見上げてごらん、夜空の星を meet この大空に、翼をひろげて feat X 作:la55
「ランウェイクリアー」
「テイク、オフ!!」
ウィンチのそばにいる姫野あげはの掛け声のもと、グライダーを結ばれたロープが巻きとられる。それにより離陸するグライダー。余裕の小鳥に対し緊張気味のひかり。対照的な表情の2人を乗せてグライダーは大きく羽ばたいていく。ある使命を帯びて-。
ある使命とは何か。それは7か月前に遡る。
前年の12月14日、むつらぼしの会が中心となって日本中の街の明かりを消してふたご座流星群を見る、プロジェクト・スターライトの大成功。しかし、このプロジェクトも途中、いろんな理由で八方ふさがりだった。その大成功への逆転のきっかけとなった一つのメール。恵風学園天文部のプロジェクト・スターライトへの参加表明。その御礼のため、ひかりたちむつらぼしの会メンバーは恵風学園を訪問していた。
「すごーーーい。このガジェット達、全て手作りなんですか!!」
全国有数の工業校であるため、高度なガジェット(天文部なので望遠鏡等のこと)がたくさんある。それに驚くひかりたちであった。ただ、そんなガジェットたちを常に興味を持つのはむつらぼしの会工業班等一部のメンバーだけ。ひかりたちは恵風学園天文部の人たちとのお茶会へと進んでいく。
「(12月)14日の流星群、とてもきれいだったー」
「私も。あれがずっと続いて欲しかったー」
プロジェクト・スターライトの成功は、全国の学校の天文部にとって1つの好機となった。こんな素晴らしいプロジェクトが続いて欲しい、そう誰も思っていた。
素晴らしい思い出を思い出しながら語り合う、そんなひととき、そして、話題はプロジェクト・スターライトを盛り上げるために全国で行われたゲリラ的パレード、スターライト・パレード(曲はもちろん「きらきら星」!!)のことへと移る。
「そういえば、スターライト・パレード、とてもよかった!!」
「私たちのハーバータウンでのパレード、とてもよかったでしょ」
「でも、恵風のパレードがとても賑やかだったらしいね」
「そ、そうかな!?」
「そうだよ。だってロボットでてきたでしょ。あれって恵風しかできないよー」
「私のところ(恵風)ってブラスバンドみたいな部活ないからねー」
「でもすごいよ」
話の話題はつきない。しかし、ひかりの一言がこの状況を一転する。
「ところで、(恵風の)スターライト・パレードの最後にでてきた飛行機ってあれ、なんだったのー」
「あれー、知らないのー。あれはねー、恵風が誇るソアリング部のグライダーだよ」
「グライダー?」
「ひかりさんは知らなくて当然ですよ。だって、ここ数年、海外で暮らしていたんだもの」「ひかりさん、あのグライダーは数年前、ある現象に対して果敢に挑んだ伝説のグライダーだよ!!」
「すごーーーい!!」
「あのグライダーのおかげで一時期ネットの話題は恵風のスターライト・パレードでもちきり!!それに、その動画も百万もの再生数記録したもんね!!」
「すごい!!すごーーーい!!」
「コメットガールほどじゃないけどね」
「でもすごいよ」
「とちらかといって、コメットガールつながりというのが強いよ」
「それでもすごい!!」
コメットガール、それはひかりが車にひかれそうになった子猫を助けた様子を映していた動画を加工して創ったMMDのことである。地球に向かっている隕石を壊しに行く動画等いろんなバージョン有り。ひかりよ、あんたは良い子だ。いい意味で。
恵風のパレードとグライダー、コメットガール、プロジェクト・スターライトは話題が尽きない。これが続くのかと思われたとき、
「そのグライダー、見てみたい!!」
ひかりって自分の気持ちを率直に言う子になったみたいだ。やはりひかりの恋人宙野暁斗との恋の力なのかな。でも、これはむらぼしの会メンバーにとって誰も思っていたことだった。
「グライダーね。それならソアリング部の望月先生にコンタクトとってみるね」
「やったーーー!!」
風々浦ソアリングクラブ、秘密基地。もとい、グライダー基地。
中央にでんと鎮座するグライダー。
「すごーーーい!!」
「これがグライダーなの」
むつらぼしの会メンバーは驚く。グライダーだからエンジンすらない。そんなことは知っている。しかし、そんなグライダーが数年前に大偉業を成し遂げたのだ。見た目はスマート。これが大偉業を成し遂げたとは思えない。見た目は子ども、頭脳は大人、名たん・・・。これ以上言うと大変なことである。ある意味で。でも、そのような心境だった。
「どうだい。私たちのグライダーは」
「私がたんせいこめてつくったグライダーだよ」
「依瑠(よる)ちゃん。私がつくったじゃなくて天音先輩たちだよ」
「いいじゃない。整備は私がやっているんだから」
突然物陰から現れた3人。ひかりたちは驚いた。
「あなたがたは・・・?」
「私は望月天音。恵風学園ソアリング部の臨時顧問・・・」
「私、風戸依瑠。風戸姉妹の妹!!」
「亜紗(あさ)・・・、風戸亜紗。風戸姉妹の姉です・・・」
でてきたのは天音、依瑠、亜紗。大偉業を成し遂げたメンバー。ここに現る。
「天音ちゃん!!」
「うわっ、なんだ。この私に目をキラキラしている女の子は!?
