北東にそびえる比叡山に比すことができる。また井ノ口の町の東西に山地が、南北には川が流れている。
「このような事柄からこの井ノ口の町と稲葉山城はまさしく背山臨水。陰陽道の理にかなった王都といえます。天下を望む蝮さまや織田信奈がこの城にこだわるのもわかりますね」
「そういえば、親父も松倉の町の北東に新しく寺を建ててたな。それも結構大きなやつ」
「そうでしたか。熊野雷源はもしかすると陰陽道の理を知る側の人なのかもしれませんね」
「そういえば半兵衛ちゃんはさー、なんで今まで道三どのに仕えなかったの?話も何度か来てたんじゃないの?」
優花が半兵衛に尋ねると半兵衛は震えつつ、答えた。
「先代の蝮さまがとてもとても怖かったんです……」
「なるほど。確かに、あの爺さんはおっかねえよなぁ」
「だな」
良晴と昭武が相槌を打つ。
「でも戦に出るのはもっと怖いよ?よく仕える決心がついたよね」
「……尾張には蝮さまと第六天魔王の織田信奈、怖い人が二人もいるんです。その二人がいる国に攻められるなんて恐ろしくて恐ろしくて……」
「その点、近江の浅井長政は義に厚い勇将として人気が高いと聞くが」
「けっ、この女たらしのどこが義将なんだよ」
「勇将って言っても親父よりだいぶ格下の端武者じゃねえか」
ちゃっかりと売り込みをかけた長政に良晴と昭武が揃って長政に反発する。
「昭武どの、小国の勇など大国の前にはいつかは下されるもの……、将の器量だけで乱世は乗り切れまい」
「そうやって増長して魏の曹操、前秦の苻堅のように全軍壊滅の憂き目にあった大国もある。長政公もそうならないとよいがなぁ?」
意地の悪い表情で長政に言い返す昭武。会ってわずかではあるが、昭武もまた良晴と同じく長政を快くは思っていなかった。
「あのう……相良どの、浅井どの、星崎どの。わたし、尾張にも近江にも飛騨にも寝返りませんから……寝返ったりしたら義龍さまに恨まれていぢめられます……尾張には蝮さまと織田信奈がいますし、飛騨には戸沢白雲斎、さんがおられますし、お味方するのは絶対無理です……ぐすん、ぐすん」
「げっ俺らの魂胆ばれてる」「貴様の声が大きいせいだ尾張ザル」と良晴は慌て、長政は唸るが、昭武は「や、あんな露骨に言い争いをしてれば馬鹿じゃなければ分かるだろ」と冷靜にツッコミを入れていた。
米
時間はやや遡って稲葉山城内、義龍の屋敷。
稲葉山城では義龍と道利、その他義龍政権の重臣が集まって密かに評定を行っていた。評定で話し合うのはもちろん半兵衛の処遇であった。
「竹中半兵衛は西美濃三人衆が一人、安藤守就の一族。あの道三の片腕と謳われながら、恥知らずにも義龍様に寝返った者の一族です。必ず奴の背後には守就がいます。信用するべきではないでしょう」
初めに発言したのは長井道利、中濃三城の一つ、関城主で義龍政権の柱石で、そしてあまり知られてはいないが、義龍が道三に対して謀叛を起こすように仕向けた張本人であった。
「しかしな道利よ、半兵衛の軍略はもはや美濃を守るに欠かせないものになっておる。守就が邪魔だというのなら幽閉してしまえばよいではないか」
道利に対して義龍は半兵衛を手放すのは惜しいと思っていた。
(無論半兵衛の才に恐怖はある。守就との軸帯も警戒は必要だ。だが、だからといって半兵衛を手放すわけにはいかぬ)
長良川の戦いでは半兵衛の能力無くして義龍は道三に勝利を収めることができなかった。ゆえにここで半兵衛を手放すことは義龍、そして義龍政権にそこまでの力はないと自ら認めてしまうこととなる。
「……義龍様。その判断、いつか後悔することになりますぞ」
しかして道利は義龍の言に納得してはいなかった。
(義龍様がやらぬのであらば、わしがやらざるを得まい。それも義龍様が直々に手を下さねばならぬ状況に追い込むのよ。相手は今孔明と呼ばれてこそいるが小娘に過ぎず、なにしろわしはあの道三を稲葉山城から追放させた男。それぐらいのことはできよう)
そして仄暗い笑みを浮かべつつ、道利は義龍の屋敷を辞したのであった。
米
半兵衛一行はついに稲葉山城二の丸の義龍屋敷前にたどり着いた。
「これはこれは半兵衛どの。加治田城以来ですなあ」
半兵衛一行が到着したのを待ち構えていた道利が屋敷の中から歩き寄る。その腕には柴犬が抱かれていた。
「この犬はわしの愛犬です。ほら、可愛らしいでしょう?」
そう言って半兵衛のに犬を抱かせた。そして、
「今孔明とあろう者が油断したな!今よ、思い知れ!」
「わおん!」
道利が叫ぶと犬がくるりと半兵衛にお腹を見せて、何やら黄色い液体をぶっかけた。
「え…え…え……!きゃあああああああああああ!」
半兵衛の悲鳴が城内に響く。
(さあ、怒れ、怒るのだ、竹中半兵衛よ。怒って刀を抜くなり式神を召喚するなりして謀叛を起こすのだ!)
