インフィニット・ストラトス~The Lost Rabbit~ 作:ヌオー来訪者
なお結果
1、2、3時間目は2組との合同でのISの模擬戦闘を行う為、生徒たちが各々準備を始める中、一夏は座ったままだった。HRでラウラに睨まれてからずっとこの調子だ。
手元を見ると未だ僅かに手が振るえていた。セシリアや、本音や清香たち一夏を心配している一部女子たちはどう声をかければいいのか分からず黙ったまま一夏を遠巻きに見ていた。
流石にこのまま放置しておくのも憚られるので篠ノ之姉弟は直接様子を見に来たが、声をかけてもうんともすんとも言わず黙り込んでいる。我ここにあらずといった風だ。
「――ったく……そぉい!」
玲次は一夏の目の前で、勢いよく手を叩いた。すると一夏はやや仰け反り我に返った。
「ハッ……! どうした玲次」
「おれもアイツが恐ろしいとは思ったがお前程ガチビビリはしてないよ? お前こそどうしたのさ」
一夏の尋常でない恐怖の抱き方には違和感のようなものがあった。あの吸血鬼や、レッドフェンサーに果敢に立ち向かっていたこれまでの姿が嘘のように見える。何故そこまで怯えるのか。玲次も箒も訳が知りたかった。
「大丈夫だ。なんでもない。ちょっとボーっとしていただけだ」
――嘘を吐け。大丈夫じゃない人間が手を震わせて我を失うかい
不可解だが、一夏にこれ以上訊いても無駄だと玲次は思った。
加えて一夏の心配もしていなかった一部生徒たちが「はよ出ろや」と無言の圧力をかけて来る。
女子は教室で着替えるのだ。玲次と一夏、そしてシャルルは更衣室で着替える事になっているのでこれ以上長居は出来ないだろう。
「あのボーデヴィッヒとかいう転校生……一体何なのだ……」
箒は教室の片隅の席に座っているラウラを見やる。箒の疑問に答えてくれる人間はこの場に一人もおらず、暫くの沈黙が生まれた。
ラウラはシャルルには一切興味も示さず、逆に生徒たちも一人もラウラに興味を示さなかった――というより怖くて近づけなかった、というのが正解だろう。近寄りがたい空気はHRからずっと彼女を中心に放ち続けている。
「この調子じゃ聞いてないだろうから一つせんせーからの伝言ね。野郎どもはデュノアの面倒を見ろってさ」
シャルルの周りには人だかりが出来ており、2組の女子の姿もぽつぽつと見受けられた。
現在進行形で質問に次ぐ質問の波状攻撃を喰らっていた。「血液型は?」「趣味は?」「好きなタイプは?」などなど。数の暴力で紡がれるソレは、聖徳太子もきっと匙を放り投げる事だろう。
「確かにな。このまま放ってはおけない」
一夏は無造作に着替え用の鞄を取り出し、玲次もそれに続いて、シャルルのもとへと歩を進めた。
◆◆◆
「ほんと凄まじいね……」
四方八方の絶え間ない質問攻めからやっとこさ解放され、疲弊したシャルルは感想を漏らす。
確かに女子たちの勢いは並々ならぬものだった。いち早く一つでも多くの情報を得る為に我先にと質問を繰り出していく者が別の組からの流れ者併せて30名程いたのだ。
「そりゃ貴重な男だからね。しかも美形男子とくりゃァ、テンションも多少上がるってものなんじゃないかい」
「……そうなの?」
「そうさね」
玲次の返答に要領を得ず首を傾げるシャルル。それは天然なのか、それとも計算込みなのかは本人のみぞ知る。
今のシャルルの状態を弾が見ていたら憤慨していただろうと、玲次は心の中で苦笑いした。
入学時の自分たちもシャルルに似た目に遭ってきたので思うと何だか懐かしい気分にもなってくる。自分たちが入学したのはたった数か月前の事なのに随分と昔なような錯覚を覚える。
「80年代のウーパールーパー状態だな」
一夏が微妙な喩えを出し、玲次が異を唱えた。
「パンダの方が分かりやすくない? 上野動物園のアレ」
「もっと古いじゃねぇか。お前何歳だ」
