オリ大名をブッこんでみた。   作:tacck

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第五話です。
原作キャラはまだ出ません。またオリ武将増えます。



第五話 金環党

雷源は桜洞城に入城してすぐに「戦国大名熊野家」としての体制を作り上げるべく、桜洞城一帯の豪族と一揆に参加した村の村長を集めて評定を開いた。

評定は豪族と村長が対立していて白熱し中々定まらなかったが、三日三晩をかけて討論して一応の結論をだした。

その結論は大まかに言うと次の二点となる。

一つめに琴平桜夜を宰相にすること。

二つめににゃん向宗を信仰している、内ヶ島家と同盟を結ぶことだった。

どちらも村長側が提案したことで、豪族は抵抗した。だが、それを村長側が勝利者権限を用いて無理やり黙らせた形となる。

 

宰相になった桜夜は内政においては隣国の斎藤道三の手法を参考にして楽市楽座を取り入れる、関の数を減らし関銭を値下げするなど刷新を図った。これにより熊野領に商人が入ってくるようになり、金銭収入を増やすことに成功した。

桜夜はできれば関所自体を撤廃したかったが、それをやってしまうと他国の産物が過剰に入ってきてしまい、まだ未熟な飛騨の産業が衰退してしまうため行わなかった。

軍事面でも雷源の家臣である荒尾一義と宮崎長堯が中心になって平湯村の兵の常備軍化と民兵の訓練を行い成果を挙げている。

 

「あー疲れた……」

 

星崎昭武は仕事を桜夜に押し付けて、馴染みの酒場で畳に寝転んでいた。

桜洞城を落としてからというもの、昭武の日々は忙しいものになっていた。書類仕事はもちろんのこと、兵の訓練、土木工事の陣頭指揮など多種多様な仕事が雨のごとく降りかかってくるのだ。

 

(桜夜の手が空いている時に仕事を押し付けるというのも、じきに限界が来るだろうな……。副将や祐筆みたいなのがいればそういうのを気にせずに済むのに……)

 

昭武が心中で願うも今の熊野家にそんな余裕はない。現状人材の頭数はいるのだが、任用に堪える人材が少ない。そんな下剋上をした勢力にありがちな状態にあった。

 

昭武が店主に酒を頼んですぐ、事件が起きた。

 

「オラァ!わごれ酒をださんかい!」

 

山賊が居酒屋に乱入してきたのである。その数は六十人。入れ墨を入れていたり、片目を潰したのか眼帯を付けているものもいて、かなり個性的な人が多い。姫武将が流行っているこのご時世でも珍しい女山賊もかなりいた。

その山賊の中から一人の少女が進み出て、甲高い声で叫んだ。

 

「客どもよ!私の名を知っているのなら疾くこの場を離れよ。これより我々金環党が暫しの間この場を借り受ける!」

 

少女の年はだいたい昭武と同い年ぐらいだろうか、髪は茶筅に結われていて、湯帷子を片肌脱ぎにしているため白い肌が剥き出しになっている。もっとも胸はサラシを巻いているため見えない。

昭武はこの少女を間接的にではあるが知っていた。

 

(この場で金森長近と出くわすなんてな)

 

金森家は元々前美濃守護土岐頼芸に仕えていたが、斎藤道三の下剋上により没落し浪人となった家である。

長近はそんな家を出て行って、近隣の同じ境遇の浪人達を集めて飛騨で一番の山賊衆を結成した。

以前、姉小路家が度々彼女達を抑えるため軍を率いたが、山賊一人一人が強くて歯が立たなかったのだ。

 

金環党の襲来により、ほとんどの客が酒場から逃げていく。

金環党の悪名は飛騨では随一のものであるが、これは一部金環党を騙る他の山賊のものも含まれている。何れにせよ民にとって恐ろしいことには変わりない。

しかし昭武は逃げなかった。

「そこのおまえ何を惚けている!お前、私のことを知らないのか⁉︎」

 

「いや、知ってるけどね」

 

「ならば、なぜ逃げようとしない? よもや怖気づいて足が動かないのか?」

 

「頼んだ酒がまだ来ていないから。以上」

 

「なんだと⁉︎」

 

長近は怒って昭武の胸ぐらを掴んで怒鳴りつける。しかし昭武は意にも介さず、長近の顔を眺めていた。

 

(目の下に傷があるけどなかなかの美少女だな……。山賊らしくないその華奢な体つきも、すんげえ色っぽい」

 

昭武自身は心の声のつもりだったが、がっつり声に出していた。

 

「げ、げ、下世話なことを言うなこの変態!死んでしまえ‼︎」

 

それを聞いた長近が顔を赤くして昭武に斬りかかる。それを昭武はひらりとかわした。

 

「おいおい、いきなり斬りかかってくるなんて短気だな。長生きしないぞ」

 

「うるさい!こんなに舐められた真似されたの初めてだ。みな得物を出せ!こいつを殺すぞ!」

 

長近が号令をかけるとすぐさま二、三人集まってきて昭武に同時に斬りかかる。

 

「はぁ、面倒くせ」

 

それらを昭武は愚痴りながら一閃した。腹を真一文字に裂かれた山賊達はうつ伏せに倒れる。

 

「てめえッ!」

 

怒った山賊達の一人が昭武に切り込みをかけたのが引き金となり、それからは酒場の中で昭武と山賊達の乱戦になる。

約六十人を相手に昭武は冷静に刀を振るい、次々と山賊を切り倒していく。そして四半刻ぐらい経った頃には戦える山賊の数は八人に減っていた。

 

(あれだけの数の手練れをこうもあっさりと……。なんて強さなの…)

 

戦慄した長近は自分の肩を抱いて体をガタガタと震わせている。だが驚嘆すべきことに残った八人は長近を見捨てずに彼女を守るべく、ささやかな横陣を組んでいた。

 

(すごいな…。これを為すのが長近の力量か。兵を惹きつけることに関しては今のオレでは及びもつかない。こんなやつが山賊だなんてもったいない)

 

「行くぞ!」

 

昭武が感心していると横陣から山賊の一人が突出して昭武の腹を突こうとしてきた。

 

「虎!」

 

長近が虎と呼ぶその山賊は井ノ口虎三郎と言っていわば金環党の副将格だった。

 

(なんだあいつは?)

