「は、は、はじめまして!本日付で765小隊に配属されました、カナ・ヤブッ」
地球連合軍、機動戦艦「佐竹」。
司令室にほど近い通路で無駄に元気さの有り余った少女の声が響く。
出だしから盛大に噛む、というオマケ付きで。
「うううぅぅぅ……」
「あははっ、ちょっと緊張し過ぎだぞ。もっと肩の力抜いて、深呼吸して」
「は、はいっ」
赤面してうずくまる少女を、対して正面に立つ黒髪の女性がフォローする。
「すー…はー……、よしっ。
カナ・ヤブキ少尉です、よろしくお願いします!」
なんとか持ち直した少女――カナは、黒髪の女性に元気よく挨拶をする。
「うんうん。自分はヒビキ・ガナハ中尉、765小隊の隊長もやってるんだ。よろしくね!」
黒髪の女性――ヒビキも少女に負けじと張りのある、よく通る声で挨拶を返す。
健康的な肌にほどよく引き締まった筋肉、はつらつとした笑みに艶やかな黒髪。
そして、腰には二丁の光線銃。
(765小隊のガナハ隊長、本物だ……!)
曰く、連合軍の英雄。また曰く、地球の救世主。
年若くして数々の困難な任務を易々とこなし、撃退したエイリアンは数知れず。
彼女に憧れて軍に入隊した者も多くいるという――そんな、新兵たちにとって"生ける伝説"そのものが、目の前にいる。
「……?」
キラキラとした視線を向けるカナ、キョトンとしているヒビキに割って入る形で、カナの隣に立っていた女性が固い声を出す。
「自己紹介は済んだわね。ガナハ中尉、申し訳ないのだけどこのまま艦内を案内してあげてくれる?」
「自分が?別にいいけど…」
「一通り皆と顔合わせを済ませておいてちょうだい。私は司令室に戻るから、よろしくね」
それだけ言うと、女性――機動戦艦「佐竹」艦長ミナコ・サタケは踵を返して司令室に消えてしまった。
「……まったく、妹なんだから自分で案内してやればいいのに…」
思わず口を尖らせるヒビキにカナが苦笑する。
「仕方ないですよ、お姉ちゃんも忙しいみたいですし。
それより私、早く艦内を見てみたいです!」
「…よっし、そうと決まれば!結構広くて迷うかもしれないから、ちゃんとついて来てね!」
「はいっ!よろしくお願いしまーすっ!」
人類が宇宙に進出し、地球以外の人類と交流を持ち始めようとしている時代。
突如現れた侵略者――通称"エイリアン"により、地球は未曽有の危機に直面していた。
カナ・ヤブキ。
歳は十四、階級は少尉。
未熟な彼女はまだ知らない。
自分が巻き込まれていく、数奇で過酷な運命を。