「それ、君が言う?」
両者とも年齢を疑われかねない喩えを出して無駄な主張のぶつけ合いを始めるもシャルルには全く分からず「ごめん、両方分からない」とバッサリと切り捨てられてしまった。
当然だ。そもそも日本の一時の流行を知るフランス人がどれだけいるのか。
「しかしまぁ助かったよ。学園に男は2人しか居なかったから随分と肩身の狭い思いをしてきたからな……」
「そうなの……?」
一夏の苦労話に対しナチュラルに疑問符を浮かべられたのでずっこけた。もしやハーレム状態で喜んでいるクチなのかと玲次は疑いもしたが、少し前の言動から察するにそれはない気がした。
「なにはともあれ、これからよろしくな。俺は織斑一夏。一夏ってよんでくれ。こいつは篠ノ之玲次」
「おれは苗字なり名前なりどちらでもどぞー」
「うん。よろしく。二人とも。僕の事もシャルルで良いよ」
「あー、所でシャルル君。篠ノ之束に――うちの姉に会った事はある?」
それから会話のネタが無くなり、無言で更衣室に向かう中、玲次はシャルルに一番訊きたかった質問を口にした。この返答の結果によっては振り出しに戻ってしまう。せめて、顔見知りであってくれと願うが――
「ううん。名前は知ってるけど直接会った事は一度も……それが、どうかしたの?」
即答で否定され、玲次の願いは無情にも砕け散った。
「いや、何でもない。忘れて」
これで全て振り出しに戻ってしまった。
何故自分たちが男なのにISに適合したのか。篠ノ之束と面識がありまともに会話した事があるという貴重な共通項が消え失せてしまった事で、理由が尚の事分からなくなってしまった。
これは単なる偶然だったのか。
肩透かしと落胆に玲次は肩を人知れず落とした。
このまま自分たちが適合したのは偶然と切り捨てて良いのか?
釈然としないような感覚に苛まれながらも玲次は更衣室に入った。
◆◆◆
2組との合同授業はIS学園敷地内の第2アリーナで行われる。3時間も1年生が貸し切りと言う状況なため約60名居ても広々としていた。60名の生徒たちは観客席に集まって出席番号順に座り全員の注目が千冬に集まっていた。
「では、本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練の授業を開始する。まずは専用機持ちに射撃戦、近接格闘戦の実演を分けて行って貰うのでよく見ておくように。篠ノ之玲次、オルコット。フィールドに降り各々ISを起動し、戦闘開始位置で待機しろ。お前たちがタッグを組め。2対1で模擬戦をやって貰う」
「えっ、何でおれですか?」
「わたくしもですかッ!?」
何故自分たちなんだと玲次とセシリアは不平を漏らす。当然千冬を引き下がらせる事は不可能だった。一介の生徒のわがまま如き聞いてやるほど甘い訳が無い。
「そうだ。専用機持ちは展開が早いからな。それに機体の兵装は飛び道具も刃物も持っているだろう? 凰は不可視の弾丸、織斑は飛び道具すら持っていないというのに他に誰を選べという? まさか新入生に早々押し付けるなどと言う事は考えていまいな?」
畳み掛けるような正論の連発で玲次とセシリアはぐうの音も出なかった。流石に学園に入って間もないシャルルやラウラに押し付けるのは抵抗感がある。かといって一夏や鈴音は実演に不向き。結局自分たちしかいないのである。
セシリアの場合別に戦闘自体の実演が問題ではなく、近接格闘を強制されるという状況に不満を持っていた。
「まずは射撃戦だ。フィールドに降りてさっさと戦闘開始ラインに立て。早くしろよ? 大めにコマを取っているとはいえ数時間程度なのだからな」
有無も言わさぬ命令に、渋々従い、セシリアと玲次は観客席から出てフィールドに降りそれぞれISを展開した。セシリアはいつも通りのブルー・ティアーズ。しかし玲次はいつもとは違った。黒鉄の装甲に緑色の追加パーツが各部に追加されていた。