「私、箒星ひかり!!よろしく!!」
「・・・よろしく・・・」
「それよりも!!サインください!!」
「サイン!!」
「だって有名なんだもん。伝説の・・・」
「伝説の・・・」
「伝説の留年生!!」
「・・・留年生!!」
「ソアリングのためだけに長年留年していたんでしょ!!」
そう、天音はとある理由でつぶれそうになっていたソアリング部でただ一人で守っていた。そして小鳥、あげはたち新入部員が入部するまで長年留年し続けていたのだ。だから伝説の・・・。これが伝説になるのだろうか。
「・・・たしかにそうだけど・・・」
「だから伝説の留年生!!」
「伝説の留年生・・・、伝説の・・・」
ひかりのなにげにない一言に傷つく天音。
「伝説の留年生っていい響きじゃない。伝説の留年生!!」
「依瑠ちゃん、言わないの。天音先輩が傷つくでしょ」
「そう、でも事実だし」
傷ついた天音からサインをもらう無邪気なひかり。「少しは気をつけよ」とツッコミたい。だが、そんなひかりはサインを何重に透明な袋にいれる。
「そんなに欲しかったんだ、ひかり」
「うん、だって伝説の留年生だから!!」
「ごめんなさい、天音さん。ひかりはわざとじゃないの」
「・・・そう」
ひかりのそばにいた幼なじみの沙夜が謝る。本当はひかりが謝るのが道であるが、そんなそぶりはない。ちなみに、伝説の留年生ではなく伝説の先輩、もしくは天才が正しい答えである。
そんななか、一緒に来ていた(というよりおまけについてきた)むつらぼしの会前会長の織姫が机の上にあったなにかを見つけた。
「これ、何の写真なんですか?」
「これ、グライダーからとったモーニンググローリーの写真です」
「モーニンググローリー!?」
モーニンググローリー。オーストラリアでよく見られる気象現象のことであり、雲が帯状のようにながれていく現象である。日本でも風ヶ浦にて数十年に一度(少なくとも30数年前と数年前の2回)起こるらしい。恵風学園ソアリング部はそれを目指していた。そして、机の上にあった写真、それこそがソアリング部が大偉業、風ヶ浦で起こったモーニンググローリーをグライダーで到達したという証でもあった。
「この曇ってすごいですね!!どういう風にあがったのですか?」
「たしかゴムで飛ばしたってなっているけど、本当ですか?」
「飛んだときの印象は?」
むつらぼしの会メンバー(+おまけで来ていた織姫)から質問攻めにあう天音と風戸姉妹。3人がたじたじしていたとき、またひかりの一言がこの状況を一転する。
「モーニンググローリーを下から見たらこの景色。なら、流星を雲の上、飛んでいるグライダーの操縦席から見上げたらどう見えるのかな?」
「グライダーから?」
「そう。雲一つないし、高いから空気がすんでいるなら美しいんじゃないかな」
ひかりの一つの問いかけ、これに対し、むつらぼしの会メンバーは次々と賛同していく。
「それ、おもしろい。やってみようよ」
「たしかにおもしろいですね。やってみる価値あるかもしれません」
「やろう、やろう」
沙夜、織姫、そして日下部ころなも協調していく。
「ちょっと待って!!それすると恵風に迷惑かけるんじゃないかな」
いいだしっぺのひかり、ここで反対にまわる。たしかに恵風の合意なしではグライダーは飛ばせない。むつらぼしの会だけで決まるわけではない。
むつらぼしの会メンバーが諦めかけていたその時・・・。
「おもしろいじゃない。その話のった!!」
物陰からもう一人出てくる。そう、この人こそこの物語のもう一人のヒロイン、小鳥である。
「あなたは・・・」
「羽々根小鳥、小鳥!!」
「小鳥!!」
「小鳥先輩!!」
「そう、この私、小鳥にお任せ!!」
「すごい人出てきた・・・」
あっけにとられるむつらぼしの会メンバーたち。しかし、この状況だけではすまなかった。
「そう、なんだってこの私、くーるびゅーちー・・・」
「くーるびゅーちー!?」
噛んだ!!小鳥が噛んだ!!毎度おなじみ(?)、小鳥の代名詞「くーるびゅーちー」である。これにはむつらぼしの会メンバーだけでなく天音、風戸姉妹からも失笑がでてくる。
「笑うな!!取り直して、クールビューティーな私、小鳥におまかせ!!」
「でも、迷惑じゃないですか」
「大丈夫たら大丈夫!!やってみないとわからない!!」
やってみようという小鳥に同調し始めるみんな。反対するはずの天音、風戸姉妹も賛同する。
「そうだね。おもしろい、おもしろい」
「賛成、賛成!!」
「でも迷惑では・・・」
賛同者が多くなり、反対するのはひかりのみとなる。
「ひかりちゃん、やってみよう。やってみないとわからないでしょ」
「でも・・・」
「やってみよう!!」
「・・・うん、やってみる」
小鳥の熱い一押しに負けるひかり。
こうしてグライダーから流星を見るプロジェクト、プロジェクト・スターダストが始まった。