ご注文は「笑顔」ですか?   作:未完

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ご無沙汰しております。


一話 迷子の迷子の…

 俺の向く先には腰に手を当てて、そして俺の方を指差す明るい女の子がいた。

「暗い顔とか失礼な、これがいたって普通の状態だ」

突然のことに少し緊張が緩んでしまった。意識がはっきり戻ってきたところで俺はそう言い返した。

「うーん、そうかなー?」

悩むように口に手を当てる。何を悩むことが有るのか。

「まあ、良い。じゃあな」

「あ!まって一緒に行こうよ!」

「一緒にって何処に行くんだよ。お前の目的地を俺は知らない。同じ方向に行くのかすらもな。」

彼女は再度腰に手を当てて胸を張った。俗に言う、かどうかはわからないが、えっへんの格好だ。

「大丈夫だよ!私もわからないから!」

…この子頭おかしいのかな、大丈夫なのかな、関わらない方がいいのかな、絶対そっちのがいいんだよなぁ…

 

 

 

 

 

一話 迷子の迷子の…

 

 

 

 

 

 

 あの後激しい攻防?の後、結局道を共にすることになった。

「そうだ名前教えてよ」

「見知らぬ人に個人情報は教えられ「いいから!」

「えぇ…」

押しの強さに定評がありそうだなこの子。そんな定評今はいらないんだけども。

「私は保登心愛。よろしくね!ココアって呼んでね。」

聞いてないのに名乗ってくる辺り遠慮が無い。俺はこらえずにため息をついた。しかし、名乗られてしまったならやはり答えるのが礼儀…なんだろうか。礼儀はもっと礼儀正しいやつに払うべきものなのでは?

「…琳。深入琳(ふかいり りん)だ。」

疑問と少しの嫌気を隠そうともせず、しかし根比べに負けた俺は保登に自分の名前を教えた。どうでも良いが、名前の琳の字義は何かの音の形容、だった気がする。

「琳か…何か良い名前だね!」

そんな由来なんぞいざ知らず、自分の名前に対してのアバウトすぎる感想を聞き流す。それを言った彼女の笑顔は裏を読み取ろうとするのが馬鹿らしくなるものである。

「それで保登は結局何処へ行くんだ?」

「ココア!」

「へ?」

と、突然自分の名前を言う保登。いや、でもさぁ…

「私の事はココアって呼んでねって言ったよね?」

まだ会って間もない、ってか異性を呼び捨てにするのはちょっと抵抗が、

「言ったよね??」

「…で、ココアは結局何処へ行くんだ。」

「うん!それでよし!」

またもや根比べに負けた俺。ちょっとこいつにはこれからずっと勝てそうにない気がする。もっとも、彼女とは恐らくこれきりの関係で終わってしまうだろうからずっとというのは誤りか。

 

 

 

「それでその香風さんってひとに御世話になるのか。」

どうやら彼女は進学と共にこの町に下宿に来たらしい。御世話になる家の姓は香風といいココアの話によると喫茶店を営んでるとか。

「それでそのカフェの位置がわからない、と。」

「てへへ」

可愛く笑っても問題は解決しません。

「地図とかは無いのか。」

「それなんだけど…」

 

 

~以下ココアの回想~

 

 

ココア母「ココア、早くしないと列車に遅れちゃうわよ?」

ココア 「うん!あ!わわわ!」

ココア姉「ちょっと大丈夫!?」

ココア 「大丈夫大丈夫!!それじゃあ行ってきます!!」

ココア姉「あ!ココア!地図!地図!」

ココア 「そんなに駅から遠くないから大丈夫~!」

 

 

~以上回想終わり~

 

 

「つまり寝坊して焦って家を出て地図を忘れたあげく、その内容を覚えてないと」

「覚えてないんじゃないよ!ただちょっと行く方向がわからなくて…」

「それを覚えてないって言うんだよ…」

というわけで彼女はどうやら迷える子猫状態らしい。つまり俺はいぬのおまわりさん?でも結局あのおまわりさん困ったまんまだったような。

「で、どうするんだよ」

「うんと…町の全部のカフェを回るとか?」

この木組みの町。非常におしゃれな町である。

それ故かどうかはわからないが、今まで歩いてきただけでも喫茶店とかその類いの店がかなりの数有ったように感じる。それらをしらみつぶしに回っていったら日が暮れてしまう。

「うーん」

腕を組んで悩むココア。確かにどうしたら良いか迷う所ではある。香風家が見つからないと彼女は泊まるところが無いわけだし。

「あ!」

「ん?なんか良い方法見つかったか。」

「ちょっと休憩しようよ!リン君も疲れたでしょ?」

…本日何回目かわからない。俺は頭を抱えたくなった。

「お前脳天気過ぎやしないか…」

「そう?悩んだときは立ち止まるのも大事なんだよ!」

指を立てて得意げに語るな。なんやかんや、ということでココアの提案通りとりあえず休憩することになってしまった。

 

 

 

「ラビットハウスだって!この喫茶店なんか良いんじゃないかな?」

彼女が指差す先には趣のある喫茶店があった。うさぎがカップを持っているような切り抜き。そのしたにラビットハウスと書いてある看板が何ともいい味を出しているような気がした。

「まさか、うさぎにたくさん囲まれたいから、とかの理由で選んだんじゃないだろうな。」

「え!?なんでわかったの?」

なんとなく彼女の思考回路がわかってきた気がする。

うさぎに囲まれて頬をすりすりして、「くすぐったぁい!」なんて満面の笑みで言ってるココアが容易に想像できてしまった。

「そういう店じゃないと思うけどな。」

「え~入ってみないとわからないよ?」

ココア的にはもう場所をここで決定するつもりらしい。他の店もたくさんあるのにもうちょっと選ばないのだろうか。

「うさぎと触れあってコーヒー飲んで…そうだ!」

そこでまたココアは思いつく。また何をくだらないことを思いたのか、と俺は半分呆れて構えていた。

しかし、そのココアの思いつきは俺には考えついていなかった。そして考えつく筈のない物だった。

「ついでに店員さんに香風さん家のことも聞いてみようよ!」

「……」

人に聞くって言うのはいい案だな。俺はすぐにこの言葉を言えなかった。そのことに嫌になる。奥歯をたまらず噛んで堪える。

「りん君?」

「…お前にしてはいい案だな。」

「なっ!もう、失礼しちゃうんだから。いいから早く入ろ!」

上手く取り繕えたらしい。少し頬を膨らましたココアに連れられ店に入る。

というわけで喫茶店「ラビットハウス」に物語の舞台は移る。

 

 

 

 




次回更新は1/7(予定)です。
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