脚部がやや大型化されており、右肩部にはシールド、左肩部には半分に折り畳まれたレールガンを搭載。砲撃型装備『玄武』。以前、完成前まではプランGと呼ばれていたものだ。防御力及び、総火力を底上げした形態だ。
展開後、玲次は確認するように機体の腕部装甲を見ていると、鋭い視線が玲次を刺した。玲次本人もその視線に気付いていた。
――ラウラ・ボーデヴィッヒ。
専用機持ちのタッグ戦で賑わう観客席の中、一人腕を組みこちらを見据えている。タッグ戦用の戦闘開始ラインに立った玲次はハイパーセンサーでラウラを一瞥し、溜息を吐いた。
このままあのおっかない女に目を付けられ続けると精神がゴリゴリ持って行かれそうだった。さっさとこのいざこざを解消したい。――のであればコミュニケーションを取るのが常道。
しかし、彼女の醸し出す鋭利な刃物のような気配がそれを妨げる。近づくにも一苦労だろう。
「……篠ノ之さん?」
「ん? どしたオルコットさん」
セシリアからの通信で我に返り、玲次は何事もなかったかのように返す。
「いえ……織斑さんも篠ノ之さんも今日変ですわよ?」
「いやぁー、変なのはいつもでしょ」
「はぐらかさないでください。あのボーデヴィッヒって方が来てから二人とも……」
流石にセシリアの眼は誤魔化せないらしい。セシリアだけではない、間違いなく殆どの生徒たちが気付いている。大半はシャルルへと関心が移り我関せずを通しているが。しかしこの不確定要素ばかりの状況でいたずらに話すのは危険だった。
一応一週間前にラウラに因縁を付けられた事は既に千冬や芝崎たちには話しているがそれはただ黒鉄の件について現時点で一番近い人間である為だ。
「いずれ話すよ。おれにも色々分からない事ばかりだからさ」
「――分かりましたわ。今日はもう訊きません。その代りいつか必ず話して貰いますわよ?」
追い打ちに横目で「約束は守れ」とセシリアが無言で訴えかけてくる。このまま忘れて貰う事は無理だという確信がセシリアの無言の圧力にはあった。
「……それはそうと、わたくしたちの相手は一体誰なのでしょう?」
話題のやや強引な切り替えに玲次は苦笑しつつも感謝した。
「そう言えばそうだ。おれたちが戦うならまだしも、組んでいる以上他の誰かが相手になる。でも凰さんや一夏の奴が蹴られた以上一体誰が……」
1年の専用機持ちは転校生を除くと4名。そのうち残り2名は既に千冬から弾かれている。だったら一体誰が相手になるのか。一夏は鈴音は未だ観客席に座って他の生徒と一緒に観戦している。
その答えは――
キーン、と飛行機特有の空気を裂く音が微かに聴こえた。最初は飛行機でも飛んでいるのかと玲次もセシリアも思っていた。しかしIS学園上空を飛行機が飛ぶなどという事があるのだろうか。加えて空気を裂くような音は着実にこちらにに向かっている事に気付き、センサーを作動させた。
「――げっ」
玲次の喉の奥から短い声が出た。センサーが見せた光景はラファール・リヴァイヴを纏う山田先生が上空をふらふらと急降下――否、落下していた。
……玲次目掛けて。
「あああああああッ!? ど、どいてくださぁぁあぁぁぁぁい!」
「あっはい」
言われるがままに反射的に身体を逸らす。すると山田先生の身体が玲次のすぐ近くを横切って――見事なまでに着地もとい墜落した。轟音がフィールド内に反響し、玲次は咄嗟に耳を塞ぐ。
――止めるべきだったかこれ……
派手に墜落して砂埃を舞い上げて地面に倒れている山田先生を見ながら、後悔する。ISの防護機能ならエネルギーさえあれば10m以下の高度からの墜落程度ちょっと転んだ程度で済むとはいえ少し罪悪感が湧いた。
ゆらりと立ち上がった山田先生は今度はゆらゆらとしないちゃんとした真っ直ぐな飛行で戦闘開始ラインの上に立ち、玲次とセシリアたちを見据えた。手にはアサルトライフル一丁携えている。