 

昭武は面食らいつつもどうにか井ノ口の突進をかわす。

 

「かわされたか……」

 

井ノ口は自分の腕のなさに自嘲する。が、昭武はそうは思わなかった。

 

(あぶねえ…長近が叫ばなきゃオレはこいつの一撃を避けられなかった……。こいつはただものではないな)

 

昭武は刀を正眼に構え直す。

 

「そうしょげるな。お前は充分に強い。少なくともそこの山賊女よりかはな」

 

「避けた貴公に言われても嫌味にしか聞こえぬのだが」

 

軽口を叩きながら相手の隙を互いに探り合う。その結果、二人は四、五歩ほどの距離感でにらみ合いをしていた。

昭武と井ノ口の視線がぶつかる。

しかし幾ばくかの沈黙の後、耐えられなくなったのか、

 

「おりゃああああ‼︎」

 

昭武が井ノ口に斬りつけた。

 

「先に動くとは!貴公は愚かだな」

 

昭武の太刀を防ごうと井ノ口は槍を合わせる。タイミングもぴったりでちゃんと昭武の刀を受け止めていた。

 

「やはり強いなお前」

 

昭武がニタリと笑う。

 

「貴公も中々……!だが!」

 

井ノ口は昭武を蹴飛ばし、懐から脇差を取り出して昭武の脇腹を刺した。

 

「があっ‼︎」

 

昭武が脇腹から盛大に血を噴き出して膝をつく。

 

「卑怯とは思うが、頭を守るためだ。許せ」

 

井ノ口は山賊らしからぬ感性の持ち主だった。長近に従い、山賊に身をやつして数年経てども未だに正々堂々と相手を倒すことを好んでいたのだ。

 

「卑怯、か……」

 

脇腹を押さえながら昭武は体勢を整える。だが傷口からはダラダラと血が流れている。顔色もやや悪い。

 

(……今のでかなり血を持っていかれたな。こいつと長時間撃ち合うのはダメだ。まず負ける。短期決戦を仕掛けるしかないな)

 

「そろそろ貴公も終わりだろう。卑怯な真似をした贖罪として最後に俺の全力を食らわせてやろう」

 

井ノ口が槍を構え直す。

 

(ならばオレのやることは決まってる)

 

「だああああ!」

 

昭武は痛む体に鞭を打って駆ける。

 

(少しでも長引けばオレはまちがいなくやられる。やつが槍を振るう前に一太刀で終わらせる)

 

しかし

 

「はああ!」

 

一歩届かず、井ノ口の槍から放たれる無数の突きが昭武を襲う。

 

(やばいなこの突きはやばい。だがやられるわけにはいかないな)

 

昭武は全神経を集中して殺人的な突きの奔流の中に突っ込んでいく。しかしいくら井ノ口が突けども昭武に有効打を与えられない。全てかすり傷の内に収まっている。

 

「なぜ当たらない!なぜだ!」

 

あまりに異常な事態に井ノ口は動揺を隠せない。

 

「今だ!」

 

その心の隙をついて昭武は井ノ口の槍をはねのけて、思い切り刀を振り下ろした。

 

「うぐあ!」

 

昭武渾身の一撃は井ノ口の腹をかっさばいて、井ノ口はよろめきながら倒れた。

昭武もまた脇腹の傷が大きく開き、多量の出血を起こして倒れてしまった。

 

「はぁはぁ……、これで、どうよ」

 

「ああ、参った参った。貴公は強いなぁ……」

 

地面に突っ伏しながらも笑い合う二人。互いに持てる力を振り絞って行われた死闘は二人に互いの武勇を認めさせるには十分だった。

力尽きて床に横たえる井ノ口。だが彼は笑っていた。

 

(初めてだ。こんなに熱い勝負ができたのは。姫様に従って山賊をやるのもそれはそれで良かったが、これからは武芸者として生きるのも悪くないかもしれぬな)

 

負けはしたものの、井ノ口の心には爽やかな風が吹いていた。

 

*************************

 

井ノ口との一騎打ちの直後、騒ぎを聞きつけた宮崎長堯が酒場に駆けつけて、金環党を一斉に捕縛した。昭武は長堯の広い背中に担がれて自室に帰された。

 

「なぁ長堯。あいつらあの後どうなるんだ?」

 

「長近、井ノ口は打ち首。他の連中は賦役が妥当でしょう。首魁二人はそろって一千貫の賞金首、若様には併せて二千貫が入ります」

 

「そうか、二千貫か。あいつらはそれでも安いな」

 

昭武はこの時、一つの決断を下した。

 

「長堯。首魁二人の打ち首をやめろ。被害に遭ってきた連中からは文句を言われるだろうが、やめろ。二人はオレが責任もって預かるから」

 

「若様、今なんと?」

 

長堯が驚いた顔を浮かべている。冷静沈着な彼には珍しい表情だった。

 

「あいつらには万金を稼ぐ力がある。それを捨てる阿呆がいるか」

 

昭武が言うと長堯は破顔した。

 

(雷源様。貴方の御子はどうやらなかなかの器のようです)

 




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