泣き叫ぶ半兵衛を見て道利がニヤニヤと汚らしい笑みを浮かべていた。
「これは……?」
「何事ぞ⁉︎」
「あれは半兵衛どのではないか?」
「おお、なんと愛らしい少女ではないか!」
半兵衛の悲鳴を聞いて義龍たちが次々と門前に現れる。彼らは心配半分好奇心が半分で半兵衛に近づく。
「ぐすん……ぐすん…ぐすん、いぢめられますいぢめられます、いやあああああああああああああああああ!!」
しかし錯乱してしまった半兵衛は義龍たちが自分を始末するために集まってきたと勘違いし、手持ちのドーマンセーマンの護符を全て辺り一面にばらまいた!
護符から現れる式神の総数は十四体。これら全てが義龍たちに襲いかかる。
「「「なんじゃこれはーー!」」」
あまりの光景に義龍たち半兵衛主従問わず仰天する。驚かなかったのはこの混乱に紛れて式神と共に暴れた白雲斎だけであった。
「なっお前は何者か⁉︎」
「死にゆくものが知っても仕方なかろう?」
「ぐはあああああ!」
「式神も恐ろしいが、あの忍びも相当だ!とにかく逃げろーー!」
式神と白雲斎に追われながらも義龍は必死に逃げた。その結果、一刻後には白雲斎によって始末された長井道利、斎藤飛騨守を除いて義龍政権の将は稲葉山城から全て逃げ散ってしまった。
********************
「んで、稲葉山城を取っちまったみたいだが、どうするんだお前ら?」
最初に稲葉山城を取っていたことに気づいたのは昭武だった。
「半兵衛どの。行きがかり上このような事態になってしまいましたが、今からでも稲葉山城を手土産に私、浅井長政に仕えませんか?もちろんいじめませんとも。それどころかあなたをいじめる悪い男たちからこの猿夜叉丸が生涯お守りしましょう」
「待った。稲葉山城はいらねえからオレたち熊野家に仕えないか?白雲斎が怖いと言っていたが、味方になれば厳しいけど優しいんだ。白雲斎の愛弟子がそう言ってたから間違いない」
「おや、星崎どの。私の愛の告白を邪魔しないでいただきたい」
「なーにが愛の告白だ。やたらと気障ったらしいだけの仕官願いじゃねえか。稲葉山城を手土産にって言ってる時点で愛もひったくれもねえだろう」
昭武と長政がおでこを突き合わせていがみ合う。
「そうだ、愛はないけど政略結婚しましょうって言うような奴に半兵衛ちゃんが仕官しても幸せにならないぜ!」
そこに同じく長政を嫌う良晴が援護射撃をする。
「黙れサル。私は確かに信奈どのを愛してはいないが、半兵衛どののことは愛しているさ」
「うさんくせえ、本当に半兵衛どのを愛しているというのなら稲葉山城をあきらめろよ」
「なんだと、星崎どの。あなたも半兵衛どのを愛しているわけではないではないか」
「ああ、そうとも。確かにオレは半兵衛どのを愛しちゃいねえよ。ただ愛を語りつつ、ちゃっかり城まで獲ろうとしてるあさましい奴に仕官するよりかは幾分マシだろう」
「良いぞ昭武!この女たらしにもっと言ってやれ!」
「サル。お前はまだわからないのか、お前の様な氏素性もわからぬ足軽上がりが大名の姫君に懸想しても無駄だと」
「おおおお俺はな、ののの信奈が誰と結婚しようがどうでもいいんだからなっ!た、ただ長政!てめえはいけすかねえ!女の子たちを出世の道具扱いしやがって!それでも男かっ」
「良いぞ相良!この気障ったらしい人でなしにもっと言ってやれ!」
三者入り乱れて延々と罵倒の応酬を繰り返す。その間、優花と犬千代はお風呂で濡れ鼠になった半兵衛の身体を洗っていた。
********************
昭武たちはしばらく屋敷で休んでいた。罵倒の応酬を繰り広げている内にいつの間にか夕刻になっていたからであった。
その晩に事件が起こる。
長政が守就と面会をすると言って近づき、夜陰に紛れて誘拐したのだ。昭武たちはそのことを犬千代が長政の書き残した手紙を見つけ出したことで初めて知った。
手紙は「墨俣に半兵衛一人で来い。そうすれば守就を返そう」という趣旨で書かれていた。
「しまった……!半兵衛を調略できないと見て搦め手に出たか……!」