「まさか……山田先生が!?」
ここまで来れば相手が誰になるのかは明白だ。セシリアがにわかに信じられないような声を上げる。
搭乗機が量産機でかつ世代が1つ下で、玲次とセシリアという3世代型2機に挑むというハンデにハンデを重ねたような状況だ。
搭乗者が千冬ならばまだ腑に落ちるが、今乗っているのは山田先生だ。
玲次達から見た山田先生は座学での教導能力は高いが、何もない所でコケる、あがり症と、運動神経の面では良い印象は無きに等しい。
一夏曰く、実技試験の相手が山田先生だったらしく、滅茶苦茶な動きをしてから何故か自滅してしまったのだとか。
『あぁそうだ』
セシリアの台詞に肯定したのは千冬だった。観客席でインカムを付けている。
『勝てるものなら勝ってみるがいい』
「なッ!?」
「へっ?」
そんな馬鹿な、とセシリアも玲次も己が耳を疑った。千冬は暗に「お前たちでは勝てない」と言っている。
「あー、これはマジっぽいね……
玲次は山田先生に視線を移す。いつものほんわかしたような表情でアサルトライフルを構えている。例の噂が本当だとしたら、今自分たちはかなりの強敵を前にしているのではないかと玲次は思い始めていた。
『カウントダウンを始める。各員武装を展開――構えろッ!』
3機のISの立体映像式のモニターにカウントダウンが表示される。玲次は両脚部にマウントされた、汎用武器の近距離特化型大型リボルバー、『陽炎』を片方だけ引き抜く。セシリアは何時ものようにスターライトMk-Ⅲの引き金に指をかけ、銃口を山田先生に向けた。
カウントダウンが0に切り替わった次の瞬間――玲次は空を駆け、セシリアは山田先生に引き金を引いた。
セシリアの放ったレーザーは山田先生目掛けて一直線に飛んでいく。――が、いつものあがり症は鳴りを潜め、最低限の動きでそれを回避した。
動きには余裕があり、セシリアの狙いの先の先を読んで次々とスターライトMk―Ⅲのレーザーを躱していく。その姿は百選の手練れ。背後に玲次を警戒させるには充分過ぎる動きだった。
千冬の言う勝てるものなら勝ってみろ――その挑発に偽りはないと玲次は悟った。
首尾よく背後に回り込み、流れるような動作で陽炎の撃鉄を起こし、引き金を引く。
銃口から弾丸が飛び出し山田先生のリヴァイブのバックパックを直撃
しなかった。
「外した!? この距離で!?」
玲次の顔が驚愕に染まる。背後を見るより先に山田先生は陽炎の弾丸を横に避けた。同時に前方でセシリアが撃ったレーザーが黒鉄の右肩部シールドを掠め、焦がす。
「うおぁ危ねぇ!?」
「篠ノ之さんごめんなさい!?」
山田先生はセシリアの狙撃を最低限の動きで躱し続けつつアサルトライフルを玲次に向け、玲次は右肩部の実体シールドでそれを防ぐ。弾き飛ばされた演習用の弾丸たちはパラパラと地面に落ちた。
僅かな隙を突いて陽炎で反撃をするも、瞬く間に残弾数がゼロになった。装弾数は6発だ。それを時雨の時と同じ要領で乱射してしまったのは玲次のミスであった。
アサルトライフルの弾丸は玲次を襲い続けシールドで防御する事を余儀なくされる。山田先生の狙いは玲次の動きを封じる事にあった。アサルトライフルをオートロックで黒鉄のシールドを狙い撃ち続け、銃身に付属されたグレネードランチャーを撃って動きを封じた隙に、空いた片手でサブマシンガンを呼び出し、距離を取ろうと後退するセシリアに肉迫する。
――まずっ
接近戦が極端に弱い事は玲次も知っていた。なら当然副担任の山田先生が知っていてもおかしくはなかった。スターライトMk―Ⅲは武装の性質上銃身が長く、取り回しが効き辛い。加えて近距離兵器の有効射程とも言い難い微妙な距離のせいでインターセプターで薙ぎ払いようもない。
「遠雷展開――」
玲次はグレネードをシールドで防ぎ切り、なおも迫りくるアサルトライフルの弾丸を避けつつ陽炎を格納し、左肩部に固定された遠雷の取手を掴み、固定具のロックを解除。半分に折り畳まれた砲身を開く。暴発防止用の最終ロックを解除し引き金に指をかける。
FCSが照準を合わせ、ロックオンするのに何秒もかからない。
山田先生がサブマシンガンの弾の雨をセシリアに降らせる寸前の所で、玲次は意を決して引き金を引いた。
「「!?」」
遠雷の発砲は既に山田先生は読んでいた。一方でセシリアはワンテンポ遅れて遠雷に気付き、目を見開いて慌てて回避。お互い距離を取るような形で両者は回避した。
「ちょっ、危ないですわね!」
「ごめん!」
最早連携もあったものではなかった。レーザー実弾が敵味方問わず縦横無尽に飛び交い、2対1の戦闘がただの乱戦と化してしまっていた。
◆◆◆
「見事なまでに先生に振り回されてるな……」
観客席で模擬戦を見ていた一夏は、今の惨状を目にして、呆れ半分驚き半分に呟いた。ISをどれだけ動かせるか程度にしか図っていなかった入学前の実技試験では、自滅という教員としてはどうなのかとすら思いたくもなるようなものだったのに、それが嘘のようなマニューバであった。
「流石は先生だねー……噂によると山田先生、元日本代表候補だったらしいよ」
「マジかよ……」
清香の情報をこの模擬戦の前に聞かされれば自分の耳を疑って一笑に付しただろう。しかし今、目の前で説得力あるマニューバと戦術を披露されれば考えも変わる。
ちょこちょこ山田先生の狙い通り2人はフレンドリーファイアをかまして、同士討ちを始めており、完全に振り回され切っていた。機体の性能を技量で覆しているその姿に一夏は見惚れていた。
「さて、今の内に、折角なのでデュノア、山田先生の使用しているISの解説をして貰おう」
「あっはい」
千冬に振られたシャルルは少し戸惑いつつ、慣れたように解説を始めた。
「えっと、山田先生のの使用しているISはフランスのデュノア社製『ラファール・リヴァイヴ』です。第二世代開発最後期の機体ですがポテンシャルは初期第三世代型にも勝るとも劣らないもので、安定した性能と高い汎用性と信頼性の高い機体として仕上がっています。コアごとの相性が問題視される量産機ですが本機はコアにかける負荷も小さく、現在配備されている量産機の中では最後発でありながらも七か国でライセンス生産、十二か国で正式採用されています。特筆すべきは高いポテンシャルを持ちながらも操縦の簡易性の高さにより操縦者を選ばない事と、多様性役割切り替えを両立しています。つまり操縦しやすくて尚且つ、拡張性の高さをも持っているという自由な機体とも言え、参加サードパーティーが多い事でも知られています」
要約すると、操縦者や武装にも合わせてくれる器用な機体という事だ。
しかし性能面は黒鉄もブルーティアーズもかなり新しい機体であり、比較対象にされた3世代初期のものと比べて明らかに性能は高い。しかしそれを補えるだけの技量が山田先生にある。それと両者の連携の覚束なさもあるだろうが。
「ちょっとオルコットすぁん! バーカスカとビット撃つのやめてぇぇぇ! こっちに当たるからァ!」
「射線上にホイホイ誘導されて自分から当たりに来る貴方が言う台詞ですか!」
「面白いように接近されるわ、回避先読まれて偏差射撃の餌にされまくってる君が言う!?」
「なんかこいつら喧嘩してるんだけど……」
飛び回りながらも喧嘩する玲次とセシリアに鈴音は呆れツッコミ、一夏と清香たちはポカン、としており、千冬は盛大に溜息を吐いてから「……後で説教だな」と呟いた。
説教。この模擬戦の後どのような説教をされるのかと思うと恐ろしくなり、ご愁傷さまと一夏は二人を心底憐れんだ。