「昭武よ。どうする?」
いつの間にやら昭武の隣に白雲斎が立っていた。
「白雲斎。長政に守就が攫われたんだが、見ていないか?」
「いや、儂が稲葉山城に戻ってきたのはつい先ほどだ。先までは琴平姉弟と斎藤利治と共に関城攻めをしていた。関城は城主が死んだからか内通者が出た様でな、さして戦うことなく熊野家に降伏したぞ」
「なっ⁉︎これで中濃三城の全てが熊野家のものじゃねえか!」
白雲斎の報告を横で聞いていた良晴が呻いた。
「白雲斎、お前は単独で長政を追って守就を奪回してくれ。オレたちはしばし相良たちと共に行動する」
「よいのか?守就を放っておいてそこのサル小僧に稲葉山城をくれてやれば、半兵衛を浅井に取られることなく、美濃の戦いは全て終わるぞ?熊野家も半兵衛を得られずとも、稲葉山城を盗る助力をしたということでもっと多く美濃の割譲を織田信奈に迫れる」
これは実に白雲斎らしい非情かつ最良の策であった。だが、ここには黙して首を縦に振れない男がいる。
「白雲斎といったな……。俺はそんな策を認めねえぞ!」
良晴が目を怒らせて白雲斎を怒鳴りつけたのだ。
「ほう、何故か?」
「俺はな、木下藤吉郎という男の夢を継いだ!モテモテハーレムという夢だ。その夢を志すからには女の子に悲しい思いをさせられるかっ!ここは稲葉山城を捨てて安藤の親父を助けに行く!」
怒鳴りつけられた白雲斎は不思議とふふ、と楽しげに笑っていた。
「そうか。お前はそう答えるのか……。甘い。甘いと言わざるをえないが、よかろう。守就は儂とそこに隠れている小娘が助けに行ってやるとしよう。それでよいか?」
「うにゅ、やはりかの名高き戸沢白雲斎を前にして隠れきれるわけがなかったでごじゃるにゃ……」
白雲斎に看破されていた五右衛門もやや肩を落としながら出てきた。
「すまない、恩にきる!」
白雲斎の助力に良晴は頭を下げて謝意を表す。
その傍らで昭武は(白雲斎は本来そう易々と他人に力を貸すようなやつじゃない……。だというのに、この相良良晴という男は……!)と戦慄していた。
「しかし、そうなれば信奈どのと浅井氏の婚儀はいかがいたちまちゅか?」
かみかみになりながら五右衛門が問う。この蜂須賀五右衛門、台詞が約三十字を越えるとどうしてもかみかみになってしまう。
「ぐっ、なんとかなる、はずだ……!」
「なりますかな?」
「だがな、信奈を巡る長政との勝負に半兵衛は巻き込めねえ!野郎とはいずれ正々堂々決着をつけてやる!」
「やれやれ。全部の実を獲ろうというのは厚かましいでちゅな、相良氏。いつかはどれかを捨てることになりましょう」
「長政みたいなことをいうんじゃねえよ」
そう良晴が返した時にはすでに五右衛門は良晴の前から消えていた。
「長政との結婚を取りやめさせても、俺が信奈を嫁にする日なんて来ないさ」
誰にも聞き取れないぐらいの小さな声でつぶやく。
(なんでだろうな、あいつのことが好きなわけじゃないのに、どうしてこんなに胸がズキズキと痛むんだろう……)
良晴は知らず、心の臓に手を当てていた。
その姿を半兵衛が痛ましげに見ていることに気づきもせずに。
米
半兵衛一行は守就を救うと決めると墨俣に急行した。しかし墨俣に長政と守就の姿はなかった。ただ、またも砂地に書き置きが残されていた。
そこには「相良良晴が稲葉山城にいると義龍に城を返すことができないため、一計を案じて墨俣におびき出した。加えて今更半兵衛が義龍政権に帰参するのは無理なので、浅井に下れ。下れば守就を返す」といった意図のことが書かれていた。
長政は半兵衛のためと言いつつ、義龍を稲葉山城に復帰させて織田家の邪魔をしたのだ。
「やられたな……。長政相手にはどうしても後手後手に回らざるを得ないか……」
「どうして長政はこんなに信奈に執着するんだ!好きでもないくせに!」
「長政は多分、半兵衛さえ手元に置ければ自力で稲葉山城を獲れると考えているんだろうな。そうでなくては稲葉山城を捨てはしないはず」
「けど、どうするの?これじゃ織田家は……」
「ああ、稲葉山城を落とせねえから長政と婚姻をせざるを得ないな」