「さて、これでIS学園教員の実力が分かっただろう。機体の性能差が戦闘の勝敗を決めるとは限らないという事を肝に銘じて置け」
なんやかんやで巧く纏める辺り流石は教師だなと一夏は山田先生にやられて墜落していく2名を他所に感心した。
山田先生の勝利に終わり、ボロクソにやられた玲次とセシリアは意気消沈したのは言うまでもない。
◆◆◆
「見事なまでに弄ばれた……」
「このわたくしが踊らされる方とは……」
模擬戦終了後、千冬にお説教を喰らい、挙句箒に「戦闘中に味方同士で喧嘩とか貴様は馬鹿なのか」と慰めや労いの言葉一つなく容赦なく罵られた。自分でも酷い戦闘をしたという自覚があった玲次とセシリアは意気消沈とした状態でこの3時間の授業の終わりを迎え、玲次はとぼとぼと食堂で昼食を取った。流れでセシリアも同席していた。
「ど、どんまい……二人とも……」
ずるずると引き摺る玲次とセシリアに、清香が生姜焼き定食の味噌汁を呑みながら慰めの言葉を投げかけるが効果は無い。玲次は死んだ魚なのような目で機械的に醤油ラーメンを啜り、セシリアはパスタをぐるぐると無心にフォークに巻き付けていた。
「二人とも~喧嘩はよくないよ~」
定食をスローペースで食べながら本音は二人を戒めるが、両者とも既にそれが敗因である事は承知していた。喧嘩を始めてから
生来プライドが高かったセシリアは無様だと嘆き、玲次は完成した新形態の玄武と新武器の陽炎の初陣という事もあって尚の事凹んでいた。
「新形態のお披露目で旧式の量産機に負けるって……我ながらカッコ悪すぎじゃないの。しかも陽炎全然役に立ってないってさぁ……つーかさぁ、同士討ちってもう戦闘以前だよこれ……」
「そんなアニメじゃないんだし、最初からすぐ上手く行くわけじゃないんだからさ。次、がんばろうよ?」
清香の励ましは有り難かったとはいえ、ロボットアニメとかに親しんで来た玲次としては新形態のお披露目所でカッコいい所を見せたかった訳だ。プラモデルなどのグッズの販促に踊らされているとか捻くれた人間にはよく言われるが、新しいものへの一種のワクワク感は鮮度がある時に出すべきなのだ。…………些か話が逸れて来た。
「――篠ノ之さん」
ふと、セシリアがフォークを持つ手を止める。俯いたままのぽつりとした声であったのに、やけにはっきりと聞こえた。
「何」
「このまま恥を晒して終わる気は当然、ありませんわよね?」
当然という単語が妙に力が入っていた。負けず嫌いなセシリアらしい言い回しだ。
玲次としても旧式機にロールアウトしたばっかりの最新装備がボコボコにされるのは恥というかあまり気分の良い話では無い。
「そりゃそうだよ。玄武の有用性っつーか強さはあんなモンじゃないさね。――多分」
「なら、月末の学年別トーナメントで――わたくしと組みませんか」
顔を上げた彼女の表情はいつも以上に真剣なものだった。
新装備ひっさげたのにも関わらず旧式にボロクソにされる主人公とは
黒鉄・玄武
解説:少し前の話でプランGと呼ばれていた装備の完成品。プランGとは一部差異がある。
素体である黒鉄の上に装甲を上乗せし、レールガンの遠雷とマイクロミサイル、大型シールドを搭載した事により防御力と火力の底上げを行ったのが特長。
その代償として重量が増しており、黒鉄の元々のキャパシティーの無さも相まって容量はぎりぎりに詰め込んでいるという有様。スピードも落ちている。
重量の原因となっている遠雷とシールドは黒鉄本体と一括で出現させるように設定されている程に余裕がない。
パージ可能。
陽炎
解説:大型のリボルバー式拳銃。容量削減のために時雨に変わる拳銃として採用された。トンファーとして振り回す事も出来る。
時雨と異なり火力は高く、格闘戦としての使用にも耐えうるほどの強度を持っている。構造も非常にシンプルで容量削減の役に立っている。但し、装弾数は6発と極端に少ない。