昭武は頭を抱えていた。
此度の美濃出兵は美濃の一部の割譲を受けるのもそうではあるが、織田家に恩を売りつけることも目的だった。
全ては織田家を核とする同盟を結び、新たな商業圏の確立をもって飛騨を豊かにするため。
しかしこのままでは織田家自体が浅井家にとってかわられるため、同盟の前提条件そのものが雲散霧消してしまう。それに加えて……ああも主のために奮闘する飼いザルに思うところがあった。
しばしの間考え、昭武はついに決断した。正徳寺に引き続き、あまり気の進まない決断であった。
「相良、オレたちはお前らが浅井に吸収されてしまうと非常に困る。だからだな、稲葉山城を獲るのにオレたちの軍勢を好き勝手に使っても構わない。半兵衛もこの際いらん」
「武兄⁉︎そんなことして大丈夫なの⁉︎」
「昭武⁉︎」
突然の昭武の独断、雷源からの命令無視を含んだ宣言に一同は驚きを隠せない。
「ああ、かまわん。このまま長政に転がされるよりは幾分かましだしな」
「ありがとう昭武!少し光が見えてきた!」
良晴が昭武の手を取って頭を下げる。昭武はそれを顔には出さないが、やや複雑な心境で見つめていた。
「では、オレたちはそろそろ加治田城に戻る。さすがにこれ以上軍にいないと変な噂とかが流れそうだ。動かしたい時はまぁ使者を出してくれ」
昭武と優花はそう言って墨俣から去った。その後、半兵衛がおずおずと良晴に近づく。
「あの……、良晴さん。少しよろしいでしょうか……?」
半兵衛の声はかすかに震えている。良晴の心意気が、昭武の決断が少しばかり早く半兵衛の背を押した。これより半兵衛は以後の自らの道行きを変えてしまうようなことを行おうとしている。しかし、半兵衛の心に迷いはない。
***************
加治田城への帰路にて昭武と優花は馬首を並べて語り合っていた。話の種はもちろん昭武のあの決断についてだった。
「武兄、どうしてあんなことをしたの?」
優花が問うと昭武は苦々しげな表情を浮かべる。
「織田家が長政に取って代わられるとまずいという理屈があるがこれは言い訳にしかならない。要するにだ、要するにオレは、相良良晴に負けたんだ……!」
「どうして?武兄と相良くんはあんまり論戦とかしてなかったじゃん」
「違う、舌先の話じゃない。武将としての器量でオレはやつに負けたんだ……。オレは、はじめはあいつらに半兵衛を渡すつもりはなかった。だが、相良がああも頑張るのをみてしまうとな……」
「確かにね……」
それは優花も思い至ったのかうんうんと頷く。
「オレはやつに絆された。見兼ねてつい手を差し伸べてしまった。こればかりはいくら武を鍛え、知を磨いたとしてもどうしようもない」
昭武が見るに、良晴には何やら不思議な力があった。良晴が信奈に尽くせば尽くすほど、周りが良晴に惹かれていく。
長政は利害が衝突するためその例には漏れるが、前田犬千代、蜂須賀五右衛門、竹中半兵衛そして戸沢白雲斎までもが個人差はあるものの、良晴に惹きつけられていた。
昭武は惹きつけられながらもその力に気づき、恐怖した。そして気づいていながらもついに力を貸してしまったのだ。
「大丈夫だよ、武兄。まだ悔しく思えるうちはまだ勝ち目があるんだってお父さんが言ってたの。だから、まだ武兄は完全に負けたわけじゃない」
悔しげに歯嚙みする昭武に優花が優しく諭す。普段は昭武が優花に対してこのような振る舞いをするのだが、たまにこの兄妹は役割が逆転する。
「そうか?なら今日のこの気持ちを大事にしなきゃな」
昭武の表情に笑顔が戻る。
先が見えぬ夜道を二人の愛馬が緩やかに進む。
(今はまだ、オレは相良の器量には遠く及ばない。だが、このまま素直に負けてやりはしない。オレにも意地があるからな)
二回目にもかかわらず読んで下さりありがとうございました。
犬千代は結局地の文でしか出せませんでした。多人数がひとところにいるとどうにも誰かの出番がなくなってしまいます。研鑽が必要ですね。
誤字、感想、意見などあれば再度よろしくお願いします。